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2026.07.17 らしくコラム

スマート農業システム|営農データとセンサーで生産を最適化

LASSIC IT事業部|元請(プライムベンダー)としてシステム開発・保守運用を受託

図1

この記事のポイント

  • スマート農業システムは、営農管理・環境センサー・農業機械の自動化・データ連携という農業固有の領域を核に、栽培と経営のデータを活用する仕組みです。工場設備を対象とする汎用の生産管理・IoTとは狙いが異なります。
  • 農林水産省はスマート農業を「ロボット技術やICTを活用して超省力・高品質生産を実現する新たな農業」と位置づけ、営農管理システム・環境センサー・自動走行農機・データ連携基盤WAGRIを主要な技術として挙げています*2
  • 2024年10月にはスマート農業技術活用促進法が施行され、認定を受けた事業者への税制特例や金融支援などの措置が設けられました*1

担い手減少と経験依存——農業の生産現場が抱える課題

図2

農業法人やJA、農業機械・資材メーカーにとって、生産現場の維持は経営を左右するテーマです。作物の生育は天候や土壌の状態に大きく左右され、いつ何をどう管理するかの判断は、これまで熟練者の勘と経験に支えられてきました。ところが、その担い手が減り、高齢化も進んでいるのが現状でしょう。限られた人数で従来と同じ生産水準を保つには、判断の根拠を人の記憶だけに委ねない工夫が要ります。

図
図:勘と経験に依存した農業から、営農・環境データを活用するスマート農業への流れ

もう一つの課題が、経営の見通しにくさです。作付けの記録や作業の履歴、収穫量やコストが紙や個人の頭の中にとどまると、来年の計画に活かしにくくなります。天候不順や病害虫による被害も、兆候を早く掴めれば打ち手が変わるはずですが、広い圃場(ほじょう)を人の目だけで見回るには限界があるでしょう。

こうした背景から、農林水産省はロボット技術やICTを活用する新たな農業を後押ししています*2。センサーやICT機器の低コスト化も進み、以前よりデータを取得しやすくなりました。栽培と経営のデータを土台に判断する「スマート農業」への関心は、農業法人や関連メーカーの間で高まりつつあるのが近年の傾向です。次章で、その中身を整理します。

スマート農業システムとは——営農と栽培のデータを活用する仕組み

スマート農業について、農林水産省は「ロボット技術やICTを活用して超省力・高品質生産を実現する新たな農業」と位置づけています*2。スマート農業システムは、この考え方をシステムとして形にしたもので、圃場や施設で生まれるデータを集めて可視化し、栽培管理や経営の判断につなげる仕組みを指します。

農林水産省が主要な技術として挙げているのは、経営を見える化する営農管理システム、水田センサなどのモニタリング機器、自動走行農機やドローン、そして農業データ連携基盤WAGRIをはじめとするデータ活用の枠組みです*2。これらは単独でも役立ちますが、データを相互につなぐことで、栽培から出荷・経営までを一貫して捉えやすくなります。

制度面の動きも押さえておきましょう。2024年6月14日に成立し10月1日に施行されたスマート農業技術活用促進法は、生産方式を革新する「生産方式革新実施計画」と、技術の開発・普及を担う「開発供給実施計画」という2つの認定制度を設けています*1。認定を受けた農業者や事業者には、スマート農業技術活用投資促進税制や登録免許税の軽減、金融支援などの措置が用意されました*1。技術の導入と開発の双方を制度が後押しする段階に入ったといえます。

導入の効果は、実証の数値からもうかがえます。農林水産省の白書によると、スマートフォンで遠隔から水田の水位を調整する自動水管理システムでは作業時間が80%短縮され、直進アシスト機能を備えた田植機では作業時間が18%削減されたと報告されています*3。ドローンによる農薬などの散布面積も拡大が続き、令和5(2023)年度には109万7千haに達しました*3。省力化の手応えが、データとして示されつつあります。

汎用の生産管理・IoTとの違い——「農業の営農データ活用」への特化

スマート農業システムは、工場向けの生産管理システムや汎用のIoTプラットフォームとしばしば混同されます。いずれもセンサーやデータ活用という言葉こそ共有するものの、対象とする現場と扱うデータは異なるものです。ここを取り違えると、農業の実務に合わないシステムを選んでしまいかねません。

汎用の生産管理システム(MESなどを含む)は、工場の製造ラインで部品や工程、在庫、進捗を管理することに主眼があります。汎用のIoTプラットフォームも、設備の稼働データを集めて監視や制御を行う土台として設計されており、対象は主に機械や装置です。いずれも扱うのは、人が設計した工程どおりに動く「工業的なプロセス」のデータになります。

一方のスマート農業システムが向き合うのは、生き物である作物と、天候や土壌という自然条件です。管理するデータは、圃場ごとの生育状況や作業記録、気温・湿度・土壌水分といった環境の測定値、農機やドローンの作業実績、そして収穫量や出荷・経営の情報です。同じ「センサーでデータを集める」でも、工場の設備監視と、栽培環境のモニタリングとでは、測る対象も判断のロジックも違ってきます。

まとめると、スマート農業システムの独自性は「農業の営農・栽培のデータ活用」に特化している点にあります。汎用の生産管理は工場の工程管理、汎用IoTは設備の稼働監視、スマート農業システムは営農と栽培のデータ活用——この役割の違いを踏まえて設計することが、農業現場に合わないシステムへの過剰投資を避ける鍵になるでしょう。次章では、その中身を4つの機能要素に分けて見ていきます。

比較軸 スマート農業システム 汎用の生産管理システム 汎用IoTプラットフォーム
主な対象 圃場・施設の作物と栽培環境 工場の製造ライン・工程 機械・装置などの設備
扱うデータ 生育・作業記録・気象・土壌・出荷 部品・工程・在庫・進捗 設備の稼働・状態データ
判断の前提 天候・土壌など自然条件が変動 設計された工程どおりに進む 機械仕様に沿って稼働する
主な狙い 省力化と栽培・経営の高度化*2 製造の効率化・原価管理 設備の監視・稼働の可視化

スマート農業システムの4つの機能要素——営農管理・環境センサー・農機自動化・データ連携

図3

スマート農業システムを構成する機能は、大きく4つの要素に分けて捉えられます。農林水産省が挙げる技術領域とも重なる区分です*2。要件を整理する観点として、順に見ていきましょう。

1. 営農管理——生育・作業記録・圃場マップをデータ化する

最初の要素は、栽培の記録を電子化して見える化する営農管理です。農林水産省は、位置情報と連動して作付情報や営農計画を電子化できる営農管理システムを、スマート農業の技術の一つに挙げています*3。どの圃場にいつ何を植え、どんな作業を行い、どれだけ収穫できたかを地図と紐づけて記録すると、担当者が替わっても栽培の履歴を引き継ぎやすくなります。勘と経験に頼っていた判断を、後から見返せる形に残す土台になる要素です。

2. 環境センサー——温湿度・土壌・気象を計測しハウス制御につなぐ

次の要素は、栽培環境を計測する環境センサーです。ハウス内の温度や湿度、土壌の水分や地温、日射や気象の状況を測ることで、作物が置かれた状態をデータで把握できます。施設園芸では、この計測値をもとに換気や潅水(かんすい)などの機器を制御し、環境を一定に保つ使い方も広がっています。水田では、水位を計測して遠隔から給排水を調整する自動水管理システムがあり、白書では作業時間の80%短縮が報告されました*3。どの環境要素を、どの精度と頻度で測るかは、対象作物と栽培方式から逆算して決める設計事項になります。

3. 農機・ドローンの自動化——作業と機械のデータを取り込む

3つ目の要素は、農業機械やドローンの自動化と、そこから得られる作業データの活用です。圃場内を自動で走行するロボットトラクタや、直進をアシストする田植機、農薬や肥料を散布するドローンが実用化されています*3。これらの機械は作業を省力化するだけでなく、どこをどれだけ作業したかという実績データを生み出します。そのデータを営農管理と結びつけると、作業の記録が自動的に蓄積され、記入の手間を減らせるでしょう。機械の稼働と栽培の記録を一体で捉える視点が要になります。

4. データ連携——WAGRIなどで出荷・経営分析につなげる

4つ目の要素は、集めたデータをつなぎ、出荷や経営の分析に活かすデータ連携です。農業データ連携基盤WAGRIは、気象・農地・生育予測・市況・農薬肥料・病虫害・農機・農業経営・地図などのデータやプログラムを、連携・共有・提供する公的なクラウド基盤で、2019年度から農研機構の運営で本格運用されています*4*5。ICTベンダーや農機メーカーが参加し、これらのデータを組み合わせて営農向けサービスを開発できる環境が整えられています*5。自社システムを外部データとつなぐことで、生育予測や市況を踏まえた出荷計画、収支の分析まで視野を広げやすくなります。個々の機器を孤立させず、経営の判断まで一本の流れにする発想が欠かせません。

スマート農業システムの開発を外注する際に確認したい点

スマート農業システムの構築には、農業の栽培知識、センサーやネットワークの技術、データの収集・分析、既存の農機や販売システムとの連携という複数領域の知見が求められます。これらを横断できる体制が自社にそろっていない場合、開発を専門パートナーに委託する選択肢が現実的になるでしょう。委託にあたっては、いくつかの点を事前にすり合わせておくと、認識のずれを抑えられます。

第一に、対象とする作物・圃場と、解きたい課題の整理です。施設園芸なのか露地なのか水田なのか、省力化を狙うのか品質の安定を狙うのかによって、必要なセンサーや機能は変わってきます。ここが曖昧なままだと、機能を盛り込みすぎたシステムになりがちです。現場の栽培知見と技術側の設計をつなぐ工程を、最初に置くことが土台になります。

第二に、データ連携の範囲です。営農管理・環境センサー・農機・出荷や経営のシステムのうち、どこまでを一つにつなぐのかを明確にします。WAGRIのような外部基盤と連携させるのか、既存の販売管理システムとデータをやり取りするのかによって、開発の範囲が大きく変わるためです*4*5。将来の拡張を見据え、データの持ち方をどう設計するかも確認しておきたい点です。

第三に、屋外・施設での運用に耐える作り方です。圃場やハウスは通信環境が不安定なこともあり、機器の防塵・防水や電源の確保、通信が途切れた際のデータの扱いなど、現場ならではの条件があります。実証の段階でどこまで検証するのか、保守や機器交換をどう続けるのかを、契約前に取り決めておくと運用開始後の齟齬を減らせるでしょう。

対象作物の種類やセンサーの点数、連携先システムの有無によって、必要な工数は変わってきます。まずは現状の栽培と業務を棚卸ししたうえで、内製と外注の切り分けを検討することが実務的です。重要度の高い圃場から小さく始め、効果を確かめながら対象を広げる進め方が、投資判断の面でも無理がないと考えられます。制度面では、スマート農業技術活用促進法の認定に基づく税制や金融の支援措置も、投資計画を検討する材料になります*1

まとめ:スマート農業システムで押さえる3つの視点

本稿では、スマート農業システムの考え方と機能、外注時の確認点を、農林水産省の公的資料をもとに整理しました。要点は3つに集約できます。第一に、スマート農業システムは営農管理・環境センサー・農機の自動化・データ連携を核に、栽培と経営のデータを活用する仕組みであり、農林水産省が掲げる超省力・高品質生産の実現を支える基盤にあたります*2。第二に、工場向けの汎用の生産管理システムや汎用IoTプラットフォームとは対象もデータも異なり、「農業の営農・栽培のデータ活用」に特化する点が独自性になります。第三に、営農管理・環境センサー・農機自動化・データ連携という4つの機能要素を、対象作物と課題から逆算して設計することが構築の要です。担い手減少と経験依存という課題に、データで向き合う手立てとして検討する価値があるでしょう。2024年10月に施行された促進法の支援措置も、導入を後押しする追い風になります*1

LASSICに相談するメリット

LASSIC IT事業部は、システム開発・保守運用を元請(プライムベンダー)として受託しています。スマート農業システムの構築では、対象作物と課題の整理から、環境センサーによる状態把握、営農管理のデータ化、農機・ドローンの作業データの取り込み、WAGRIなど外部基盤とのデータ連携までを一貫して設計・開発する体制を整えています。省力化と栽培・経営の高度化を両立したい農業法人・メーカーの皆様は、現状の栽培と業務の棚卸しからご相談いただけます。

よくある質問

スマート農業システムは、工場向けの生産管理システムやIoTプラットフォームで代用できますか。

対象とするデータが異なるため、そのままの代用は難しい場面が多くなります。汎用の生産管理は工場の工程や在庫、汎用IoTは設備の稼働を対象とするのに対し、スマート農業システムが扱うのは生育・気象・土壌・作業といった栽培環境のデータです。天候や土壌など変動する自然条件を前提にする点で、設計の考え方が違ってきます。

スマート農業には、どのような技術が含まれますか。

農林水産省は、経営を見える化する営農管理システム、水田センサなどのモニタリング機器、自動走行農機やドローン、農業データ連携基盤WAGRIによるデータ活用を主要な技術として挙げています*2。これらを組み合わせ、栽培から出荷・経営までのデータを活用する取組がスマート農業です。

WAGRI(農業データ連携基盤)とは何ですか。

WAGRIは、気象・農地・生育予測・市況・農薬肥料・病虫害・農機・農業経営・地図などのデータやプログラムを連携・共有・提供する公的なクラウド基盤で、2019年度から農研機構の運営で本格運用されています*4*5。ICTベンダーや農機メーカーが参加し、これらを組み合わせて営農向けサービスを開発できる環境が整えられています*5

スマート農業技術活用促進法では、どのような支援が受けられますか。

2024年10月に施行された同法は、生産方式革新実施計画と開発供給実施計画の2つの認定制度を設けています*1。認定を受けた農業者や事業者は、スマート農業技術活用投資促進税制や登録免許税の軽減、金融支援などの措置を受けられます*1。詳細は農林水産省の公表資料で確認することをおすすめします。

スマート農業システムの開発を外注する場合、何を確認すればよいですか。

対象作物・圃場と解きたい課題の整理、営農管理・センサー・農機・出荷や経営システム間のデータ連携の範囲、屋外や施設での運用に耐える作り方の三点を、契約前にすり合わせておくと認識のずれを抑えられます。現場の栽培知見と技術側の設計をつなぐ工程を最初に置くことが役立ちます。

著者:テレリモ総研編集部 鈴木 亮佑


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ご不明な点はお問い合わせフォームからもご連絡いただけます。

  1. *1 出典:農林水産省「スマート農業技術活用促進法について」(https://www.maff.go.jp/j/kanbo/smart/houritsu.html )
  2. *2 出典:農林水産省「スマート農業」(https://www.maff.go.jp/j/kanbo/smart/ )
  3. *3 出典:農林水産省「令和6年度 食料・農業・農村白書 特集3 スマート農業技術の活用と今後の展望」(https://www.maff.go.jp/j/wpaper/w_maff/r6/r6_h/trend/part1/chap0/c0_1_03.html )
  4. *4 出典:農研機構「WAGRI(農業データ連携基盤)」(https://wagri.naro.go.jp/ )
  5. *5 出典:カクイチ「WAGRIとは何か。WAGRIでできることについて。」(https://www.kaku-ichi.co.jp/media/tips/column/about-wagri


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