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2026.09.29 採用支援コラム

エンジニア採用で進める内製化、初期メンバーの役割と採用の順番




監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)

この記事の結論

  • 初期メンバーには、プロダクトオーナー、スクラムマスター、開発者の3つの役割を置きます。
  • 人数は少なく始め、1つの開発チームは7、8名までを目安にします。
  • 採用の前に社内で決める人を任命し、次に手を動かせる経験者、その後に開発者を採ります。

※ 本記事は2026年9月時点の公式情報(省庁・公的機関、および製品やサービスを提供する事業者が公開している資料)に基づきます。

外注していた開発を社内に戻したいが、最初に誰を採ればよいか分からない。エンジニアを1人採ってみたものの、何を任せるかが決まらず手が止まっている——。開発の内製化を始める会社では、こうした迷いが起こりがちです。内製化の初期メンバーとは、社内で開発を始めるときに最初に組むチームの顔ぶれのことで、何を作るかを決める人、開発の進め方を整える人、実際に作る人の3つの役割から成ります。

初期メンバーの役割と人数を先に決めておくと、エンジニア採用で求める人物像がはっきりし、募集を始めやすくなります。ただし、役割と人数を決めれば済むわけではなく、何を作るかが社内で決まっていなければ、どんな顔ぶれをそろえても開発は進みません。本記事では、開発の内製化を任されたマネージャーに向けて、初期メンバーに置く役割、人数の考え方、採用の順番、そして採用で確かめたい経験を整理します。

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内製化の初期メンバーとは

初期メンバーは、エンジニアを1人採用することとは分けて考えます。1人目の採用では、社内にその人の仕事を評価できる人がいないことが主な問題になります(「1人目のエンジニア採用で起きる4つの問題」)。初期メンバーで考えるのは1人ではなく、開発を続けるのに必要な役割を最初のチームにそろえることです。役割が欠けたままでは、採用した人が仕事を始められません。

デジタル庁の「アジャイル開発実践ガイドブック」は、アジャイル開発(短い期間で作って確かめることを繰り返す開発の進め方)では、工程ごとに担当するチームを替えないと説明しています。1つのチームが、何を作るかの検討から開発、試行、調整までを続けます。工程の間で知識を受け渡す作業が生じず、すべての経験がそのチームの中に残るという考え方です。初期メンバーが、そのまま社内に開発の知識を残す人たちになります。

同じガイドブックは、1人のエンジニアがインフラ(サーバーやネットワークなどのシステムの基盤)の構築からアプリケーションの開発、運用まで幅広く担当する体制を組むことがしばしばある、と書いています。初期メンバーが少人数でも開発を始められるのは、1人が複数の作業を受け持つからです。

初期メンバーに置く役割

スクラム(アジャイル開発の代表的な進め方)の決まりをまとめた「スクラムガイド」の2020年版は、スクラムチームをスクラムマスター1人、プロダクトオーナー1人、複数人の開発者で構成するとしています。プロダクトオーナーは何を作るかを決める人、スクラムマスターは進め方を整える人です。*2 デジタル庁のガイドブックも、プロダクトオーナー、開発チーム、スクラムマスター、アドバイザーを体制の役割として説明しています。初期メンバーを考えるときは、このうちアドバイザーを除く3つの役割を、それぞれ誰が受け持つかから決めます。

デジタル庁のガイドブックは、プロダクトオーナーを、開発する機能の仕様を決める議論を主導し、何から形にするかの判断でも中心になる役割だと説明しています。意思決定が混乱しないよう、1つのプロジェクトに置くプロダクトオーナーは原則1名です。*1 政府の開発では、システムを発注する府省の課長級の職員が務めるのが一般的とされています。内製化に当てはめれば、開発を依頼する事業部門の社員から選ぶことになります。

スクラムマスターは、チームがアジャイル開発の進め方どおりに動けるよう支える役割です。考え方ややり方を教えるほか、要件が決まっていない、開発環境が整っていないといった、開発の進行を妨げる問題を取り除きます。ガイドブックは、1つのプロジェクトに置くスクラムマスターを1名とし、プロダクトオーナーとの兼任は避けるよう求めています。*1 スクラムマスターは、上の立場から指示を出す従来のプロジェクトマネージャーとは違い、チームと対等な立場をとって指示はしない、とも書かれています。

開発チームは、システムを作る役割です。必要な専門性はメンバーの間で分担し、どう分けるかはプロジェクトごとに決めます。デジタル庁のガイドブックは、チームとしてアジャイル開発に慣れていないうちは、開発チームをまとめるリーダーを置くことも検討するよう勧めています。初期メンバーを採用で集めるとき、最初に決めるのはこのリーダーを誰にするかです。

初期メンバーは何人にするか

人数には、資料ごとに上限の目安があります。スクラムガイドは、スクラムチームは「通常は10人以下である」とし、一般的に小さなチームのほうがコミュニケーションがうまく、生産性が高いと述べています。*2 デジタル庁のガイドブックは、1つの開発チームのメンバーを7、8名までとし、それを超える場合はチームを分けることを検討するよう勧めています。*1

資料に示された役割ごとの人数を並べた横棒グラフ。プロダクトオーナーは1つのプロジェクトに原則1人、スクラムマスターは1つのプロジェクトに1人、開発チームのメンバーは1チーム7、8名が上限(いずれもデジタル庁「アジャイル開発実践ガイドブック」)。スクラムチーム全体は通常10人以下(スクラムガイド2020年版)。

上限とは別に、立ち上げのときは人数を絞るよう勧める資料もあります。IPA(情報処理推進機構)の「アジャイルプロジェクト実践ガイドブック」は、最初から10人や20人の規模でアジャイル開発を実践して成功している事例は驚くほど少ないとし、「最少人数構成でのスクラムチームのスタートを推奨する」と書いています。*3

これを初期メンバーに当てはめると、プロダクトオーナー1人、スクラムマスター1人、開発者が数人という顔ぶれが出発点になります。開発者の人数は、最初に作る機能の量と、1人が受け持てる作業の幅から決めます。採用計画には、最初のチームで何人まで採るかと、2つ目のチームをいつ作るかを分けて書いておくと、社内で説明しやすくなります。

すべての専門家を、最初からチームに常駐させる必要はありません。IPAのガイドブックは、スクラムの進め方を教えるコーチ、開発環境の整備やテストの自動化、クラウド技術の専門家、業務の専門家などを挙げています。こうした人にチームへ常に参加してもらうのが難しい場合や、一部の参加で十分な場合は、毎日はチームにいないメンバーとして体制に組み込むよう勧めています。*3 採用で埋めるのは毎日チームにいる役割だけ、と分けておくと、初期メンバーの人数を抑えられます。

採用の順番

順番は、社内でしか決められない役割から埋めます。第一はプロダクトオーナーです。何を作るか、何から作るかを決める役割なので、エンジニア採用より先に、社内の誰に任せるかを決めます。デジタル庁のガイドブックは、プロダクトオーナーが関係者と日々確認や調整を行い、開発する側と議論する打ち合わせの時間を「日次ないし週数回以上」確保する必要があるとしています。*1 ほかの仕事で時間が取れない人を充てると、開発者を採っても仕事が進みません。

第二は、チームをまとめるリーダーになる経験者です。同じガイドブックは、責任者やマネージャーとして参加するだけでは十分に機能しない可能性があるとし、「現場活動への関与者として経験者が存在すること」を確かめるよう求めています。中でも、スクラムマスターになる人の見識と経験が重要だとしています。*1 初期メンバーのエンジニア採用では、自分で手を動かしながらチームをまとめられる人を先に探すことになります。

第三が開発者です。リーダーが決まってから採ると、面接でリーダーが技術面を確かめられ、チームでの作業の分け方に合わせて求める経験を書けます。第四は、リリースの後に採る人です。デジタル庁のガイドブックは、稼働後に利用状況を分析したり利用者のニーズを探ったりするなら、そうしたスキルを持つメンバーを新たに迎えることを検討するよう書いています。初期メンバーで全部をそろえようとせず、リリース後の採用として計画に残しておきます。

チームを増やすときのやり方も、IPAのガイドブックに書かれています。最初のチームから数名を選び、次のチームの立ち上げに参加してもらう方式を、最も基本的な増やし方として挙げています。最初のチームに入る人は、後から作るチームに進め方を教える役を受け持つこともあります。その前提を採用の段階で本人に伝えておくと、入社後の食い違いを減らせます。

採用で確かめる経験

資格だけでは判断できない、という点は2つのガイドブックで共通しています。デジタル庁のガイドブックは、アジャイル開発の資格を持つ人には一定の知識があると判断できるものの、それだけで実践できるかまでは判断できないとしています。確かめるのは、どのような領域と規模のシステム開発で、どのような役割を果たしたかです。本人の経験と対象のシステムがかけ離れていれば、その差を解消する工夫が要るとも書かれています。

IPAのガイドブックは、システムを内製化する場合は自分たちの組織でエンジニアを育成または採用する必要があるとしたうえで、重視する基礎技術を4つ挙げています。アルゴリズムとデータ構造(処理の手順とデータの持ち方)、オブジェクト指向(データと処理をまとめて設計する考え方)、ソフトウェアテスト、モデリング(業務やシステムを図に表して整理すること)です。*3 この4つは20年以上前から変わらない技術で、新しい技術を学ぶときにも役立つという説明です。

面接では、技術名の経験年数よりも、こうした基礎を担当した開発に結び付けて説明できるかを聞きます。応募者に担当した開発を1件挙げてもらい、チームの人数、本人が受け持った作業、要件が変わったときの対応を尋ねます。初期メンバーは少人数で幅広い作業を受け持つので、担当外の作業にどこまで関わったかも確かめておきます。人事が技術面の質問を作るときは「技術面接で人事が見極める5つの質問」も参考になります。

つまずきやすい点

一つ目は、最初から大人数で始めることです。採用の予算が取れたからといって10人以上を一度に集めると、役割の分け方も進め方も決まらないまま人数だけが増えます。最初のチームは少人数で始め、進め方が固まってから2つ目のチームを作ります。

二つ目は、プロダクトオーナーを決めずにエンジニアだけを採ることです。何を作るかを決める人がいないと、採用したエンジニアは優先順位を自分で推し量るしかありません。人数が少ないからとプロダクトオーナーとスクラムマスターを1人に兼ねさせるのも、決める役と支える役が同じ人に集まるので避けます。デジタル庁のガイドブックが兼任を避けるよう求めているのはこのためです。

三つ目は、委託先との役割の分け方を決めないまま採用を始めることです。内製化を始めた後も、しばらくは委託先の開発者と社員が同じチームで働くことがあります。どの役割を社員が受け持ち、どの役割を委託先に任せるのかを先に決めておかないと、求人票に書く仕事の中身が定まりません。

まとめ:初期メンバーで確かめておきたい3つの点

内製化の初期メンバーを決めるうえで、確かめておきたい点は3つに整理できます。第一に、プロダクトオーナー、スクラムマスター、開発者のそれぞれを誰が受け持つかを、募集の前に決めること。第二に、人数は少なく始め、毎日チームにいる役割だけを採用で埋めること。第三に、社内でプロダクトオーナーを任命してから、手を動かせる経験者、開発者の順にエンジニア採用を進めることです。この3点を踏まえておけば、「エンジニアは採れたのに、何を作るかが決まらず仕事が始まらない」という事態を避けやすくなります。初期メンバーの候補者探しに迷いがあれば、外部の手を借りるのも一つの選択肢です。

LASSICに相談するメリット

初期メンバーを社員だけでそろえようとすると、採用が決まるまで開発を始められないことがあります。テストの自動化やクラウドの設計のように、毎日チームにいなくてもよい作業は、業務委託の専門人材に加わってもらう方法も選択肢に入れておけます。

Remoguは、株式会社LASSICが運営するフリーランス・業務委託のITプロ人材サービスです。リモート前提で全国から登録が集まっており、登録は約20,000名規模、その約8割が開発系です。人材が必要になった時点から4時間以内に候補者を提案し、最短1週間で実際の業務開始まで進みます(条件によっては実現できない場合があります)。

よくある質問

プロダクトオーナーを社外の人に任せてもよいですか

一時的に任せる方法はあります。デジタル庁のガイドブックには、支援する側のチームがプロダクトオーナーの役割を代行し、3か月で発注する側に戻した例が載っています。*1 ただし同じガイドブックは、代行は一時的には有効でも、その後は本来の担い手である発注する側が主体となるべきだとしています。

開発チームが7、8名を超えたらどうしますか

チームを分けます。デジタル庁のガイドブックは、7、8名を超える場合は開発チームの分割を検討するよう勧めています。*1 スクラムガイドも、チームが大きくなりすぎたら複数のチームに分け、同じプロダクトオーナーと、作る機能の一覧を共有するとしています。*2

内製化を進めた企業は、エンジニア採用をどう広げましたか

IPAのガイドブックが紹介する北國銀行の例では、2012年に外部への委託をやめて内製開発に切り替え、2019年にシステム開発のグループ会社を設立して全国からエンジニアを採用しています。*3 内製化を始めてから、採用を広げるまでに数年をかけた例です。

内製化の初期メンバーを探したいとき

初期メンバーの候補者探しから、非常駐で加わる専門人材の確保までご相談いただけます。

Remoguとリラシクなら、リモートワークで働く社員の候補者も、業務委託で開発に加わる専門人材も探せます。

Remoguは、リモート前提で全国から即戦力のITプロ人材を調達するサービスです。リラシクは、扱う求人がすべてリモートワークのITエンジニア専門転職エージェントです。どちらもLASSICが運営しています。

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出典

  1. *1 参考:デジタル庁「アジャイル開発実践ガイドブック」(DS-121)(https://www.digital.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/e2a06143-ed29-4f1d-9c31-0f06fca67afc/150a60b4/20220422_resources_standard_guidelines_guidebook_01.pdf)。出典:2021年3月30日決定(2021年5月10日改定)。2.2 1)エ(チームの学習効果)、2.4 1)経験者の参画・2)発注者の姿勢、3.1 1)役割とコラム、4.3 継続的なチーム体制の確立を参照(2026年9月確認)
  2. *2 参考:Ken Schwaber・Jeff Sutherland「スクラムガイド」(2020年11月・日本語版)(https://scrumguides.org/docs/scrumguide/v2020/2020-Scrum-Guide-Japanese.pdf)。出典:スクラムチームの構成(スクラムマスター1人、プロダクトオーナー1人、複数人の開発者)と人数(通常は10人以下)、チームが大きくなりすぎた場合の再編成を参照(2026年9月確認)
  3. *3 参考:IPA「アジャイルプロジェクト実践ガイドブック ITSS+ アジャイル領域」Ver1.1(2023年4月)(https://www.ipa.go.jp/jinzai/skill-standard/plus-it-ui/itssplus/ps6vr70000001i7c-att/agile-guidebook2022.pdf)。出典:Ⅳ.エンジニアのスキル(基礎技術4つ)、Ⅴ.アジャイル組織の育て方(立ち上げ期・拡大期)、インタビュー「銀行でのアジャイル実践例」を参照(2026年9月確認)




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