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業務委託エンジニアに頼むEDI連携|取引先とのシステム連携
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)
この記事の結論
- EDI連携は標準に沿っていても、送信時間や障害時の再送など取引先ごとに取り決める事項が残ります。
- 取引先との接続テストは、通信、メッセージ、業務システムの3段階で進め、並行運用を経て本番に移ります。
- 業務委託エンジニアには変換処理とテストを任せ、取引先と合意する事項と問い合わせ窓口は社内に置きます。
※ 本記事は2026年9月時点の公式情報(省庁・公的機関、および製品やサービスを提供する事業者が公開している資料)に基づきます。
取引先から、受発注のデータを流通BMSで送ってほしいと言われた。EDIの改修を業務委託エンジニアに頼んだのに、取引先との接続テストの日程がなかなか決まらない——。取引先とデータをやり取りするシステム連携では、こうした悩みが起こりがちです。EDI連携とは、受発注や請求などの取引データを、取引先と取り決めた形式と通信手順で電子的に交換する仕組み(EDI、電子データ交換)を、自社のシステムにつなぐことを指します。
形式が業界の標準で決まっていれば、EDI連携の作り込みは業務委託エンジニアにも頼みやすい仕事です。ただし万能ではなく、標準に沿っていても取引先ごとに取り決める事項が残り、テストや切り替えの日程は相手方の都合に左右されます。本記事では、EDI連携の開発や切り替えを外部のエンジニアに頼む開発マネージャーに向けて、取引先ごとの違い、取引先と交わす書類、接続テストと切り替えの日程、問い合わせ窓口、そして頼むときに確認したい点を整理します。
目次
EDI連携の標準とは
EDI連携で使う形式には、業界ごとの標準があります。消費財の流通では、流通システム開発センターが管理する流通BMS(流通ビジネスメッセージ標準)が、卸売・メーカーと小売の間でやり取りする発注、出荷、受領、返品、請求、支払などのメッセージを定めています。業界を問わない中小企業向けには、平成28年度の中小企業庁の事業で策定された中小企業共通EDIがあります。*7
標準が作られた背景には、取引先ごとに形式がばらばらだという問題がありました。流通BMSの検討では、小売業10社が使っていたメッセージとデータ項目をすべて出し合い、約2100項目を171項目へ名寄せしています。*2 中小企業共通EDIの側も、取引先ごとに画面や端末が分かれる「多画面/多端末」の問題の解決を掲げています。
標準に沿ったシステム連携なら、取引先が増えても同じ作りを使い回せます。業務委託エンジニアに頼む作業も、取引先ごとの個別の変換処理を何本も作ることから、標準の形式に合わせた作り込みを一度行い、取引先ごとの設定を足していく形に変わります。
取引先ごとに違う点
標準を使っても、取引先ごとの違いはなくなりません。流通BMSの「共通確認シート」は、小売企業が作って卸企業に示す業務の前提条件の一覧です。対象の商品カテゴリと取引先コード、定番・特売・新店といった対象データ、物流センターを経由するか店舗へ直接納めるか、データ種ごとの送信時間、出荷メッセージの送信締め時間などを書き込みます。*1 同じ流通BMSでも、これらの答えは取引先によって変わります。
障害が起きたときの扱いも、同じシートで取り決めます。受注データの再送を求める方法、再送をファイル単位で行うか取引番号単位で行うか、再送されたデータを追加として扱うか上書きとして扱うか、受け取れるデータ量の上限などです。ここが決まっていないと、業務委託エンジニアは再送を受け付ける処理を作れません。
標準から外れた使い方にも気をつけます。流通BMS協議会が公開している事例集には、次のような例が載っています。*4
- 本来はメモや印字に使う「自由使用欄」に、相手のシステムの処理を切り替える値を入れる
- 1店舗分がすべて欠品したときの欠品レコードを受け取れないため、送らないよう取引先に求める
- 使っていない任意項目でもXML(データに項目名の目印を付けて書く形式)のタグが無いとエラーにする
相手方がこうした使い方をしていれば、標準どおりに作った処理でも取引先ごとの手直しが要ります。見積もりの前に、取引先から届いたシートに標準から外れた指定が無いかを、エンジニアと一緒に読み合わせておくと手戻りを減らせます。
取引先と交わす書類
取引先との調整は、決まった書類を順に埋めて進めます。流通BMSの導入ガイドライン(業界編)が示す順序は、共通確認シートで業務の前提条件に同意をとる、マッピングシートで既存の形式と流通BMSの形式の対応を確かめる、通信パラメータ協定シートでEDIサーバの設定に合意する、そのうえでEDIサーバを設定して取引先と接続を確かめる、の4段階です。*1
| 書類 | 取り決めること | 作る側 |
|---|---|---|
| 共通確認シート | 対象の業務とデータ、物流の形、データ種ごとの送信時間、障害時の再送、テスト日程と本番日 | 小売企業のユーザ部門 |
| マッピングシート | いま使っている形式の項目と流通BMSの項目の対応、サンプル値、項目の使い方 | 小売企業のユーザ部門 |
| EDI基本情報協定 | 企業情報、EDIの責任者と担当者、サーバの稼働時間帯 | 小売企業のユーザ部門 |
| EDI通信パラメータ協定 | 使う通信手順の設定値 | 小売企業のシステム部門 |
| メッセージ情報協定 | 使うメッセージの種類、バージョン、圧縮の有無 | 小売企業のシステム部門 |
これらのシートは、基本的に小売企業が作って卸企業に示します。卸・メーカーの側で業務委託エンジニアに頼むなら、取引先から受け取ったシート一式が作業の出発点です。マッピングシートは、取引先どうしの問い合わせを減らすためにも、サンプル値と項目の使い方の欄を埋めておくことが大事だとされています。シートのほかに、いま使っているコードと流通BMSのコードの新旧対応表や、伝票・物流ラベルの印字の仕様も用意します。
発注する側の小売企業で頼む場合は、シートを作ること自体が仕事になります。業務の前提条件はユーザ部門、通信の設定値はシステム部門が作る分担なので、業務委託エンジニアにはマッピングと通信設定の下書きを任せ、業務の条件は社内で決めると切り分けやすくなります。
接続テストの進め方
取引先との接続テストは3つの段階に分かれます。第1段階は通信環境の相互接続の確認で、取り決めた通信手順と設定でHTTP(Webの通信の決まり)のレベルの通信ができるかを見ます。第2段階は流通BMSのメッセージを送受信できるかの確認、第3段階は業務システムまで含めて一連のメッセージ交換ができるかの確認で、第3段階は任意とされています。*1
第1段階では、送信側から受信側へ通信できることに加え、実施できる範囲で、誤ったIDやパスワード、適切でない電子証明書では通信できないことも確かめます。テストには、本番のデータと取り違えないよう、先頭に「Test」を付けたテスト用のメッセージ種を使うことが勧められています。*3
導入ガイドライン(システム編)は、テストで起きやすい問題も挙げています。第1段階では、ベーシック認証のIDとパスワードの設定を間違える、接続先のIDとパスワードを取り違える、といった例です。第2段階では、メッセージ種のつづりの間違い、企業識別コードの違い、日付が「0000-00-00」になっている例が載っています。*3 どれも片方だけでは気づきにくいので、テストの日には双方の担当者が同時に結果を確かめられる時間を取っておきます。
日程を決めるときは、相手のサーバが動いている時間も確かめます。EDI基本情報協定には互いのサーバの稼働時間帯を書き、相互に接続できる時間帯を取り決めます。定期保守で接続できない時間を設けている取引先もあるので、テストの予定はそこを外して組みます。
切り替えの日程
導入ガイドラインは、流通BMSを初めて実装する場合の目安として、自社でEDIサーバを持つサーバ型なら半年程度、相手のサーバにデータを取りに行くクライアント型なら3〜4か月程度の期間を示しています。*1 どちらの計画例でも、取引先との接続テストの後に、テストモードでの既存の手順との並行運用を置き、そのあとで既存の手順の通信環境を閉じて本番に移ります。
切り替えで手間がかかるのは、切り替え日より前に発注され、切り替え日以後に納める「先付け発注」の分です。ガイドラインは2つの推奨案を示しており、違いはテスト用の印(テストフラグ)の切り替えを小売と卸のどちらが行うかにあります。小売が行う案では、先付け発注の分が既存の方式と流通BMSの両方で二重に届くため注意が必要だとし、既存のデータを送るかどうかは取引先と調整するよう求めています。*1
切り替えの単位も決めておきます。物流センターごとに切り替えるのか、あて先ごとに切り替えるのかで、業務委託エンジニアが作るデータの振り分けの処理が変わります。
切り替えの期限が外から決まっている場合もあります。NTT東日本・西日本は、INSネット(ISDN回線のサービス)の提供を2028年12月31日で終えると発表しており、この終了には2024年1月から提供している補完策も含まれます。*6 ISDN回線で動いているEDIを移すなら、並行運用の期間まで含めて、そこから逆算して取引先との日程を組みます。
問い合わせ窓口と障害時の連絡
本番が始まってからの問い合わせ窓口と、障害時の連絡先も、切り替えの前に決めておきます。ガイドラインは、障害時の対応について取引先と検討しておく点として、取り決めた接続時間帯の中で障害が起きたときの対応、連絡先の確認、障害時の請求・支払の方法、障害を想定した訓練を挙げています。*1 障害のときは発注データなしで発注されることもあるので、その分の請求と支払の扱いも決めておきます。
連絡先は、協定シートの担当者欄に加えて、取引先ごとの連絡リストを作っておくと役に立ちます。ガイドラインの例では、取引先名と取引先コード、通信方式、連絡先の窓口と担当者名、連絡できる時間帯つきの電話番号、障害時の対応方式、訓練の実施日と最終確認日を並べています。
業務委託エンジニアが開発の間は取引先とのやり取りを受け持っていても、本番の後も同じ人が対応できるとは限りません。取引先から見た窓口は社内の担当者に置き、エンジニアは技術的な問い合わせに答える役として連絡リストに載せる、という形にしておけば、契約が終わっても連絡が途切れません。仕様の解釈で迷ったときは、運用ガイドラインとメッセージ別項目一覧を見たうえで、流通システム開発センターに問い合わせるよう案内されています。
外部に委託するときに確認しておきたい点
EDI連携を業務委託エンジニアに頼むときは、作業の範囲を書類と段階の単位で区切ると伝わりやすくなります。取引先から受け取ったマッピングシートと協定シートをもとにした変換処理の作成、EDIサーバの設定、接続テストの第1・第2段階の実施と記録、といった形です。
一方、取引先と合意する事項は社内に残します。送信時間や締め時間、障害時の再送の方法、先付け発注の扱い、切り替えの単位は、業務の都合と取引先との関係で決まる事柄です。エンジニアにはこれらの論点を洗い出して選択肢を示してもらい、決めるのは社内、という分担にしておくと判断が止まりにくくなります。
経験を確かめるときは、「EDIの経験あり」だけでなく、どの標準と通信手順で、接続テストのどの段階を担当したかを聞きます。API(システム同士が機能を呼び出す窓口)を使うシステム連携で決めておく事柄は「システム連携のAPI設計・開発、業務委託エンジニアに渡す決まり」で、ISDN回線を使う古いEDIの移行先の選び方は「レガシーEDIのインターネットEDI移行を外注で進める」で扱っています。
まとめ:EDI連携で確かめておきたい3つの点
EDI連携を業務委託エンジニアと進めるうえで、確かめておきたい点は3つに整理できます。第一に、対象データや送信時間、障害時の再送といった取引先ごとの前提条件を、共通確認シートなどの書類で先に固めること。第二に、接続テストの3つの段階と並行運用、先付け発注の扱いを、取引先との日程に落とすこと。第三に、取引先から見た問い合わせ窓口を社内に置き、エンジニアの役割を連絡リストに書き分けることです。この3点を踏まえておけば、「プログラムはできたのに、取引先とのテストが始められない」という事態を避けやすくなります。変換処理やテストを担う人が社内で見つからないときは、外部の手を借りるのも一つの選択肢です。
よくある質問
流通BMSのXMLスキーマは、どこで手に入りますか
流通BMS協議会のWebページから利用登録を申し込むと、事務局からダウンロード用のURLが届きます。登録を受け付けているのは、基本形Ver2.2、商品マスタVer1.0、百貨店版Ver2.2のスキーマです。*8
取引先のマッピングシートが標準に沿っているかを確かめる方法はありますか
流通BMS協議会が、希望する小売業のマッピングシートが標準に沿っているかをチェックしています。申し込みはマッピングシートを出す1か月前までが目安で、審査には3メッセージで約4週間かかるとされています。*5
EDIサーバの運用を外部の事業者に任せる場合、電子証明書は誰のものを使いますか
委託先が設備と運用を代行する形なら、メッセージ上の識別子も電子証明書も取引の当事者のものを使います。ASP(ネット経由でサービスを提供する事業者)に業務の運用ごと委託する形では、識別子は当事者のもの、電子証明書はASP事業者のものを使います。*3
流通業以外の取引先とのEDI連携でも、同じ進め方でよいですか
書類の名前は違っても、前提条件をそろえてからテストと切り替えに進む流れは同じです。中小企業共通EDIでは、企業間の取引情報をインターネット経由で交換するクラウドの仕組み(共通EDIプロバイダ)を使う形が示されています。どのプロバイダを使うかも含めて、取引先と一緒に計画を立てます。
EDI連携の開発を任せる人を探すとき
取引先から届いたシートと切り替えの予定が分かっていれば、そのままご相談いただけます。どこまでを社内で決めるか迷っている段階でも構いません。
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出典
- *1 参考:流通BMS協議会「流通ビジネスメッセージ標準 導入ガイドライン(業界編)」V3.1(2013年4月)(https://www.gs1jp.org/ryutsu-bms/standard/standard01_2.html)。出典:流通BMS協議会(事務局:一般財団法人流通システム開発センター)。導入ガイドライン一式(Ver3.2)のうち業界編。1.1 導入の手順、1.2 導入期間の目安、5章 取引先との各種調整作業(共通確認シート・協定シート・マッピングシート)、6章 接続確認テスト・移行の考え方、7章 稼働後の留意点・障害時の対応を参照(2026年9月確認)
- *2 参考:流通BMS協議会「流通ビジネスメッセージ標準 導入ガイドライン(概要編)」第3.0版(2011年5月)(https://www.gs1jp.org/ryutsu-bms/standard/standard01_2.html)。出典:同導入ガイドライン一式のうち概要編。1.2 EDI標準化の目的と検討経緯(平成17年度の検討で約2100項目を171項目へ名寄せ)を参照(2026年9月確認)
- *3 参考:流通BMS協議会「流通ビジネスメッセージ標準 導入ガイドライン(システム編)」V3.2(2017年4月)(https://www.gs1jp.org/ryutsu-bms/standard/standard01_2.html)。出典:同導入ガイドライン一式のうちシステム編。2.8 外部委託への対応、4.2 検証ルールとテスト項目、4.6 相互接続テストにおける留意事項を参照(2026年9月確認)
- *4 参考:流通BMS協議会「標準外利用の事例と標準仕様に沿った使い方のガイド」(2013年3月1日)(https://www.gs1jp.org/ryutsu-bms/standard/guide.html)。出典:流通BMS協議会「標準仕様に沿って使う」のページから公開されているPDF。自由使用欄の使い方、出荷梱包の運用方法、任意項目が未使用の場合のXMLタグの事例を参照(2026年9月確認)
- *5 参考:流通BMS協議会「マッピングシートチェック」(https://www.gs1jp.org/ryutsu-bms/active/mapping_check.html)。出典:流通BMS協議会。申請の時期(マッピングシート提出の1か月前まで)と審査の期間(3メッセージで約4週間)を参照(2026年9月確認)
- *6 参考:NTT東日本・NTT西日本「INSネットの新規申込受付・提供終了について」(2024年3月7日)(https://www.ntt-east.co.jp/release/detail/20240307_02.html)。出典:NTT東日本・NTT西日本のニュースリリース。提供終了日(2028年12月31日)と、終了の対象に補完策が含まれることを参照(2026年9月確認)
- *7 参考:特定非営利活動法人ITコーディネータ協会「中小企業共通EDI」(https://www.edi.itc.or.jp/edi)。出典:ITコーディネータ協会の中小企業共通EDIのページ。平成28年度経営力向上・IT基盤整備支援事業(次世代企業間データ連携調査事業)での策定を参照。共通EDIプロバイダが多画面/多端末の問題を解決するとの記述は、同協会の「共通EDIプロバイダ」のページ(https://www.edi.itc.or.jp/edi-provider)による(2026年9月確認)
- *8 参考:流通BMS協議会「XMLスキーマ関連」(https://www.gs1jp.org/ryutsu-bms/standard/standard01_3.html)。出典:流通BMS協議会。XMLスキーマの利用登録と、登録を受け付けているスキーマ(基本形Ver2.2・商品マスタVer1.0・百貨店版Ver2.2)を参照(2026年9月確認)