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エンジニア中途採用の欠員補充|退職日から逆算する後任の採用日程
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)
この記事の結論
- 欠員補充の後任が退職日までに入社できないこともあるので、入社までの間に誰が何を担うかを先に決めます。
- 情報通信業の専門職の欠員率は、1,000人以上の企業で0.6%、5〜29人の企業で4.9%と、規模が小さいほど高くなっています。
- 辞める人の作業は、後任に任せるもの、社内の別の人に移すもの、当面止めるものの3つに分けておくと採用要件も決まります。
※ 本記事は2026年9月時点の公式情報(省庁・公的機関、および製品やサービスを提供する事業者が公開している資料)に基づきます。
エンジニアから退職の申出があったのに、後任の目処が立たない。求人を出しても応募が集まらないまま、退職日だけが近づいてくる——。開発の現場では、こうした事態が起こりがちです。欠員補充とは、辞めた人が担当していた仕事を引き継ぐ人を採用して、担当者のいない状態を解消することです。
欠員補充のやり方として最初に思い浮かぶのはエンジニア中途採用です。ただし万能ではなく、後任が退職日までに入社できるとは決まっていません。採用の日程を退職日から逆算して組んでおけば、入社までの間に誰が何を担うかも決めやすくなります。本記事では、エンジニアの中途採用を担うマネージャーや人事担当者に向けて、欠員補充の考え方、後任の採用にかかる期間、会社の規模による欠員率の違い、退職日から逆算する進め方、そして外部に委託するときに確認したい点を整理します。
目次
欠員補充とは
公的統計では、欠員補充のための求人を「未充足求人」として数えています。厚生労働省の雇用動向調査は、未充足求人を「事業所における欠員であり、仕事があるにもかかわらず、その仕事に従事する者がいない状態を補充するために行っている求人」と定めています。*1 統計の上で欠員として数えられるのは、会社がすでに募集を始めている求人です。
この未充足求人数を、その時点で働いている人の数(常用労働者数)で割った値が欠員率です。*1 働いている人100人に対して、何人分の求人が埋まっていないかを示します。全産業の専門的・技術的職業従事者(技術者や専門職をまとめた職業の区分)では、2025年6月末日現在の欠員率は2.6%で、前年同期の3.4%から下がりました。*1
欠員補充と似た言葉に増員があります。増員は仕事そのものが増えたために人を増やすことで、欠員補充は、すでにある仕事の担当者がいなくなった状態を元に戻すことです。そのため、後任に任せる仕事を考える出発点は、辞めた人が担当していた作業になります。ただ、その作業をすべて後任1人に引き継ぐ必要はありません。この点は後の手順で扱います。
後任の採用にかかる期間
まず、退職する人の側の期間です。民法第627条第1項は、正社員のように契約期間の決まっていない雇用について、働く人はいつでも退職を申し出ることができ、雇用は「解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する」と定めています。*2 就業規則で申出の時期を決めている会社もありますが、申出から退職日までの期間は、後任を採用するには短いことが多いのです。
次に、採用する側の期間です。求人の内容を決め、募集を出し、書類選考と面接を経て内定を出します。エンジニア中途採用で候補者が別の会社で働いている最中なら、内定のあとに候補者自身が今の勤め先へ退職を申し出て、引継ぎを終えてから入社します。募集から内定までの期間に、内定から入社までの期間が加わる形です。
2つの期間を並べると、後任が退職日より前に入社し、辞める人から直接引継ぎを受けられるのは、退職の申出がかなり早かった場合に限られます。申出から数週間で退職する場合は、辞める人の退職日と後任の入社日の間に、担当者のいない期間ができやすくなります。欠員補充の計画では、この期間を前提にして、誰が何を担うかを先に決めておく必要があります。選考と入社時期の日程の立て方は「エンジニア中途採用の選考期間、入社時期と分けて日程を決める」で扱っています。
会社の規模による欠員率の違い
後任がどれだけ見つかりにくいかは、会社の規模によっても違います。雇用動向調査の2025年上半期の結果から、情報通信業の専門的・技術的職業従事者を企業規模別に取り出しました。2025年6月末日現在、情報通信業全体でこの職業の欠員率は2.1%、未充足求人数は2万3,800人です。*3
企業規模別に見ると、1,000人以上の企業は0.6%、300〜999人は1.9%、100〜299人は2.5%、30〜99人は3.7%、5〜29人は4.9%で、規模が小さいほど欠員率は高くなっています。*3 5〜29人の企業では、働いている専門職100人あたり、およそ5人分の求人が埋まっていない計算です。
人数でも見てみます。5〜29人の企業で埋まっていない求人は7,900人で、1,000人以上の企業の2,800人を上回ります。*4 一方で、この職業で働いている人は、5〜29人の企業が15万9,600人、1,000人以上の企業が49万2,000人です。*5 5〜29人の企業は、1,000人以上の企業と比べて働いている人が3分の1ほどなのに、埋まっていない求人は3倍近くあります。
欠員率は6月末日という1日の時点の状態で、1件の求人が埋まるまでの日数を測ったものではありません。また、専門的・技術的職業従事者にはエンジニアのほかの専門職も含まれます。それでも、少人数の会社ほど専門職の求人が埋まっていない状態にあることを前提に、日程を組んでおくのが無難です。少人数の開発チームでは、1人の退職で担当者のいなくなる作業の割合も大きくなります。
退職日から逆算する進め方
後任の採用日程は、退職日から逆算して組みます。退職の申出を受けたら、次の順に進めます。
- 退職日と最終出社日を確かめる
- 辞める人が担当している作業を書き出す
- 作業を、後任に任せるもの、社内の別の人に移すもの、当面止めるものに分ける
- 後任に任せる作業から採用要件を書き、求人を出す
- 後任の入社までの間、誰が何を担うかを決める
最初に確かめるのは、退職日と最終出社日の2つです。残っている年次有給休暇を退職前にまとめて使う場合は、最終出社日が退職日より早くなります。辞める人から直接話を聞けるのは最終出社日までなので、引継ぎの日程はこちらを基準にします。
作業の書き出しは、辞める人本人と一緒に行います。日々の問い合わせ対応、月に1回の改修、年に1回の証明書の更新のように、頻度と次の期限を添えて並べると、退職日から後任の入社までの間に来る期限が見えてきます。担当していたシステムの設計書や手順書が残っているかも、このときに確かめておきます。
次に、書き出した作業を3つに分けます。後任に任せるのは、専門の知識が要り、この先も続く作業です。社内の別の人に移すのは、期限が近く、手順が決まっている作業です。当面止めるのは、期限に余裕があり、後任の入社を待てる作業です。後任に任せる作業が決まれば、その作業から採用要件を書けます。書き方は「エンジニア採用のミスマッチを採用要件で防ぐ」で整理しています。
後任に任せる作業の書き出し方
社内の販売管理システムの保守を1人で担当していたエンジニアが辞める場合を例にします。作業ごとに頻度と期限を書き、後任の入社までの担当と、後任に任せる時期を決めると、次のようになります。
| 作業 | 頻度・期限 | 後任の入社まで | 後任に任せる時期 |
|---|---|---|---|
| 社内からの問い合わせ対応 | 毎日 | 社内の別の人に移す | 入社後1か月ほどで |
| 請求書に載せる項目を追加する月次の改修 | 毎月末 | 当面止め、依頼を受け付けるだけにする | 入社後すぐ |
| Webサイトの暗号化通信に使う証明書の更新 | 年1回・次は3か月後 | 手順書を残してもらい、社内の別の人に移す | 次の更新から |
| 受注データを読み込む機能の追加 | 来期の計画 | 当面止める | 設計から任せる |
表の右の2列を埋めると、後任に何を求めるかがはっきりします。この例では、設計から任せる機能の追加と月次の改修が後任の仕事の中心になるので、採用要件には「既存のシステムに機能を追加した経験」を書くことになります。反対に、問い合わせ対応や証明書の更新は社内に移せるので、採用要件には入れなくても構いません。
書き出した表は、辞める人に見せて抜けがないかを確かめてもらいます。担当者本人しか知らない作業は、本人が書き出さない限り表に載りません。担当者の離脱に備えて個人に頼っている情報を洗い出す方法は「担当者の離脱に備えて技術情報の個人依存を洗い出す」で扱っています。
つまずきやすい点
一つ目は、辞めた人とまったく同じ経験を持つ後任を探すことです。長く同じシステムを担当してきた人の経験は、その会社の中で身についたものが多く、社外で同じ経験を持つ人を見つけるのは難しくなります。表で後任に任せると決めた作業に絞って条件を書けば、応募できる人も増えます。
二つ目は、求人を出すのが退職日の後になることです。退職が決まってから、代わりの人を採るかどうかを社内で相談しているうちに、辞める人の最終出社日が過ぎてしまうことがあります。後任を採るかどうかの判断と、採用要件の下書きは、退職の申出を受けた週のうちに始めておくと進めやすくなります。
三つ目は、引継ぎを最終出社日の直前の数日にまとめて行うことです。後任が決まっていない段階では、引継ぎの相手は社内の別の人か、書き残した資料になります。辞める人には、後任が入社してから読んでも分かるように、作業の手順と、どこに何があるかを資料に書いてもらいます。辞める人に説明してもらう時間は、最終出社日から逆算して先に押さえておきます。
外部に委託するときに確認しておきたい点
後任の入社までの間に来る期限に、社内の人だけでは間に合わないこともあります。その場合は、エンジニア中途採用と並行して、期限の決まった作業を業務委託(社員として雇わず、作業ごとに契約する形)の専門人材に任せる方法があります。採用だけで間に合わせようとせず、入社までの期間の作業を別の人に任せる考え方です。
委託するときは、作業と期間を具体的に書いてから相談します。「販売管理システムの月次の改修を、後任が入社するまでの3か月」のように書けていれば、どんな経験の人に頼めばよいかが決まります。後任が入社したあとは、委託していた作業の記録を後任に渡せるよう、作業の手順と変更の履歴を残してもらう約束もしておきます。
欠員補充のやり方は、中途採用のほかにも社内での育成や異動などがあります。どの方法を選ぶかの比べ方は「エンジニア中途採用だけに頼らない欠員補充、9つの選択肢」でまとめています。
まとめ:欠員補充で確かめておきたい3つの点
エンジニア中途採用で欠員補充を進めるうえで、確かめておきたい点は3つに整理できます。第一に、後任が退職日までに入社できない場合も考え、退職日と最終出社日から逆算して採用の日程を組むこと。第二に、辞める人の作業を書き出し、後任に任せるもの、社内の別の人に移すもの、当面止めるものに分けること。第三に、少人数の会社ほど専門職の欠員率が高いことを踏まえ、後任の入社までの間を誰がどう支えるかを先に決めることです。この3点を踏まえておけば、「後任が決まらないまま退職日が過ぎ、誰も分からない作業が残った」という事態を避けやすくなります。入社までの間の人手に迷いがあれば、外部の手を借りるのも一つの選択肢です。
よくある質問
後任の求人は、いつ出せばよいですか
退職の申出を受けたら、できるだけ早く出すのがよいでしょう。採用要件は、辞める人の作業を書き出したあとに固めれば足ります。最初は任せる作業の中心だけを書いて募集を始め、書き出しが終わった時点で求人の内容を直す方法もあります。
後任が見つかるまで、辞める人の退職日を延ばしてもらえますか
本人が同意すれば、退職日を後ろにずらすことはできます。ただし、民法では契約期間の決まっていない雇用は退職の申出から2週間で終わるため、*2 会社の都合だけで延ばすことはできません。延長をお願いするときは、延ばす期間と、その間に頼みたい作業をはっきり伝えます。
辞める人に、後任の面接に加わってもらってもよいですか
加わってもらうこと自体は差し支えありません。ただ、採否を決めるのは、後任と一緒に働く社内の人です。辞める人には、担当していた作業の知識をもとに、技術面の質問を考える段階で手伝ってもらうと、面接の内容が作業に沿ったものになります。
欠員率は、どこで確かめられますか
厚生労働省の雇用動向調査が、毎年6月末日現在の未充足求人数と欠員率を公表しています。産業、企業規模、職業を組み合わせた値は、政府統計の総合窓口(e-Stat)の結果表で見られます。*3
後任が決まるまでの人手を相談したいとき
辞める人の作業の書き出しや、後任の入社までに任せたい作業の整理からご相談いただけます。
Remoguとリラシクなら、リモートワークで働く社員の候補者も、業務委託で開発に加わる専門人材も探せるので、後任の採用と入社までの作業の担い手探しを並行して進められます。
Remoguは、リモート前提で全国から即戦力のITプロ人材を調達するサービスです。リラシクは、扱う求人がすべてリモートワークのITエンジニア専門転職エージェントです。どちらもLASSICが運営しています。
出典
- *1 参考:厚生労働省「令和7(2025)年上半期雇用動向調査結果の概況」(https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/koyou/doukou/26-1/dl/gaikyou.pdf)。出典:厚生労働省「令和7(2025)年上半期雇用動向調査結果の概況」(令和7年12月23日公表)。主な用語の定義(未充足求人・欠員率)と、表8(職業別未充足求人の状況・各年6月末日現在)を参照(2026年9月確認)
- *2 参考:e-Gov法令検索「民法」(https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089)。出典:民法(明治29年法律第89号)第627条第1項(期間の定めのない雇用の解約の申入れ)を参照(2026年9月確認)
- *3 参考:e-Stat「雇用動向調査」令和7年上期 第41-3表(https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&layout=dataset&toukei=00450073&tstat=000001012468&cycle=7&year=20250&stat_infid=000040490243)。出典:厚生労働省「雇用動向調査」令和7年上期 第41-3表(産業(中分類)、企業規模、職業(大分類)別欠員率、令和7年6月末日現在)。情報通信業の専門的・技術的職業従事者の企業規模別の値を参照(2026年9月確認)
- *4 参考:e-Stat「雇用動向調査」令和7年上期 第41-2表(https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&layout=dataset&toukei=00450073&tstat=000001012468&cycle=7&year=20250&stat_infid=000040490242)。出典:同調査 第41-2表(産業(中分類)、企業規模、職業(大分類)別未充足求人数、令和7年6月末日現在)。情報通信業の専門的・技術的職業従事者の企業規模別の人数を参照(2026年9月確認)
- *5 参考:e-Stat「雇用動向調査」令和7年上期 第41-1表(https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&layout=dataset&toukei=00450073&tstat=000001012468&cycle=7&year=20250&stat_infid=000040490241)。出典:同調査 第41-1表(産業(中分類)、企業規模、職業(大分類)別常用労働者数、令和7年6月末日現在)。情報通信業の専門的・技術的職業従事者の企業規模別の人数を参照(2026年9月確認)