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2026.09.28 採用支援コラム

エンジニア採用が新規事業で課題になる理由と、役割の分け方




監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)

この記事の結論

  • 新事業展開をしていない中小企業が最も多く挙げた課題は、技術・ノウハウを持つ人材の不足で43.8%でした。
  • 採用で迎えるのは、社内に知見が少なく、社内で育てるのが難しい技術を持つエンジニアです。
  • 事業の構想と責任者は社内で担い、任せる作業と処遇は募集の前に決めておきます。

※ 本記事は2026年9月時点の公式情報(省庁・公的機関、および製品やサービスを提供する事業者が公開している資料)に基づきます。

新しい事業を始めることは決まったのに、その事業で使う技術に詳しいエンジニアが社内にいない。募集を出そうにも、どんな経験の人を探せばよいのかが決まらない——。新規事業の立ち上げでは、こうした悩みがよく聞かれます。中小企業庁が2016年に行った調査でも、新しい事業に取り組んでいない企業が最も多く挙げた課題は「必要な技術・ノウハウを持つ人材が不足している」で、43.8%でした。*1 新規事業のエンジニア採用とは、新しい事業で使う技術を扱えるエンジニアを、社外から社員として迎えることを指します。

社内に経験者がいない技術を手に入れる方法として、エンジニア採用は使いどころのある方法です。ただし万能ではなく、事業の構想や責任者まで採用で探そうとすると、求める人物像が絞れなくなります。本記事では、新規事業の開発を任された開発マネージャーに向けて、人材が足りなくなる背景、採用で迎える人と社内で担う役割の分け方、募集の前に決めておくこと、そしてつまずきやすい点を整理します。

黒い育苗ポットが並び、それぞれの土から小さな苗の若葉が伸びている様子を真上から写した写真。人も文字も写っていない

新規事業のエンジニア採用とは

新規事業と一口に言っても、中身はさまざまです。2017年版の中小企業白書は、企業の事業展開を5つの戦略に分けて説明しています。既存の市場で既存の製品・サービスを売る「市場浸透戦略」、新しい市場で既存の製品・サービスを売る「新市場開拓戦略」、既存の市場に新しい製品・サービスを出す「新製品開発戦略」、既存の事業を続けながら新しい市場で新しい製品・サービスを出す「多角化戦略」、既存の事業を縮小・廃止しながら新しい市場で新しい製品・サービスを出す「事業転換戦略」の5つです。*1

白書は、市場浸透戦略を除く4つを新事業展開として集計しています。このうち新市場開拓戦略は、売る製品・サービスが変わらないので、開発の面では社内のエンジニアで対応できる部分が多いでしょう。新しい製品・サービスを作る残りの3つでは、社内で扱ったことのない技術が必要になることがあります。まず自社の新規事業がどの戦略に当たるのかを確かめておくと、エンジニア採用が本当に要るのかを判断しやすくなります。

同じ調査で実施状況を見ると、新製品開発戦略を実施している企業は23.7%、新市場開拓戦略は22.3%、多角化戦略は16.0%、事業転換戦略は4.9%でした(回答は戦略ごとに2,875〜2,959社)。*1 新製品開発戦略は、新市場開拓戦略と同じくらいの割合で行われています。

なぜエンジニアが足りなくなるのか

白書は、新事業展開を実施していない企業1,978社に、取り組むうえでの課題を尋ねています(複数回答)。最も多かったのは「必要な技術・ノウハウを持つ人材が不足している」の43.8%で、「販路開拓が難しい」31.2%、「新事業展開に必要なコストの負担が大きい」30.7%が続きます。*1 人材の不足は、2番目の販路開拓を12.6ポイント(割合の差)上回っています。

新事業展開を実施していない企業1,978社が挙げた課題の上位6項目を並べた横棒グラフ(複数回答)。必要な技術・ノウハウを持つ人材が不足している43.8%、販路開拓が難しい31.2%、新事業展開に必要なコストの負担が大きい30.7%、市場ニーズの把握が不十分である29.5%、自社の強みを活かせる事業の見極めが難しい28.8%、必要な技術・ノウハウの取得・構築が困難27.8%。特に課題はないは38.9%。出典は中小企業庁「2017年版 中小企業白書」第2-3-4図。

新しい技術を使う場面でも、人材の不足が最も多く挙がります。IoT(モノのインターネット)、ビッグデータ、AI(人工知能)、ロボットなどの新技術を活用していない企業2,978社に課題を尋ねた設問では、「技術・ノウハウを持った人材が不足している」が45.1%で最も多く、「自社の事業への活用イメージがわかない」が38.5%で続きました。*1 新しい技術を事業に取り入れようとすると、その技術を扱える人と、使い道を考えられる人の両方が求められます。技術を知る人が社内にいなければ、その技術の使い道を社内で決めることも難しくなります。なお、この調査は2016年11月に中小企業を対象に行われたもので、大企業やその後の変化は同じ資料からは分かりません。

採用で迎えるエンジニア

実際に新規事業のために中途採用を行っている企業は、どう考えているのでしょうか。厚生労働省の委託事業として2025年3月にまとめられた報告書は、中途採用に取り組む企業14社から話を聞いています。報告書によると、各社が中途採用を行う理由は、大きく分けて「退職者分の欠員補充」「社内では人材を育成できない新規事業領域の要員確保」、そして新卒採用を行わない会社での通年の採用やすぐに働ける人の確保、といった内容でした。*2

ヒアリング先の一つである化学メーカーの三井化学は、2016年以降、ビジネスモデルの転換に伴い、新しい事業ポートフォリオ(会社が持つ事業の組み合わせ)で即戦力となる人材の中途採用に力を入れ始めました。近年採用が多いのはICT(情報通信技術)、特に半導体製造に関連する事業です。採用が多い理由は、化学業界で事業を続けてきた同社には、その分野の知見を持つ人材が少ないためと説明されています。*2

同社は募集にあたり、入社後に担当する職務に近い経験を積んでいることを要件にしています。*2 社内に詳しい人がいない分野の経験者を、入社後の仕事に近い経験を条件に探す——新規事業のエンジニア採用でも、そのまま使える考え方です。逆に、社内の誰かが時間をかければ身につけられる技術なら、採用だけでなく育成や異動も候補に入ります。何を採用で迎えるかは、社内で育てられるかどうかで分けるとよいでしょう。

社内で担う役割

一方で、新規事業に関わる人をすべて採用で集める企業ばかりではありません。労働政策研究・研修機構(JILPT)が2022年に公表した研究報告書は、大企業のホワイトカラー(事務や企画などの仕事をする社員)を対象に、文献調査とヒアリング調査で人材の使い方を調べています。報告書は、新製品や新サービスの開発のように失敗のリスクが高い事業に携わる社員の人事管理として5つの特徴を示しており、その一つが「年齢や勤続年数を問わない新規事業責任者への抜擢の実施」です。*3

さらに報告書は、「各事例ともゼロからアイディアを出す人材を中途採用によって確保しようとしているわけではない」と述べています。*3 事業の案を出す人と、事業の責任者は社内から選び、その案を形にするのに要る技術を持つ人を社外から迎える、という分け方です。

新規事業で社内が担う役割と、採用で迎える役割の例
役割 主に担う人 そう分ける理由
事業の構想(何を、誰に売るか) 社内の人 自社の顧客と強みを知っている
事業の責任者 社内から選ぶ JILPTの事例では、年齢や勤続年数を問わず抜擢している
社内に知見のない技術を使った開発 採用で迎えるエンジニア 社内で育てるには時間がかかる
既存のシステムとの連携 社内のエンジニア 既存のシステムの作りを知っている
採用した人の受け入れと社内の調整 開発マネージャー 既存の部門とのやり取りを受け持てる

規模の小さい会社では、社長が事業の責任者を兼ねることもあるでしょう。表のとおりに分けることより、採用で迎える人に何を任せ、何を社内に残すのかを、募集の前に決めておくことが大切です。

募集の前に決めておくこと

新規事業のエンジニア採用では、既存事業の欠員補充と比べて、募集の時点で決まっていないことが多くなります。募集を出す前に、少なくとも次の3つを決めておくと、応募する側も自分の経験と比べやすくなります。

  • 使う技術と、入社後に任せる作業
  • 事業の見通しと、計画が変わったときの担当業務
  • 給与などの処遇と、既存の社員との違い

1つ目の任せる作業は、入社後の仕事から書き起こします。たとえば「スマートフォンで予約を受け付けるサービスを新たに作る。サーバー側の設計からリリースまでを、入社後1年を目安に担当」と書けば、求める経験も「予約や決済のように利用者が操作する機能を、設計から公開まで担当した経験」と具体的にできます。求人票の項目ごとの書き方は「エンジニア求人票の書き方と必須14項目」で扱っています。

2つ目の事業の見通しは、新規事業ならではの項目です。事業は途中で中身が変わることがあり、計画どおりに進まなければ縮小することもあります。厚生労働省の報告書のヒアリングでも、求職者にとって不都合な事実を採用選考の段階で伝え、納得を得たうえで入社してもらうことが重要だという考えが多く聞かれました。*2 計画が変わったとき、採用した人がどの仕事を担当することになるのかを、面接の段階で伝えておきます。

3つ目の処遇も先に決めます。厚生労働省の報告書には、すし店を経営する会社が、新規事業で社内人材の育成や配置転換では対応できずに専門職を採用したときに限り、通常よりも高い給与額を提示したことがあった、という例も載っています。*2 社内の給与の決まりに当てはまらない人を迎えるときに、誰がどう判断するのかを決めておかないと、内定の条件を決める段階で時間がかかります。

つまずきやすい点

一つ目は、事業の中身が固まる前に募集を始めてしまうことです。どの戦略の新規事業なのか、どの技術を使うのかが決まっていないと、任せる作業が書けず、面接で何を確かめるかも決まりません。まず事業の構想を社内で固め、使う技術を決めてから募集を出します。

二つ目は、最初に採用した1人に、事業の構想から開発、運用までを期待してしまうことです。採用で迎える人には社内に知見のない技術を使った開発を任せ、事業の判断は社内の責任者が受け持つように分けておくと、募集の条件も絞れます。

三つ目は、入社後の受け入れを用意しないことです。厚生労働省の報告書のヒアリングでは、中途採用で入った人は即戦力であってもすぐに活躍できるわけではなく、会社の風土や仕事の進め方になじむためのオンボーディング(入社後に職場へなじむための支援)が必要だという声も聞かれました。*2 新規事業の担当者は既存の部門と接する機会が少なくなりやすいので、既存システムの担当者や社内の相談先を、入社の前に決めておきます。

まとめ:新規事業の採用で確かめておきたい3つの点

新規事業のエンジニア採用を進めるうえで、確かめておきたい点は3つに整理できます。第一に、自社の新規事業がどの戦略に当たり、社内で扱ったことのない技術が本当に必要なのかを確かめること。第二に、事業の構想と責任者は社内で担い、採用では社内に知見が少ない技術を扱うエンジニアを迎えるように役割を分けること。第三に、任せる作業、計画が変わったときの担当業務、処遇を募集の前に決めておくことです。この3点を踏まえておけば、「採用したものの、何を任せればよいのかが決まらない」という事態を避けやすくなります。募集の条件づくりに迷いがあれば、外部の手を借りるのも一つの選択肢です。

LASSICに相談するメリット

新規事業で使う技術の経験者は、社員の募集だけではすぐに見つからないことがあります。採用が決まるまでの開発を、業務委託の専門人材に担ってもらう方法も選択肢に入れておけます。

Remoguは、株式会社LASSICが運営するフリーランス・業務委託のITプロ人材サービスです。リモート前提で全国から登録が集まっており、登録は約20,000名規模、その約8割が開発系です。人材が必要になった時点から4時間以内に候補者を提案し、最短1週間で実際の業務開始まで進みます(条件によっては実現できない場合があります)。

よくある質問

新規事業に加わったエンジニアは、どう評価すればよいですか

売上などの成果だけで評価しないことがポイントです。JILPTの報告書は、成果を重視する評価では社員が失敗を避けようとする動きを抑えられないおそれがあるため、事例企業では「成果よりも行動を重視することが選択されている」と述べています。*3 立ち上げの初期は、何に取り組んだかを評価の対象に含めておくと、挑戦を避ける動きを抑えやすくなります。

募集の段階で、新規事業の計画をどこまで伝えてよいですか

求人票には事業の分野と使う技術、任せる作業を書き、詳しい計画は面接で伝えるのが一般的です。厚生労働省の委託調査のヒアリングでも、多くの企業が入社後の具体的な処遇や求める役割などを、求人票ではなく面談・面接で伝えていました。*2 発表前の計画を話すときは、面接の前に秘密保持の約束を交わしておきます。

社内に詳しい人がいない技術は、面接でどう見極めればよいですか

その技術に詳しい社外の専門家に、技術面接への同席を頼む方法があります。あわせて、応募者に担当した開発を1件挙げてもらい、使った技術と自分が担当した作業を説明してもらうと、経験の深さを確かめやすくなります。人事担当者が使える質問は「技術面接で人事が見極める5つの質問」で扱っています。

新規事業のエンジニア採用を相談したいとき

任せる作業と、求める経験の整理からご相談いただけます。

Remoguとリラシクなら、リモートワークで働く社員の候補者も、業務委託で開発に加わる専門人材も探せます。

Remoguは、リモート前提で全国から即戦力のITプロ人材を調達するサービスです。リラシクは、扱う求人がすべてリモートワークのITエンジニア専門転職エージェントです。どちらもLASSICが運営しています。

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出典

  1. *1 参考:中小企業庁「2017年版 中小企業白書」第2部第3章 新事業展開の促進(https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/H29/PDF/chusho/04Hakusyo_part2_chap3_web.pdf)。出典:中小企業庁「2017年版 中小企業白書」第2部第3章。第2-3-1図(企業の事業展開の戦略)、第2-3-3図(新事業展開の実施状況)、第2-3-4図(新事業展開を実施していない企業の課題、n=1,978、複数回答)、第2-3-42図(新技術の活用における課題、新技術を活用していない企業n=2,978、複数回答)を参照。調査は中小企業庁委託「中小企業の成長に向けた事業戦略等に関する調査」(2016年11月、(株)野村総合研究所)(2026年9月確認)
  2. *2 参考:厚生労働省「中途採用・経験者採用が活躍する企業における情報公表その他取組に関する調査研究事業報告書」(令和6年度厚生労働省委託事業)(https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/001489721.pdf)。出典:同報告書(2025年3月)。第4章第1節 表6 ヒアリング事例の要約(ヒアリング対象14社)と、第2節の各ヒアリング事例の報告を参照。掲載ページは https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000089556_00023.html(2026年9月確認)
  3. *3 参考:労働政策研究・研修機構「労働政策研究報告書No.220『長期勤続システム』の可能性―中途採用と新規事業開発に着目して」(https://www.jil.go.jp/institute/reports/2022/0220.html)。出典:同報告書(2022年)の概要ページ。研究の目的・方法と主な事実発見を参照(2026年9月確認)




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