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開発要員の初動とは|IPAはSE到着を保守員と別に置く
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)
この記事の結論
- 資料は保守員とSEを別の行に置いている:IPAの「非機能要求グレード2018」活用シートは、C.3.3.2「駆けつけ到着時間」を保守員、C.3.3.3「SE到着平均時間」をSEとして別々に並べています。*1
- どちらも6段から選ぶ形:駆けつけ無しから常駐まで6段が並びます。*1 契約でどの段を選んだかが書かれていなければ、来る時期は決まっていない、というのがこの記事の読み方です。
- 違うのは平均かどうか:どちらも検知から到着までを測りますが、C.3.3.3だけが平均時間です。*1 段の文言のほうには平均と書かれていません。
※ 本記事は2026年9月時点の公式情報(省庁・公的機関、および製品やサービスを提供する事業者が公開している資料)に基づきます。
障害が起きたとき、開発要員はいつ来るのか。駆けつけの時期を契約で決めていても、誰の到着を決めたのかは見落とされがちです。この記事でいう初動は、異常を検知してから人が現地に着くまでを指します。この言い換えはこの記事のもので、資料はこの語を使っていません。
この到着までの時期を決める項目を並べた資料があります。IPA(独立行政法人情報処理推進機構)の「非機能要求グレード2018」です。非機能要求とは、何ができるかではなく、どれだけ止まらず誰がどう運用するかという側の条件を指します。使うのは、2018年4月25日に公表された改訂情報の資料に付いている活用シートです。*1 資料はこの改訂情報を初版との差異をまとめたものだとしていますが、*1 付録の活用シートは差分の抜粋ではなく、A〜Fの6区分すべてにわたる一覧でした。
活用シートは、システムに求める条件を項目ごとに並べ、それぞれ何段階かの選択肢を置いた表です。*1 項目はA〜Fの6区分に分かれ、Cが運用・保守性、つまり誰がいつ対応するかを決める側です。*1 区分の下は中項目・小項目と分かれ、行ごとに項番が振られます。*1 使うのは中項目「障害時運用」に置かれたC.3.3の3行で、*1 ここでいう保守員は障害の一次対応にあたる要員、SEは設計や開発を担当する技術者を指し、資料はこの2つを別の行に置いています。*1
目次
資料は駆けつけを2つの行に分けている
まずC.3.3の並びです。資料はここに3行を置いています。C.3.3.1「対応可能時間」、C.3.3.2「駆けつけ到着時間」、C.3.3.3「SE到着平均時間」です。*1 この3つの名前は「メトリクス(指標)」欄のものです。*1
並びを確かめると、小項目の欄に文字が入っているのはC.3.3.1の行だけで、C.3.3.2とC.3.3.3の欄は空いたまま下に続きます。*1 3行が1つの小項目を共有しているということです。その名前は「システム異常検知時の対応」、説明は、異常を検知した際の受注側の対応についての項目だというものです。*1 受注側は言い換えで、資料は別の語を使っています。小項目の欄は、次に載せる表には出てきません。
読み替えると、資料は異常を検知したあとの動きを1つの数字で表さず、受付の時間帯(C.3.3.1)、保守員の到着(C.3.3.2)、SEの到着(C.3.3.3)の3つに分けています。
注目したいのは、駆けつけの行が2つあることです。C.3.3.2の主語は保守員、C.3.3.3の主語はSEです。*1 段の欄は項番ごとに別に並んでいるので、2行はそれぞれ選ぶ欄を持っています。*1 保守員の行で段を選んでも、SEの行の段が選ばれたことにはなりません。これはこの記事の読み方です。
2つの行の段を、資料の文言のまま並べます。
| 段 | C.3.3.2 駆けつけ到着時間 | C.3.3.3 SE到着平均時間 |
|---|---|---|
| 0 | 保守員の駆けつけ無し | SEの駆けつけ無し |
| 1 | 保守員到着が異常検知から数日中 | SE到着が異常検知から数日中 |
| 2 | 保守員到着が異常検知からユーザの翌営業日中 | SE到着が異常検知からユーザの翌営業日中 |
| 3 | 保守員到着が異常検知からユーザの翌営業開始時まで | SE到着が異常検知からユーザの翌営業開始時まで |
| 4 | 保守員到着が異常検知から数時間内 | SE到着が異常検知から数時間内 |
| 5 | 保守員が常駐 | SEが常駐 |
段の刻み方は0から5まで同じで、駆けつけ無し、数日中、翌営業日中、翌営業開始時まで、数時間内、常駐と並びます。*1 ここでの駆けつけは現地へ来ること、常駐はその場に人を置いておくことです。文言の上で違うのは誰が来るかだけなので、2行を見比べても違いに気づきにくくなっています。しかも、文言が似ていても測っているものは同じではありません。
同じ段に見えても、片方だけが平均で測る
何を測るかの説明も2行で違います。名前は「メトリクス(指標)」欄にありますが、何を測るかの文はその先の備考欄に、「【メトリクス】」という見出しを付けて書かれています。*1
C.3.3.2は「システムの異常を検出してから、指定された連絡先への通知、保守員が障害連絡を受けて現地へ到着するまでの時間。」です。*1 連絡が回る時間もこの中に入り、着いたあとの作業時間は入っていません。
C.3.3.3は「システム異常を検知してからSEが到着するまでの平均時間。」です。*1 指標の名前も「SE到着平均時間」で、平均が名前に入っています。*1
2つを並べると、起点はどちらも異常の検知、終点はどちらも到着です。はっきり違うのは、C.3.3.3だけが平均だという点です。ならした値なので、個々の案件の時間ではありません。なお、通知が回る時間を含むと書かれているのはC.3.3.2の側だけで、C.3.3.3の文に同じ断りはありません。*1 これはこの記事の読み方です。
読み違えやすいのが段の文言です。C.3.3.3の段は、段1なら「SE到着が異常検知から数日中」というように、いつ着くかだけを書いています。平均という語はどの段にも入っていません。平均だと分かるのは、指標の名前と備考欄の説明だけです。*1 段1を選んだ契約書を見た人は、その回のSEが数日中に着くと読めますが、遅い回がどれだけ遅くなるかはこの行では決まりません。これはこの記事の読み方です。
受付の時間帯を決めるC.3.3.1も見ます。段は3つで、営業時間内(例:9時~17時)、ユーザの指定する時間帯(例:18時~24時)、24時間対応です。*1 1段めの主語は受注側の企業です。ここでも受注側はこの記事の言い換えです。備考欄の説明は「システムの異常検知時に保守員が作業対応を行う時間帯。」なので、*1 ここでも主語は保守員で、SEをいつ呼べるかは書かれていません。
復旧作業の行は可用性と重複している
初動を1つの数字で語りにくい理由が、もう1つあります。復旧作業という行の置かれ方です。
資料は同じ行を2回置いています。可用性の側ではA.4.1.1、運用・保守性の側ではC.3.1.1で、どちらも小項目は復旧作業、段の中身も同じです。*1 備考欄には資料自身が「【重複項目】」という見出しを立て、「復旧作業は、可用性の復旧目標(RTO/RPO)を検討するうえで必要な項目であるため、可用性と運用・保守性の両方に含まれている。」としています。*1 可用性は区分Aで、どれだけ止まらないかを決める側です。RTOは復旧までにかける目標の長さ、RPOはどの時点のデータまで戻すかの目標です。この言い換えはこの記事のものです。
一方、到着の行は2回置かれていません。付録を通して見ると、到着や駆けつけが出てくるのはC.3.3.2とC.3.3.3の2行だけで、可用性の側には同じ行がありません。復旧作業なら可用性の側からでも行き着きますが、到着の段は運用・保守性の側を開かないと出会いません。復旧目標だけを決めても、その長さの中に人が着く段を選んでいなければ、数字と人の動きがつながりません。これはこの記事の読み方です。
ここまでで、異常を検知したあとに資料が名前を付けている指標が3つ出そろいました。受付の時間帯、保守員の到着、SEの到着です。これに復旧作業の行が重なります。初動という言葉のほうは、資料を通して探しても出てきません。この記事では冒頭のとおり到着までを指す語として使っていますが、契約書では通じず、初動という一語がどれを指すのかは相手と揃いません。これはこの記事の読み方です。
契約の前に確かめておきたい点
初動をどう書くかを決める前に、確かめる点を4つ挙げます。資料は項目と段の選択肢を並べたもので、契約条項の文例ではありません。並べ方はこの記事のものです。
1つめは、C.3.3.2とC.3.3.3のどちらの段を決めたのかを分けて確かめることです。保守員の段だけが書かれ、SEの段が空いていれば、SEの来る時期は決まっていません。
2つめは、指標の名前ではなく備考欄の説明のほうを読むことです。C.3.3.2の名前は「駆けつけ到着時間」ですが、通知が回る時間も含むと書いてあるのは備考欄です。*1 名前の欄だけを転記すると、この条件が落ちます。
3つめは、受付の時間帯と到着の段を突き合わせることです。C.3.3.1で24時間対応を選んでいても、C.3.3.3が段1ならSEの到着は異常検知から数日中です。*1 受付と到着は別の行なので、24時間という言葉だけで人がすぐ来ると読めません。
4つめは、復旧目標の長さの中に到着の段が収まっているかを見ることです。目標は可用性の側、到着の段は運用・保守性の側にしかないので、*1 決めた人が別であれば、この2つは突き合わされないまま残ります。これはこの記事の読み方です。
リリース前に人を置く量という別の論点は、記事「リリース前の開発要員|IPAは非活動期間を工期から引く」で扱っています。
まとめ:保守員の段とSEの段は別に決まる
冒頭の問いは、障害が起きたとき開発要員はいつ来るのか、でした。資料がこの問いに用意しているのは1つの数字ではなく、駆けつけ無しから常駐までの6つの段です。*1 しかも選ぶのは1回ではなく、保守員の行とSEの行でそれぞれ段を選ぶことになります。そのうえで読み取れることが3つあります。第一に、活用シートは駆けつけの行を2つに分け、C.3.3.2「駆けつけ到着時間」の主語は保守員、C.3.3.3「SE到着平均時間」の主語はSEとして、段を別々に選ばせます。*1 第二に、どちらも段は6つで刻み方も同じなので、2行の違いは誰が来るかの一語だけです。*1 第三に、測る区間は同じでも、C.3.3.3だけが平均です。*1 平均なら、遅い回がどれだけ遅くなるかはこの行では決まりません。以上から、契約で確かめるのは、保守員とSEそれぞれの段、備考欄に書かれた条件、受付の時間帯との突き合わせ、復旧目標との突き合わせの4つです。これはこの記事の読み方です。
よくある質問
「平均時間」はどう読めばよいですか
C.3.3.3の備考欄の説明は「システム異常を検知してからSEが到着するまでの平均時間。」です。*1 ならした値なので、遅い回がどれだけ遅くなるかはこの行では決まらず、上限は別に決めることになります。これはこの記事の読み方です。
復旧目標を決めれば足りませんか
資料は「復旧作業は、可用性の復旧目標(RTO/RPO)を検討するうえで必要な項目であるため、可用性と運用・保守性の両方に含まれている。」としています。*1 一方、到着の行は2回置かれておらず、運用・保守性の側にしかありません。復旧目標だけをたどっても到着の段には出会いません。
この資料はどこまで載っていますか
使ったのは「非機能要求グレード2018 改訂情報 ~初版との差異~」(2018年4月25日)の付録の活用シートです。*1 差分をまとめた資料に付いていますが、付録の項番はA〜Fの6区分をすべて含む一覧でした。
駆けつけの段の決め方から相談したいときは
保守員の段とSEの段が分かれていなくてもご相談ください。
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出典
- *1 参考:IPA「非機能要求グレード2018 改訂情報 ~初版との差異~」(PDF・2018年4月25日)(https://www.ipa.go.jp/archive/digital/iot-en-ci/jyouryuu/hikinou/ps6vr700000077he-att/000066170.pdf)。出典:独立行政法人情報処理推進機構「非機能要求グレード2018 改訂情報 ~初版との差異~」(2018年4月25日)。付録の「非機能要求グレード2018活用シート」から、項番がA〜Fの6区分に分かれていること、Cが運用・保守性であること、C.3.3.1「対応可能時間」の3段とメトリクス欄、C.3.3.2「駆けつけ到着時間」の6段とメトリクス欄、C.3.3.3「SE到着平均時間」の6段とメトリクス欄、C.3.1.1「復旧作業」の備考欄(重複項目である旨の記述)、可用性側の同じ行であるA.4.1.1、および到着や駆けつけを扱う行が付録全体でC.3.3.2とC.3.3.3の2行であることの一次情報として(2026年9月確認)