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設計書のページ数の見積もり方|規模あたりの数値と引き継ぎ量の目安
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)
この記事の結論
- 新規開発の基本設計書は、コード1,000行あたり10.62ページが中央値です。
- ただし同じ新規開発でも、少ない側の案件と多い側の案件では約4倍の差があります。
- 引き継ぐ量は、中央値に加えて少ない場合と多い場合の見込みを作り、実物のページを数えて決めます。
※ 本記事は2026年9月時点の公式情報(省庁・公的機関、および製品やサービスを提供する事業者が公開している資料)に基づきます。
担当者が辞めたあと、残った設計書を読んで仕事を引き継ぐ人は、どれくらいの量を読むことになるのか。引き継ぎの期間を決めたいのに、設計書が何ページあるのかさえ見当がつかない——。システムの担当者が交代する現場では、こうした悩みがよく聞かれます。規模あたりの設計書ページ数とは、プログラムのコード1,000行あたりに設計書が何ページあるかを示す指標です。
この指標を使うと、コードの規模から設計書の量の目安を出せます。ただし万能ではなく、同じ規模でも案件によってページ数は大きく違います。本記事では、担当者の交代や引き継ぎを計画する実務担当者に向けて、IPA(情報処理推進機構)の資料が示す値、ページ数のばらつき、開発の種別による違い、そして引き継ぐ量を見積もる手順を整理します。
目次
規模あたりの設計書ページ数とは
この指標は、IPAの「ソフトウェア開発分析データ集2022」で、設計文書化密度という名前で分析されています。単位はページ/KSLOC(KSLOCはコード1,000行)で、たとえば10.62なら、コード1,000行あたり設計書が10.62ページあるという意味です。*2 規模の違う案件どうしでも、1,000行あたりにそろえれば、設計書の多さを同じ基準で比べられます。
資料は2022年9月26日に公開され、2025年8月28日に最終更新されています。これまでに収集した5,546プロジェクトの定量データから分析したとされています。*1 集計の対象は、開発の5つの工程すべての実績データがそろい、主な開発言語がはっきりしていて、基本設計書と詳細設計書の文書量がどちらも0より大きい案件です。*2
基本設計書は、画面や機能など、システムを使う側から見える部分を決めた文書です。詳細設計書は、それをプログラムにするための作り方まで決めた文書です。担当者が交代するとき、引き継ぐ人はこの2種類を読んで、システムが何をしているのかをつかむことになります。設計の工程そのものを外部に委託する進め方は「基本設計・詳細設計の外注」で扱っています。
新規開発の基本設計書と詳細設計書
IPA資料の本編にある表A1-3-1は、新規開発112件の値を示しています。基本設計書の中央値は10.62ページ/KSLOCで、本編も「10ページ/KSLOC強」と記しています。112件をページ数の少ない順に並べたとき、下から4分の1にあたる値(P25)は5.05、4分の3にあたる値(P75)は19.14でした。*2
詳細設計書は中央値が13.21で、基本設計書より多くなります。P25は6.34、P75は24.47です。平均は基本設計書が15.74、詳細設計書が21.99で、どちらも中央値より高い値でした。*2 一部の案件の大きな値が平均を押し上げているため、目安に使うのは中央値のほうです。
中央値から計算すると、10KSLOCの新規開発なら基本設計書は約106ページになります。なお、基本設計書と詳細設計書の中央値は別々の案件の値なので、2つを足しても1つの案件の設計書の合計ページ数にはなりません。
ページ数のばらつき
P75をP25で割ると、ばらつきの大きさを倍率で表せます。表の値から計算すると、新規開発の基本設計書は3.79倍、詳細設計書は3.86倍です。改良開発の基本設計書も3.86倍、再開発の基本設計書は4.98倍でした。*2 P25とP75の間だけでも、4倍前後の差があることになります。
10KSLOCの新規開発に当てはめると、基本設計書はP25で約50ページ、P75で約191ページです。同じ規模でも140ページ以上の差になります。
これほどばらつく理由は、資料には示されていません。引き継ぎの計画をページ数で立てるなら、中央値の1点ではなく、この幅を前提にしておくと、見積もりが外れにくくなります。古いシステムの作り直しと要員の不足の関係は「レガシー刷新を止めるのは理解不足ではなく要員の不足」で扱っています。
開発の種別による違い
本編は新規開発のほかに、いまあるシステムに機能を追加したり変更したりする改良開発(表A1-3-2、232件)と、システムを作り直す再開発(表A1-3-3、30件)の値も示しています。中央値は、改良開発が基本設計書11.72・詳細設計書16.41、再開発が10.01・14.03でした。本編は、改良開発は新規開発よりページ数が多く、再開発は新規開発とほぼ同じと記しています。*2 ただし再開発は30件と少ないので、参考程度に見ておきます。
改良開発で気をつけたいのは平均です。基本設計書の平均は277.87、詳細設計書の平均は1969.16で、中央値と比べると23.7倍と120.0倍になります。表に示された上端の値は基本設計書38461.54、詳細設計書419538.46と極端に大きく、それが平均を押し上げています。*2
平均が中央値の何十倍にもなる指標では、平均を根拠にすると見積もりを誤ります。改良開発の案件では、中央値と四分位だけを見るようにします。四分位で見ればP25が6.02、P75が23.22で、倍率は新規開発とほぼ同じです。
引き継ぐ量をどう見積もるのか
ここまでの値を、引き継ぎの計画に使う手順にまとめます。次の表は、本編の3つの表から、種別ごとの中央値と四分位を抜き出したものです。*2*3
| 種別と設計書 | P25 | 中央値 | P75 | 件数 |
|---|---|---|---|---|
| 新規開発・基本設計書 | 5.05 | 10.62 | 19.14 | 112 |
| 新規開発・詳細設計書 | 6.34 | 13.21 | 24.47 | 112 |
| 改良開発・基本設計書 | 6.02 | 11.72 | 23.22 | 232 |
| 改良開発・詳細設計書 | 8.47 | 16.41 | 33.03 | 232 |
| 再開発・基本設計書 | 4.21 | 10.01 | 20.95 | 30 |
| 再開発・詳細設計書 | 9.95 | 14.03 | 23.78 | 30 |
まず、引き継ぐ対象のコードの量をKSLOCの単位で出します。次に、表のうち種別が合う行の中央値を掛けて、目安のページ数を出します。さらにP25とP75も掛けて、少ない場合と多い場合の見込みを2つ作ります。10KSLOCの新規開発なら、基本設計書は約50ページから約191ページ、中央値では約106ページです。
最後に、実際の設計書のファイルを数えます。見込みの幅のどこに当たるかは、実物を数えないと決まりません。実物を数える前に人数と日数を決めると、実物がP75に近かったときに期間が足りなくなります。
読む時間の目安も、同じ資料から計算できます。資料には、基本設計書1ページあたりのレビュー工数の中央値として0.335人時(1人が1時間かける作業量)が示されています。*2 これを106ページに掛けると約36人時です。ただし、レビューと、引き継ぐために読み込む作業は別の作業なので、あくまで目安として扱います。
つまずきやすい点
一つ目は、設計書が残っていない案件にこの値を当てはめることです。集計の対象は基本設計書と詳細設計書の文書量がどちらも0より大きい案件なので、設計書が無い案件はこの分布に入っていません。*2 その場合は、引き継ぐ前に、いまのシステムの動きを書き出して残す作業から始めることになります。
二つ目は、ページ数だけで読みやすさを判断することです。この集計はページ数を数えたもので、ページの中身が更新されているか、実装と合っているかは含まれていません。ページ数が中央値より少なくても、読み込みが楽になるとは言えません。
三つ目は、読み込みと書き足しを社員だけで抱えることです。引き継ぎの間は、設計書を読み込んで整理しながら、足りない部分を書き足す作業も並行して進めます。社員は引き継いだ後の担当や作業の優先順位を決める役に集中し、読み込みと整理は期間を区切って業務委託の専門人材に任せる方法もあります。開発の体制のうち外部の人が担う工数の割合は「外部委託工数比率とは」で扱っています。
まとめ:設計書の量で確かめておきたい3つの点
設計書の量から引き継ぎを見積もるうえで、確かめておきたい点は3つに整理できます。第一に、中央値だけでなくP25とP75も使って、少ない場合と多い場合の見込みを作ること。第二に、改良開発の案件では平均を使わず、中央値と四分位で見ること。第三に、人数と日数を決める前に、実際の設計書のページを数えることです。この3点を踏まえておけば、「中央値で見積もったのに、読んでも読んでも終わらない」という事態を避けやすくなります。引き継ぎの体制づくりに迷いがあれば、外部の手を借りるのも一つの選択肢です。
よくある質問
KSLOCとは何ですか
コードの規模を1,000行単位で表したものです。1KSLOCはコード1,000行にあたります。規模あたりの設計書ページ数は、この1,000行ごとに設計書が何ページあるかを示しています。
業種ごとの値はありますか
IPAは業種編も公開しています。プロジェクト数の多い金融・保険業、情報通信業、製造業の3業種について、本編と同一の分析を行ったとされています。*1 自社の業種に近い値を見たいときは、業種編をあわせて確かめます。
この資料より新しい値は出ますか
出る予定はありません。資料には「事業終了に伴い今後の発行予定はございません」と明記されています。*1 2022年より後の傾向は、この資料からは読み取れません。
引き継ぎの体制を相談したいとき
引き継ぐ設計書の量の見積もり方から、担当者が一緒に検討します。
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出典
- *1 参考:IPA「ソフトウェア開発分析データ集2022」(https://www.ipa.go.jp/digital/software-survey/metrics/metrics2022.html)。出典:公開日・最終更新日、5,546プロジェクトの定量データから分析したこと、業種編の対象、事業終了に伴い今後の発行予定がないことの記述を参照(2026年9月確認)
- *2 参考:IPA「ソフトウェア開発分析データ集2022」本編(https://www.ipa.go.jp/digital/software-survey/metrics/hjuojm000000c6it-att/000102171.pdf)。出典:表A1-3-1〜表A1-3-3(SLOC規模あたりの設計書ページ数)の四分位・中央値・平均・上端下端・件数、層別定義、設計文書化密度の説明、設計書ページ数あたりのレビュー工数を参照(2026年9月確認)
- *3 参考:IPA「ソフトウェア開発分析データ集2022グラフデータ」(https://www.ipa.go.jp/digital/software-survey/metrics/hjuojm000000c6it-att/000103288.zip)。出典:同じ表の値の確認に使用。著作権はIPAが保有(Copyright 2022 IPA)(2026年9月確認)