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2026.05.27 らしくコラム

SESエンジニアコスト削減の判断軸と実践方法

LASSIC IT事業部|プライムベンダーとしてシステム保守・運用を受託

 

この記事のポイント

  • SES(システムエンジニアリングサービス、準委任契約に基づくIT技術者の役務提供形態)のコスト構造を、契約形態・地域差・稼働率の3観点で分解する
  • 経済産業省・厚生労働省の公表データを根拠に、IT人材不足下でも単価上昇に飲み込まれない判断軸を提示する
  • 削減施策と並行して品質・偽装請負リスクを抑える運用設計まで言及する

目次

SESエンジニアのコスト削減とは:契約形態・地域・稼働率の3軸で見直す取り組み

SESエンジニアのコスト削減とは、SES(システムエンジニアリングサービス、ベンダー所属の技術者が顧客先で役務を提供する準委任型の役務提供形態)における支出を、契約形態・拠点地域・稼働マネジメントという3つの軸から見直し、単位生産性あたりの支払を下げる取り組みである。経済産業省が2019年4月に公表した「IT人材需給に関する調査」では、その時点の試算として、2030年に最大約79万人(高位シナリオ)のIT人材が不足する見通しが示されており*1、単純な単価交渉だけでは削減が成立しない局面が増えている。

図:SESエンジニアコスト削減の4ステップ

背景:2030年最大79万人不足の人材市場でSES単価が上昇する3つの圧力

SESエンジニアのコスト削減が経営課題化している背景には、人材市場の構造的な変化がある。経産省2019年公表調査の高位シナリオでは、2030年に約79万人のIT人材不足が試算されており*1、需要超過のもとで単価は中長期的に上昇基調にある。IPA「DX動向2025」(2025年6月公表、日米独3か国比較調査、日本企業1,535社対象)も、企業のDX推進状況において人材確保と育成が引き続き重要な論点であることを示している*2

圧力1:採用市場の需給逼迫が単価を底上げする

需給ギャップが拡大するほど、SES会社の調達単価も上昇する。SES会社は仕入価格の上昇分を顧客企業に転嫁するため、見積上の人月単価は中長期で上昇基調となる。値下げ交渉だけで対処しようとすると、結果的に経験の浅い要員へ差し替えられ、品質低下を招く事態に陥りやすい。

圧力2:DX案件の拡大で要員の取り合いが起こる

DX動向2025では、生成AI・クラウド・データ活用領域で取り組みが進展している*2。新領域に強い要員ほどSES市場で奪い合いとなり、特定スキル(クラウド、データエンジニアリングなど)のSES単価が上昇する。発注側は「自社案件に本当に必要なスキル」を見極めない限り、必要以上の単価帯で発注してしまうリスクがある。

圧力3:法令対応で総人件費が上昇する

労働者派遣事業の事業報告では、情報処理・通信技術者の派遣料金(8時間換算)は令和4年度実績で32,871円となっている*3。同一労働同一賃金や派遣労働者の処遇改善対応のなかで、派遣・SES側の労務コストは上昇傾向にあり、これが顧客企業への請求単価にも反映される。

SES費用の構成:派遣料金32,871円・月額単価帯・間接費の内訳

SESエンジニアの費用は単価×稼働時間の単純構造に見えるが、実際には複数のコスト要素から構成される。コスト削減を考える前提として、まず費用構造を可視化する必要がある。

派遣料金と人月単価の公的データ

厚生労働省「労働者派遣事業報告書」によると、情報処理・通信技術者の派遣料金(8時間換算)は令和4年度実績で32,871円である*3。月額換算で22営業日と仮定すれば概算で約72万円となるが、この数値は派遣契約(労働者派遣法に基づく労働力提供)の平均値であり、母集団の異なる準委任型のSESに当てはめる際は目安としての参照にとどめる。準委任型SESではスキル・経験により幅が広く、職種別・経験年数別の差異も大きいため、自社の見積比較時には委託先各社の単価表を直接照会する。

固定費と変動費の見分け方

SESに支払う費用は、外形的には変動費に見える。だが長期間同じ要員を継続発注する慣行が常態化すると、実質的に固定費となる。コスト削減の余地は、この「実質固定費化」をどう可変費に戻すかにある。

見えにくい間接コスト

本人原価以外にも、要員管理・指示伝達・引継ぎ・セキュリティ対応など、社内側の間接コストが発生する。SES要員数が増えるほど、社員の管理工数も増える。総コストで比較する視点を持たないと、単価交渉だけでは全体最適にならない。

削減策1:準委任契約への切替と稼働管理で固定費を可変費化する

SESにおいて法律上の契約形態は「準委任契約」が一般的である*4。準委任契約では、受託者は独自の裁量と責任で業務を遂行し、発注者から個別の指揮命令を受けない。この特性を理解したうえで、稼働管理・成果定義を運用することがコスト削減の起点となる。

稼働見える化で過剰な常駐を解消する

常駐型のSESは、契約上は稼働ベースであっても、慣行的に「フルタイム常駐」が前提化しやすい。タスク棚卸し・稼働ダッシュボードを整備し、実工数と業務量の乖離を可視化することで、増減減らしの判断材料が得られる。

役割定義書(Statement of Work相当)の整備

役割と成果物を明文化することで、過剰スペック発注を防ぐ。SES契約は時間ベースだが、期待アウトプットを定義しておけば、稼働の妥当性を評価できる。

偽装請負を回避する指揮命令ルール

SES(準委任契約)では、発注企業がエンジニアに直接的な指揮命令を行うと偽装請負と判断されるリスクがある*4。コスト削減施策で稼働管理を強化するときも、指示伝達ルート・タスク管理の主体をSES会社側に置く運用設計が必要となる。

削減策2:地方ニアショア活用で東京単価比約20%減の人月単価を実現する

地域差を活用するアプローチが、近年のSESコスト削減の中心軸となっている。経産省2019年公表の参考値として、東京のエンジニア単価を1.00とした場合、全国平均は0.80前後という単価水準が報告されている*5(IT人材全体の平均年収比較に基づく参考値であり、職種・経験年数・スキル領域により差異がある)。需給逼迫下でも、地方拠点を持つベンダーを活用することで単価を抑える余地がある。

ニアショアの基本:海外ではなく地方拠点を活用する

ニアショア(国内地方拠点へ開発・運用を委託する形態)は、オフショア(海外委託)と異なり、時差・言語・商習慣のギャップが小さい。準委任契約・SESにおいても、地方拠点ベンダーを選ぶことで人月単価を抑えられる。

削減効果の試算と注意点

東京採用と地方採用では平均年収に差があり、SES単価にもその差が反映される*5。ただし、削減効果は「常に同水準のスキルが地方で確保できるか」に依存する。すべての領域で同じ削減率が得られるわけではなく、生成AI・クラウドなど希少スキル領域では東京と地方の差が縮まる傾向にある。

リモート運用の品質確保

地方ニアショアではリモート前提の業務設計が増える。コミュニケーション設計・ドキュメント整備が不十分だと、結果的に手戻りでコスト増となる。要件定義・ドキュメンテーション・定例運営の標準化が、削減効果を持続させる前提条件となる。

削減策3:要件粒度・スキル要件の見直しで過剰スペック発注を防ぐ

SES発注時、求めるスキルレベルを慣性で「シニア中心」「上級スキル必須」と設定しがちである。だがタスクの中身を分解すると、シニアでなくとも対応できる作業が一定割合を占めることが多い。要件の粒度を見直すことで、スキル別の単価帯を活用したコスト最適化が可能となる。

タスク分解とスキル別アサイン

同じ案件内でも、設計・実装・テスト・運用ではスキル要件が異なる。すべてをシニアSEで埋めるのではなく、タスク特性に合わせてジュニア・シニアを混在させると、平均単価が下がる。

標準化・自動化との組み合わせ

SES要員の作業のうち、手順が確立した定型業務は標準化・自動化の対象となる。標準化が進んだ業務はジュニア要員でも担当でき、結果としてシニア要員への依存が減る。

スキル要件の見直しは品質設計とセットで行う

単純に若手中心へ切り替えると、レビュー負荷・障害対応の手戻りが増える可能性がある。スキル要件を下げる前提として、レビュー体制・ナレッジ管理・テスト自動化など品質確保の仕組みが必要となる。

削減で失う可能性のあるもの:偽装請負リスクと品質・知見の社内残存

コスト削減を進めるとき、見落とすと致命傷になる論点が3つある。削減策の整理に続いて、削減で失う可能性のある要素を整理する。

偽装請負リスクが顕在化する

SESコスト削減のなかで、発注企業側が稼働管理を強化しすぎると、SESエンジニアへの直接指揮命令と判断され偽装請負リスクが高まる*4。指揮命令系統はSES会社側に維持し、発注企業はあくまで業務委託の成果物・進捗を確認する立場にとどめる必要がある。

品質の不可視化

低単価帯へ切り替えると、レビュー工数・障害対応工数が増えることがある。短期的に単価は下がっても、トータルコストは下がらない場合がある。品質指標(障害件数・MTTR・テストカバレッジ)を併走管理することが必要となる。

社内ナレッジが残らない

SES長期常駐に依存しすぎると、業務知見がSES会社側に蓄積し、社内には残らない。SES会社が交代した瞬間に業務が回らなくなるリスクがある。社内側の業務知識・ドキュメント・運用手順を保持する設計と組み合わせる必要がある。

内製・SES・受託開発の比較:コスト構造と意思決定軸を整理する

SES活用を継続するか、内製または受託開発に切り替えるかは、コスト構造だけでなく、責任範囲・スキル蓄積・スピードを総合的に判断する論点である。

観点 SES(準委任) 内製(正社員採用) 受託開発(請負)
費用の性質 時間・期間ベースの変動費 採用・育成・人件費の固定費 プロジェクト単位の総額
指揮命令 SES会社が要員を管理 自社で完結 委託先が完結
スキル蓄積 SES会社側に残る 社内に残る 委託先に残る
スピード 調達が比較的早い 採用リードタイムが長い 要件確定後に開始
向くケース 需要が変動する補完的工程 中核業務・継続運用 仕様が明確な構築案件

SESのコスト削減を考えるとき、ほかの形態と比較したうえで「どの工程をSESに残し、どこを内製または受託に振るか」を整理することが、本質的な意思決定となる。

導入ステップ:現状把握・要件再定義・委託先選定・移行設計の4段階

SESコスト削減を具体的に進める場合の手順を、4段階で整理する。

STEP1:現状把握 — 単価・稼働率・スキル構成を棚卸す

まず現行の発注内容を棚卸す。単価帯、稼働実績、担当タスク、スキル要件、契約期間を一覧化する。この段階で「実質固定費化している長期常駐」「タスクと単価のミスマッチ」が見えてくる。

STEP2:要件再定義 — タスク粒度とスキル要件を整理する

業務をタスク単位に分解し、必要スキルを再定義する。シニア・ジュニアの混在配置、ニアショア化可能なタスク、自動化可能な業務を切り分ける。

STEP3:委託先選定 — 地域・体制・契約条件で評価する

地方拠点を持つベンダー、リモート対応ノウハウの有無、品質指標の提示可否を評価軸に置く。準委任契約の運用設計(指揮命令・成果物定義)まで含めて条件を握る。

STEP4:移行と運用 — 段階移行と継続改善を組み込む

一斉切替ではなく、対象範囲を絞った段階移行で進める。移行後は単価・稼働・品質指標を月次でモニタリングし、必要に応じて再配分する。

まとめ:SESエンジニアコスト削減の3つの判断軸

SESエンジニアのコスト削減について、人材市場の前提、費用構造、3つの削減策、内製・受託との比較、導入ステップを整理した。要点は次の3点である。第一に、削減は単価交渉ではなく「契約形態・地域・稼働率」の3軸で設計する必要がある。第二に、地方ニアショア活用は東京単価比で約20%減の水準が経産省2019年公表調査の参考値として報告されているが*5、希少スキルでは削減効果が縮む点に留意する。第三に、偽装請負リスク・品質・社内ナレッジの3点を併走管理しないと、短期削減が長期コスト増へ転化する。3軸(契約形態・地域・稼働率)を、自社の現状とロードマップに合わせて段階的に組み合わせていくことが、人材不足下のSES活用の出発点となる。


LASSICに相談するメリット

LASSICは、元請として顧客企業からシステム保守・運用を直接受託しており、SES型・準委任型・受託開発型のいずれの契約形態にも対応する体制を整えています。全国複数拠点を活用したニアショア体制により、東京エリアでのIT人材確保が難しい状況下でも、コストと品質のバランスを取った要員配置をご提案できます。SES活用の見直しからニアショア移行、内製化支援まで、現状の体制を踏まえてご相談いただけます。


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  1. *1 出典:経済産業省「IT人材需給に関する調査(概要)」(2019年)
  2. *2 出典:独立行政法人情報処理推進機構(IPA)「DX動向2025」(2025年)
  3. *3 出典:厚生労働省「労働者派遣事業の事業報告の集計結果について」(令和4年度)
  4. *4 出典:厚生労働省「労働者派遣事業関係業務取扱要領」(令和8年4月)
  5. *5 出典:経済産業省「我が国におけるデータ駆動型社会に係る基盤整備(IT人材等育成支援のための調査分析事業)」(2019年)

 


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