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外部人材活用で採用難を補う役割分担、社員に残す3つの仕事
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)
この記事の結論
- 日商・東商の2026年の調査では、人手不足の企業の75.7%が採用を強めている一方、外部人材の活用は17.0%にとどまります。
- 外部人材に分析や案づくりを頼むときも、現状の材料集め・社内の調整・判断と決裁の3つは社員に残します。
- 役割は計画書の業務内容の欄に社員側と外部側に分けて書き、付与する権限と相談の窓口を受け入れ前に決めておきます。
※ 本記事は2026年10月時点の公式情報(省庁・公的機関、および製品やサービスを提供する事業者が公開している資料)に基づきます。
求人を出しても応募が来ない。来ても、求める経験と合わない——。エンジニアの採用難が続くなかで、外部人材活用を考え始める会社は少なくありません。そのとき最初に決めておきたいのが、社員と外部の人の役割分担です。採用難のもとでの役割分担とは、正社員で埋めるはずだった席の仕事を分け、外部の人に頼む部分と社内に残す部分を、始める前に書き分けておくことを指します。
役割を先に書いておけば、外部の人に何でも相談が集まる事態や、仕事を任せきりにする事態を避けやすくなります。ただし、一度書いた分担も、進めるうちに見直しが要ります。本記事では、日本商工会議所・東京商工会議所の2026年の調査と、総務省の「外部デジタル人材の確保ガイドブック」をもとに、頼む仕事の型、社員に残す3つの仕事、計画書への書き分け方、権限と窓口の決め方、つまずきやすい点を整理します。
目次
採用難のなかの役割分担とは
正社員の席には、ふつう複数の仕事がまとめて載っています。開発の作業に加え、関係部署との調整、進め方の判断、予算の相談までを、入社後に少しずつ任せていく形です。採用難でその席が埋まらないとき、同じ求人票の中身をそのまま外部の人に渡すと、どこまでを頼んだのかが曖昧になります。外部の人は契約で決めた範囲で動くため、社員なら引き受けていた調整や判断が、誰の仕事でもないまま残ります。
そこで、求人票の仕事をいったん分解し、外部の人に頼む部分と社員に残す部分に書き直します。ここでいう外部人材は、業務委託で開発に加わるフリーランスや副業・兼業の専門人材、事業者への委託を指します。
分け方の手がかりとして、本記事では総務省が市町村向けにまとめた「外部デジタル人材の確保ガイドブック」を使います。自治体向けの資料ですが、社内に専門の人が足りず、外部の人と一緒に課題を解いていく状況は企業でも同じです。手順や記載例のうち、会社でも使える部分を借りて読み進めます。
人手不足への対策の実態
日本商工会議所と東京商工会議所が2026年7月21日から8月21日にかけて行った「多様な人材の活躍等に関する調査」では、全国の会員企業2,654社が回答しています。人手が「不足している」と答えた企業は60.0%で、業種別では情報通信・情報サービス業が57.9%でした。*1
人手が不足している1,592社に対策を複数回答で聞くと、「採用活動の強化(非正規含む)」が75.7%で最も多く、「デジタル・機械・AI等による省力化」40.2%、「女性・シニア・外国人材など多様な人材の活躍推進」32.3%、「従業員の能力開発」30.5%と続きます。「事業の縮小、見直し、外注化」は21.9%、「外部人材の活用(副業・兼業人材、フリーランス等)」は17.0%でした。*1
従業員規模で分けると、「事業の縮小、見直し、外注化」は20人以下で31.6%と高く、21〜100人では16.9%、101〜300人では14.4%、301人以上では17.8%です。*1 採用を強める会社は多い一方で、外部の人を迎えて仕事を分ける会社はまだ少数です。採用の結果を待つ間に外部人材活用を併せて考える余地は、まだ大きいといえます。
同じ調査では、シニア人材の雇用の課題に「適切な業務・役割の設定」を挙げた企業が43.4%ありました。*1 外部人材についての設問ではありませんが、迎える人の役割を決めきれない悩みは、外部人材の受け入れでも起こりやすいものです。
外部人材に頼む仕事の型
総務省のガイドブックは、外部人材の確保を4つのステップで進めるよう示しています。重点課題の特定、人材要件の定義、人材の選定、人材の受入れの順です。1つ目のステップでは、関係部署へのアンケートで困りごとを聞き取ります。アンケートの例には、困りごとへの支援として「人を増やしてほしい」と「業務内容を見直してほしい」が並んでいます。*2 人を増やす前に仕事の中身を見直す道もある、と気づかせる設問です。
2つ目のステップでは、課題の種類から必要な人材の型を選びます。ガイドブックの例では、何から手を付けてよいか分からない段階にはプロデューサー(変革を主導する)、優先順位や進み具合が不明確な段階にはプロジェクトマネージャー(企画構想・スケジュール・コスト管理)を当てます。業務改革や仕様の確認が甘い段階にはサービスデザイナー(業務やサービスの設計)、実装が遅れている段階にはエンジニア(技術の実装)です。*2
会社で使うときは、採用できなかった席の仕事を「いま困っていること」に言い換えてから、この型に当てはめます。たとえば「開発リーダーが採れない」は、実装の遅れなのか、優先順位を決める人がいないのかで、頼む型が変わります。型が決まると、社員に残る範囲との境目も見えてきます。
社員に残す3つの仕事
ガイドブックの記載例と事例からは、外部の人がいても社内が受け持つ仕事が3つ見えてきます。現状の材料をそろえること、社内の調整、判断と決裁です。この3つの整理は本記事によるものです。
1つ目は、現状の材料をそろえることです。プロジェクト計画書の記載例では、問い合わせ対応を一人で抱える情報システム部の課題について、情報システム部が「問合せ実績調査、他業務棚卸」を、外部人材が「業務分析、業務改善案策定」を受け持つと書き分けています。*2 社内の実績や業務の一覧は、社内の人でなければ集めにくい材料です。分析を外部の人に頼む場合も、前提となる事実は社員が用意します。
2つ目は、社内の調整です。山形県酒田市の事例では、デジタル関連の施策を庁内で調整する際、DX担当課が関係各所との事前調整を丁寧に行い、外部人材が内容の検討・調整に集中できる環境をつくっているとされます。ガイドブックは成功のポイントとしても、庁内調整に職員が積極的に関わることを挙げています。*2 会社でも、関係部署への事前の説明や会議の段取りは社員に残します。
3つ目は、判断と決裁です。新潟県佐渡市の事例では、外部人材と職員が一体となって進める体制をとりながらも、透明性・公平性確保の観点から、外部人材には事務決裁権を付与していないとしています。*2 会社でも、予算の承認や採否、進め方の最終判断は社員が持ち、外部の人には判断材料となる案や評価を出してもらう形が分かりやすいでしょう。
役割を計画書に書き分ける
ガイドブックは、受け入れ前の合意形成をプロジェクト計画書で行うよう勧めます。計画書では、プロジェクトで達成する目的、目的のためのステップと業務範囲と期限を示す業務概要、見込まれる成果物の3つを決めます。行政手続のオンライン化の例では、業務概要を「現状業務の整理・分析」「新システムの要件整理」「開発・テスト運用」に分け、成果物を「現状業務一覧+課題一覧」「新システムの要件一覧」「開発計画書・運用テスト計画等」としています。*2
参考資料の記載例では、主管組織、取組課題、関係組織、取組期間、業務内容の5項目を、誰が・なぜ・誰と・いつ・何をの形で書き出します。業務内容は、プロジェクトの関係者の役割と業務を書き出す欄です。前の節で触れた情報システム部と外部人材の書き分けは、この欄に書かれています。
会社では、業務内容の欄を社員側と外部側の2行に分け、「調べる」「案を出す」「決める」のような動詞で書くと、境目がはっきりします。成果物も、外部の人から受け取るものと社員が作るものを別の行に分けておくと、受け取るときに確かめる範囲が明確になります。役割分担を1枚の計画書にまとめておけば、関係部署への説明にもそのまま使えます。
受け入れ前に決める権限と窓口
ガイドブックは、面接を候補者との双方向のすり合わせの場と位置づけ、調整が必要な項目の例として、契約開始日、報酬、勤務スタイル(リモート可否等)、他案件への従事状況、付与する権限(意思決定に参加できるか否か)を挙げています。*2 前の節の判断と決裁の線引きは、面接の段階で候補者と確かめておく項目でもあります。
受け入れの段階では、業務分掌や権限の設定、PCやテレワーク環境などの執務環境を整えるよう示しています。受入れチェックリストは合意形成・受入準備・環境整備の3つに分かれ、受け入れる部署や関係部署の合意、外部人材との業務内容のすり合わせ、PCや会議ツールの準備、入館証やセキュリティ権限の設定、相談窓口の設定などを確かめます。
相談窓口は一人に決め、その人が社内の誰に回すかを判断する形にしておくと、外部の人が社内の事情に振り回されずに済みます。権限は、システムのアカウントだけでなく、出てもらう会議や見られる資料の範囲まで決めておくと、行き違いが減ります。
つまずきやすい点
ガイドブックは、陥りがちな落とし穴を3つ挙げています。1つ目は、外部人材に全てやってもらおうという過剰な期待です。業務全体を丸投げしてしまうことや、外部人材の貢献したい思いと団体内のやってほしいことが一致していないことが例に挙がっています。*2 採用難で困っているときほど、空いた席の仕事を丸ごと頼みたくなります。社員に残す3つの仕事を先に書いておけば避けやすくなります。
2つ目は、活用の方法が社内に伝わらず、仕事が多すぎたり少なすぎたりすることです。何でも相談が入り、本来の業務が進まない例が示されています。業務内容と相談窓口を関係部署に知らせておけば、範囲外の相談は窓口で止められます。
3つ目は、限られた外部人材の経験に基づく意見に偏り、机上の空論になりがちなことです。現場に即さない助言に終始すると、かえって職員の仕事が増えるとされています。広島県福山市の事例では、外部人材が幹部職員や一般職員と定期的にミーティングを行い、双方の意向や課題感をつかんだうえで、実情に即した助言を出しています。*2 社員が現場の声を定期的に届ければ、案は実態から離れにくくなります。
外部に委託するときに確認しておきたい点
ガイドブックの簡易判断フローチャートは、確保の形態を、職員として任用するか、事業者に委託するか、個人事業主やフリーランスに委託するかで分けています。委託の形は、必要なプロジェクト期間に限って専門性を活用できる点をポイントに挙げ、事業者に委託する際は相見積りで予算感をつかむよう勧めています。*2
会社でも、計画書の業務内容・成果物・付与する権限が、契約の業務範囲と食い違っていないかを確かめます。範囲が途中で変わったときの決め直し方も、事前に決めておきます。契約の形による責任や扱いの違いは、契約の内容と専門家の意見で確かめてください。採用が決まるまでの期間をどう埋めるかは、外部人材活用を採用難のつなぎにするとき決める4つのことの記事でも整理しています。
まとめ:採用難の役割分担で確かめておきたい3つの点
採用難のなかで外部人材活用を進めるとき、役割分担で押さえておきたい点は3つに整理できます。第一に、採用できなかった席の仕事を困りごとに言い換え、頼む型を決めること。第二に、現状の材料集め・社内の調整・判断と決裁の3つは社員に残し、分析や案づくり、専門的な実装を外部の人に頼むこと。第三に、その分担を計画書の業務内容の欄に書き分け、付与する権限と相談の窓口を受け入れ前に決めておくことです。この3点を踏まえておけば、空いた席の仕事を丸ごと任せて行き違う事態を避けやすくなります。頼みたい仕事に合う人の探し方に迷うなら、外部の手を借りるのも一つの選択肢です。
よくある質問
外部人材に頼む仕事と社員に残す仕事は、どこで線を引けばよいですか
社内の人でなければ集めにくい事実、関係部署との調整、予算や進め方の最終判断の3つを社員に残し、その材料をもとにした分析や案づくり、専門的な実装を外部の人に頼むのが一つの目安です。総務省のガイドブックの記載例でも、実績の調査と業務の棚卸を社内側、業務分析と改善案の策定を外部人材側に書き分けています。
採用が決まったら、外部人材の役割はどうなりますか
入社した社員に引き継ぐ仕事と、引き続き外部の人に頼む仕事を分け直します。計画書の業務内容の欄で社員側の行に移す仕事を書き足すと、引き継ぎの範囲が分かります。契約期間や業務範囲の変更は、契約の内容に沿って相手と決め直してください。
外部人材に社内の会議で意思決定に加わってもらってもよいですか
会議で意見を出してもらうことと、決裁の権限を渡すことは別です。総務省のガイドブックは、面接で調整する項目に「付与する権限(意思決定に参加できるか否か)」を挙げています。どの会議に出てもらい、どこまでを社員が決めるかを受け入れ前に決め、契約の内容とも照らし合わせておきます。
頼む仕事と残す仕事が見えたら相談
社員に残す仕事と外部の人に頼む仕事が分かれていれば、そのままご相談いただけます。分け方に迷っている段階でも構いません。
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出典
- *1 参考:日本商工会議所・東京商工会議所「多様な人材の活躍等に関する調査」集計結果(PDF)(https://www.jcci.or.jp/file/sangyo2/202609/20260915survey_result_1.pdf)。出典:日本商工会議所・東京商工会議所(2026年9月15日)。調査概要、1.人手不足の状況と対策(人手不足の状況・業種別、人手不足への対策・全体と従業員規模別)、5.シニア人材の雇用における課題を参照(確認日2026年10月2日)(2026年10月確認)
- *2 参考:総務省「外部デジタル人材の確保ガイドブック」(自治体DX全体手順書・別冊、PDF)(https://www.soumu.go.jp/main_content/000949907.pdf)。出典:総務省。外部人材確保の4ステップ、ステップ1の業務上課題のアンケート、人材タイプと役割の例、確保の形態の簡易判断フローチャート、面接で調整する項目、人材の受入れと受入れチェックリスト、プロジェクト計画書と記載例、外部人材活用の成功ポイントと落とし穴、広島県福山市・山形県酒田市・新潟県佐渡市の事例を参照(確認日2026年10月2日)(2026年10月確認)