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品質管理システム(QMS)の開発を外注する進め方
LASSIC IT事業部|元請(プライムベンダー)としてシステム開発・保守運用を受託
品質管理システム(QMS)の開発を外注しようとすると、まず「日々の検査データや不適合の記録をどこまでシステムに載せ、どの範囲を外部に任せるか」という問いに突き当たります。受入検査から工程内品質、出荷検査、不適合・是正処置(CAPA)、トレーサビリティ、そしてISO 9001の文書要求への対応まで、品質管理システムが受け持つ範囲は広く、生産管理や設備保全といった隣接システムとの線引きも曖昧になりがちです。本稿では製造業の品質保証・品質管理部門の視点に立ち、品質管理システムに固有の論点を整理したうえで、外注時に確認すべき点と進め方を実務目線でまとめました。
この記事のポイント
- 品質管理システム(QMS)は、検査データ収集・不適合管理・是正処置(CAPA)・トレーサビリティ・監査対応を束ね、ISO 9001(JIS Q 9001:2015)の文書化要求を情報システムとして支える仕組みです。
- 生産管理が「計画どおりに作る」ためのシステムであるのに対し、品質管理システムは「決めた品質を守り、逸脱を是正する」ことに軸足を置く点で役割が分かれます。
- 外注では、検査帳票の柔軟性、既存の生産管理・測定器との連携、監査証跡(いつ・誰が・何を変えたか)の記録という3点が、稼働後の成否を左右する確認ポイントになります。
目次
品質管理システム(QMS)とは——検査データと不適合・是正処置を束ねる仕組み
品質管理システム(QMS。Quality Management System)とは、製品やサービスの品質を一定に保つための管理活動を情報システムとして支える仕組みを指します。ここでいうQMSには2つの意味が重なっています。ひとつは組織の運営の枠組みとしての「品質マネジメントシステム」で、もうひとつがそれを日々の記録・処理として動かす「品質管理システム(ソフトウェア)」です。本稿では後者、つまり検査記録や不適合、是正処置(CAPA)を電子的に扱うITシステムを主題にします。
品質管理システムが束ねる範囲は広く、受入検査・工程内品質・出荷検査といった検査データの収集から、規格を外れた製品の不適合管理、原因を除去する是正処置、そしてロット単位のトレーサビリティまでが含まれます。これらを紙やExcelで分散管理していると、不適合の傾向が見えにくく、監査のたびに記録を集め直す負担も大きくなりがちです。品質管理システムは、こうした記録を一つの流れとしてつなぎ、いつでも遡れる状態に保つところに価値があります。
品質保証の国際的なよりどころとなるのがISO 9001です。日本品質保証機構(JQA)は、ISO 9001を品質マネジメントシステムに関する国際規格と位置づけ、全世界で170か国以上、100万を超える組織が利用していると説明しています*3。品質管理システムの多くは、このISO 9001が求める記録・文書の管理を電子的に実現する土台として設計されます。
生産管理・設備保全・文書管理との違いと連携
品質管理システムを検討するうえで、まず整理しておきたいのが隣接システムとの役割分担です。生産管理システムは「計画どおりに、必要な量を、決めた納期で作る」ことを主目的とし、工程管理や部品構成表(BOM)、資材所要量計画(MRP)などを扱います。一方の品質管理システムは「決めた品質基準を守り、外れたら是正する」ことに軸足を置きます。両者は目的が異なるため、機能が重なる部分があっても別々に評価する必要があるのです。
設備保全システムは設備の点検・故障・保全履歴を管理し、文書管理システムは規程や図面といったドキュメントの版と配付を統制します。品質管理システムは、これらの隣接領域とデータを受け渡しながら成り立ちます。具体的には、次のような住み分けと連携が考えられるでしょう。
| システム | 主な目的 | 品質管理システムとの関係 |
|---|---|---|
| 品質管理システム(QMS) | 決めた品質を守り逸脱を是正する | 検査・不適合・是正処置・トレーサビリティの記録を束ねる中核 |
| 生産管理システム | 計画どおりの量・納期で作る | 製造ロットや工程実績を受け取り、検査結果を紐づける |
| 設備保全システム | 設備の点検・故障・保全を管理する | 設備起因の不適合で保全履歴を参照し、4M変更として連携 |
| 文書管理システム | 規程・図面・手順書の版と配付を統制する | 検査基準や作業標準の最新版を品質記録と対応づける |
この住み分けを曖昧にしたまま開発を進めると、生産管理システムに品質機能を無理に詰め込んだ結果、検査帳票の自由度が足りない、といった不整合が起きやすくなります。どこまでを品質管理システムが担い、どこから先を隣接システムに任せるのか。この線引きこそ、要件定義の入り口で決めておきたい論点です。
ISO 9001(JIS Q 9001:2015)の文書要求に品質管理システムで応える
品質管理システムの要件を左右する大きな柱が、ISO 9001の文書化要求です。国内で用いられる同一規格のJIS Q 9001:2015は、7.5「文書化した情報」で、文書を作成・更新する際に識別・形式・媒体・レビュー・承認を適切に行うことを求めています*1。さらに、その管理では入手可能性・保護・配付・保管・版管理・保持・廃棄を過不足なく行うよう定めています*1。品質管理システムは、これらの要求を手作業ではなく仕組みとして満たす受け皿になります。
とりわけ実務で効いてくるのが版管理と監査証跡です。検査基準書や作業標準は改訂を重ねるため、古い版で検査してしまう事故を防ぐには、最新版だけを現場に見せる制御が欠かせません。あわせて、いつ・誰が・何を変えたのかを記録する監査証跡があれば、内部監査や顧客監査の際に根拠を即座に示せます。JIS Q 9001:2015は9.2「内部監査」で、あらかじめ定めた間隔での監査実施と、その結果の報告・是正処置を求めています*1。監査に耐える記録を自動で残せるかどうかは、品質管理システムを評価する重要な観点になるでしょう。
なお、ISO 9001が求めるのは「文書を大量に作ること」ではありません。規格は、必要な文書化した情報の程度が組織の規模や活動・プロセスの複雑さによって異なりうるとしています*1。過剰な記録項目はかえって現場の入力負担を増やし、形骸化を招きます。自社の品質保証に本当に必要な記録は何かを見極めたうえで、システムに落とし込む姿勢が求められます。
中核機能——不適合・CAPA・検査データ・SPC・4M変更・トレーサビリティ
不適合管理と是正処置(CAPA)——検出から再発防止まで
品質管理システムの心臓部が、不適合管理と是正処置(CAPA)です。JIS Q 9001:2015は8.7「不適合なアウトプットの管理」で、要求事項に適合しない製品が誤って使われるのを防ぐため、識別し管理することを求めています*1。修正・分離・顧客への通知・特別採用といった処置を、記録とともに残す必要があります*1。続く10.2「不適合及び是正処置」では、不適合の原因を除去し、是正処置の有効性をレビューすることが定められています*1。是正処置(CAPA。Corrective Action and Preventive Action)とは、この原因除去と再発防止を指す実務用語です。
紙運用では、不適合の起票から原因分析、対策、有効性確認までが別々の帳票に散らばりがちです。品質管理システムでこれらを一連のワークフローとしてつなげば、対応の抜け漏れや遅延を防ぎ、類似不適合の再発傾向も追いやすくなります。
検査データ収集とSPC——現場の測定を品質の判断につなげる
製造現場では、寸法や重量などの測定値を検査のたびに記録します。これらを手書きから電子入力へ、あるいは測定器から直接取り込む形へ変えると、転記ミスが減り、集計もリアルタイムに近づきます。集めた測定データを統計的に扱う手法が、統計的工程管理(SPC)です。JIS Z 8101-2:2015はSPCを、変動の低減やプロセスに対する知識の向上、望ましい方向へプロセスを導くために統計的技法を活用する活動と定義しています*2。
その中心的な道具が管理図です。同規格は管理図を、連続したサンプルの統計量の値を特定の順序で打点し、変動を維持管理・低減するための図と定義しています*2。品質管理システムに管理図の作図やアラート機能を組み込めば、工程が異常な方向へ振れた兆候を早期に捉えられます。ただしSPCを本格的に運用するには、対象工程の選定や管理限界の設定に品質工学の知見が要る点は押さえておきたいところです。
4M変更管理とトレーサビリティ——変化点と履歴を押さえる
品質のばらつきは、しばしば人(Man)・設備(Machine)・材料(Material)・方法(Method)、いわゆる4Mの変化点から生まれます。作業者の交代や材料ロットの切り替えといった変更を記録し、後から品質データと突き合わせられるようにするのが4M変更管理です。そしてJIS Q 9001:2015は8.5.2「識別及びトレーサビリティ」で、トレーサビリティが要求される場合にアウトプットの一意の識別を管理し、文書化した情報を保持するよう定めています*1。品質管理システムは、製造ロットと検査結果、使用材料、4M変更を紐づけることで、市場で問題が起きた際の影響範囲の特定を支えます。
QMSパッケージかスクラッチか——品質管理システムの判断軸
品質管理システムをそろえる進め方は、大きくパッケージ(QMSパッケージ)の導入と、スクラッチ開発の2つに分かれます。判断の分かれ目になるのは、自社の検査業務や帳票が業界の標準的な型にどれだけ収まるか、という点です。
受入・工程・出荷の検査フローが一般的な型に近く、ISO 9001対応を素早く整えたい場合は、QMSパッケージが有力な選択肢になります。不適合管理や是正処置、監査証跡といった機能があらかじめ備わっているため、短い期間で立ち上げやすいのが利点です。半面、自社固有の検査帳票や、特殊な合否判定ロジックには合わせきれない場合があります。
一方、製品特有の検査項目が多い、既存の生産管理システムや測定器との連携が複雑、といった事情があるなら、スクラッチや大幅なカスタマイズが視野に入ります。柔軟に作り込める反面、開発と保守の工数は大きくなりがちです。パッケージを土台にしつつ不足部分だけを追加開発する折衷案も含め、自社の検査業務の標準度合いを見極めて選ぶことが実務的でしょう。
外注先選定で確認すべき点——検査帳票・既存連携・監査証跡
品質管理システムの開発を外部に委託する際は、一般的な開発力に加えて、品質保証の業務理解を備えた相手かどうかを見極めることが肝心です。確認したい点は、大きく3つに整理できます。
第一に、検査帳票の柔軟性です。製品や工程が増えたときに、現場担当者に近い運用側で検査項目や合否基準を追加・変更できるか。ここが硬直的だと、製品ラインナップの変化のたびに開発を依頼することになり、運用コストが膨らみます。第二に、既存の生産管理システムや測定器との連携です。製造ロットや工程実績を生産管理側から取り込み、測定器から検査値を自動で収集できるか。連携の実装経験を、具体的な事例で確認しておきたいところです。
第三に、監査証跡の記録です。誰が・いつ・どの記録を変更したかを残し、後から改ざんできない形で保持できるか。ISO 9001対応や顧客監査を前提とするなら、この点は必須の要件です。加えて、要件定義から本稼働・定着までを一貫して担える体制かどうかも見ておきましょう。品質管理システムは現場の入力が定着して初めて価値を発揮するため、稼働後の保守運用や改善提案まで含めて相談できる元請(プライムベンダー)を選ぶと、導入後のつまずきを抑えやすくなります。
まとめ:品質管理システムの外注で押さえる3つの判断軸
本稿では、品質管理システム(QMS)の開発を外注する際の論点を、ISO 9001(JIS Q 9001:2015)などの公的情報をもとに整理しました。要点は3つに集約できます。第一に、品質管理システムは検査データ収集・不適合管理・是正処置(CAPA)・トレーサビリティ・監査対応を束ね、生産管理や設備保全とは役割が異なる仕組みだという点です。第二に、ISO 9001の文書化要求(7.5)や内部監査(9.2)、不適合管理(8.7・10.2)、識別及びトレーサビリティ(8.5.2)への対応が、要件を左右する柱になります*1。第三に、外注先の選定では、検査帳票の柔軟性、既存の生産管理・測定器との連携、監査証跡の記録という3点が、稼働後の成否を分ける確認ポイントになります。自社の検査業務と既存資産を棚卸ししたうえで、外注範囲を見極めていきましょう。
よくある質問
品質管理システムと生産管理システムは何が違うのですか。
生産管理システムは、計画どおりの量を決めた納期で作ることを主目的とし、工程管理や部品構成表(BOM)、資材所要量計画(MRP)などを扱います。これに対して品質管理システムは、決めた品質基準を守り、外れた場合に是正することに軸足を置き、検査データや不適合、是正処置(CAPA)、トレーサビリティを束ねる仕組みです。目的が異なるため、両者は連携させつつも別々に要件を評価することが望ましいといえます。
ISO 9001認証の取得・維持に品質管理システムは役立ちますか。
役立ちます。JIS Q 9001:2015は文書化した情報の版管理や保護、内部監査、不適合及び是正処置を求めており*1、これらを手作業で漏れなく維持するのは負担が大きいためです。品質管理システムで記録を電子化し、いつ・誰が・何を変えたかの監査証跡を自動で残せれば、内部監査や顧客監査への対応がしやすくなります。ただし認証取得そのものは審査機関の判断によるため、システム導入が認証を保証するわけではありません。
QMSパッケージとスクラッチ開発のどちらを選ぶべきですか。
検査フローが業界の標準的な型に近く、ISO 9001対応を素早く整えたい場合は、機能があらかじめ備わったQMSパッケージが立ち上げやすい選択肢です。一方、製品特有の検査項目が多い、既存の生産管理システムや測定器との連携が複雑といった事情があれば、スクラッチや大幅なカスタマイズが視野に入ります。パッケージを土台に不足分だけを追加開発する折衷案もあるため、自社の検査業務がどれだけ標準的かを見極めて判断してください。
既存の測定器や生産管理システムとデータ連携はできますか。
多くの場合、実現できます。測定器からの検査値の自動取り込みや、生産管理システムからの製造ロット・工程実績の受け渡しは、品質管理システムでよく求められる連携です。ただし対象機器の出力形式や既存システムのインターフェースによって難易度は変わります。委託先を選ぶ際は、同種の連携を手がけた具体的な事例を確認し、検証環境での動作確認の範囲を契約前にすり合わせておくとよいでしょう。
開発を外部に委託する場合、まず何を確認すればよいですか。
検査帳票を運用側で追加・変更できる柔軟性、既存の生産管理システムや測定器との連携範囲、そして誰がいつ何を変えたかを残す監査証跡の3点をまず確認します。加えて、要件定義から本稼働・定着、稼働後の保守運用までを一貫して担える体制かどうかも重要です。品質管理システムは現場の入力が定着して初めて効果を発揮するため、導入後の運用まで見据えて相談できる相手を選ぶことをおすすめします。
著者:テレリモ総研編集部 鈴木 亮佑
ご不明な点はお問い合わせフォームからもご連絡いただけます。
- *1 出典:日本産業標準調査会「JIS Q 9001:2015 品質マネジメントシステム-要求事項」(https://kikakurui.com/q/Q9001-2015-01.html)
- *2 出典:日本産業標準調査会「JIS Z 8101-2:2015 統計-用語及び記号-第2部:統計の応用」(https://kikakurui.com/z8/Z8101-2-2015-01.html)
- *3 出典:日本品質保証機構(JQA)「ISO 9001(品質マネジメントシステム)」(https://www.jqa.jp/service_list/management/service/iso9001/)
- *4 出典:独立行政法人情報処理推進機構(IPA)「DX白書2023」(https://www.ipa.go.jp/publish/wp-dx/index.html)