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外部人材活用の失敗は期待値のずれ|任せきりも絞りすぎも危うい
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)
この記事の結論
- 外部人材活用の失敗は、求める成果や任せる範囲の期待値が受け入れる側と外部の人とでずれたまま、仕事が始まることから起きやすくなります。
- 期待が大きすぎる、仕事を絞りすぎて意見が出ない、伝えないまま任せきりにする、の3つがよくあるずれ方です。
- 募集の前に課題を掘り下げ、面談で期間や打ち合わせの頻度を伝え、契約を短く区切って期待と進捗を振り返ります。
※ 本記事は2026年10月時点の公式情報(省庁・公的機関、および製品やサービスを提供する事業者が公開している資料)に基づきます。
外部の人に頼んだのに、思っていた成果が出てこない。細かく指示したら、言われたことしかやってもらえなかった——。外部人材活用の失敗をたどると、受け入れる側の期待値、つまり外部の人に求める成果・任せる範囲・関わり方の見込みが、相手と合っていなかったことに行き着く例が少なくありません。
本記事では、日本政策金融公庫総合研究所が2024年8月に公表した、副業・兼業人材の受け入れに関するヒアリング調査の報告をもとに、期待値がずれる形と、募集・面談・契約・運用の各段階で期待値をそろえる方法を整理します。報告は地方の中小企業が都市部の副業・兼業人材を受け入れた事例を扱っていますが、業務委託のエンジニアなど社外の人を迎える場面にも通じる点が多くあります。失敗した後の原因分析は別の記事で扱い、ここでは失敗を招く前の期待値の合わせ方に絞ります。
目次
外部人材活用の失敗と期待値
ここでいう期待値は、外部の人にどんな成果を、どこまで、どんな関わり方で出してもらうかについて、受け入れる側が持っている見込みのことです。期待値が高すぎれば成果は物足りなく見え、狭すぎれば外部の人の力を使い切れません。言葉にされないまま仕事が始まると、相手は自分なりの解釈で動くため、ずれは成果物を受け取る段階になって初めて見えてきます。
日本政策金融公庫総合研究所の報告(以下、公庫の報告)は、2023年7月から11月にかけて、鳥取県、岐阜県、愛媛県松山市で、自治体などの支援機関、受け入れ企業、副業・兼業人材のそれぞれにヒアリングを行ったものです。*1 3つの地域はいずれも、副業・兼業人材と受け入れ企業の間で認識の相違やトラブルが生じないよう密に連携することを重視していた、と報告はまとめています。*1 期待値をそろえる手間を、受け入れの前にも後にも惜しまなかったということです。
受け入れ企業が感じる課題
公庫の報告は、リクルートの「兼業・副業に関する動向調査データ集2022」から、社外の副業・兼業人材を受け入れている企業801社が挙げた課題(複数回答)を引いています。*1 上位は情報漏えいのリスク(59.1%)、長時間労働・過重労働などによる健康リスク(49.1%)、競業や利益相反のリスク(37.7%)でした。
期待値に関わる項目に絞ると、コミットメント量が不足するリスクが25.7%、仕事の成果が当初の期待より低かった場合の対処が難しいが21.6%、稼働管理や進捗管理が難しいが19.7%、任せる仕事の切り出しや設計が難しいが17.7%でした。*1 どれも2割前後で上位のリスクほど目立ちませんが、成果が期待を下回ったときの扱いを決めかねている企業が一定数あることが分かります。
同じデータでは、副業・兼業人材に依頼する仕事の領域として「社内のデジタル化、IT化」が53.7%で最も多く挙がっていました。*1 IT化の仕事は出来上がりの姿を前もって言葉にしにくいことが多く、期待値の置き方が成否を分けやすい仕事です。報告は、単発の仕事では副業者が期待どおりの仕事をしないといったトラブルが生じやすいという先行研究の指摘も紹介し、採用時のフィルター機能や、問題が起きたときの対応の取り決めが必要だとしています。*1
期待値がずれる3つの形
公庫の報告に出てくる事例と指摘を並べると、期待値のずれは大きく3つの形で現れています。
| 形 | 報告にある例 | 起きたこと・指摘 |
|---|---|---|
| 期待が大きすぎる | 副業・兼業人材を単なる外注先ととらえたり、売り上げの増加ばかりを期待したりする企業 | 企業の理解を促すことが、課題の1つ目に挙がっている |
| 任せる仕事を絞りすぎる | 岐阜県の金属プレスメーカーが、依頼する仕事を明確に示すよう心がけた | 業務が限定され、自由な意見が出てこなくなった |
| 伝えないまま任せきりにする | 鳥取県の遊覧船の会社が、若手社員2人と副業・兼業人材の3人にプロジェクトを任せた | 思うように進まなかった |
期待が大きすぎる形は、外部の人を呼べばすぐに売り上げや成果につながると見込んでしまうものです。公庫の報告は、地域全体の課題の1つ目として、副業・兼業人材を単なる外注先ととらえたり売り上げの増加ばかりを期待したりする企業に、理解を促すことを挙げています。
絞りすぎの形は見落とされがちです。岐阜県の金属プレスメーカーでは、社長が依頼する仕事を明確に示すよう心がけたことで業務が限定され、自由な意見が出なくなりました。社長はその後、仕事を逐一指定するのをやめ、会議の冒頭にアイスブレイクを入れ、出たアイデアをすぐ否定しないよう改めています。期待する成果をはっきりさせることと、やり方まで細かく決めることは別物だという例です。
任せきりの形では、期待値がそもそも共有されていません。鳥取県の遊覧船の会社では、初めは3人に任せていたプロジェクトが思うように進まず、隔週のオンライン会議に社長が同席して意見を伝えるようにしたことで動き始めました。*1 同県の支援機関も、初めの頃は企業が仕事を任せきりにした結果、関係が悪化したケースがあったとしています。
募集の前に課題を掘り下げる
期待値をそろえる最初の段階は、何を頼むかを決めるところです。鳥取県で受け入れを担う一般社団法人とっとりプロフェッショナル人材戦略拠点は、各社の求人票をすべて自ら作っています。ホームページの制作だけを頼もうとする企業でも、制作したい理由を突き詰めれば課題や目的が見えてくるため、そこまで掘り下げて依頼する業務を一定の大きさまで広げるといいます。*1
愛媛県松山市の取り組みでは、事務局が参加企業の経営者と話し合いながら、副業・兼業人材に示す事業内容や取り組みたい経営課題を整理します。応募する側は、提案の理由や効果、打ち合わせの頻度といった関わり方を書いた提案シートを出し、経営者・人材・事務局の3者でオンライン面談をします。エントリーからマッチングまでに約半年かけることもあるそうです。*1
業務委託のエンジニアに頼む場合も、「画面を作ってほしい」という作業の依頼で止めず、その画面で何を解決したいのかまで書いておくと、相手は作業の範囲を超えた提案もしやすくなります。掘り下げるうちに、社内でしか担えない仕事が見えてくることもあります。松山市の事例では、商品ごとの取引の流れやコストを考えながら生産者と調整するノウハウは外部の人がすぐに身につけるのは難しいと分かり、それこそが自社の強みだと気づいた企業がありました。
面談で伝えておく4つの事項
3つの地域はどこも、副業・兼業人材の選考に面談を組み込んでいました。書類上の肩書だけでは、経営者との相性や業務に対する考え方の相違を把握できないからです。*1 鳥取県の支援機関は、面談で最低限伝えておく項目として次の4つを示しています。
| 伝える項目 | 決めておく中身の例 |
|---|---|
| 副業の期間 | いつからいつまでか、更新するかどうか |
| 打ち合わせの頻度 | 週1回か隔週か、社内から誰が出るか |
| リモートワークの可否 | 出向いてもらう日はあるか、どこまで在宅でよいか |
| 交通費を含めた報酬 | 月額か時間単価か、交通費をどう扱うか |
報告によると、これらは明確にしておかなければ後々トラブルに発展しかねない項目です。*1 業務委託のエンジニアを迎える場合は、ここに成果物の受け取り方、つまり何をもって終わったとするかを加えておくと、成果が期待を下回ったときに話し合う起点ができます。
面談には支援機関が同席することも多く、事業内容をうまく説明できない企業を手助けしていました。社内で同じ役を担うなら、現場の担当者に加えて、期待している成果を言葉にできる人が同席すると、話がずれにくくなります。
契約は短く区切って振り返る
鳥取県の支援機関は、採用時に業務委託契約を交わすこと、契約期間を1カ月単位など小刻みにすることを強く勧めています。契約期間が長いと、副業・兼業人材の本業が忙しくなって時間を確保できなくなったり、互いが想定していた業務内容に食い違いが生じたりしても、簡単には解除できないためです。*1
区切りは、期待値を見直す場にもなります。岐阜県の美濃焼メーカーでは、生産工程の見直しを頼んだ副業・兼業人材との契約を3カ月ごとに更新し、そのたびに社長が期待していることと進捗状況を振り返っています。人材にとっても、受け入れ企業の考えや自分への評価を知る機会になっているといいます。*1
契約の区切り方や途中で終える場合の扱いは、契約書の定めや個別の事情によって変わります。具体的な定め方は、契約の内容を専門家に確かめたうえで決めてください。
任せきりにしない進め方
公庫の報告は、仕事を任せきりにすると、成果物が当初の想定と異なる、人材のモチベーションが続かないといった問題が生じやすいとしています。支援機関は企業に定期的なコミュニケーションを促し、必要ならオンラインの打ち合わせにも同席していました。
都市部の人材が地方で副業・兼業をする場合は多くがリモートで、打ち合わせは月2、3回程度に限られるため、意識して連携し信頼関係を強める必要がある、と報告は述べています。事例では、裁量を限定せずに意見を出しやすい場をつくることや、チャットツールなどで気軽に連絡を取り合える環境をつくることが、業務を円滑に進めることにつながっていました。*1
定例の打ち合わせでは、進み具合だけでなく、最初に伝えた期待値がまだ合っているかも確かめます。外部の人が出した提案のうち、どれを採り、どれを見送ったかを理由とともに伝えておくと、次の提案の狙いもそろってきます。
外部に頼む前に確かめたい点
外部人材を迎える前に、頼む仕事の目的、期待する成果、関わり方の3つを1枚にまとめておきます。目的には解決したい課題を、成果には受け取るものと受け取り方を、関わり方には期間・打ち合わせの頻度・リモートの可否・報酬を書きます。この1枚を面談で相手と読み合わせれば、期待値のずれは契約の前に見つけやすくなります。
失敗が起きた後の原因のたどり方は外部人材活用の失敗の原因分析、直接原因と根本原因の違いで扱っています。
頼む作業と成果の基準の書き方は外部人材活用の失敗を招く要件不足にまとめました。
途中で人が抜けたときの備えは早期離任に備えて契約で決めておくことで整理しています。
まとめ:期待値をそろえる場面
外部人材活用の失敗を防ぐうえで、期待値をそろえる場面は4つあります。募集の前には、作業の依頼で止めず、解決したい課題まで掘り下げること。面談では、期間・打ち合わせの頻度・リモートの可否・報酬を伝え、成果物の受け取り方も決めておくこと。契約は短く区切り、更新のたびに期待と進捗を振り返ること。そして仕事が始まったら任せきりにせず、意見を出しやすい場を保つことです。期待が大きすぎても、仕事を絞りすぎても、外部の人の力は生きません。頼む仕事の目的と期待する成果が言葉になったら、それに合う人を探す段階です。
よくある質問
期待値はどこまで細かく決めればよいですか
目的と成果ははっきりさせ、やり方は相手に委ねる余地を残すのが一つの目安です。公庫の報告にある金属プレスメーカーの例では、依頼する仕事を明確に示しすぎたことで自由な意見が出なくなりました。何を解決したいかと何を受け取るかを決め、進め方は打ち合わせで相手の提案を聞きながら決めていきます。
成果が期待を下回ったときはどうすればよいですか
まず、最初に伝えた期待値と実際に頼んだ内容が合っていたかを相手と確かめます。公庫の報告が引くデータでも、受け入れ企業の21.6%が、仕事の成果が当初の期待より低かった場合の対処を課題に挙げています。*1 契約を短い期間で区切っておけば、更新の時期に頼む範囲や関わり方を見直せます。契約の終え方は契約書の定めによるので、内容を確かめてから判断します。
副業・兼業人材の例は業務委託のエンジニアにも当てはまりますか
公庫の報告は地方の中小企業が副業・兼業人材を受け入れた事例を扱ったもので、エンジニアの業務委託を調べたものではありません。ただ、面談で期間や打ち合わせの頻度を伝える、契約を区切って振り返る、任せきりにしないといった点は、社外の人に仕事を頼む場面に共通します。エンジニアの場合は、成果物の受け取り方を技術的な基準で決めておく点が加わります。
期待する成果が決まったら相談
外部の人に頼む仕事の目的と、期待する成果が分かっていれば、そのままご相談いただけます。関わり方や期間をどう決めるか迷っている段階でも構いません。
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出典
- *1 参考:日本政策金融公庫総合研究所 桑本香梨・青木遥「都市部の副業・兼業人材の活用と地方創生」『日本政策金融公庫論集』第64号(2024年8月)(PDF)(https://www.jfc.go.jp/n/findings/pdf/ronbun2408_03.pdf)。出典:2(2)「企業による副業・兼業人材の受け入れ」と表-3(資料はリクルート「兼業・副業に関する動向調査データ集2022」)、3「三つの地域の取り組み事例」、4「事例総括」、5「おわりに」を参照(確認日2026年10月7日)(2026年10月確認)