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エンジニア中途採用の内定辞退、辞退理由を入社した人の回答から探る
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)
この記事の結論
- 専門・技術職の転職者が入社を決めた理由は、経験が活かせる仕事37.7%、能力を発揮できる仕事30.8%が上位でした。
- 一方で、選考の途中で職務内容や求めるスキルを示された人は39.5%にとどまります。
- 内定辞退を減らすには、任せる仕事と労働条件を早めに示し、入社日をいつまで待てるかを先に決めておきます。
※ 本記事は2026年9月時点の公式情報(省庁・公的機関、および製品やサービスを提供する事業者が公開している資料)に基づきます。
最終面接まで進んだ候補者から、内定を出した翌週に辞退の連絡が来た。条件を詰めているうちに、他社に決めたと言われた——。エンジニア中途採用では、こうした辞退が起こりがちです。内定辞退とは、会社が採用を決めて伝えたあとに、候補者の側から入社を断ることを指します。
辞退理由を考える手がかりになるのが、入社を決めた人が何を決め手にしたかを尋ねた調査です。候補者が何を比べているかが分かれば、選考の途中で会社が示すべきことも分かります。ただし万能ではなく、この調査は入社を決めた人の回答で、辞退した人の理由を直接数えたものではありません。本記事では、エンジニア中途採用を担うマネージャーに向けて、内定辞退が起きる場面、入社の決め手、会社が選考で伝えている情報、入社前の交渉、辞退を減らす方法、そして外部に頼むときに確認しておきたい点を整理します。
目次
内定辞退が起きる場面
内定を辞退した候補者の行き先は、大きく分けて2つです。他社の内定を選ぶ場合と、今の勤め先に残る場合です。働きながら転職活動をしている候補者は、内定を受け取ってから退職を申し出るので、その時点で今の会社から引き止められることもあります。
労働政策研究・研修機構(JILPT)は、2018年から2020年に転職した30〜54歳のホワイトカラー4,205人に、転職活動の進め方を尋ねています(2020年12月の調査)。*1 このうち専門・技術職(研究者、エンジニア、プログラマーなど)の1,458人について、いまの勤務先(転職先)の内定を得た時期を見ると、「離職の意思を前職の企業に伝える前」が32.0%、「伝えた後」が9.7%でした。*2 合わせて4割あまりが、前の会社に在籍したまま内定を受け取っています。
比べる相手の数も見ておきます。同じ1,458人のうち、転職先が決まるまでに応募した企業が「1社のみ」だった人は42.7%です。一方で、企業の側から採用を検討したいという申し出を2社以上から受けた人は703人と、ほぼ半数でした。*2 応募した先が1社だけでも、ほかの会社から声がかかっている候補者は少なくありません。
なぜ内定辞退が起きるのか
内定辞退は、候補者が自社を、他社や自分がいま勤めている会社と比べた結果です。何を比べているかは、入社を決めた人が挙げた理由から見えてきます。JILPTの調査で、専門・技術職の転職者が今の勤務先で働こうと思った理由(複数回答)は、次のとおりです。
最も多いのは「今までの経験が活かせる仕事だったから」37.7%、次いで「自分の能力を発揮できる仕事だったから」30.8%で、「賃金がよかったから」27.2%は3番目でした。*2 上位の2つは、どちらも仕事の中身についての理由です。「労働時間・休暇がよかったから」23.7%のように、働き方の条件を挙げた人も一定数います。
チームをまとめる立場の人を採るときは、管理職の回答も参考になります。管理職の転職者481人では、「今までの経験が活かせる仕事だったから」が42.2%、「自分の能力を発揮できる仕事だったから」が39.3%と、専門・技術職よりさらに高くなっています。「熱心に勧誘してくれたから」も16.2%で、専門・技術職の9.9%を上回りました。*2
入社の決め手になる点が自社に欠けて見えれば、それが辞退理由になりえます。たとえば、候補者が任せる仕事の中身を知らされず、自分の経験が生きるかどうかを判断できなかった場合や、賃金や休暇の条件で他社やいまの勤め先のほうがよかった場合です。入社の決め手が仕事の中身に集まっている以上、賃金の話だけでは辞退を防ぎきれないと考えておくのが現実的です。
選考で会社が伝えている情報
同じ調査は、応募から選考までの間に、いまの勤務先からどんな情報や機会を受け取ったかも尋ねています。専門・技術職の1,458人の回答は次のとおりです。
| 提供された情報・機会 | 割合 | 最も役に立った |
|---|---|---|
| 勤務地や給与・労働時間等の労働条件の明示 | 70.4% | 52.0% |
| 職務内容や求める技能・スキルの明示 | 39.5% | 14.1% |
| 採用後の職位(ポスト)の明示 | 18.9% | 3.5% |
| 採用後の社内の等級の明示 | 12.5% | 2.4% |
| 採用後のキャリアの道筋や処遇の見通しの説明 | 12.3% | 2.4% |
| 企業や業界について理解を深めるための説明 | 11.6% | 2.5% |
| 職務体験や職場見学の機会 | 10.6% | 4.0% |
| 情報や機会の提供はなかった | 11.8% | ― |
労働条件を示された人が70.4%と最も多く、最も役に立った情報でも52.0%を占めます。*2 一方、職務内容や求めるスキルを示された人は39.5%でした。*2 入社の決め手の上位が仕事の中身だったのに比べると、選考の途中で仕事の中身まで伝わっていた人は4割に届いていません。
会社の側から見た調査もあります。中小企業庁の2024年版中小企業白書は、帝国データバンクの調査をもとに、中小企業が採用面接で自社から伝えている内容を示しています。「給与体系」を伝えている企業は82.7%、「期待する専門性・役割」は69.6%でしたが、「人事制度・キャリアプラン」は29.6%、「現場の社員の声」は28.7%でした。*3 調査が違うので単純には比べられませんが、条件の説明に比べて、入社後の道筋や現場の様子を伝えている会社は少ないことが分かります。
入社前の交渉でもめやすい点
内定を出したあとの交渉も、辞退の分かれ目になります。JILPTの調査で、専門・技術職の転職者が入社にあたって勤務先と交渉・調整した事項は、「入職時期」43.0%、「賃金」23.0%、「仕事内容」16.0%の順でした。「特に交渉・調整事項はなかった」という人は34.2%です。*2
調整が最も難しかった事項でも、「入職時期」が最も多く挙がっています。交渉・調整をした959人に限って人数から計算すると、45.0%が入職時期を最も難しかった事項に挙げました。*2 賃金を挙げた人は21.2%で、入職時期のほうが2倍以上多くなっています。
在職中の候補者は、いまの会社での引き継ぎや退職の手続きを済ませてから入社します。入社日を会社の都合だけで決めると、候補者がいまの会社と退職日を合わせられず、待ってくれる他社を選ぶこともあります。退職の申入れについて民法が何を定めているかは、「エンジニア中途採用の内定辞退、民法は誰に予告を求めるか」で扱っています。
内定辞退を減らす方法
ここまでの数字から、エンジニア中途採用で内定辞退を減らすために、会社が選考の途中で示しておきたいことは次の4つに整理できます。
- 任せる仕事の中身と、生かしてほしい経験
- 勤務地・給与・労働時間などの労働条件を、書面で早めに
- 入社日をいつまで待てるか
- 一緒に働くエンジニアと話す機会
1つ目は、面接の場で口頭で説明するだけでなく、文章にして渡すと伝わりやすくなります。「販売管理システムに、取引先から届く受注データを取り込む機能を追加する。設計からテストまでを担当」のように、対象のシステムと担当する作業の段階まで書いておくと、候補者は自分の経験が生きるかどうかを判断できます。求人票の業務内容の書き方は「エンジニア採用の求人票に書く業務内容、5つの要素で整理」にまとめています。
2つ目と3つ目は、内定を伝える前に社内で決めておきます。給与の幅や入社日の上限が決まっていないと、候補者から条件を尋ねられるたびに社内の確認が必要になり、返事が遅れます。4つ目に近い「職務体験や職場見学の機会」を受けた人は、10.6%にとどまります。*2 現場のエンジニアと30分話す場を設けるだけでも、仕事の中身を伝える機会になります。
つまずきやすい点
一つ目は、辞退の連絡が来てから賃金の上乗せで引き止めようとすることです。専門・技術職の転職者が挙げた入社の決め手で、賃金は3番目でした。任せる仕事の中身が伝わっていないまま条件だけを上げても、候補者が比べている点に答えたことにはなりません。
二つ目は、辞退理由を記録しないことです。辞退の連絡を受けた担当者が、選考のどの段階で、何と比べて辞退したのかを短く書き残しておくと、次の募集で伝える情報を見直せます。人材紹介会社を通した候補者なら、紹介会社の担当者に理由を尋ねることもできます。
三つ目は、ここで見た数字をエンジニアだけの値として読むことです。JILPTの調査の専門・技術職には、エンジニアやプログラマーのほか、教員やデザイナー、記者なども含まれます。*2 回答者も30〜54歳で、従業員50人以上の企業に転職した人に限られています。*1 若手のエンジニアの内定辞退を考えるときは、この点を踏まえて使ってください。
外部に委託するときに確認しておきたい点
人材紹介会社に候補者の紹介を委託するなら、任せる仕事の中身、労働条件、入社日をいつまで待てるかの3つを、候補者に伝えるのと同じ形で紹介会社にも渡しておきます。JILPTの調査では、転職の決め手となった情報を民間の職業紹介機関から得たという回答が19.8%と最も多く、*1 紹介会社の担当者が候補者に何を伝えるかも、辞退を左右します。
内定辞退で採用が先に延びると、その間の開発作業が止まることがあります。止めたくない作業があるなら、作業の中身と期間を書き出しておき、業務委託で開発に加わる専門人材に任せる方法もあります。採用の選考と日程を分けて考える方法は「エンジニア中途採用の選考期間、入社時期と分けて日程を決める」で、採用要件の書き方は「エンジニア採用のミスマッチを採用要件で防ぐ」で扱っています。
まとめ:内定辞退で確かめておきたい3つの点
エンジニア中途採用の内定辞退を減らすうえで、確かめておきたい点は3つに整理できます。第一に、任せる仕事の中身と生かしてほしい経験を、選考の途中で文章にして示すこと。第二に、労働条件を書面で早めに示し、給与の幅を内定を伝える前に社内で決めておくこと。第三に、入社日をいつまで待てるかを先に決め、在職中の候補者の退職の手続きに合わせられるようにしておくことです。この3点を踏まえておけば、「条件を詰めているうちに、他社に決めたと言われた」という事態を避けやすくなります。選考で伝える情報の整理に迷いがあれば、外部の手を借りるのも一つの選択肢です。
よくある質問
内定を出してから、返事はどのくらい待てばよいですか
返事の期限は会社が決めてかまいませんが、期限とその理由を書面で伝えておくと、候補者も予定を立てやすくなります。在職中の候補者は、いまの会社との話し合いに時間がかかることもあるので、期限を短くしすぎないほうが無理がありません。
辞退の連絡が来たら、引き止めてもよいですか
条件や仕事の中身について誤解があるなら、一度だけ説明し直すのはかまいません。候補者がすでに他社に入社を決めている場合は、辞退理由を尋ねてお礼を伝え、次の募集に生かすほうが建設的です。
辞退理由は、誰がどのように記録すればよいですか
辞退の連絡を受けた担当者が、選考の段階、辞退の時期、比べていた相手(他社か、いまの勤め先か)、本人が挙げた理由を短く書き残します。採用担当と現場のマネージャーが同じ記録を見られるようにしておくと、次の募集で伝える情報を一緒に見直せます。
エンジニア中途採用の内定辞退を相談したいとき
選考で候補者に伝える仕事の中身や条件の整理から、ご相談いただけます。
Remoguとリラシクなら、リモートワークで働く社員の候補者も、業務委託で開発に加わる専門人材も探せます。
Remoguは、リモート前提で全国から即戦力のITプロ人材を調達するサービスです。リラシクは、扱う求人がすべてリモートワークのITエンジニア専門転職エージェントです。どちらもLASSICが運営しています。
出典
- *1 参考:労働政策研究・研修機構「JILPT調査シリーズNo.215 ミドルエイジ層の転職と能力開発・キャリア形成―転職者アンケート調査結果―」(PDF)(https://www.jil.go.jp/institute/research/2021/documents/215.pdf)。出典:独立行政法人労働政策研究・研修機構(2021年11月)。2020年12月1日〜14日にwebモニターを対象に実施。2017年12月以降に転職した30〜54歳のホワイトカラー職種のフルタイム雇用者4,205人(現職は従業員50人以上の企業)。第2章(調査対象)、第4章第2節(転職の決め手となった情報)、第5節・第7節・第8節を参照(2026年9月確認)
- *2 参考:労働政策研究・研修機構「調査シリーズNo.215 付属統計表」(PDF)(https://www.jil.go.jp/institute/research/2021/documents/215_tokeihyo.pdf)。出典:同調査の付属統計表。職種(大分類)の定義、Q21(アプローチした企業の数)、Q22(申し出のあった会社数)、Q25(現職の内定を得た時期)、Q27(今の勤務先で働こうと思った理由)、Q29(提供された情報や機会)、Q30(交渉・調整した事項)の専門・技術職1,458人の人数と割合を参照(2026年9月確認)
- *3 参考:中小企業庁「2024年版 中小企業白書」第2部第1章第1節 人材の確保(https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/2024/chusho/b2_1_1.html)。出典:第2-1-14図(採用面接で自社から伝えている内容)。資料は株式会社帝国データバンク「中小企業の経営課題とその解決に向けた取組に関する調査」。「採用」は新卒及び中途の常用雇用の正社員の採用を指し、「分からない」と回答した企業を除いて集計(2026年9月確認)