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BtoB受発注システム・BtoB EC構築を外注
LASSIC IT事業部|元請(プライムベンダー)としてシステム保守・運用を受託
この記事のポイント
- 経済産業省の調査では、2024年の国内BtoB-EC市場規模は514.4兆円(前年比10.6%増)、EC化率は43.1%(前年比3.1ポイント増)に達しています。
- BtoB受発注システムは、取引先ごとの価格・掛け売り・承認フロー・ロット単位といったBtoC ECにはない商習慣への対応が前提になります。
- Web-EDIとの使い分け、パッケージ・SaaS・スクラッチといった構築方式の選定、基幹システム連携の設計が、導入の成否を分ける論点です。
目次
BtoB受発注システム・BtoB ECとは——FAX・電話に代わるWeb受発注の仕組み
BtoB受発注システム(BtoB EC。企業間の受発注業務をECサイト形式でWeb上に置いたプラットフォーム)とは、卸・製造・商社などが取引先(法人)との受発注を、FAX・電話・メールに代わってWebブラウザ上で行えるようにする仕組みを指します*4。商品カタログを閲覧しながら注文でき、受注から請求までを一元的に管理できる点が特徴です*4。
この呼び方には「Web受発注システム」「受発注サイト」なども含まれ、いずれも同じ枠組みを指すことが多いです。呼称よりも重要なのは、取引先が個別にシステムを導入しなくても、パソコン・スマートフォン・タブレットとインターネット回線があれば商取引を行えるようにする点です*3。この特性が、後述するEDI(電子データ交換)との使い分けの分かれ目にもなります。
拡大が続くBtoB-EC市場——経産省調査に見る規模とEC化率
経済産業省が公表した「令和6年度電子商取引に関する市場調査」によると、2024年の国内BtoB-EC(企業間電子商取引)市場規模は514.4兆円で、前年(465.2兆円)比10.6%増、前々年(420.2兆円)からも継続して拡大しています*1。EC化率(全ての商取引金額に対する電子商取引の割合)も43.1%となり、前年比3.1ポイント増と、企業間取引の電子化が進んでいることを示しています*1。
この調査は1998年度から毎年実施され、2025年公表分で27回目を数えます*1。BtoC-EC(消費者向け電子商取引)市場規模の26.1兆円と比べると、BtoB-ECの規模は際立って大きく、企業間の受発注を電子化する余地が依然として広いことがうかがえます*1。卸・製造・商社の現場でFAXや電話による受発注が残っている場合、その分だけWeb化による効率化の余地が見込めるという読み方もできます。
BtoC ECとの違い——取引先別価格・掛け売り・承認フロー・ロット単位
BtoB受発注システムを検討する際、まず押さえておきたいのがBtoC ECとの商習慣の違いです。BtoC ECは原則として全顧客に同一価格を提示する形態ですが、BtoBでは取引先ごとに価格や掛け率を変える「一物多価」が一般的で、顧客アカウントごとに異なる商品価格を自動適用する機能がBtoB ECの要になります*5。
決済方式も異なります。BtoC ECはクレジットカードなどでその場で決済が完了する一方、BtoBでは商品やサービスの提供後に代金を支払う掛け売り(請求書払い)が主流で、月末締め翌月末払いのように一定期間分をまとめて後払いする方式が広く採用されています*5。掛け売りを前提とする以上、取引先ごとの与信残や取引条件を基幹システム側と連携させる必要も生じます*5。
発注のプロセスにも違いが表れます。BtoBでは発注前に上長の承認を必要とする企業が多く、承認フローをシステム化する機能が求められます。また「1ケース単位」「12個単位」のようにまとまった数量での取引が一般的で、最小発注数量や発注単位の設定も欠かせない要素です。同じ品目を毎月定期的に発注するケースも多いため、CSV一括発注や過去注文のワンクリック再発注、よく使う品目のお気に入り登録といった定番発注の効率化機能も実務上重要です。
これらの違いを整理すると次の通りです。
| 項目 | BtoC EC | BtoB受発注システム(BtoB EC) |
|---|---|---|
| 価格設定 | 全顧客に同一価格が原則*5 | 取引先ごとに価格・掛け率を設定(一物多価)*5 |
| 決済方式 | クレジットカード等でその場で決済*5 | 掛け売り(請求書後払い)が主流*5 |
| 発注の承認 | 購入者個人が都度購入を完了 | 発注前に上長承認を要する場合が多い |
| 発注単位 | 個数単位の購入が中心 | ケース・ロット単位で最小発注数量を設定*4 |
| 再発注の形 | その都度カートに追加 | 定番発注・お気に入り・CSV一括発注に対応*4 |
| 基幹システム連携 | 在庫・会員情報との連携が中心 | 販売管理・在庫・与信情報とのリアルタイム連携が前提*5 |
Web-EDIとの関係——受発注デジタル化における位置づけと使い分け
受発注のWeb化を検討すると、比較の対象になりやすいのがWeb-EDIです。Web-EDIとは、インターネットとWebブラウザを使って企業間の受発注・納品・請求などの取引データをやり取りする仕組みで、専用回線や専用ソフトが不要な分、初期費用を抑えやすい点が特徴です*4。ブラウザ入力型やファイル転送型など、定型的なデータ交換に特化した方式が中心になります*4。
従来型のEDIとBtoB ECの違いを見ると、取引先側の導入負荷が対照的です。EDIは自社と取引先の双方が互換性のあるシステムを導入しなければやり取りが成り立たず、取引先がシステム導入に消極的だと取引継続が難しくなる場合があります*3。一方でBtoB ECは、パソコン・スマートフォン・タブレットとインターネット回線があれば取引先側のシステム導入なしに利用できます*3。対応できる取引パターンにも差があり、EDIは特定の取引先との大量・大口取引に最適化されているのに対し、BtoB ECは大口取引だけでなく小口取引でも業務効率化や売上増の恩恵を受けやすく、既存顧客と新規顧客の双方に対応しやすい形態です*3。
なお大手小売業との取引がある卸・製造業では、GS1 Japan(一般財団法人流通システム開発センター)の流通BMS(流通ビジネスメッセージ標準。消費財流通業界を対象とするEDI標準仕様)のような業界標準への対応を取引先から求められる場合もあります*2。この場合はBtoB受発注システムと既存のEDI回線を併存させ、取引先の規模や業界慣行に応じて使い分ける設計も選択肢になります。
使い分けの目安としては、取引先が固定的で商品や価格がほぼ変わらず、受発注の電子化そのものが目的であればWeb-EDIで足りる場合があります*4。一方、取引先ごとに価格や商品ラインナップを変える必要がある、カタログ型の発注体験を提供したい、在庫管理や請求まで含めて自動化したい、といった要件が重なるほどBtoB EC(BtoB受発注システム)が向いていると整理できます*4。
構築の選択肢——パッケージ・SaaS・スクラッチと基幹連携の勘所
BtoB受発注システムの構築方式は一つではありません。主なものとして、ASP型・パッケージ型・オープンソース型・クラウド型・フルスクラッチ型が挙げられ、それぞれコストと拡張性のトレードオフが異なります*5。ASP型やクラウド型(SaaS)は初期費用を抑えやすく短期間で立ち上げやすい一方、自社の業務フローに合わせた作り込みには制約が出やすい傾向があります。パッケージ型は業界標準的な機能をベースにカスタマイズできる分、パッケージの設計思想に業務側を合わせる場面も出てきます。フルスクラッチ型は自由度が高い分、要件定義から運用まで踏み込んだ体制が必要です。
どの方式を選ぶにせよ、避けて通れないのが基幹システムとの連携です。受注データを基幹システムへ漏れなく連携させる仕組みが前提になり、与信残や取引条件、承認ワークフローといったBtoB特有の情報を、販売管理・在庫システムと連携させる設計が求められます*5。この連携が甘いと、Web上の受注データと基幹側の在庫・与信情報がずれ、二重入力や出荷遅延の原因になりかねません。
連携方式の実例として、大塚商会のERPナビでは、EDIデータを販売管理システムへ連携する仕組みと並んで、得意先が直接注文を入力できるWeb受注システム(BtoB ECサイト)を、同じ販売管理システムとシームレスに連携させる構成が紹介されています*6。一方で簡易的な連携手段(CSV取り込み等)では、基幹システムとシームレスに連携できない場合がある点も示されており、連携方式によって運用の手間が変わることがわかります*6。構築を検討する段階で、基幹側とのデータ連携をどこまで自動化するかを詰めておくことが、後工程の手戻りを防ぐポイントです。
導入の進め方——現状整理から本稼働までの流れ
BtoB受発注システムの導入は、システム選定よりも前に現状整理から始まります。取引先数、FAX・電話・メールそれぞれの受発注比率、既存の基幹システムの仕様を棚卸しし、どの業務をどこまでWeb化するかの範囲を定めます。
次に要件を定義します。取引先別価格・掛け売りと与信管理・承認フロー・ロットや発注単位・定番発注といった、BtoC ECにはないBtoB特有の機能をどこまでシステム側で持たせるかを洗い出す工程です。ここで要件を詰め切れないまま構築方式の選定に進むと、後から機能追加が発生し、コストと工期の両方が膨らみやすくなります。
要件が固まった段階で、パッケージ・SaaS・スクラッチのいずれかを選び、基幹システムとの連携方式(API連携・ミドルウェア経由・ファイル連携など)を設計します。その後、基幹側の在庫・与信データとの同期テストを重ね、想定通りに反映されるかを確認します。
最後に取引先への展開です。全取引先が同時にWeb受発注へ移行するとは限らないため、FAX・電話とWeb受発注を一定期間並行させる計画を立てておくと、切替時の混乱を抑えやすくなります。本稼働後は、取引先ごとの利用率を継続的に確認し、Web化が進んでいない取引先には個別のフォローを行う運用が実務的です。
内製と外注の分かれ目——外注時に確認すべきポイント
BtoB受発注システムの構築は、取引先数が少なく、基幹システムの仕様がシンプルで、社内にEC構築の経験を持つ人材がいる場合は内製で対応できる場合もあります。判断が分かれるのは、取引先数が多い、基幹システムが複数の拠点・パッケージにまたがる、承認フローや与信管理といった業務要件が複雑な場合です。
外注先を選ぶ際は、基幹システム連携の実績があるかどうかがまず確認材料になります。販売管理・在庫システムとの連携方式について、API連携かファイル連携かといった技術面だけでなく、与信残や取引条件をどこまで自動反映できるかまで具体的に説明を受けられるかを見ておきたいところです。加えて、取引先への周知や並行運用期間の設計、切替後のフォロー体制まで一括して依頼できるかどうかも、委託範囲の分かれ目になります。
。取引先数や基幹システムの複雑さによって必要な工数は変わってきます。現状の受発注フローと基幹システムの構成を整理したうえで、内製・外注の切り分けを検討することが実務的です。
まとめ:BtoB受発注システム構築で押さえる3つの判断軸
本稿ではBtoB受発注システム・BtoB ECの構築について、公的統計と公式情報をもとに整理しました。要点は3つに集約できます。第一に、国内BtoB-EC市場は2024年時点で514.4兆円、EC化率43.1%まで拡大しており、FAX・電話中心の受発注が残っている企業ほどWeb化の余地が大きい可能性があります*1。第二に、BtoB受発注システムは取引先別価格・掛け売りと与信・承認フロー・ロット単位・定番発注といったBtoC ECにはない商習慣への対応が前提で、Web-EDIとは取引先の導入負荷や取引パターンの柔軟性で使い分けが分かれます*3*4*5。第三に、構築方式(パッケージ・SaaS・スクラッチ)の選定以上に、基幹システムとの連携設計が導入の成否を左右し、取引先数や基幹システムの複雑さが内製と外注の判断材料になります*5*6。
よくある質問
BtoB受発注システムとBtoC ECサイトは何が違いますか。
BtoCでは全顧客に同一価格を提示するのが原則ですが、BtoBでは取引先ごとに価格や掛け率を変える一物多価が一般的です*5。決済もBtoCのその場決済に対し、BtoBでは掛け売り(請求書後払い)が主流で、発注前の承認フローやロット単位の発注、定番発注機能への対応も求められます*5。
Web-EDIとBtoB EC(BtoB受発注システム)はどちらを選べばよいですか。
取引先が固定的で商品・価格がほぼ変わらず、受発注の電子化そのものが目的であればWeb-EDIで足りる場合があります*4。取引先ごとに価格や商品ラインナップを変えたい、カタログ型の発注体験を提供したい、在庫・請求まで自動化したいといった要件が重なるほどBtoB受発注システムが向いています*4。
構築方法はパッケージ・SaaS・スクラッチのどれを選べばよいですか。
ASP型・パッケージ型・オープンソース型・クラウド型・フルスクラッチ型のいずれもコストと拡張性のトレードオフが異なります*5。SaaS(ASP・クラウド型)は立ち上げが早い一方で独自業務フローへの作り込みに制約が出やすく、スクラッチは自由度が高い分、要件定義から運用まで踏み込んだ体制が必要です。自社の取引条件の複雑さと工期・予算のバランスで判断します。
基幹システムとの連携でつまずきやすい点は何ですか。
受注データを基幹システムへ漏れなく連携させる設計が前提で、与信残や取引条件、承認ワークフローといったBtoB特有の情報連携が複雑になりがちです*5。CSV取り込みのような簡易連携ではシームレスに連携できない場合もあり*6、構築段階でどこまで自動連携させるかを詰めておくことが手戻りを防ぐポイントです。
BtoB受発注システムの構築を外部に委託する場合、何を確認すればよいですか。
販売管理・在庫システムとの連携実績と、与信残・取引条件をどこまで自動反映できるかを確認します。加えて、取引先への周知・並行運用期間の設計・切替後のフォロー体制まで一括して依頼できるかどうかも委託範囲の分かれ目です。契約前に、基幹連携の検証範囲を具体的にすり合わせておくと、後工程での認識齟齬を防ぎやすくなります。
著者:テレリモ総研編集部 鈴木 亮佑
ご不明な点はお問い合わせフォームからもご連絡いただけます。
- *1 出典:経済産業省「令和6年度電子商取引に関する市場調査の結果を取りまとめました」(2025年8月26日)
- *2 出典:GS1 Japan(一般財団法人流通システム開発センター)「流通BMS|EDI(電子データ交換)|標準化活動」(https://www.gs1jp.org/standard/edi/ryutsu-bms.html)
- *3 出典:アラジンEC「EDIとは?システムのメリットや種類、BtoB ECとの違いをわかりやすく解説」(https://aladdin-ec.jp/useful/10/)
- *4 出典:mercart「WEB-EDIとは?受発注システム(BtoB EC)との違いを解説」(https://mercart.jp/contents/detail/212)
- *5 出典:株式会社W2ソリューション「BtoB ECとは?基礎知識からメリット・構築方法・成功事例を解説」(https://www.w2solution.co.jp/useful_info_ec/btob-ec/)
- *6 出典:株式会社大塚商会 ERPナビ「EDI取引の効率化 BtoB-ECサイトWeb受注システムの構築」(https://www.otsuka-shokai.co.jp/erpnavi/uds/business-orders/edi/)