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なぜ教育訓練休暇給付金は業務命令だと出ないのか
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)
この記事の結論
- 業務命令では使えない:業務命令で休暇を取得させるために活用することは認められません*2。
- 30日以上・連続・無給が条件:途中で出勤を求めることはできず、就労した日は支給を受けられません*2。
- 受給すると被保険者期間はリセット:一定期間は失業給付など他の給付を原則受給できなくなります*2。
※ 本記事は2026年8月時点の公式情報(省庁・公的機関・ベンダー公式ドキュメント)に基づきます。
学び直しのために長期の休みを認めたい。その休暇期間中の生活費を、雇用保険から補う枠があります。
厚生労働省の説明はこうです。労働者が離職することなく、教育訓練に専念するため、自発的に休暇を取得して仕事から離れる場合、その訓練・休暇期間中の生活費を保障するため、失業給付(基本手当)に相当する給付として、賃金の一定割合を支給する制度です*2。
ただし、会社が使う制度ではありません。パンフレットのQ&Aは業務命令で休暇を取得させるために活用することは認められませんと明記しています*2。本人が言い出した休暇でなければ、給付は出ません。
本記事では、対象になる休暇の3条件、支給対象者の期間要件、給付日数と受給期間、事業主に求められる手続き、そして使えない場面を整理します。個別の可否はハローワークの判断ですが、就業規則を触る前に固められる前提は先に確認できます。
目次
本人が言い出した無給休暇であること
まず、どんな休暇が対象になるのかを確認します。
制度の入口は社内規程です。一定の条件を満たす雇用保険の一般被保険者が、就業規則等に基づき連続した30日以上の無給の教育訓練休暇を取得する場合、教育訓練休暇給付金の支給が受けられます*1。
対象になる休暇は3つの条件をすべて満たすものです。1つ目は就業規則や労働協約等に規定された休暇制度に基づく休暇*2。2つ目は労働者本人が教育訓練を受講するため自発的に取得することを希望し、事業主の承認を得て取得する30日以上の無給の休暇*2。
3つ目は訓練の中身です。学校教育法に基づく大学、大学院、短大、高専、専修学校又は各種学校が提供する教育訓練等、教育訓練給付金の指定講座を有する法人等が提供する教育訓練等、職業に関する教育訓練として職業安定局長が定めるもの(司法修習、語学留学、海外大学院での修士号の取得等)が挙げられています*2。
専用の制度でなくても構いません。教育訓練以外の目的を含む休暇制度に基づく休暇であっても、教育訓練を受講するための休暇であれば該当しますとされ、また、事業主や上司からの案内がきっかけであっても、本人の意思で取得を希望する休暇であれば該当します*2。
パンフレットには活用例も載っています。外国企業とのコミュニケーションが必要となる部署への異動を希望し、語学の習得に専念するため教育訓練休暇を取得し、その際に教育訓練休暇給付金を活用するケース、IT企業で勤務している労働者が、上位資格の取得のため、教育訓練休暇を取得し、その際に教育訓練休暇給付金を活用するケースの2つです*2。
研修をどの水準から「実施している」と言えるかは研修ありと書けるのは、どの水準からかで扱いました。休暇制度も、規程に落ちて初めて外から見える形になります。
支給対象者には2つの期間要件がある
次に、誰が受け取れるのかを見ます。
対象は雇用保険の一般被保険者です。注記で高年齢被保険者、短期雇用特例被保険者、日雇労働被保険者は対象外ですと示されています*2。
要件は2つで、両方を満たす必要があります。1つ目は休暇開始前2年間に12か月以上の被保険者期間があることで、括弧書きに原則、11日以上の賃金支払いの基礎となった日数がある月が算定の対象になりますとあります*2。
2つ目は通算の加入歴です。休暇開始前に5年以上、雇用保険に加入していた期間があること*2。入社まもない人はまず届かないということです。
転職を挟んでいる場合の扱いも定められています。離職期間があったとしても、12か月以内であれば離職前後の期間を通算できます。ただし離職期間が12か月以内であっても失業給付等を受給していた場合には通算できません*2。
過去の受給歴も影響します。過去、基本手当(失業給付)や教育訓練休暇給付金、育児休業給付金、出生時育児休業給付金を受けたことがある場合、通算できない期間が生じる場合があります*2。
雇用保険の適用範囲そのものの変更は雇用保険の適用拡大とは|週10時間以上への変更で扱いました。加入期間の数え方は、この制度でも土台になります。
給付日数は加入期間で決まる
金額と期間の枠を確認します。
給付日額の算定方法は失業給付と同じです。給付日額は、原則休暇開始日前6か月の賃金日額に応じて算定されます(失業給付の算定方法と同じであり、休暇開始日の前日を離職日とみなして算定します)とされ、賃金日額のほか、年齢によっても変動します*2。
| 加入期間 | 所定給付日数 |
|---|---|
| 5年以上10年未満 | 90日 |
| 10年以上20年未満 | 120日 |
| 20年以上 | 150日 |
金額の目安も示されています。パンフレットの支給額のイメージでは、額面月収250,000円で給付月額が約170,000円、350,000円で約195,000円、450,000円で約225,000円です*2。
この数字には条件が付いています。表上の給付月額は、額面月収から便宜的に給付日額を算出し、当該給付日額に30日を乗じて計算したものであり、実際に支給される額は、収入(教育訓練開始日前の賃金支払状況)、年齢、教育訓練休暇の認定状況等により異なります*2。
期間の枠も別に決まっています。給付を受けることのできる期間(受給期間)は、休暇開始日から起算して1年間であり、受給期間内の教育訓練休暇を取得した日について給付を受けられます*2。
分割も可能です。受給期間と所定給付日数の範囲内であれば、教育訓練休暇を複数回に分割して取得した場合であっても、教育訓練休暇給付金の支給を受けられます*2。ただし1年を過ぎると、日数が残っていても支給されません*2。
事業主に求められる手続きと期限
会社側にも、やることがあります。
出発点は規程の整備です。教育訓練休暇制度を就業規則または労働協約等に規定して、そのことを周知します*2。要件に合っているかは対象となる労働者が教育訓練休暇を開始する前にハローワークにご相談いただくことが可能です*2。
次が合意です。労働者から教育訓練休暇の取得について申出があった場合、調整のうえ合意しますとされ、教育訓練休暇の期間や内容が変更となる場合にも、改めて合意が必要となります*2。
期限が切られているのが届出です。労働者の休暇開始日の翌日から起算して10日以内に休暇開始日の前日までの賃金支払い状況等を記載した賃金月額証明書をハローワークに提出してください*3。添付書類は休暇制度が規定されている就業規則等と対象労働者に係る賃金台帳、出勤簿等の賃金・就労実態が確認できる書類です*2。
その後の受け渡しもあります。ハローワークから交付される賃金月額証明票と支給申請書について、速やかに労働者本人に交付してください*3。
労働者側の期限も知っておくと段取りが組めます。休暇開始日から30日ごとにハローワークに認定申告書等を提出します*2。
確認票に書く内容も決まっています。教育訓練休暇の期間、教育訓練の目標、教育訓練の内容(施設等の名称・講座名、受講開始・修了予定年月日等)、教育訓練の実施方法(対面・通信講座等)のほか、労働者が本人の氏名をもって申請し、事業主が承認した旨を記載します*2。
使えない場面が明確に区切られている
ここを外すと、後から不支給になります。
まず業務命令です。Q&Aは教育訓練休暇給付金は、労働者(雇用保険の一般被保険者)が教育訓練に集中して取り組むため自発的に休暇を取得する場合の生活保障であることから、業務命令で休暇を取得させるために活用することは認められませんとしています*2。
途中の出勤も認められません。教育訓練に専念していただく必要があることから、教育訓練休暇中に出勤を求めることは認められず、30日以上連続して無給の休暇を取得する必要があります*2。
支給されない日も定義されています。収入を伴う就労を行った日、教育訓練休暇とは異なる休暇・休業(有給休暇や育児休業等)を取得した日は教育訓練のための休暇とは認められず、当該日については支給を受けられません*2。副業についても就労を行った日については給付を受けられません。副業の場合も同様です*2。
線引きには常識的な但し書きもあります。たとえば教育訓練休暇中、指揮命令によらずに人事担当者や同僚などと軽微なコミュニケーションを取るような場合、一般に就労には当たらないと考えられます*2。連絡を一切断つ必要まではありません。
一方で、費用補助は問題になりません。事業主から無給の休暇中に資格取得のための手当等(教育訓練の受講費用や資格試験の受験料の一部補助等)が支給されている場合、就労の対価として支払われるものではないことから、当該手当が支給されたことを理由に教育訓練休暇給付金が不支給となるものではありません*2。
解雇予定者は対象外です。解雇や雇止め等を予定している労働者に対して教育訓練休暇給付金の支給対象となる教育訓練休暇を取得させることは認められませんとされ、虚偽の届出を行った場合、罰則の対象となる場合があります*2。
取得後の解雇にも影響があります。教育訓練休暇を取得した労働者を解雇等すると、一定期間、雇用関係助成金の支給を受けられなくなる場合があります*2。
本人に伝えておくべき副作用
制度を案内する側として、先に伝えておく点があります。
受給すると履歴が切れます。教育訓練休暇給付金の支給を受けた場合、休暇開始日より前の被保険者期間や雇用保険に加入していた期間はリセットされ、通算できなくなるため、一定期間は失業給付などの雇用保険制度に基づく給付金を原則受給できません*2。
ただし影響しない給付もあります。教育訓練休暇給付金の支給を受けた場合であっても、育児休業等給付及び介護休業給付に係るみなし被保険者期間、教育訓練給付金に係る支給要件期間には影響しないため、教育訓練休暇開始日より前の被保険者期間や雇用保険に加入していた期間も通算可能です*2。
新しい期間の数え方も示されています。新たな被保険者期間は、休暇開始日から起算しますが、加入期間(算定基礎期間)に関しては、給付を受けた日については算入できません*2。
取得できるかどうかは合意次第です。取得を拒まれた場合について教育訓練休暇は、就業規則等に基づき、労働者と事業主が合意した上で取得いただくことが前提となっています。そのため、この場合は教育訓練休暇を取得できず、教育訓練休暇給付金は受給できませんとされています*2。
途中の変更にも道があります。教育訓練休暇の期間や内容等について変更が生じた場合、教育訓練休暇変更確認票により、改めて事業主の合意を得た上で、本人が住居所を管轄するハローワークに申出を行うことで変更することが可能です*2。出産・育児等の事由で30日以上教育訓練を受けられない場合は、受給期間を延長できる場合があるとされています*2。
相談先も分かれています。制度の導入は全国47都道府県に設置されている働き方改革推進支援センター、不利益取扱いを受けた場合は都道府県労働局等に設置されている総合労働相談コーナーが案内されています*2。手続きは、事業主が事業所を管轄するハローワーク、労働者が住居所を管轄するハローワークです*1。
長期の学び直しと現場の稼働を両立させたいときのご相談
30日以上抜ける前提の休暇は、現場の穴埋めとセットです。任せたい職責と必要な稼働の形から、担当が一緒に整理できます。
最後に長期の休暇を認めると現場が回らないと判断したときの分岐を1つだけ挙げておきます。この制度は30日以上の連続した休暇が前提で、途中の出勤も認められません。その間の実務を業務委託で受け止め、戻ってきてから配置を組み直すという順番も現実的な選択肢です。制度を作っても誰も使えない状態にする前の検討として有効でしょう。
まとめ:規程を作る前に決める3点
第一に、誰の意思で取る休暇かです。教育訓練休暇給付金は、労働者が離職することなく教育訓練に専念するため自発的に休暇を取得して仕事から離れる場合に、失業給付に相当する給付として賃金の一定割合を支給する制度です。業務命令で休暇を取得させるために活用することは認められません。対象になるのは、就業規則や労働協約等に規定された休暇制度に基づくもので、本人が自発的に取得を希望し事業主の承認を得て取得する30日以上の無給の休暇であり、定められた教育訓練を受けるためのものです。第二に、対象者と金額です。対象は雇用保険の一般被保険者で、休暇開始前2年間に12か月以上の被保険者期間があること、休暇開始前に5年以上雇用保険に加入していた期間があることの両方を満たす必要があります。所定給付日数は加入期間に応じて90日、120日、150日で、受給期間は休暇開始日から起算して1年間です。第三に、会社側の段取りです。休暇制度を就業規則等に規定して周知し、取得について合意し、休暇開始日の翌日から起算して10日以内に賃金月額証明書をハローワークへ提出し、交付された書類を本人へ速やかに渡します。途中で出勤を求めることはできず、就労した日や有給休暇を取得した日は支給されません。まずは自社の休暇制度が30日以上の連続無給休暇を許す作りになっているかを確かめてください。
よくある質問
教育訓練休暇給付金とはどのような制度ですか。
労働者が離職することなく教育訓練に専念するため、自発的に休暇を取得して仕事から離れる場合に、その訓練・休暇期間中の生活費を保障するため、失業給付(基本手当)に相当する給付として賃金の一定割合を支給する制度です。一定の条件を満たす雇用保険の一般被保険者が、就業規則等に基づき連続した30日以上の無給の教育訓練休暇を取得する場合に支給が受けられます。高年齢被保険者、短期雇用特例被保険者、日雇労働被保険者は対象外です。
業務命令で資格を取らせる場合にも使えますか。
使えません。Q&Aは、この給付が労働者が教育訓練に集中して取り組むため自発的に休暇を取得する場合の生活保障であることから、業務命令で休暇を取得させるために活用することは認められないとしています。ただし、事業主や上司からの案内がきっかけであっても、本人の意思で取得を希望する休暇であれば対象になるとされています。取得には労働者と事業主の合意が必要です。
どのような期間要件がありますか。
2つあります。休暇開始前2年間に12か月以上の被保険者期間があること、そして休暇開始前に5年以上、雇用保険に加入していた期間があることです。離職期間があっても12か月以内であれば離職前後の期間を通算できますが、その間に失業給付等を受給していた場合は通算できません。過去に基本手当や育児休業給付金などを受けたことがある場合も、通算できない期間が生じることがあります。
いくら、何日分もらえますか。
給付日額は原則として休暇開始日前6か月の賃金日額に応じて算定され、年齢によっても変動します。所定給付日数は雇用保険の加入期間に応じて、5年以上10年未満で90日、10年以上20年未満で120日、20年以上で150日です。受給期間は休暇開始日から起算して1年間で、その範囲内であれば分割取得もできます。1年を過ぎると所定給付日数が残っていても支給されません。
事業主は何をする必要がありますか。
まず教育訓練休暇制度を就業規則または労働協約等に規定して周知します。労働者から申出があれば調整のうえ合意し、提出された教育訓練休暇取得確認票に必要事項を記載します。休暇開始日の翌日から起算して10日以内に、就業規則等の写しや賃金台帳、出勤簿等を添えて賃金月額証明書をハローワークに提出します。その後ハローワークから交付される賃金月額証明票と支給申請書を、速やかに本人へ交付します。
出典
- *1 参考:厚生労働省「教育訓練休暇給付金」(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/koyouhoken/kyukakyufukin.html)。制度概要(労働者が離職することなく教育訓練に専念するため自発的に休暇を取得して仕事から離れる場合に失業給付に相当する給付として賃金の一定割合を支給する旨、一定の条件を満たす雇用保険の一般被保険者が就業規則等に基づき連続した30日以上の無給の教育訓練休暇を取得する場合に支給が受けられる旨)、労働者向け・事業主向けの案内(就業規則等の整備と休暇開始後の賃金支払状況の届出が必要である旨、事業主と合意した上で休暇を取得する必要がある旨)、支給額シミュレーターの提供、手続の各種申請・届出様式、問い合わせ先(事業主は事業所を管轄するハローワーク、労働者は住居所を管轄するハローワーク)、教育訓練に活用できる休暇・休職制度の導入事例集の掲載の一次情報として(2026年8月確認)
- *2 参考:厚生労働省「教育訓練休暇給付金のご案内」(パンフレット)(https://www.mhlw.go.jp/content/001543278.pdf)。制度の定義と支給対象者の2要件(休暇開始前2年間に12か月以上の被保険者期間、休暇開始前に5年以上の雇用保険加入期間)および通算の可否、高年齢被保険者等が対象外である旨、活用例、支給対象となる休暇の3要件(就業規則等に規定された休暇制度に基づくこと、本人が自発的に希望し事業主の承認を得て取得する30日以上の無給休暇であること、定められた教育訓練を受けるための休暇であること)と対象外となる日、教育訓練以外の目的を含む休暇制度でも該当する旨、給付日額の算定方法・所定給付日数・受給期間1年間・分割取得の可否・支給額のイメージとその注記、注意事項(解雇等を予定している労働者への適用不可と罰則、取得者を解雇等した場合の雇用関係助成金への影響、被保険者期間のリセットと影響しない給付、受給期間経過後の取り扱い、不正受給)、事業主および労働者の手続の流れと提出書類、教育訓練休暇取得確認票の記載事項、Q&A(業務命令での活用不可、手当の扱い、解雇等予定者、就業規則の相談先としての働き方改革推進支援センター、賃金月額証明書の提出時期、休暇中の出勤不可、他の給付への影響、取得を拒まれた場合、延長、受給期間、副業)の一次情報として(2026年8月確認)
- *3 参考:厚生労働省「教育訓練休暇給付金のご案内(簡略版)事業主の皆さまへ」(https://www.mhlw.go.jp/content/001570887.pdf)。事業主向けの支給までの流れ(就業規則等の整備、教育訓練休暇取得確認票の受領と記入、休暇開始日の翌日から起算して10日以内の賃金月額証明書のハローワークへの提出と添付書類、ハローワークから交付される賃金月額証明票および支給申請書の速やかな本人交付)、労働者本人の意思により業務命令によらず就業規則等に基づき教育訓練を受けるための無給の休暇を取得することが支給要件である旨、解雇等を予定している労働者が支給対象にならない旨と虚偽の届出に対する罰則、休暇開始日から起算して30日以内の初回認定申告書提出および30日を経過するごとの提出という時系列の一次情報として(2026年8月確認)