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2026.10.27 採用支援コラム

業務委託の個人と法人の違い|発注する企業の手続きを6項目で比較

監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)

窓際で2通の契約書を両手に持って見比べる担当者

この記事の結論

  • 源泉徴収は個人への一部の報酬だけで、法人への開発の報酬からは差し引きませんが、法人にも支払調書が要る場合があります。
  • フリーランス法は従業員のいない個人だけでなく、役員が代表者1人で従業員のいない1人会社にも及びます。
  • インボイスの登録は個人か法人かで決まらないため、どちらの相手でも契約前に登録番号と作業する人の名前を確かめます。

※ 本記事は2026年10月時点の公式情報(省庁・公的機関、および製品やサービスを提供する事業者が公開している資料)に基づきます。

業務委託で開発を頼む候補の1人は個人事業主、もう1人は自分の会社で仕事を受けている——。「相手の形でこちらの手続きも変わるのか」と経理から聞かれ、答えに迷う担当者は少なくありません。

本記事は、業務委託でエンジニアを受け入れる開発マネージャーや契約担当の方に向けて、相手が個人か法人かで発注側の扱いがどう変わるかを6つの項目で比べ、どちらがよいかは場面ごとに示します。

業務委託で個人と法人の違い

エンジニアに業務委託するときの相手は、個人事業主として働くフリーランスと、会社として仕事を受ける法人に分かれます。法人には本人1人だけの会社(1人会社)も含まれます。同じ作業を頼んでも、相手が個人か法人かで発注する企業の手続きは変わります。

違いが出る6つの項目を、国税庁の資料とフリーランス・事業者間取引適正化等法(以下、フリーランス法)、公正取引委員会のQ&Aをもとに表にまとめました。

業務委託の相手が個人か法人かで発注側の扱いが変わる6項目(国税庁・公正取引委員会の資料をもとに本記事で整理)
項目 個人(フリーランス) 法人(1人会社を含む)
源泉徴収 所得税法204条1項の報酬(原稿料・講演料・デザイン料・技術士などの業務の報酬など)に当たれば、支払のときに差し引く 内国法人で対象に挙がるのは馬主に払う競馬の賞金だけ。開発の報酬からは差し引かない*1
支払調書 204条1項の報酬で提出範囲に当たれば提出する。本人のマイナンバーを書く 源泉徴収をしない報酬でも、提出範囲に当たれば提出する。法人番号を書く*2
フリーランス法 従業員を使用していなければ対象 代表者1人のほかに役員がなく、従業員も使用していなければ対象*3
インボイス 登録していれば登録番号は「T+13桁の数字」。登録していない免税事業者のこともある 登録番号は「T+法人番号」。設立から2期は免税事業者のこともある*5
契約の名義 本人の氏名で結ぶ。契約の相手と作業する人が同じ 会社の名前と代表者で結ぶ。作業する人を契約書か発注書に書いておく
労働者性の見え方 契約の名前ではなく働き方の実態で判断される。労働者に当たれば労働基準法などが適用される 契約の相手は会社でも、作業する本人への指示の出し方は個人と同じように見直す

源泉徴収と支払調書は相手の形で答えが分かれます。一方、フリーランス法は1人会社にも及ぶため、「法人だから対象外」とは言えません。

源泉徴収と支払調書の違い

源泉徴収は、報酬を払う側が所得税を差し引いて国に納める仕組みです。国税庁のタックスアンサーNo.2792は、対象の範囲は受け取る人が居住者(個人)か内国法人かで異なるとしています。個人では原稿料や講演料、弁護士などの資格者の報酬など8つの区分が挙がり、内国法人では馬主である法人に払う競馬の賞金だけです。*1

経理担当が請求書の束を2穴パンチで綴じる手元

開発を頼むときは、次のように整理できます。

  • 個人:開発の報酬そのものより、一緒に頼む講師・執筆・デザインなどが対象に当たるかを請求書の項目ごとに確かめる
  • 法人:開発の報酬から差し引くことはない。請求書の発行元が本当に会社かを確かめる
  • 両方:謝礼や車代などの名目でも、実態が報酬なら源泉徴収の対象になる*1

支払調書は、払った報酬を税務署に知らせる書類です。タックスアンサーNo.7431によると、調書には受け取る人のマイナンバーか法人番号を書き、原稿料や講演料などは同じ相手への年間の支払が5万円を超えると提出の範囲に入ります。法人への報酬で源泉徴収の対象にならないものでも、提出の範囲に当たれば支払調書は必要です。*2

対象の細かな判定や給与と外注費の区分は、外部人材活用の経理処理|外注費の判断と源泉徴収の基本で条文ごとに整理しています。

フリーランス法が及ぶ相手

2024年11月1日に施行されたフリーランス法は、守る相手を「特定受託事業者」と呼び、第2条で次の2つを挙げています。*4

  • 個人であって、従業員を使用しないもの
  • 法人であって、一の代表者以外に他の役員がなく、かつ、従業員を使用しないもの

本人1人の会社と契約しても、対象になるということです。公正取引委員会のQ&Aは、「従業員を使用」とは週の所定労働時間が20時間以上で、継続して31日以上雇用される見込みの労働者を雇うことだとしています。同居の親族が役員の会社は「他の役員」がいることになり、対象から外れます。*3

業務委託の相手がフリーランス法の対象かを確かめる順番の図。相手が個人なら、従業員を使用しているかを見て、使用していなければ対象、使用していれば対象外。相手が法人なら、代表者1人のほかに役員がいるかを見て、いれば対象外。いなければ従業員を使用しているかを見て、使用していなければ対象(1人会社)、使用していれば対象外。従業員を使用とは週20時間以上かつ31日以上の雇用見込み。フリーランス法第2条と公正取引委員会のQ&Aをもとに作成。

対象の相手に業務委託をしたら、発注側は直ちに給付の内容・報酬の額・支払期日などを書面かメールなどで示します。従業員を使う企業が発注するなら、支払期日は給付を受け取った日から60日以内のできる限り短い期間で決めます。*4 相手が個人でも1人会社でも、この手続きは同じです。

従業員の有無は業務委託をする時点で確かめ、メールなど記録が残る方法で確認することが望ましいとQ&Aはしています。*3

インボイスと契約名義の確かめ方

インボイス制度では、登録した事業者の請求書がないと原則として仕入税額控除(納める消費税から仕入れで払った消費税を差し引くこと)を受けられません。登録の有無は、個人か法人かでは決まりません。

封を切った封筒から請求書を引き出す手元

  • 登録番号の形:法人番号を持つ課税事業者は「T+法人番号」、それ以外は「T+13桁の数字」になる*6
  • 法人でも免税のことがある:設立1期目と2期目は基準期間がないため、事業年度の開始の日の資本金が1,000万円未満なら原則として納税義務が免除される*5
  • 確かめる時期:契約の前に登録番号を聞き、請求書に同じ番号が載っているかを毎回見る

契約の名義も変わります。個人なら本人の氏名で結ぶので、契約の相手と作業する人は同じです。法人なら会社の名前と代表者で結ぶため、作業する人は契約書から分からないことがあります。1人会社でも、作業する人の名前を発注書に書き、担当を替えるときの扱いを決めておきます。

労働者性について、Q&Aは、労働関係の法令の適用は契約の形式や名称ではなく働き方の実態で判断するとし、労働者に当たればフリーランス法ではなく労働基準法などが適用されるとしています。*3 法人と契約していても、作業する本人に勤務時間を細かく指示するような使い方は、個人と同じように見直します。

場面ごとの選び方と確認点

どちらと契約するのがよいかは、頼む作業と社内の事情で変わります。よくある場面を表にしました。

場面ごとに見た個人と法人の選び方(本記事の整理)
場面 向いている相手 理由と注意
特定の1人に長く入ってほしい 個人 作業する人と契約の相手が一致し、交代の心配が少ない。従業員の有無の確認と取引条件の明示を契約の手順に入れる
社内の取引先登録が会社に限られている 法人 登録の条件を満たしやすい。1人会社ならフリーランス法の対象になるので、手続きは個人と同じく用意する
講師や執筆も一緒に頼みたい どちらも可 個人なら源泉徴収の対象になりうる。法人なら源泉徴収はしないが、支払調書が要る場合がある
マイナンバーを預かる手間を減らしたい 法人 支払調書に書くのは法人番号。ただし作業する本人の名前と連絡先は別に押さえる

相談の前に次の点を書き出しておくと、契約の形も候補の探し方も決めやすくなります。

  • 範囲:開発だけを頼むか、講師や執筆など源泉徴収の対象になりうる作業も入るか
  • 期間:最初の契約期間と、更新するときの手順
  • 体制:作業する人の名前、相手の役員と従業員の人数、担当を替えるときの扱い
  • 費用の決まり方:月額か成果物ごとか、請求書の発行元と登録番号、支払期日
  • 引き継ぎ:契約が終わるときに受け取る資料と、支払調書に使う番号の受け取り方

人材サービスを通して契約するときは、契約と請求書の相手がそのサービスの会社になるかも確かめます。個人のエンジニアと直接契約する前に本人と話しておくことは、副業エンジニアと契約する前に本人と確かめる5つのことでも整理しています。税や労務の個別の判断は、税理士や社会保険労務士などの専門家に確かめてください。

まとめ:業務委託で個人と法人の違い

業務委託で相手が個人か法人かによって変わる点は3つです。第一に、源泉徴収は個人への一部の報酬にかかり、法人への開発の報酬からは差し引かないこと。ただし法人への報酬でも支払調書が要る場合があります。第二に、フリーランス法は1人会社にも及び、取引条件の明示や支払期日の決まりは個人と同じであること。第三に、インボイスの登録や労働者性は個人か法人かでは決まらないことです。どちらと契約するかは、頼む作業と社内の条件で選びます。

LASSICに相談するメリット

頼みたい作業の範囲と、個人と法人のどちらと契約できるかの社内の条件が分かれば、業務委託で開発に加わる専門人材の候補を探せます。契約の相手の形を検討している段階から相談できます。

Remoguは、株式会社LASSICが運営するフリーランス・業務委託のITプロ人材サービスです。リモート前提で全国から登録が集まっており、登録は約20,000名規模、その約8割が開発系です。人材が必要になった時点から4時間以内に候補者を提案し、最短1週間で実際の業務開始まで進みます(条件によっては実現できない場合があります)。

よくある質問

契約中に相手の個人事業主が会社を作ったらどうなりますか

契約の相手が個人から会社に変わるので、契約を結び直すか名義の変更を書面で取り交わします。源泉徴収や請求書の登録番号も変わりうるため、切り替えの月を経理と共有しておきます。

会社員が副業で受ける業務委託もフリーランス法の対象ですか

公正取引委員会のQ&Aは、会社員でも副業で業務委託を受ける場合は、その業務の範囲で特定受託事業者に当たりうるとしています。取引条件の明示などの手続きを用意します。

家族が役員に入っている会社はフリーランス法の対象ですか

Q&Aは、同居の親族が役員である場合は「他の役員」に当たるとしています。代表者のほかに役員がいるので、その会社は特定受託事業者に当たりません。

業務委託で開発に加わるエンジニアを探す

任せたい作業の範囲と始めたい時期が分かっていれば、そのままご相談いただけます。個人と法人のどちらと契約するかを考えている段階でも構いません。

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出典

  1. *1 参考:国税庁 タックスアンサーNo.2792「源泉徴収が必要な報酬・料金等とは」(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2792.htm)。出典:国税庁(令和8年4月1日現在法令等)。源泉徴収の範囲が居住者か内国法人かで異なること、内国法人では馬主である法人に支払う競馬の賞金だけが挙がること、名目にかかわらず実態で判断することを参照(確認日2026年10月26日)(2026年10月確認)
  2. *2 参考:国税庁 タックスアンサーNo.7431「報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書」(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hotei/7431.htm)。出典:国税庁(令和8年4月1日現在法令等)。マイナンバーまたは法人番号の記載、提出範囲(弁護士・税理士等の報酬、原稿料、講演料等は年5万円超)、源泉徴収の対象とならない法人への報酬でも提出範囲に当たれば提出することを参照(確認日2026年10月26日)(2026年10月確認)
  3. *3 参考:公正取引委員会「フリーランス・事業者間取引適正化等法Q&A」(https://www.jftc.go.jp/fllaw_limited/fllaw_qa.html)。出典:公正取引委員会。Q2(特定受託事業者と特定業務委託事業者)、Q3(従業員を使用の意味)、Q5(労働者性は実態で判断)、Q7(従業員の有無の確認時点と方法)、Q14(副業の会社員)、Q18(同居親族の役員)を参照(確認日2026年10月26日)(2026年10月確認)
  4. *4 参考:特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(令和五年法律第二十五号)(https://laws.e-gov.go.jp/law/505AC0000000025)。出典:e-Gov法令検索。第2条(特定受託事業者の定義)、第3条(取引条件の明示)、第4条(報酬の支払期日)を参照。条文はe-Gov法令APIで確認(確認日2026年10月26日)(2026年10月確認)
  5. *5 参考:国税庁 タックスアンサーNo.6501「納税義務の免除」(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6501.htm)。出典:国税庁(令和8年4月1日現在法令等)。基準期間がない新設法人は原則として納税義務が免除され、事業年度開始の日の資本金が1,000万円以上の法人などは免除されないことを参照(確認日2026年10月26日)(2026年10月確認)
  6. *6 参考:国税庁 タックスアンサーNo.6498「適格請求書発行事業者の登録制度」(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6498.htm)。出典:国税庁。登録番号が法人番号を有する課税事業者は「T+法人番号」、それ以外は「T+13桁の数字」となることを参照(確認日2026年10月26日)(2026年10月確認)




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