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業務委託か雇用かの判断基準|5つの問いで決める手順と相談先
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)

この記事の結論
- 業務委託か雇用かは契約の名前ではなく、指揮監督の下で働き、その対価を受けているかという実態で総合的に判断されます。
- 依頼を断れるか、進め方を指示するか、場所と時間を管理するか、代わりの人を使えるか、報酬が時間で決まるかの順に確かめます。
- 当てはまる問いがあれば頼み方を直すか雇用で迎えることを考え、迷うときは契約前に弁護士や社会保険労務士に確かめます。
※ 本記事は2026年10月時点の公式情報(省庁・公的機関、および製品やサービスを提供する事業者が公開している資料)に基づきます。
フリーランスのエンジニアに業務委託で開発を頼んだが、気づけば毎朝の作業の割り振りも勤務時間の管理も社員と同じになっている。このまま続けて雇用とみなされることはないのか——。外部の人に仕事を頼む企業の担当者が抱えやすい不安です。
本記事は、エンジニアに業務委託で仕事を頼む企業の実務者に向けて、業務委託と雇用の判断基準を、厚生労働省が示す労働者性の判断基準に沿って5つの問いの順番に並べ、問いごとの行き先と迷ったときの相談先を示します。個別の判断を代わりに下すものではなく、契約の前と頼み方を見直すときの手順として使ってください。
目次
業務委託と雇用の判断基準とは
労働基準法は、「労働者」を「職業の種類を問わず、事業又は事務所(以下「事業」という。)に使用される者で、賃金を支払われる者」と定めています。*1 厚生労働省は、この規定に基づいて2つの基準で判断するとしています。
- 労働が他人の指揮監督下において行われているか
- 報酬が「指揮監督下における労働」の対価として支払われているか
2つをあわせて「使用従属性」と呼び、請負契約や委任契約といった契約の形式や名称にかかわらず、契約の内容、労務提供の形態、報酬その他の要素から個別の事案ごとに総合的に判断されます。具体的な判断基準は労働基準法研究会報告(昭和60年12月19日)で整理され、今日も用いられています。*2 労働者と判断されると、労働基準法の労働時間や賃金のルールが適用され、労働契約法なども基本的に適用されます。*4
なお、請負の会社から技術者に来てもらうときの区分(偽装請負)は別の告示で判断するため、「システム開発の偽装請負リスクと回避策」を、派遣との違いは「SESと準委任契約の違い」をご覧ください。本記事は、個人のエンジニアに直接頼む場面を扱います。
5つの問いで確かめる判断フロー
研究会報告とフリーランスガイドラインが並べる判断基準の項目を、確かめやすい順に5つの問いにしました。*3*4 上から順に答え、右に外れた問いがあれば、行き先の対応を考えます。
| 問い | 判断基準の項目 | 雇用に近づく例 | 近づかない例 |
|---|---|---|---|
| 問1 個々の依頼を断れるか | 仕事の依頼や業務の指示を受けるかどうかの自由 | 指示された業務を、病気など特別な理由がない限り断れない | 受けるかどうかを本人が決められる。いくつかの作業からなる仕事を受けた後で、その中の作業を断れないだけなら、直ちには当たらない |
| 問2 進め方を社内で具体的に指示するか | 業務の内容と進め方への指揮監督 | 業務の内容や進め方を具体的に指示する。もともと予定していない業務もさせる | 設計図・仕様書・指示書を渡して指示するが、通常の注文者が行う程度にとどまる |
| 問3 働く場所と時間を指定し管理するか | 勤務場所と勤務時間の拘束 | 勤務場所と勤務時間を指定し、管理している | 時間を指定しているが、それが他の職種との工程の調整などを理由とする |
| 問4 代わりの人や補助者を使えるか | 労務の提供の代替性(補強する要素) | 本人以外が作業することを認めていない | 発注側の了解を得ずに、自分の判断で代わりの人や補助者を使える |
| 問5 報酬が働いた時間で決まるか | 報酬が指揮監督下の労働の対価か | 時間給や日給など時間を単位に計算する。働かなかった時間に応じて減らし、残業には追加の報酬を払う | 本人の能力で単価を決めた出来高制になっている |
注意したいのは、1つの問いで結論が出るわけではない点です。問4の代わりの人を使えるかは、研究会報告でも指揮監督関係そのものの基本的な判断基準ではなく、判断を補強する要素とされています。*3 行き先は次の3つに整理できます。
- 業務委託で続ける:どの問いにも当てはまらない。契約書と日々の頼み方をそろえる
- 頼み方を直す:問1・問2・問5に当てはまる。依頼の範囲、指示の形、支払い方を見直す
- 雇用で迎える:社内で細かく指示し、時間も管理したい仕事。社員や契約社員としての採用を考える
指示と時間で迷いやすい場面
エンジニアの仕事で迷いやすいのは、問2の指示と問3の時間です。厚生労働省の参考資料集には、システムエンジニアの労働者性が肯定された裁判例(東京地裁令和2年6月11日判決)が載っています。作業の内容と進み具合を毎日報告して確認を受け、作業場所は発注元の事業所内と指定され、作業時間は1か月151時間から185時間までとされ、報酬はほぼ作業時間に応じて決まっていました。*5

一方、IT技術者の労働者性が否定された裁判例(大阪地裁平成24年9月28日判決)では、業務の内容がほぼ本人の自由裁量に委ねられ、業務報告のメールは予定の連絡や事後報告の域を出ないとされました。*5 こうした例を踏まえると、開発の場面では次のように考えられます(本記事の当てはめ)。
- 作るものは仕様書や受け入れの基準で示し、日々の作業の順番や割り振りは本人に任せる
- 定例の打ち合わせは進み具合の共有にとどめ、毎日の作業報告と確認を求めない
- 会議の時間をそろえるのは工程の調整のためで、始業と終業の時刻は管理しない
- リモートでも、勤務時間を定めて本人の報告で管理していれば、研究会報告は在宅勤務者について指揮監督関係を肯定する重要な要素としている*3
補強の要素と迷ったときの相談先
5つの問いだけで判断が難しいときは、次の要素もあわせて見られます。*3*4

- 事業者性:仕事に使う機械や器具を本人が負担しているか。著しく高価なものを本人が用意している場合や、報酬が同じ仕事をする社員より著しく高額な場合は、労働者性を弱める要素になる
- 専属性:他の発注者の仕事が制度上できない、時間の余裕がなく事実上難しい、報酬に固定給の部分がある場合は、労働者性を補強する要素になる
- その他:選考の過程が社員の採用とほぼ同じ、給与所得として源泉徴収している、労働保険の対象にしている、服務規律や福利厚生を適用している場合は、補強の要素とされることがある
判断に迷ったときは、契約を結ぶ前や頼み方を変える前に、労働法に詳しい弁護士や社会保険労務士に契約書と実際の働き方の両方を見てもらうのが確実です。働く側の窓口として、厚生労働省は令和6年11月1日に合わせ、全国の労働基準監督署に「労働者性に疑義がある方の労働基準法等違反相談窓口」を設けています。*2 受注者から相談が入る可能性もあると考え、問いの答えを記録しておきましょう。
外部人材に頼むときに確認しておきたい点
5つの問いを確かめたうえで業務委託で進めると決めたら、相談の前に次の5つを書き出しておくと、条件の合う人を探す話が早く進みます。
- 範囲:任せる作業と、できあがりの受け入れの基準
- 期間:始める時期、契約の区切り、終える時期
- 体制:社内で仕様を決める人と、成果を受け取って確かめる人。日々の指示を出さない連絡の窓口
- 費用の決まり方:作業の単位で払うのか、成果物で払うのか
- 引き継ぎ:契約が終わるときに受け取る設計書や作業の記録
社内で細かく指示しながら進めたい仕事は、業務委託で無理に頼むより、社員や契約社員として迎えるほうが合っています。どちらで頼むか決めきれない段階でも、仕事の範囲と進め方を書き出せば、雇う形と業務委託の両方から考えられます。
まとめ:業務委託と雇用の判断基準
業務委託と雇用の判断基準は、契約の名前ではなく働き方の実態にあります。第一に、依頼を断れるか、進め方を具体的に指示するか、場所と時間を管理するか、代わりの人を使えるか、報酬が時間で決まるかの5つの問いを順に確かめます。第二に、それだけで判断が難しいときは、機械や器具の負担、専属の度合い、社員と同じ扱いをしていないかも見ます。第三に、当てはまる問いがあれば頼み方を直すか雇用で迎えることを考え、迷うときは契約前に専門家に確かめます。
よくある質問
業務委託契約書を結んでいれば雇用とはみなされませんか
そうとは限りません。厚生労働省は、使用従属性が認められるかは請負契約や委任契約といった契約の形式や名称にかかわらず、個別の事案ごとに総合的に判断されるとしています。*2 契約書の中身と日々の頼み方の両方を確かめてください。
フルリモートで働いてもらえば拘束性の心配はありませんか
場所だけでは決まりません。研究会報告は在宅勤務者について、勤務時間が定められ、本人の自主管理と報告で管理されている場合は指揮監督関係を肯定する重要な要素になるとしています。*3 時間の管理の仕方と指示の出し方もあわせて見直します。
判断に迷ったときはどこに相談すればよいですか
発注する企業は、契約の前に労働法に詳しい弁護士や社会保険労務士に、契約書と実際の働き方を見てもらうのが確実です。働く側については、全国の労働基準監督署に労働者性の相談窓口が設けられています。*2
業務委託か雇用かを決めてから外部人材を探す
任せたい作業の範囲と進め方が分かっていれば、そのままご相談いただけます。業務委託と雇用のどちらで頼むかを整理している段階でも構いません。
Remoguとリラシクなら、リモートワークで働く社員の候補者も、業務委託で開発に加わる専門人材も探せます。
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出典
- *1 参考:労働基準法(昭和22年法律第49号)第9条(https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000049)。出典:e-Gov法令検索(法令API)。労働者の定義を参照(確認日2026年10月22日)(2026年10月確認)
- *2 参考:厚生労働省「労働基準法における「労働者」とは」(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/keiyaku/index02.html)。出典:厚生労働省。2つの基準と使用従属性、契約の形式や名称にかかわらず総合的に判断されること、労働基準法研究会報告の位置づけ、労働基準監督署の相談窓口を参照(確認日2026年10月22日)(2026年10月確認)
- *3 参考:労働基準法研究会報告(労働基準法の「労働者」の判断基準について)(https://www.mhlw.go.jp/content/001477330.pdf)。出典:昭和60年12月19日。厚生労働省掲載。使用従属性に関する判断基準、労働者性の判断を補強する要素、在宅勤務者の判断基準を参照(確認日2026年10月22日)(2026年10月確認)
- *4 参考:公正取引委員会・中小企業庁・厚生労働省「フリーランスガイドライン」(令和3年3月26日策定・令和8年1月1日改定・PDF)(https://www.mhlw.go.jp/content/001318001.pdf)。出典:公正取引委員会・中小企業庁・厚生労働省(令和3年3月26日策定、令和8年1月1日改定)。第6「現行法上「雇用」に該当する場合の判断基準」を参照(確認日2026年10月22日)(2026年10月確認)
- *5 参考:厚生労働省労働基準局「労働基準法における労働者性判断に係る参考資料集」(https://www.mhlw.go.jp/content/001462701.pdf)。出典:令和6年10月時点。裁判例3(大阪地判平成24年9月28日)と裁判例18(東京地判令和2年6月11日)の判示を参照(確認日2026年10月22日)(2026年10月確認)