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エンジニア採用で内製化、外注切り替えは戻す順番を先に決める
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)
この記事の結論
- IPAの調査では、内製化を進めている日本企業の82.3%が人材の確保や育成を課題に挙げており、外注切り替えはエンジニア採用の進み具合に合わせて段階を区切ります。
- 社内に戻す順番は、競争の源になる領域の、仕様を判断する仕事と小さな改修から始め、新しい開発や運用はその後に回します。
- 外注先とは役割を少しずつ入れ替えながら並走し、採用はその並走が始まる前、契約の更新時期から逆算して動き出します。
※ 本記事は2026年10月時点の公式情報(省庁・公的機関、および製品やサービスを提供する事業者が公開している資料)に基づきます。
外注している開発を社内に戻したいが、何から手を付ければよいか分からない。エンジニアを採ったのに、外注先との契約をいつ、どこまで減らせばよいか決められない——。内製化を考える会社では、こうした迷いが起こりがちです。ここでいう外注切り替えとは、外部の会社に任せていた開発や運用の仕事を、採用した社員が担う形へ段階的に移していくことを指します。
一度に全部を移そうとすると、採用が追いつかないまま外注先との契約だけが終わり、仕事が止まりかねません。一方で、順番さえ決めておけば、採れた人数に合わせて少しずつ移せます。本記事では、開発の体制を預かるマネージャーに向けて、内製化に取り組む企業の割合と課題、社内に戻す領域と工程の順番、外注先との並走のしかた、エンジニア採用を始める時期、つまずきやすい点を整理します。
目次
外注切り替えとは
外注切り替えは、委託先を別の会社に替えることとは違います。仕事を引き継ぐ相手が社外の会社ではなく、自社で採用したエンジニアになる点が大きな違いです。引き継ぐ相手がまだ社内にいない段階から始まるため、エンジニア採用の進み具合が切り替えの速さを決めます。
独立行政法人情報処理推進機構(IPA)の「DX動向2025」は、日本・米国・ドイツの企業に、システム開発の内製化の状況を尋ねています。調査期間は2025年2月上旬から3月下旬です。日本の企業1,500社の回答は、「内製化を進めている」が22.3%、「必要な部分は内製化済なので、現在は進めていない」が16.7%でした。*1
残りは内製化を進めていない企業です。「パッケージやSaaSを利用しているので、内製化は進めていない」が22.5%、「外部開発を今後も利用予定であり、内製化は進めていない」が29.3%、「その他」が9.3%でした。*1 米国は「内製化を進めている」が46.4%、「必要な部分は内製化済」が37.1%で、日本との差は大きく開いています。外部開発を使い続ける判断も一つの選択であり、内製化だけが正解というわけではありません。
内製化に取り組む企業の割合
同じ設問を従業員の規模別に見ると、会社が小さいほど内製化に取り組む割合は下がります。日本の結果を表にまとめました。
| 従業員規模 | 内製化を進めている | 必要な部分は内製化済 | 外部開発を今後も利用予定 |
|---|---|---|---|
| 100人以下(405社) | 11.1 | 13.6 | 38.0 |
| 101〜300人(346社) | 15.6 | 17.1 | 30.9 |
| 301〜1000人(346社) | 25.1 | 20.2 | 25.4 |
| 1001人以上(403社) | 36.7 | 16.4 | 22.3 |
100人以下の会社では、「内製化を進めている」は11.1%にとどまり、「外部開発を今後も利用予定」が38.0%で最も多くなっています。1001人以上の会社では「内製化を進めている」が36.7%です。*2 規模の小さい会社では、採れるエンジニアの人数も限られます。小さい会社ほど、切り替える範囲を絞り込んでから始める必要があります。
この表から分かるのは取り組んでいる会社の割合だけで、内製化がうまく進んだかどうかまでは分かりません。ただ、規模によって出発点が大きく違うことは、計画を立てる前に知っておきたい点です。
進めている企業が挙げる課題
DX動向2025は、「内製化を進めている」と答えた企業に、進めるうえでの課題も尋ねています。日本の334社の回答を次の図にまとめました。
最も多いのは「人材の確保や育成が難しい」で82.3%でした。2番目の「新しい技術への対応が難しい」の48.8%を大きく上回ります。*1 IPAも、日本ではこの回答率が突出しており、人材不足で内製化が進まないケースが非常に多いと考えられるとしています。外注切り替えの計画は、エンジニア採用が思うように進まないことを前提に組んでおくと、途中で崩れにくくなります。
一方、「外部開発したシステムの内製化への移行が難しい」は日本では19.5%でした。米国は33.1%、ドイツは28.7%で、日本より高くなっています。*2 日本で低い理由は調査からは読み取れません。人材の不足が先に立ち、移行の段階まで進んでいない会社が多いという見方もできます。社員が育ってくると、次に移行そのものの難しさが表に出てくると考えておくと、慌てずに済みます。
戻す領域の決め方
どの仕事から社内に戻すかは、まず領域で考えます。DX動向2025は、事業戦略やシステムに使っているソーシング手段(開発や調達のやり方)を、領域ごとに尋ねています。複数の手段を選べる設問です。
日本の企業の「コア事業/競争領域」では、「外部委託による開発」が37.8%で最も多く、「内製による自社開発」は28.2%でした。「ノンコア事業/非競争領域」では、「パッケージソフトウェアの導入」が33.8%、「SaaSの導入」が24.4%で、「内製による自社開発」は16.6%です。*2 米国のコア事業/競争領域は「内製による自社開発」が48.5%で、日本とは並びが逆になっています。
競争の源になる領域ほど、仕様を変える判断を社内で素早く下せることに価値があります。外注切り替えの最初の対象には、自社の売上や顧客との接点に直結するシステムを選ぶのが筋です。反対に、経理や勤怠のような非競争の領域は、パッケージやSaaSに置き換えるほうが向いている場合もあります。全部を社員で作り直す必要はありません。
戻す工程の順番
領域を決めたら、その中で工程の順番を決めます。考え方は、社員が少ない段階でも担える仕事、つまり外注先の成果物を確かめる側の仕事から始めることです。採用したエンジニアの人数に合わせて、次の3つの段階で進めます。
| 段階 | 社員が担う仕事 | 外注先に残す仕事 |
|---|---|---|
| 1 判断を戻す | 要件や仕様を決める、外注先の設計と見積りを確かめる、受け入れの確認をする | 設計、プログラムの作成、テスト、運用 |
| 2 小さな改修を戻す | 画面や帳票の手直しなど、影響の範囲が狭い改修を設計から試験まで担う | 大きな改修、新しい機能の開発、運用 |
| 3 開発と運用を戻す | 新しい機能の設計と開発、障害の一次対応、日々の運用 | 一時的に増える作業、専門性の高い作業 |
1つ目の段階で判断を先に戻すのは、外注先がいるうちに仕様の背景を聞き出せるからです。最初の1〜2名のエンジニアを採った時点で始められます。2つ目の段階では、障害が起きても影響が限られる改修を選び、社員が設計から試験までを一通り経験します。3つ目の段階に入れるかどうかは、2つ目の改修を外注先の手を借りずに終えられたかで判断します。
段階を飛ばして新しい開発から社員に任せると、既存の仕組みを知らないまま作ることになり、外注先が作った部分とのつなぎ目で手戻りが出やすくなります。仕様の把握から始めるときの具体的な作業は、外注依存の仕様把握で最初に任せる3つの作業で扱っています。
外注先との並走期間
どの段階でも、外注先と社員が同じ仕事に関わる並走の期間を置きます。並走では、主に手を動かす側と確かめる側を、少しずつ入れ替えていきます。最初は外注先が作り、社員が読んで質問します。次に社員が作り、外注先がレビューします。最後に社員だけで作り、外注先には質問にだけ答えてもらう形にします。
国の情報システムについて定めたデジタル庁の「デジタル社会推進標準ガイドライン」は、システムを作り直すときの決まりとして、運用や保守を担う事業者に、次のシステムに携わる事業者へ作業経緯や残存課題などの情報を提供させ、質疑応答などの必要な協力を求めるとしています。*3 企業の外注切り替えでも、こうした協力を外注先にお願いする場面が出てきます。
同じガイドラインは、要件定義の段階で、他の関係事業者への「引継ぎに関する要件を記載する」としています。*3 外注先にとって、並走は請け負う仕事が減っていく過程です。引き継ぎの作業と並走の期間を、あらかじめ契約の作業内容として書いておけば、協力をお願いしやすくなります。どこまで書くかは、契約の専門家にも確かめておきます。
並走の長さは、システムの規模や社員の経験によって変わるため、一律には決められません。目安を置くなら、前の段階で挙げた「外注先の手を借りずに終えられたか」を、並走を終える条件にするのが分かりやすい方法です。並走で何を移し、移ったかをどう確かめるかは、技術移転で社員に移すものと確かめ方で整理しています。
エンジニア採用を始める時期
エンジニア採用は、並走を始めたい時期から逆算して動き出します。採用が決まってから入社するまでの期間と、入社してから社内のシステムに慣れるまでの期間がかかるためです。並走の開始より採用が遅れると、外注先との契約を延ばすしかなくなります。
逆算の起点にしやすいのが、外注先との契約の更新時期です。更新の時期までに採用が決まらなかった場合に備え、更新する期間を短めにしておく、仕事の範囲を一部だけ減らして更新するといった選択肢を先に用意しておくと、採用の遅れで計画が崩れずに済みます。82.3%の企業が人材の確保や育成を課題に挙げているとおり、採用が予定どおりに進まないことは珍しくありません。
最初に採る人には、外注先の成果物を読んで判断できる経験を求めます。1つ目の段階で担うのが、仕様の確認と受け入れの仕事だからです。その次に、手を動かして改修を進められるエンジニアを採ります。初期メンバーの役割と採用の順番は、内製化の初期メンバーの役割と採用の順番で詳しく扱っています。
つまずきやすい点
一つめは、採用が決まる前に外注先との契約を終える日を決めてしまうことです。費用を早く減らしたい気持ちから終了日を先に決めると、並走の期間が足りなくなります。契約を終える日は、2つ目の段階の改修を社員だけで終えられたことを確かめてから決めます。
二つめは、内製化をするかどうかの判断が揺れ続けることです。DX動向2025では、内製化を進めている日本の企業の34.7%が「内製化には利点も欠点もあるため、判断が難しい」と答えています。*1 戻す領域と戻さない領域を最初に決めて社内で共有しておけば、途中で判断をやり直す回数を減らせます。
三つめは、採ったエンジニアに外注先との調整を全部任せることです。契約の範囲や費用に関わる交渉は、発注する側の責任者が持ちます。エンジニアには技術の判断に集中してもらうほうが、並走は進みやすくなります。外注依存から抜ける計画の全体像は、エンジニア採用による外注依存の脱却計画にまとめました。
まとめ:外注切り替えで決めておきたい3つの点
エンジニア採用で内製化を進め、外注切り替えをするうえで、決めておきたい点は3つに整理できます。第一に、社内に戻す領域を競争の源になるシステムに絞り、非競争の領域はパッケージやSaaS、外注の継続も選択肢に残すこと。第二に、工程は判断する仕事、小さな改修、新しい開発と運用の順に戻し、外注先とは役割を入れ替えながら並走すること。第三に、エンジニア採用は並走の開始と契約の更新時期から逆算して始め、採用が遅れたときの更新のしかたを先に用意しておくことです。この3点を押さえておけば、「契約は終わったのに、社内に引き継ぐ人がいない」という事態を避けやすくなります。採用だけで人が足りない時期は、外部の手を借りるのも一つの選択肢です。
よくある質問
外注切り替えは、どのくらいの期間で終えられますか
システムの規模、社員の経験、採用の進み具合で大きく変わるため、一律の期間は示せません。期間で決めるより、「2つ目の段階の改修を外注先の手を借りずに終えられたか」のように、次の段階に進む条件を先に決めておくほうが計画を立てやすくなります。
エンジニアが1人しか採れなくても内製化は進められますか
進められます。1人目には、外注先の設計や見積りを確かめ、受け入れの確認をする仕事を担ってもらいます。開発の作業は外注先に残したまま、判断する仕事だけを先に社内に戻す形です。DX動向2025でも、100人以下の会社で内製化を進めている割合は11.1%で、小さく始める会社が多いことがうかがえます。*2
外注先には、内製化することをいつ伝えればよいですか
並走をお願いするなら、計画を決めた早い段階で伝えるほうが協力を得やすくなります。引き継ぎの作業を契約の作業内容に入れるには、契約の更新より前に話し合っておく必要があるためです。契約上の扱いは、契約の専門家にも確かめておきます。
戻す工程が決まったら相談
社内に戻したい工程と、外注先との契約の更新時期が分かっていれば、そのままご相談いただけます。どの順番で戻すか決めきれていない段階でも構いません。
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出典
- *1 参考:独立行政法人情報処理推進機構(IPA)「DX動向2025」本文(PDF)(https://www.ipa.go.jp/digital/chousa/dx-trend/tbl5kb0000001mn2-att/dx-trend-2025.pdf)。出典:2025年6月26日公開。2.4「システム開発等の内製化の状況」の図表2-14(システム開発の内製化・国別)と図表2-16(内製化を進めるにあたっての課題)、4.1「調査概要」を参照(確認日2026年10月6日)(2026年10月確認)
- *2 参考:独立行政法人情報処理推進機構(IPA)「DX動向2025」データ集(PDF)(https://www.ipa.go.jp/digital/chousa/dx-trend/tbl5kb0000001mn2-att/dx-trend-data-collection-2025.pdf)。出典:p.51「ソーシング手段の状況(国別)」、p.53「システム開発の内製化(従業員規模別・国別)」、p.55「内製化を進めるにあたっての課題(国別)」を参照(確認日2026年10月6日)(2026年10月確認)
- *3 参考:デジタル社会推進会議幹事会「デジタル社会推進標準ガイドライン DS-100 デジタル・ガバメント推進標準ガイドライン」(PDF)(https://www.digital.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/e2a06143-ed29-4f1d-9c31-0f06fca67afc/54d8725e/20260715_resources_standard_guidelines_guideline_01.pdf)。出典:2026年(令和8年)6月12日 デジタル社会推進会議幹事会決定。第3編第5章「要件定義」の非機能要件 o)「引継ぎに関する事項」、第9章「運用及び保守」の「運用及び保守の引継ぎ」1)を参照(確認日2026年10月6日)(2026年10月確認)