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2026.04.28 らしくコラム

クラウド移行の課題と解決策|失敗しない進め方

LASSIC IT事業部|プライムベンダーとしてシステム保守・運用を受託

この記事のポイント

  • クラウド移行の課題は「コスト・セキュリティ・スキル・業務継続性」の4領域に集約され、いずれかの見落としがプロジェクト全体のリスクを高める。
  • 状況別の課題パターンを把握することで、自社に適した移行戦略と優先対応領域を明確にできる。
  • 課題を乗り越えるには段階的な実践ステップと、専門知識を持つパートナーとの連携が有効である。

クラウド移行で企業が直面する主な課題

クラウド移行の課題とは、オンプレミス環境からクラウド環境へシステムを移す過程で発生する、コスト管理・セキュリティ・技術スキル・業務継続性の4領域における障壁の総称である。総務省「令和6年版 情報通信白書」によると、常用雇用者規模100人以上の企業のうち80.6%がクラウドサービスを利用している一方、全社的な移行を完了した企業は一部にとどまっており、この4領域の課題をいかに乗り越えるかがプロジェクト成功の分岐点となる*1

図

課題を大きく分類すると、「コスト管理」「セキュリティ・コンプライアンス」「技術・スキル」「業務継続性」の4領域に集約される。これらの課題は相互に関連しており、1つの領域での見落としが他の領域にも連鎖的な影響を与える。

コスト管理の難しさ

クラウドは「使った分だけ支払う」従量課金モデルが基本である。オンプレミス環境では固定費として計上していたコストが、クラウドでは変動費となるため、利用状況の管理が適切でないと月次コストが予算を大幅に超過する状況が生じる。

特にデータ転送料の見落としは頻発する課題の1つである。オンプレミスではストレージ内部の通信に追加費用はかかりませんが、クラウドでは異なるリージョン間やインターネットへのデータ転送に料金が発生する。また、リザーブドインスタンス(予約購入)を活用せずオンデマンド料金のまま稼働させ続けると、本来であれば回避できたコストが継続的に発生する。

コスト管理を誤ると、クラウド化によって期待していたコスト削減効果が得られないばかりか、オンプレミス時代より総コストが増加するという逆転現象が起こるリスクがある。移行前のコスト試算には、ランニングコストだけでなく、データ転送料・管理ツール費・セキュリティ対策費を含めた総所有コスト(TCO)の視点が欠かせない。

セキュリティ・コンプライアンスへの対応

クラウドサービスを利用しない理由として「セキュリティへの不安」を挙げる企業は依然として多く、クラウドエース株式会社の調査では約57.9%の担当者が移行検討時にセキュリティを最大の懸念点として挙げています*2

クラウドのセキュリティは「責任共有モデル」に基づいており、クラウドプロバイダーが担うインフラ層のセキュリティと、利用企業が担うデータ・アプリケーション層のセキュリティが明確に分かれている。この区分を正確に理解しないまま移行を進めると、自社が対応すべきセキュリティ領域に空白が生まれ、情報漏えいや不正アクセスのリスクが高まる。

金融・医療・公共系など、業界固有のコンプライアンス要件がある場合は、利用するクラウドサービスがその要件を満たしているかの確認も必要である。要件の確認を後回しにすると、移行後に規制対応のための追加コストが発生するリスクがある。

技術・スキルの不足

クラウド移行を内製で進めるには、クラウドアーキテクチャの設計、IaC(Infrastructure as Code)による自動化、クラウドネイティブなアプリケーション移行、コスト最適化など、複数の専門スキルが必要である。中規模システムの移行では、クラウドアーキテクト・セキュリティエンジニア・アプリケーション移行エンジニアなど複数領域の専門スキルを持つチーム体制と、相応の工数が必要になる。

ITエンジニアを抱えている企業であっても、既存システムの保守・運用と並行してクラウド移行を進めるリソースを確保できないケースは珍しくありない。スキル不足のまま移行を強行すると、設計ミスによる性能劣化・セキュリティホールの発生・コスト最適化の失敗という3つのリスクが同時に発生する可能性がある。

業務継続性とシステム停止リスク

クラウド移行中のシステム停止は、業務への直接的な影響をもたらする。基幹システムの移行では、データ移行中の整合性確保・カットオーバー時のダウンタイム最小化・移行後の性能検証という3つのフェーズを並行して管理する必要がある。

DNS設定の誤りや移行スクリプトの事前検証不足は、長時間のサービス停止につながる代表的な原因である。ECサイトや予約システムなど、24時間稼働が求められるシステムでは、わずかな停止時間も売上損失に直結する。移行計画には、ロールバック手順(元の状態への復旧方法)を必ず含めることが重要である。

状況別に見るクラウド移行の課題パターン

クラウド移行の課題は、企業規模・業種・既存システムの複雑さによって異なる。自社の状況に近いパターンを把握することで、課題への対策を効率的に立案できる。

オンプレミス資産が多い企業の状況

オンプレミス環境に多くのサーバーや独自システムを抱える企業では、「どのシステムからどの順番で移行するか」という優先順位づけが最初の難題となる。すべてのシステムを同時にクラウドへ移行しようとすると、プロジェクトの規模が膨らみ、管理コストが増大する。このような状況では、業務影響が小さく技術的に単純なシステムからパイロット移行を進め、段階的にスコープを広げる「段階的移行(フェーズド・マイグレーション)」のアプローチが有効である。

セキュリティ要件が高い業種の状況

金融・医療・官公庁向けシステムを扱う企業では、業界ガイドラインや法規制への対応が移行の前提条件となる。このようなケースでは、クラウドプロバイダーが取得しているセキュリティ認証(ISO 27001・SOC 2等)の確認と、自社のコンプライアンス要件へのマッピング作業が必要である。セキュリティ要件の確認を移行計画の初期段階で完了させないと、移行完了後に規制対応のための再設計が必要となり、追加コストが発生するリスクが生じる。

IT人材が限られている中小企業の状況

社内にクラウド専門エンジニアがいない、または1〜2名しか確保できない中小企業では、移行作業の工数が既存業務を圧迫するリスクがある。このような状況では、クラウドマネージドサービス(移行支援・運用監視・コスト最適化をセットで提供するサービス)の活用が現実的な選択肢である。内製でスキルを習得しながら進める場合でも、最低限のアーキテクチャ設計は専門家に依頼することで、設計ミスによる後工程のリスクを大幅に抑えられる。

既存システムが複雑な場合の状況

長期間にわたって改修を繰り返してきたレガシーシステムや、複数のシステムが密接に連携している環境では、単純なリフトアンドシフト(そのままクラウドへ移行する手法)では性能問題が生じるケースが多く見られる。このような状況では、移行前にシステムの依存関係を可視化する「アプリケーションディスカバリー」の実施が有効である。依存関係を把握せずに移行を進めると、一部のシステムが正常に動作しない状態で本番稼働するリスクがある。

クラウド移行の共通失敗パターンと対策

多くのクラウド移行プロジェクトに共通する失敗パターンを把握することで、同じ轍を踏まずにプロジェクトを進められる。以下に代表的な失敗パターンと対策をまとめる。

失敗パターン 主な原因 対策
コスト超過 従量課金の理解不足・リソース過剰確保 TCO試算の実施・コスト監視ツールの設定
スコープ肥大化 移行範囲の無計画な拡大 フェーズ分割と段階的移行の計画
性能劣化 リフトアンドシフトによるアーキテクチャ不適合 移行前の性能要件定義と負荷テスト実施
セキュリティ設定漏れ 責任共有モデルの誤解 セキュリティチェックリスト作成と第三者レビュー
移行後の運用不備 運用設計の後回し 移行前の監視・アラート設計の完了

計画段階での見積もり不足

クラウド移行プロジェクトにおける最も多い失敗の原因は、計画段階でのコスト・工数・スコープの見積もり不足である。特に、移行前のシステム調査(アセスメント)を省略または簡略化したケースでは、移行先環境の設計が甘くなり、後工程での手戻りが増加する。

アセスメントを適切に実施せずに移行を開始した場合、想定外のシステム依存関係の発覚・データ整合性の問題・パフォーマンス要件の未達といったリスクが本番移行後に顕在化する。これらの問題への対応には、移行作業と同等以上のコストがかかることがある。

スコープの肥大化と要件変更

移行プロジェクトが進む中で「ついでにシステムの機能改修も行う」「新しいクラウドサービスも試してみる」という追加要件が積み重なり、当初計画の2〜3倍のスコープになるケースがある。スコープの肥大化は、工数・コスト・スケジュールのすべてに影響を与える。

移行プロジェクトでは「移行(Migrate)」と「改善(Modernize)」を明確に分けて管理することが重要である。まず既存システムをクラウドへ移行して安定稼働を確認してから、改善・モダナイゼーションを計画するアプローチが、リスクを抑えながらクラウドの恩恵を享受する現実的な方法である。

ベンダーロックインリスク

特定のクラウドプロバイダー固有のサービスに過度に依存した設計にすると、将来的にプロバイダーを変更したり、マルチクラウド構成に移行したりする際の移行コストが増大する。移行設計の段階で、クラウドプロバイダー固有の機能とポータブルな機能の使い分け方針を明確にしておくことで、長期的な柔軟性を確保できる。

クラウド移行を成功させる実践ステップ

課題を踏まえたうえで、クラウド移行を成功させるための実践的な進め方を5段階のステップで説明する。各ステップを順守することで、想定外のトラブルを最小化しながら移行プロジェクトを推進できる。

Step 1:現状アセスメント(移行前調査)

移行するシステムの現状を把握することが、すべての出発点である。対象システムのサーバー台数・CPU・メモリ・ストレージの利用状況、システム間の依存関係、データ量、可用性要件(許容ダウンタイム)を洗い出する。アセスメントにより、移行の優先順位と移行方式(リフトアンドシフト・リプラットフォーミング・リアーキテクティング)の判断根拠が整いる。工数的に余裕がない場合でも、この工程を省略すると後工程の設計精度が著しく低下するため、必ず実施することを推奨する。

Step 2:移行戦略・アーキテクチャの策定

アセスメント結果をもとに、移行先のクラウドアーキテクチャを設計する。ネットワーク設計(VPC構成・サブネット・セキュリティグループ)、ID・アクセス管理(IAM)ポリシー、コスト最適化戦略、災害復旧(DR)設計を含む設計書を作成する。設計のレビューには、セキュリティとコストの観点から第三者(クラウドパートナーや専門家)の確認を受けることで、設計ミスによるリスクを低減できる。

Step 3:パイロット移行の実施

本番移行の前に、影響範囲の小さいシステムや開発環境を対象にパイロット移行を実施する。パイロット移行では、移行手順の妥当性確認・所要時間の計測・性能検証・ロールバック手順の確認を行いる。パイロットで発見した課題を解決してから本番移行に臨むことで、本番稼働後のトラブルを大幅に削減できる。

Step 4:本番移行とカットオーバー

パイロット移行の結果を反映した最終的な移行計画を策定し、本番移行を実施する。カットオーバー(本番切り替え)は、業務負荷が低い時間帯(深夜・休日)に設定し、切り替え前後の動作確認チェックリストを用意する。切り替え後72時間は集中監視体制を維持し、異常が検知された場合のロールバック手順をチーム全員が把握している状態で臨むことが重要である。

Step 5:運用定着と継続的最適化

クラウド移行は「本番稼働の開始」がゴールではなく、安定した運用体制の確立が最終目標である。コスト最適化(不要リソースの削除・リザーブドインスタンスへの切り替え)、セキュリティパッチの適用、パフォーマンスのモニタリングを継続的に行う運用プロセスを整備する。移行後6ヶ月のコスト推移を定期的にレビューし、当初予算との乖離がある場合は原因を特定して対策を講じる。

内製と外部委託の比較・LASSICの支援体制

クラウド移行を内製で進めるか、外部パートナーに委託するかは、自社のリソース・スキル・リスク許容度によって判断が分かれる。両者のメリット・デメリットを整理したうえで、適切な判断のための情報を提供する。

比較項目 内製 外部委託
初期コスト 低い(人件費は固定費として存在) 委託費用が発生
スキル要件 クラウド専門スキルの習得が必要 委託先が専門スキルを保有
リスク 設計ミスのリスクが高い 実績・ノウハウによりリスクを軽減
スピード 学習コストにより遅くなりやすい 経験により移行期間を短縮しやすい
移行後の運用 社内にノウハウが蓄積される 継続サポートにより安定運用が可能

内製で進める際に必要なスキルと工数

クラウド移行を内製で進めるには、最低限、以下のスキルを持つ人材が必要である。クラウドアーキテクチャの設計力、IaC(Terraform・AWS CloudFormationなど)の利用経験、セキュリティ設計(IAM・ネットワークポリシー)の知識、データ移行ツールの操作経験が必要となる。プロジェクト規模にもよるが、中規模システムの移行では専任に近い形でエンジニアを確保し、一定期間継続して対応できる体制が求められる。この体制を既存業務と並行して確保できない場合、品質低下やスケジュール遅延のリスクが高まる。

外部委託(LASSICへの委託)のメリット

クラウド移行を外部パートナーに委託することの最大のメリットは、「リスクの最小化」と「移行期間の短縮」である。内製でクラウドスキルを習得しながら移行を進めると、学習コストが工数に上乗せされる。一方、移行実績を持つパートナーに委託することで、過去の失敗パターンを踏まえた設計が可能になり、想定外のトラブルを事前に回避できる。

LASSICのIT事業部は、プライムベンダーとしてシステム保守・運用・クラウド移行の支援実績を持ちます。アセスメントから移行設計・本番稼働後の運用定着まで一貫したサポートを提供する。「コスト超過」「セキュリティリスク」「スキル不足」という3つの主要課題に対して専門チームが対応し、移行プロジェクトのリスクを最小化する。


よくある質問

クラウド移行の最大の課題は何か?
コスト管理・セキュリティ・技術スキル・業務継続性の4領域である。このうち企業が最も懸念として挙げるのはセキュリティで、クラウドエースの調査では移行検討時の最大の懸念点として約57.9%の担当者が挙げている。
クラウド移行は内製と外部委託のどちらが良いか?
自社のITリソース・スキル・リスク許容度によって判断が分かれる。内製は社内にノウハウが蓄積される一方、設計ミスや学習コストのリスクがある。外部委託は移行期間の短縮とリスク軽減が期待できる。
クラウド移行の一般的な期間はどのくらいか?
システムの規模と複雑さに依存する。小規模システムであれば数ヶ月、複数システムが複雑に連携する中〜大規模環境では1年以上を要するケースもある。アセスメントを十分に行い、段階的な移行計画を立てることが期間短縮の前提となる。

LASSICに相談するメリット

LASSICのIT事業部は、プライムベンダーとしてシステム保守・運用・クラウド移行を一次受けで支援しています。対応技術スタックはAWS / Azure / GCP / オンプレミス・ハイブリッド構成に対応しており、アセスメントから移行設計・本番稼働後の運用定着まで一気通貫でサポートします。コスト超過・セキュリティリスク・スキル不足という移行プロジェクトの3大課題に対して、専門チームが貴社の状況に合わせた戦略をご提案します。

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  1. *1 出典:総務省「令和6年版 情報通信白書(クラウドサービス)」(2024年)
  2. *2 出典:クラウドエース株式会社「クラウドサービス活用実態調査」(2023年)/Web担当者Forum「自前サーバよりパブリッククラウド移行! 課題は「セキュリティ」「開発会社」「サポート費用」【クラウドエース調べ】


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