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同期処理と非同期処理の違い|使い分け
LASSIC IT事業部|元請(プライムベンダー)としてシステム開発・検証を受託
システムの処理方式を検討する場面で、「同期処理」と「非同期処理」という言葉が並んで登場することは少なくありません。どちらも処理をどう進めるかという設計上の選択肢ですが、呼び出した処理の結果を待つのか、待たずに次へ進むのかという根本的な仕組みが異なります。この違いを曖昧にしたまま実装を進めると、レスポンスが重く感じられるシステムになったり、逆に非同期化した処理の失敗に気づきにくくなったりする恐れがあるでしょう。
本記事では、同期処理と非同期処理という二つの方式の仕組みの違いを整理したうえで、発注担当者・PM・設計者が押さえておきたい使い分けの判断軸を解説します。特定のメッセージキュー製品の導入手順やコーディングの実装方法そのものには踏み込まない方針です。あくまで「仕組みの違い」と「どちらを選ぶべきかの判断」に焦点を当てます。
この記事のポイント
- 同期処理は呼び出し側が結果を受け取るまで待機する方式、非同期処理は結果を待たずに次の処理へ進み、後から結果を受け取る方式という点で仕組みが異なります。
- 非同期処理はレスポンス性やスループットを高めやすい一方、整合性の確認やエラー処理・デバッグの複雑さが増す傾向にあり、非同期化すれば常に速くなるとは限りません。
- 決済の確定など即時の結果確認が必要な処理は同期、通知やメール送信など結果を即座に必要としない処理は非同期というように、処理の性質に応じた使い分けが求められます。
目次
同期処理とは
同期処理とは、ある処理を呼び出した側が、その処理の結果が返ってくるまで次の処理に進まず待機する方式です。プログラムの中で関数やAPIを呼び出す場面を思い浮かべるとわかりやすいでしょう。呼び出し元は結果が戻るまで文字どおり「待つ」状態になり、結果を受け取ってはじめて次の処理へと進みます。
仕組み:結果を受け取るまで処理が止まる
同期処理では、呼び出し元と呼び出し先の処理が一つの流れとして直列に実行されます。呼び出し先の処理が完了しない限り、呼び出し元のプログラムはそこで待機し続け、他の処理を並行して進めることはありません。この「待つ」という前提があるからこそ、処理の順序や結果の受け渡しをシンプルに管理でき、プログラムの流れを直感的に追いやすいという特徴があるといえるでしょう。
代表的な例
利用者がボタンを押してから応答が返るまで画面が動かない処理や、データベースへ問い合わせを行い結果が返るまで次の画面表示に進まない処理などは、同期処理の典型例です。処理の結果がすぐに必要で、かつ結果を確認してから次に進む必要がある場面で多く採用されています。
非同期処理とは
非同期処理とは、ある処理を呼び出した側が、その処理の完了を待たずに次の処理へ進む方式です。呼び出された処理は裏側(バックグラウンド)で進行し、完了した時点で結果が通知される、あるいは後から結果を取得しに行くという流れになります。呼び出し元の処理が「止まらない」という点が、同期処理との大きな違いです。
仕組み:待たずに進み、後で結果を受け取る
非同期処理では、呼び出し元の処理と呼び出し先の処理が並行して進みます。呼び出し先の処理が完了したかどうかにかかわらず、呼び出し元は次の処理を継続できるため、待機による遅延を発生させずに済む点が特徴です。ただし、結果をいつ・どのように受け取るかをあらかじめ設計しておく必要があり、通知の仕組みやエラー時の扱いを整えておかないと、処理が完了したのかどうか把握しづらくなる場面も出てきます。
代表的な例
会員登録後に送信される確認メール、大きなファイルのアップロード完了通知、まとめて実行される集計処理などは、非同期処理が採用されやすい例です。利用者やシステムが結果をその場で必要としない処理との相性がよい傾向にあります。
両者の違い:対比表とタイムライン図
同期処理と非同期処理は、どちらも「処理を実行する」という点では共通していますが、結果を待つかどうか、処理の流れがどう進むかという観点で違いが表れます。次の表に主要な観点を整理します。
| 観点 | 同期処理 | 非同期処理 |
|---|---|---|
| 処理の流れ | 結果が返るまで呼び出し元が待機する | 結果を待たず次の処理へ進む |
| レスポンス性 | 待機時間が体感の遅さにつながりやすい | 待たされる感覚を減らしやすい |
| スループット | 処理中は他の要求を受けにくい | 多くの要求を並行して受け付けやすい |
| 整合性の確認 | その場で成否を確認しやすい | 完了タイミングがずれるため別途設計が必要 |
| エラー処理 | 呼び出し元でその場に返しやすい | 通知・再試行の仕組みを別途用意する |
| 実装・デバッグ | 流れが直列で追いやすい | 完了順が前後し追跡の難度が上がりやすい |
| 典型的な用途 | 決済の確定、在庫の引き当てなど | 通知・メール送信、集計・バッチ処理など |
対比表からわかるとおり、同期処理と非同期処理はどちらが優れているというものではなく、処理の流れと結果の受け取り方に関する設計思想の違いです。次の図で、それぞれの処理の流れのイメージを確認しておきましょう。
メリットとデメリット
基盤設計を検討するうえでは、レスポンス性・スループット・整合性・実装やデバッグの複雑さという四つの観点から両者の特性を比較しておくと、判断がしやすくなります。
レスポンス性
非同期処理は、呼び出し元が結果を待たずに次の処理へ進めるため、利用者から見た応答が速く感じられやすい方式です。ただし、非同期化したからといって処理そのものの実行時間が短くなるわけではありません。「待たされている感覚」を減らせる点が主な効果であり、非同期にすれば常に処理が速くなるとは言い切れない点には注意が必要でしょう。
スループット
非同期処理は、一つの処理が完了するのを待たずに次々と要求を受け付けられるため、単位時間あたりに処理できる件数(スループット)を高めやすい傾向にあります。同期処理は、処理中は他の要求の受け付けが制限されやすく、同時に多くの要求をさばく必要がある場面ではボトルネックになりやすいでしょう。
整合性
同期処理は、呼び出し元が結果を確認してから次に進むため、処理の成否をその場で把握でき、整合性を保ちやすい方式です。非同期処理は、結果が返るタイミングが呼び出し元の処理とずれるため、途中の状態でデータの不整合が生じないよう、別途の整合性確保の設計が求められます。決済や在庫の確定処理のように、結果を確認してから次の手続きへ進みたい場面では、同期処理の整合性の高さが生きてくるでしょう。
実装・デバッグの複雑さ
同期処理は処理の流れが直列で追いやすく、動作確認やデバッグの負担が比較的軽い方式です。非同期処理は、処理の完了タイミングが呼び出し元と切り離されるため、いつ・どの順序で結果が返るかを意識した設計が必要になり、障害発生時にどの処理でエラーが起きたのかを追跡する難易度も上がりやすい傾向にあります。非同期処理を採用する際は、この複雑さを踏まえた運用体制もあわせて検討することが望ましいでしょう。
非同期の実現手段の概観
非同期処理を実現する手段にはいくつかの種類があり、扱う処理の性質によって適した手段が異なります。ここで取り上げるのは代表的な手段の概観です。特定製品の選定・導入手順そのものは扱いません。
コールバック
処理の完了時に、あらかじめ指定しておいた別の処理(コールバック関数)を呼び出す仕組みです。比較的シンプルに非同期処理を組み込める一方、呼び出しが連なると処理の流れを追いにくくなる場合があり、複雑な非同期処理を多数扱うシステムでは可読性の面で工夫が必要になることがあります。
メッセージキュー
処理の依頼内容を「メッセージ」としてキュー(待ち行列)に登録し、別の処理(ワーカー)がキューから順に取り出して処理する仕組みです。依頼する側と処理する側の処理速度の差を吸収しやすく、一時的に依頼が集中しても取りこぼしを抑えやすい点が特徴といえます。処理の実行順序の保証や再試行の仕組みなど、設計時に検討すべき点も多い手段です。
ジョブ・バッチ処理
個々の依頼を都度処理するのではなく、一定量たまった処理や決まった時刻にまとめて実行する仕組みです。夜間バッチのように、即時性を求めず、まとめて処理したほうが効率のよい業務との相性がよい傾向にあります。処理件数が多い場合でも、システム全体への負荷を時間帯によって分散できる点が利点です。
いずれの手段も、非同期処理という大きな枠組みの中の実現方法の一つであり、どの手段を選ぶかは処理の即時性・再試行の要否・処理量といった要件を踏まえて検討する必要があります。
使い分けの判断軸(ユースケース別)
設計にあたっては、次のような判断軸を確認しておくと、同期処理と非同期処理のどちらが適しているかを整理しやすくなります。
- 結果の即時性――処理の結果をその場で確認し、次の判断に反映する必要があるか
- 処理の重さ・時間――処理に時間がかかり、呼び出し元を待たせたくない性質か
- 整合性の要件――処理の成否をその場で保証する必要がある業務か
- 失敗時の扱い――処理が失敗した際に、即座に利用者へ伝える必要があるか、後から再試行できればよいか
- 運用体制――非同期処理の完了状況やエラーを監視・追跡できる体制があるか
ユースケース別の傾向
これらの判断軸を踏まえると、処理の性質によって次のような傾向が見えてきます。
- 決済の確定処理――結果を確認してから次の手続きに進む必要があるため、同期処理が向く場面が多い
- 在庫の引き当てなど整合性が重要な処理――即時の確認が必要であれば同期処理が適しやすい
- 会員登録後の確認メールや通知の送信――利用者がその場で結果を必要としないため、非同期処理が向く
- 大量データの集計・レポート生成――処理時間がかかるため非同期やバッチ処理が扱いやすい
- 画像・動画のアップロード後の変換処理――受付は同期で行い、変換自体は非同期に回す構成が一般的
あくまで一般的な傾向であり、実際の判断は業務要件や利用者体験、既存システムの構成を踏まえて個別に検討する必要があります。
設計・発注時の確認点
非同期処理を含むシステムの設計や開発を発注する際は、次のような点をあらかじめ確認しておくと、後の手戻りを抑えやすくなります。
- どの処理を同期・非同期のどちらで実装するか、業務要件に沿って整理されているか
- 非同期処理が失敗した場合の再試行・通知の仕組みが設計に含まれているか
- 処理の完了状況を利用者や運用担当者が確認できる手段が用意されているか
- 非同期処理の遅延や滞留を監視する仕組みが運用設計に含まれているか
- 非同期化によって増える実装・テストの工数が、見積もりに反映されているか
非同期処理は導入すれば快適になるとは限らず、設計と運用の両面で相応の検討を要する仕組みです。発注段階でこうした確認点を共有しておくことが、期待とのズレを防ぐことにつながるでしょう。
まとめ:待つか待たないかを軸に設計する
本記事では、同期処理と非同期処理という二つの方式の違いについて、レスポンス性・スループット・整合性・実装やデバッグの複雑さという観点から整理しました。同期処理は結果を待つことで処理の流れを追いやすく整合性を確認しやすい方式、非同期処理は待たずに次へ進めることでレスポンス性やスループットを高めやすい反面、設計と運用の複雑さが増す方式です。
設計にあたっては、結果の即時性・処理の重さ・整合性の要件・失敗時の扱い・運用体制といった判断軸を確認し、処理の性質に応じて同期・非同期を使い分ける、あるいは同じシステムの中で組み合わせることが、無理のないシステム設計につながります。
よくある質問
非同期にすれば速くなるのですか。
非同期処理は呼び出し元の待ち時間の体感を減らせますが、処理そのものの実行時間が短縮されるとは限りません。結果を待たずに次へ進めるという性質によって応答が速く感じられる場合はありますが、非同期化すれば常に速くなるとは言い切れない点には注意が必要です。
どんな処理を非同期にすべきですか。
利用者やシステムが結果をその場で必要としない処理、たとえば通知やメール送信、集計処理などが非同期に向いています。一方、決済の確定や在庫の引き当てのように、結果を確認してから次の手続きに進む必要がある処理は、同期処理のまま扱うほうが整合性を保ちやすい傾向にあります。
非同期処理はどうやって実現しますか。
コールバック、メッセージキュー、ジョブ・バッチ処理などいくつかの手段があり、処理の即時性や再試行の要否、処理量に応じて使い分けられます。特定の製品や実装手法の選定は、扱うシステムの要件に沿って個別に検討する必要があるでしょう。
非同期処理はデバッグが難しいと聞きましたが本当ですか。
処理の完了タイミングが呼び出し元と切り離されるため、どの処理でエラーが起きたのかを追跡する難易度が上がりやすいのは事実です。ログの整備や処理状況を追跡する仕組みをあらかじめ設計に組み込んでおくことで、この負担はある程度軽減できます。
同期処理と非同期処理は併用できますか。
可能です。実務では、受付は同期で即座に確認しつつ、時間のかかる処理部分だけを非同期に回すといった組み合わせがよく見られます。処理全体を一律にどちらかへ寄せるのではなく、工程ごとに適した方式を選ぶ設計が現実的といえるでしょう。
非同期処理を導入する際、発注担当者は何を確認すればよいですか。
失敗時の再試行や通知の仕組み、処理の完了状況を確認できる手段、監視体制の有無などを、設計段階から開発会社とすり合わせておくことをおすすめします。非同期化に伴う実装・テスト工数が見積もりに反映されているかも確認しておきたいポイントです。
著者:テレリモ総研編集部 鈴木 亮佑
ご不明な点はお問い合わせフォームからもご連絡いただけます。
- *1 出典:IPA(独立行政法人情報処理推進機構)「情報処理技術者試験」シラバスにおける同期・非同期処理関連の情報(https://www.ipa.go.jp/shiken/)