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開発要員の欠員発生、初動の数日で決める4つのこと
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)
この記事の結論
- 欠員発生の初動では、マネージャーが休みの見込みを確かめて人事に伝え、休む本人には細かな引き継ぎを求めません。
- 休む人が担当していた作業をマネージャーが書き出し、止めてよい作業と、残りのメンバーに割り振る作業を分けます。
- 情報通信業の事業所の37.4%で、過去1年にメンタルヘルス不調で1か月以上休んだ人か退職した人がいました。
※ 本記事は2026年9月時点の公式情報(省庁・公的機関、および製品やサービスを提供する事業者が公開している資料)に基づきます。
メンバーから、しばらく休むと急に連絡があった。担当していた改修の進み具合を、本人のほかに誰も知らない——。開発の現場では、こうした欠員が予告なしに起こりがちです。厚生労働省の2025年の調査では、情報通信業の事業所の37.4%で、過去1年間にメンタルヘルス不調によって1か月以上続けて休んだ人か、退職した人がいました。*1 開発要員の欠員発生とは、担当者が決まっていた作業に、休業や退職で急に手をつけられる人がいなくなることを指します。
欠員が出た直後の数日(初動)にやることを決めて動くと、止めてはいけない作業を止めずに済み、補充の判断も落ち着いてできます。ただし万能ではなく、初動で決められるのは当面の分担までで、抜けた人と同じ経験を持つ人は数日では見つかりません。本記事では、開発チームを管理するマネージャーに向けて、本人の状況の確かめ方、担当していた作業の書き出し方、誰に何を報告するか、そして補充の決め方を整理します。
目次
開発要員の欠員発生とは
欠員には、予告のあるものと、予告のないものがあります。退職は、本人の申し出から退職日までに日数があることが多く、退職日から逆算して後任を探す日程を組めます。一方、病気やけがによる休業や、家族の事情による急な休みは、連絡を受けた日から担当者がいなくなります。
休業と退職では、初動でやることも少し違います。休業なら、本人がいずれ戻る前提で、戻るまでの分担を決めます。退職なら、分担を決めたうえで、後任を誰にするかまで考えることになります。どちらにも共通するのは、本人が担当していた作業を、本人に頼らずに把握し直す必要があることです。
厚生労働省の「令和7年労働安全衛生調査(実態調査)」は、従業員(常用労働者)10人以上の民間の事業所を対象に、2024年11月1日から2025年10月31日までの1年間について尋ねています(有効回答8,054事業所)。*2 メンタルヘルス不調によって連続1か月以上休業した人か、退職した人がいた事業所は、全産業で13.5%、情報通信業では37.4%でした。*1 調査した17の産業の中で、情報通信業が最も高い割合です。
情報通信業の内訳を見ると、休業した人がいた事業所が32.7%、退職した人がいた事業所が17.5%です。*1 両方がいた事業所もあるため、足し合わせても37.4%にはなりません。情報通信業では、退職した人がいた事業所より、休業した人がいた事業所のほうが多いということです。事業所の規模が大きいほど割合は高く、全産業では1,000人以上の事業所で92.9%、10〜29人の事業所で6.8%でした。*1 従業員の多い事業所ほど、欠員発生は毎年起こりうるものとして備えておくほうが現実的です。
なぜ初動の数日が大事なのか
担当者がいなくなっても、作業の期限や、利用部門・取引先との約束は変わりません。最初の数日で困るのは、どの作業が止まっているのかを誰も把握していないことです。チケット(作業の管理票)に載っている作業なら一覧で見られますが、定期的に手で行っていた作業や、口頭で引き受けた依頼は、本人にしか分かりません。
見えないまま数日が過ぎると、期限のある作業に誰も気づかず、気づいたときには期限を過ぎていたということが起こります。Webサイトの暗号化通信に使う証明書やサービス契約の更新、月末の集計処理のように、日付が決まっている作業は特に見落としやすいものです。反対に、初動で作業の一覧ができていれば、止めてよい作業と止められない作業を分けて、止められない作業だけを残りのメンバーに割り振れます。
初動の数日で決めるのは、欠けた人の代わりを見つけることではなく、当面の分担です。補充するかどうか、どう補充するかは、作業の一覧ができてから決めても遅くありません。作業の一覧より先に補充を決めると、急がない作業まで後任に任せたり、補充する人の条件を決めきれないまま探し始めたりすることになります。
本人の状況の確かめ方
最初にするのは、休みがどのくらい続きそうかを確かめ、人事の担当者に伝えることです。厚生労働省と中央労働災害防止協会の「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」は、病気休業の開始と休業中のケアを、職場復帰支援の第1ステップに置いています。*3 そこでは、労働者から管理監督者に主治医の診断書が提出され、管理監督者は「人事労務管理スタッフ等に診断書(病気休業診断書)が提出されたことを連絡します」とされています。*3
手引きは、診断書に必要な療養期間の見込みを明記してもらうことが望ましいとしています。*3 開発チームの側から見ると、この見込みが、分担を決める期間の目安になります。見込みがまだ分からないうちは、まず1〜2週間と期間を決めて分担を組み、見込みが分かった時点で組み直すと進めやすくなります。
手引きはまた、休業を始める労働者が療養に専念できるようにしたうえで、休業中の事務手続きや職場復帰支援の手順を説明するよう求めています。*3 急な休業の直後に、本人へ細かな引き継ぎを求めるのは避けます。聞くとしても、作業の保存場所やアカウントの管理方法のように、ほかの人では調べられないことだけに絞ります。本人への連絡は、人事や産業医などの担当者と相談してから取るようにします。
退職の場合は、退職日までに本人と話せる時間があります。それでも、年次有給休暇の消化などで最終出社日が早まることがあるので、引き継ぎに使える日数は短めに見積もっておきます。
担当していた作業の書き出し
次に、本人が担当していた作業を書き出します。チケット、プログラムの保管場所(ソースコードの管理ツール)、チャットのやり取り、予定表、定期作業の手順書など、本人が使っていた道具を順に見て、作業を1行ずつ並べます。本人に聞かずに調べられる情報から始めるので、休業中の本人に負担をかけずに進められます。
| 作業の種類 | 調べる場所 | あわせて書くこと |
|---|---|---|
| 期限のある作業 | 予定表、チケットの期日、利用部門との約束 | 期限までの日数 |
| 定期的な作業 | 手順書、自動で動く処理の設定、月ごとの作業記録 | 次にいつ行うか |
| ほかの人を待たせている作業 | レビューの依頼、問い合わせへの回答 | 誰が待っているか |
| 本人の名前で持っている権限 | 管理画面のアカウント、クラウドサービスの契約窓口 | 代わりに操作できる人がいるか |
書き出したら、1行ずつ止めてよいかを決めます。期限があり、止めると利用部門や取引先に影響が出る作業は、残りのメンバーに割り振ります。期限のない改修や調査は、本人が戻るまで、あるいは後任が決まるまで止めても構いません。止めると決めた作業も一覧から消さずに「止めている」と書いておくと、再開するときの漏れを防げます。
本人の名前で持っている権限は、見落としやすい項目です。管理画面の管理者アカウントや、クラウドサービスの契約窓口が本人1人だけだと、システムの不具合や契約更新の通知が本人にだけ届き、ほかの人は気づきません。休業の場合は、本人のアカウントを止めるかどうかも人事と相談が必要になるため、まずは代わりに操作できる人がいるかを確かめます。業務委託の要員が離任するときの引き継ぎは「業務委託エンジニアの離任で引き継ぎが漏れる理由と防ぎ方」で扱っています。
誰に何を報告するか
作業の一覧ができたら、影響を受ける人に伝えます。デジタル庁の「デジタル・ガバメント推進標準ガイドライン」(DS-100)は、政府の情報システムのプロジェクトについて、プロジェクト管理要領に書く事項を挙げています。*4 その中には、リスクが顕在化したときの報告先や報告内容を書くリスク管理、解決すべき課題が発生したときの報告先や報告内容を書く課題管理、進捗の報告先・内容・頻度を書く工程管理があります。*4
民間の開発チームでも、この分け方は使えます。計画書に要員の欠員をリスクとして書いてあれば、そこで決めてある報告先に伝えます。書いていなければ課題として登録し、誰がいつまでに何を決めるかを残しておきます。
伝える内容は、止める作業、期限を動かす作業、担当を変えた作業の3つに分けると伝わりやすくなります。利用部門には止める作業と動かす期限を、上長には誰にどの作業を割り振ったかを、というように相手ごとに必要なことだけを伝えます。休業の理由や本人の病状は、業務の報告に書く必要はありません。
期限の変更は、DS-100でいえば変更管理(計画を変えるときの手続き)にあたります。DS-100は、プロジェクトの進捗により発生する変更について、管理対象や変更手順、管理手法などを書くよう求めています。*4 誰の承認で期限を変えたかを記録しておくと、あとで計画を見直すときに経緯をたどれます。
補充の決め方
初動の数日が過ぎ、作業の一覧と当面の分担が決まったら、補充するかどうかを考えます。やり方としては、残りのメンバーでの分担を続ける、作業の期限や量を見直す、ほかの部署から異動してもらう、採用する、外部に委託する、といったものがあります。
休業で、戻る見込みが数週間なら、分担と期限の見直しで対応できる場合があります。戻る時期が見えない場合や退職の場合は、残りのメンバーの負担が長く続くため、補充を考えることになります。分担を引き受けたメンバーの作業量も一覧にしておき、残業が続いていないかを週ごとに確かめます。
どのやり方を選ぶときも、書き出した作業の一覧がそのまま条件になります。どの作業を、いつまで、どのくらいの経験の人に任せたいかが書けていれば、異動でも採用でも委託でも、相手に伝える内容は同じです。後任の採用日程の組み方は「エンジニア中途採用の欠員補充|退職日から逆算する後任の採用日程」で、採用以外のやり方は「エンジニア中途採用だけに頼らない欠員補充、9つの選択肢」で扱っています。
外部に委託する場合も、委託先の人がすぐに作業に加われるとは限りません。契約の手続き、作業環境やアカウントの準備、既存のコードや手順書を読み込む時間がかかります。委託を選ぶなら、その準備の期間も含めて当面の分担を決めておきます。
つまずきやすい点
一つ目は、作業の一覧を作る前に、欠けた人と同じ経験の人を探し始めることです。本人が実際に何をしていたかが分からないまま探すと、条件が「本人と同じくらいできる人」になり、見つかるまでに時間がかかります。その間、止められない作業に誰も手をつけていないということにもなりかねません。
二つ目は、分担を1人に集めてしまうことです。本人の作業にいちばん詳しいメンバーにすべてを任せると、そのメンバーがもともと持っていた作業が止まります。割り振る前に、引き受ける側の作業も一覧にして、何を止めるか、何を後に回すかを一緒に決めます。
三つ目は、初動で作った一覧を、本人が戻ったときや後任が来たときに使わないことです。休業から戻る人には、休んでいた間に何を止め、誰が何を進めたかを一覧で渡すと、戻ってからの仕事を決めやすくなります。手引きも、職場復帰支援プランの項目に、管理監督者による就業上の配慮を挙げています。*3 戻ってすぐにすべての作業を戻すのではなく、どの作業から戻すかを人事や産業医と相談して決めます。
まとめ:欠員発生の初動で確かめたい3つの点
開発要員の欠員発生に初動で対応するうえで、確かめておきたい点は3つに整理できます。第一に、休みがどのくらい続くかを確かめて人事に伝え、休んでいる本人には細かな引き継ぎを求めないこと。第二に、本人が担当していた作業を、期限のある作業、定期的な作業、待たせている作業、本人の名前の権限に分けて書き出し、止める作業と割り振る作業を決めること。第三に、決めた分担と期限の変更を、計画で決めてある報告先に伝え、記録に残すことです。この3点を踏まえておけば、「担当者が休んでから、更新の期限が過ぎていたことに気づいた」という事態を避けやすくなります。補充のやり方に迷いがあれば、外部の手を借りるのも一つの選択肢です。
よくある質問
欠員が出たことを、チームのメンバーにはどこまで伝えればよいですか
分担を変えるのに必要なこと、つまり誰の作業を誰がいつまで持つかを伝えます。休業の理由や病状は本人の健康に関わる情報なので、伝えるかどうか、どこまで伝えるかは人事と本人に確かめてから決めます。
初動で決めた分担は、どのくらいで見直せばよいですか
休みの見込みが分かったとき、あるいは最初に決めた期間が終わるときに見直します。見込みが分からないうちは1〜2週間ほどで区切っておくと、引き受けたメンバーの負担を確かめる機会を作れます。
欠員に備えて、ふだんから何をしておけばよいですか
定期作業の手順書を残し、管理画面の管理者アカウントや契約の窓口を2人以上にしておくことです。計画書のリスクに要員の欠員を書き、報告先を決めておけば、欠員が出たときに誰に伝えるかで迷わずに済みます。
業務委託で加わっている要員が急に抜けた場合も、同じ進め方でよいですか
作業の書き出しと報告は同じです。違うのは、代わりの要員をどうするかを委託先と話し合う点です。契約に要員の交替についての定めがあれば、その手続きに沿って進めます。
欠員が出たあとの補充を相談したいとき
書き出した作業と期間をもとに、補充のやり方からご相談いただけます。
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出典
- *1 参考:厚生労働省「令和7年労働安全衛生調査(実態調査)結果の概況」(https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/r07-46-50b.html)。出典:厚生労働省「令和7年労働安全衛生調査(実態調査)結果の概況」結果の概要 事業所調査 第1表(過去1年間にメンタルヘルス不調により連続1か月以上休業した労働者又は退職者がいた事業所割合及び労働者割合)を参照(2026年9月確認)
- *2 参考:厚生労働省「令和7年労働安全衛生調査(実態調査)調査の概要」(PDF)(https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/r07-46-50_chousa-gaiyo.pdf)。出典:同調査の概要。調査の対象(常用労働者10人以上を雇用する民営事業所)、対象期間、事業所調査の有効回答数8,054を参照(2026年9月確認)
- *3 参考:厚生労働省・中央労働災害防止協会「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」(PDF)(https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/anzen/dl/101004-1.pdf)。出典:同手引き(改訂版パンフレット)。職場復帰支援の流れの第1ステップ(病気休業開始及び休業中のケア)と、第3ステップの職場復帰支援プランの作成(管理監督者による就業上の配慮)を参照(2026年9月確認)
- *4 参考:デジタル庁「DS-100 デジタル・ガバメント推進標準ガイドライン」(PDF)(https://www.digital.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/e2a06143-ed29-4f1d-9c31-0f06fca67afc/54d8725e/20260715_resources_standard_guidelines_guideline_01.pdf)。出典:2026年(令和8年)6月12日 デジタル社会推進会議幹事会決定。第3編第2章「プロジェクトの管理」のプロジェクト計画の策定 2)プロジェクト管理要領の記載内容(ウ 工程管理、オ リスク管理、カ 課題管理、キ 変更管理)を参照(2026年9月確認)