LASSIC Media らしくメディア

2026.09.29 採用支援コラム

フリーランス活用でデータ基盤を構築|社内に残す役割と任せる役割




監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)

この記事の結論

  • 情報処理推進機構(IPA)のデジタルスキル標準は、データ基盤に関わる仕事をデータスチュワード、データエンジニア、データアーキテクトの3つの役割に分けています。
  • データを集めて整え、使う場所へ届ける処理を作る作業はITスキルが特に求められ、フリーランスに任せやすい仕事です。
  • データ基盤を整備している途中の企業では、54.7%が設計・開発・テストを外部に委託しています。

※ 本記事は2026年9月時点の公式情報(省庁・公的機関、および製品やサービスを提供する事業者が公開している資料)に基づきます。

社内のデータを1か所に集めて分析に使いたいのに、作れる人が社内にいない。外部のエンジニアに作ってもらったものの、完成した後に誰も直したり変えたりできない——。データ基盤の構築では、こうした悩みが起こりがちです。データ基盤とは、IPA(情報処理推進機構)の調査の言葉でいえば「データの蓄積・統合・分析を行うためのシステムや仕組み」のことです。*1

構築には専門の技術が要るため、業務委託で働く個人の専門人材に加わってもらうフリーランス活用は、有力な方法の一つです。ただし万能ではなく、どのデータを何に使うか、データの意味をどう定めるかまで任せてしまうと、完成した後に社内で運用を続けられなくなります。本記事では、データ基盤の構築を進めるマネージャーに向けて、構築に関わる3つの役割、調査で見る委託の実態、フリーランスに任せる作業と社内に残す仕事、そして依頼するときに確認したい点を整理します。

吹き抜けの建物の内部を見上げた写真。上の階から無数の小さな電球が縦に連なって下がり、奥が明るく光っている。人も文字も写っていない

データ基盤の構築とは

データ基盤の構築は、1つのシステムを作る作業というより、いくつかの作業の組み合わせです。IPAが2026年4月に公開したデジタルスキル標準ver.2.0は、DX(デジタル技術を使った事業や業務の変革)を進める人材の役割とスキルを定めた指針です。この指針は、データ基盤に関わるスキルを「データエンジニアリング(設計・収集・統合・提供)」や「データ基盤の設計・実装・運用」などの項目に分けて説明しています。*2*3

データエンジニアリングは、収集元の違うデータを、一貫性や整合性がとれるように統合してさまざまな目的に使える状態に整えるスキルと、データパイプライン(データを集めて加工し、使う場所まで届ける一連の処理)を設計・構築するスキルです。 たとえば、販売管理システムと顧客管理システムで同じ取引先に別々の番号が振られていれば、どちらかの番号にそろえてから1つの表にまとめます。これがデータの統合にあたる作業です。

データ基盤の設計・実装・運用のスキルを身につけるために学ぶ内容の例には、データベース、API管理、スキーマ管理、DWH、データレイクが挙がっています。 APIは別のシステムとデータを受け渡しする仕組み、スキーマはデータの項目と型の定義、DWH(データウェアハウス)は分析用にデータをまとめて保存するデータベース、データレイクは加工する前のデータをそのまま保存しておく場所です。保存先を用意しただけでは、データは使えるようになりません。データを集める処理、整える処理、使う人に届ける処理、そして品質を見守る運用までを含めて、構築の作業として考えます。

構築に関わる3つの役割

デジタルスキル標準ver.2.0では、DXを進める人材の類型に「データマネジメント」が加わりました。 定義によれば、データの信頼性を保って漏えいなどを防ぎ、データを社内で使い続けられる仕組みを設計・実装・運用して、組織全体でデータの活用を進める役割です。*2 この類型は、仕事の違いによって、データスチュワード、データエンジニア、データアーキテクトの3つのロール(役割)に分けられています。

データマネジメントの3つのロールと主な業務(デジタルスキル標準ver.2.0をもとに作成)
ロール 主な業務 特に求められるスキル
データスチュワード データの品質を保ち、漏えいや誤った使い方を防ぐためのルールとメタデータ(データの意味や出どころを説明する情報)を整えて運用する。運用の様子を見続けて、やり方を見直す 担当する事業の知識
データエンジニア さまざまな入手元のデータの現状を把握し、使える状態にするための統合・加工や前処理を行う。データを提供するパイプラインを設計・実装する ITスキル
データアーキテクト データの流れ全体を見据えた設計を行い、利活用の仕組みと役割分担を明確にする。部門やシステムの間で受け渡すデータの項目、品質の水準、更新の頻度を取り決めとして整理する 事業の知識とITスキルの両方の理解

データの意味を知っているのは事業の側の人で、データを動かす技術を持っているのはITの側の人です。3つのロールは、この2種類の知識をどう組み合わせるかで分かれています。

役割ごとに求められる水準

同じ資料は、ロールごとに、スキル項目ごとの重要度をaからdなどの記号で示しています。aは「高い実践力と専門性が必要」、bは「一定の実践力と専門性が必要」、cは「説明可能なレベルで理解が必要」、dは「位置づけや関連性の理解が必要」です。*2 データマネジメントのスキル項目から3つを抜き出すと、次のようになります。

データマネジメントのスキル項目の重要度(デジタルスキル標準ver.2.0から3項目を抜粋)
スキル項目 データスチュワード データエンジニア データアーキテクト
データエンジニアリング(設計・収集・統合・提供) c a a
データマネジメントの仕組みの設計と改善 c b a
データ基盤の設計・実装・運用 d b c

データ基盤の設計・実装・運用の重要度が最も高いのはデータエンジニアのbで、データアーキテクトはc、データスチュワードはdです。*2 一方で、データスチュワードとデータエンジニアがともにaなのは「データの品質・安全性向上」です。*2 保存先や処理を作る技術は主にデータエンジニアに求められ、品質を保つ仕事は事業の側と技術の側の両方にかかわる、と整理できます。

3つのロールのすべてでaになっている項目もあります。「データ関連法令などの理解やルール整備と遵守の推進」です。*2 個人情報を含むデータを集めるときの決まりは、どのロールにとっても自分の仕事として理解しておくべき事柄だということです。構築を社外の人に任せる場合も、この項目は任せきりにできません。

整備途中の企業の委託の状況

実際の企業は、データ基盤を整えながら、開発をどう分担しているのでしょうか。IPAの「2025年度ソフトウェア動向調査」は、2026年2月9日時点で362件の回答を集め、その回答データを公開しています。*5 このうちユーザー企業(ITを使う側の企業)247社について、データ基盤の整備状況と、工程(開発の段階)ごとに社内で作っているかどうか(内製化)を組み合わせて集計しました。

データ基盤の整備状況別に、工程を内製化せず外部に委託している企業の割合を並べた横棒グラフ。全社で整備し活用している84社、一部で整備し活用している75社、整備を進めている途中の64社の順に、システム企画・要求定義は7.1%、10.7%、23.4%、要件定義は9.5%、17.3%、32.8%、設計・開発・テストは28.6%、22.7%、54.7%、運用・保守は25.0%、22.7%、39.1%。出典はIPA「2025年度ソフトウェア動向調査」の回答データからユーザー企業を集計したもの。

「データ基盤の整備を進めている途中である」と答えた64社では、設計・開発・テストの工程を「内製化しておらず外部に委託している」企業が35社(54.7%)でした。 「全社レベルでデータ基盤を整備し、活用している」84社では24社(28.6%)、「一部の部門・プロジェクトでデータ基盤を整備し、活用している」75社では17社(22.7%)です。 要件定義(システムに求める機能を決める工程)でも、整備途中の企業の32.8%が外部に委託しており、全社で整備した企業の9.5%を大きく上回ります。*4

内製化の設問は、データ基盤に限らず、システムの開発全般について尋ねたものです。整備の途中にある企業ほど開発の多くを社外に頼っている、という傾向が見えるだけで、どちらが原因でどちらが結果かは分かりません。それでも、全社で整備した84社では、設計・開発・テストを「ほぼ全てのプロジェクト」か「一部プロジェクト」で内製化している企業が52社(61.9%)あり、整備途中の64社の22社(34.4%)を上回っています。*4 構築を社外の力で進める場合も、社内で担う作業を決めておくと、整えた後の運用につなげやすくなります。

任せる作業と社内に残す仕事

3つのロールの分け方を使うと、フリーランス活用で任せやすい作業と、社内に残したい仕事が見えてきます。任せやすいのは、データエンジニアの主な業務にあたる作業です。データの統合・加工・前処理と、パイプラインの設計・実装は、ITスキルが特に求められます。 そのうえ、どのデータをどう変えて、どこへ届ければ完成かを書き出しやすい作業です。

社内に残したいのは、データスチュワードにあたる仕事です。データの品質を保つためのルールを整え、運用を見守る役割で、担当する事業の知識が特に求められます。 売上の計上日を受注日にするか出荷日にするかといった判断は、事業を知る社員でなければ決められません。構築の期間だけ加わるフリーランスに任せると、契約が終わった後に判断する人がいなくなります。

データアーキテクトの仕事は、両方にまたがります。全体の設計は、社内で責任を持つ人を決めたうえで、経験のあるフリーランスに設計の案を作ってもらい、社内で確かめる形が進めやすいでしょう。部門やシステムの間で受け渡すデータの項目、品質の水準、更新の頻度を定めた取り決めは、資料ではデータ契約と呼ばれています。 データ契約は、データを使う部門の意見を聞いて社内で決めておきます。データ基盤の人材の不足そのものは「フリーランス活用とデータ基盤の人材不足、調査に出た2つの課題」で扱っています。

依頼するときに渡すもの

フリーランスにデータ基盤の構築を依頼するときは、依頼書に、任せる作業の名前と期間を書いておきます。たとえば「販売管理システムと顧客管理システムから受注と顧客のデータを毎朝集め、取引先の番号をそろえて分析用のデータベースに入れる処理を、3か月で設計から実際の業務で使い始めるまで作る」のような書き方です。あわせて、次のものを渡しておくと、作業の中身について食い違いが起きにくくなります。

  • 集めるデータの入手元(システムの名前)と、データの項目の一覧
  • データを更新する頻度と、使う人がデータを必要とする時刻
  • 品質の条件(値が欠けている行や重複した行の扱い)
  • データを使う部門と、使い道(どの集計や画面に使うか)
  • 納めてもらうもの(設計書、処理の説明、処理が止まったときの手順)

最後の「納めてもらうもの」は、契約が終わった後に社内で運用を続けるために欠かせません。業務委託エンジニアを迎える前の手続きは「業務委託エンジニアの受け入れで決める5つの手続き」で、契約を終えるときの引き継ぎは「業務委託エンジニアの離任で引き継ぎが漏れる理由と防ぎ方」で扱っています。

つまずきやすい点

一つ目は、データの意味の決め方まで任せてしまうことです。「顧客」に休眠中の取引先を含めるか、「売上」に返品を差し引いた金額を使うかは、技術の問題ではなく事業の判断です。フリーランスがその場で決めた定義のまま構築が進むと、完成した後に部門ごとに集計の結果が合わなくなります。

二つ目は、保存先の製品を先に決めてしまうことです。資料はDWHやデータレイクのほかに、データメッシュ(部門ごとにデータを管理して提供する考え方)も学習項目の例に挙げています。 どの形が合うかは、集めるデータの種類と使い方で変わります。依頼するときに渡す項目を先に書き出し、そのあとで保存先を選ぶと、作り直しを減らせます。

三つ目は、構築の後の運用を誰が担うかを決めないまま契約を終えることです。資料の説明でも、データ基盤のスキルは、データ基盤を作るだけでなく「整備・改善するスキル」です。*2 構築して終わりではなく、使いながら直し続けるものです。契約の終わりまでに、処理を見守る社員を決め、その人がフリーランスと一緒に作業する期間を設けておきます。

まとめ:データ基盤の構築で確かめておきたい3つの点

フリーランス活用でデータ基盤を構築するうえで、確かめておきたい点は3つに整理できます。第一に、データの意味と品質のルールを決める仕事は社内に残すこと。第二に、データの統合・加工とパイプラインの設計・実装は、作業名と期間、完成の条件を書いてから任せること。第三に、設計書と処理が止まったときの手順を納めてもらい、構築の後も社内で運用を続けられるようにすることです。この3点を踏まえておけば、「作ってもらったのに、誰も直せない」という事態を避けやすくなります。役割の切り分けに迷いがあれば、外部の手を借りるのも一つの選択肢です。

LASSICに相談するメリット

データ基盤の構築では、データの統合や処理の実装を担える人が社内で見つからないことがあります。データエンジニアにあたる作業を業務委託の専門人材に任せ、データの意味とルールを決める仕事を社内に残す分け方も選べます。

Remoguは、株式会社LASSICが運営するフリーランス・業務委託のITプロ人材サービスです。リモート前提で全国から登録が集まっており、登録は約20,000名規模、その約8割が開発系です。人材が必要になった時点から4時間以内に候補者を提案し、最短1週間で実際の業務開始まで進みます(条件によっては実現できない場合があります)。

よくある質問

データ基盤の構築を頼むフリーランスには、どんな経験を確かめればよいですか

任せる作業と同じ種類の作業の経験を確かめます。デジタルスキル標準は、データエンジニアリングの学習項目の例として、ETL/ELT(データを取り出し、変換して格納する処理)やデータパイプライン、データマート(用途ごとに切り出した分析用のデータ)を挙げています。 面接では、扱ったデータの入手元、そろえた項目、処理が止まったときの対応を具体的に説明してもらうと判断しやすくなります。

データスチュワードを置けるほど社員がいない場合は、どうすればよいですか

専任でなくてもかまいません。資料も、組織体制や各ロールの配置方法は、企業の規模や戦略、DXの成熟度などによって異なるとしています。 まずはデータをいちばんよく使う部門の担当者に、データの意味とルールを決める役割を兼ねてもらう形から始められます。

構築が終わった後も、フリーランスに運用を続けてもらえますか

契約で決めれば続けてもらえます。その場合も、処理を見守る作業と、データの意味やルールを決める判断は分けて考えます。見守る作業は任せられますが、ルールを変える判断は社内の担当者が行うよう、依頼の段階で書いておくと混乱を防げます。

データ基盤の構築に加わる人材を探したいとき

任せたい作業と、社内に残す仕事の整理からご相談いただけます。

Remoguとリラシクなら、リモートワークで働く社員の候補者も、業務委託で開発に加わる専門人材も探せます。

Remoguは、リモート前提で全国から即戦力のITプロ人材を調達するサービスです。リラシクは、扱う求人がすべてリモートワークのITエンジニア専門転職エージェントです。どちらもLASSICが運営しています。

無料相談はこちら

出典

  1. *1 参考:IPA「2025年度ソフトウェア動向調査 設問一覧」(https://www.ipa.go.jp/digital/software-survey/software-engineering/j5u9nn000000hkhs-att/software2025-c-questions.xlsx)。出典:同調査の設問一覧。Q2-5(データ基盤の整備状況)の設問文にあるデータ基盤の説明と選択肢、Q4-1(内製化の状況)の回答条件と選択肢を参照(2026年9月確認)
  2. *2 参考:IPA「デジタルスキル標準 ver.2.0(分冊版:DX推進スキル標準 d データマネジメント編)」(https://www.ipa.go.jp/jinzai/skill-standard/dss/rcu1hd000000j76k-att/sep_dss-p_dm.pdf)。出典:同資料(2026年4月)。第Ⅲ部第2章のロール一覧と共通スキルリスト、第3章d.データマネジメントの定義・ロール・担うべき責務・主な業務・重要度と補足資料、第4章の共通スキルリスト解説を参照(2026年9月確認)
  3. *3 参考:IPA「デジタルスキル標準 資料ダウンロード」(https://www.ipa.go.jp/jinzai/skill-standard/dss/download.html)。出典:同ページ。ver.2.0の資料の公開日(2026年4月16日)を参照(2026年9月確認)
  4. *4 参考:IPA「2025年度ソフトウェア動向調査 調査結果(選択肢項目文字列)」(https://www.ipa.go.jp/digital/software-survey/software-engineering/j5u9nn000000hkhs-att/software2025-result-data-str.csv)。出典:同調査の回答データ。Q1-4(企業種別)で「ユーザー企業」と答えた247社について、Q2-5(データ基盤の整備状況)とQ4-1(工程別の内製化の状況)を組み合わせて集計(2026年9月確認)
  5. *5 参考:IPA「2025年度ソフトウェア動向調査」(https://www.ipa.go.jp/digital/software-survey/software-engineering/software2025.html)。出典:同調査の公開ページ。回答件数(2026年2月9日時点で362件)と回答データの公開を参照(2026年9月確認)




View