LASSIC Media らしくメディア

2026.07.13 らしくコラム

経費精算システムの開発を外注する進め方

LASSIC IT事業部|元請(プライムベンダー)としてシステム開発・保守運用を受託

経費精算のイメージ

この記事のポイント

  • 経費精算システムは申請・承認からOCR、IC カード連携、会計連携までを担う業務システムで、紙・Excel運用の負荷を軽減します。
  • 導入方式はパッケージ/SaaS型とスクラッチ開発に大別され、既存業務フローや基幹連携の要件によって向き不向きが分かれます。
  • 電子帳簿保存法のスキャナ保存要件やインボイス制度の出張旅費等特例は、国税庁の一問一答で要件が示されており、システム側の対応可否を確認する材料になります*1*3

経費精算システムとは——紙・Excel運用から移行する目的

会計ソフトのイメージ

経費精算システムとは、従業員が立て替えた交通費・交際費・出張費などの経費を、申請から承認、会計処理までオンラインで完結させる業務システムを指します。紙の精算書やExcelでの手入力運用では、申請内容の不備や二重計上の見落とし、承認までの滞留が発生しやすく、経理担当者の月末月初の負荷が大きくなりがちです。経費精算システムを導入する目的は、この一連の流れを電子化し、申請者・承認者・経理担当者それぞれの手間を減らすことにあります。

図
図:経費精算システムが担う一連の処理の流れ(読取から証憑保存まで)

対象となる読者は、紙やExcelでの経費精算運用に課題を感じ、Web・クラウドの経費精算システムを導入・開発したいと考えている法人の管理部門・情報システム部門です。すでに市場には多数のパッケージ製品が存在する一方、自社固有の承認ルールや既存基幹システムとの連携が絡むと、パッケージのままでは対応しきれない場面も出てきます。次章以降では、主要機能の中身と、パッケージ導入とスクラッチ開発それぞれの向き不向きを整理します。

経費精算システムの主要機能——OCR・ICカード連携・規程チェック

申請・承認ワークフロー

経費精算システムの土台になるのが、申請から承認までの電子ワークフローです。申請者がスマートフォンやPCから経費内容を入力すると、あらかじめ設定した承認ルートに沿って上長や経理担当者へ回付されます。金額や部署に応じて承認者を自動で振り分けたり、差し戻しの理由を記録したりする機能を備えたシステムも一般的です。紙の稟議書を回す運用に比べ、申請から承認完了までの時間を短縮しやすくなります。

領収書のOCR読み取り

スマートフォンで領収書を撮影すると、金額・取引先・日付などをAI-OCRが自動でデータ化する機能です。手入力の手間を減らせるだけでなく、金額の転記ミスを防ぐ効果も見込めます。読み取り精度は帳票の状態や文字の掠れによって左右されるため、導入時には自社で扱う領収書のパターンを想定した検証が欠かせません。

交通費・ICカード連携

交通系ICカードの利用履歴を読み込み、乗車区間や金額を自動で経費明細に反映する機能です。定期区間の控除や、同じ履歴を誤って二重に取り込まないようにする仕組みを備えたシステムもあります。手作業での交通費入力が減ることで、申請者・承認者双方の確認負担が軽くなります。

規程チェックと会計システム連携

あらかじめ設定した経費規程や予算上限に照らして、申請内容が規定通りかを自動で判定する機能です。上限超過や必要な添付書類の不足を検知し、承認前に差し戻せるようにします。あわせて、確定した経費データを会計システムの仕訳データへ連携する機能も中核的な位置づけです。勘定科目への変換や仕訳の自動生成によって、経理担当者が会計ソフトへ手入力する手間を減らせます。会計システムとの連携範囲や、人事システムとの連携については後の章で詳しく取り上げます。

パッケージ/SaaS導入かスクラッチ開発か——判断の分かれ目

経費精算システムの構築方式は、大きくパッケージ・SaaS型の導入と、スクラッチ開発の2つに分かれます。パッケージ・SaaS型は、申請・承認ワークフローやOCR、会計連携といった一般的な機能をあらかじめ備えており、短期間で導入しやすい点が特徴です。法改正への対応もベンダー側でアップデートされるため、制度変更への追随を自社で抱え込まずに済みます。

一方でスクラッチ開発は、自社固有の承認ルールや、複数の基幹システムとの個別連携、特殊な規程チェックロジックが必要な場合に向いています。パッケージでは吸収しきれない業務要件がある企業や、グループ会社ごとに異なる運用を1つの仕組みに統合したい企業では、スクラッチ開発や大幅なカスタマイズを検討する余地があります。両者の違いを整理すると次の通りです。

比較項目 パッケージ/SaaS型 スクラッチ開発
導入までの期間 比較的短い期間で立ち上げやすい 要件定義から設計・開発を要し長くなりやすい
法改正への追随 ベンダー側のアップデートで対応 改修の都度、自社または委託先で対応
固有の承認ルール 設定の範囲内での対応にとどまりやすい 業務要件に合わせて自由に実装できる
既存基幹システム連携 標準連携の対象範囲に制約が出やすい 既存システムの仕様に合わせて構築できる
運用開始後の変更 設定変更で対応できる範囲が中心 追加開発が必要だが自由度は高い

実務では、パッケージ導入をベースにしつつ、連携部分だけをアドオン開発する折衷案を選ぶ企業も少なくありません。どちらが向くかは、自社の承認ルールの複雑さと、既存システムとの連携要件の深さによって変わってきます。

電子帳簿保存法・インボイス制度への対応の考え方

経費精算システムを検討するうえで避けて通れないのが、電子帳簿保存法とインボイス制度への対応です。ここでは経費精算システムに関わる範囲に絞って考え方を整理します。制度そのものの詳細な要件は、国税庁の一問一答など公的な情報源で随時確認することをおすすめします。

電子帳簿保存法のスキャナ保存制度は、領収書などの書類を紙で保管する代わりに、スキャナやスマートフォンで読み取った画像データで保存することを認める制度です。国税庁の一問一答では、書類の受領後にタイムスタンプを付与する期間や、訂正・削除の履歴が残る仕組みの要否など、具体的な要件が示されています*1。経費精算システムでOCR読み取りや証憑の電子保存を行う場合、自社の運用がこうした要件に沿っているかを確認する必要があります。

インボイス制度は、令和5年10月1日から始まった、消費税の仕入税額控除に関する制度です*2。適格請求書発行事業者が交付した請求書等の保存が、仕入税額控除の要件になります*2。経費精算の実務では、従業員が受け取る領収書やレシートが適格請求書の記載事項を満たしているかの確認が課題になりやすい領域です。また、出張旅費や日当のように、性質上インボイスの交付を受けにくい支出については、一定の要件のもとで帳簿のみの保存が認められる特例も設けられています*3。経費精算システム側でこうした特例の対象を区分し、記帳時に必要な記載を補えるかどうかも、機能を見極める観点の一つです。

電子帳簿保存法・インボイス制度そのものの詳しい要件や実務対応は、それぞれの制度を主題にした別記事で扱っています。本稿では、経費精算システムを選定・開発するうえで押さえておきたい範囲にとどめています。

会計システム・人事システムとの連携で得られる効果

書類デジタル化のイメージ

経費精算システムは、単独で完結する仕組みではなく、周辺システムとの連携によって効果が広がります。代表的なのが会計システムとの連携です。承認済みの経費データを勘定科目ごとの仕訳データへ自動変換し、会計ソフトへ取り込めるようにすることで、経理担当者が伝票を手入力する作業を減らせます。連携方式は、ファイルの一括出力とCSV取込による方式や、APIで都度連携する方式などがあり、既存の会計システムが対応する連携手段によって選択肢が変わります。

人事システムとの連携も見落とせない観点です。組織変更や異動、入退社の情報を人事システムから経費精算システムへ反映できれば、承認ルートの設定や利用者アカウントの管理を都度手作業で更新する手間を省けます。特に組織改編が多い企業では、この連携の有無が運用負荷に直結します。

これらの連携をどこまで実現できるかは、パッケージ・SaaS型が標準で用意する連携機能の範囲と、スクラッチ開発やアドオン開発でどこまで作り込むかによって変わります。自社の既存システム構成を洗い出したうえで、必要な連携範囲を要件として明確にしておくことが、後戻りのない選定につながります。

導入の進め方と外注時に確認すべきポイント

経費精算システムの導入は、おおむね次の流れで進みます。第一に、現状の経費精算フローの課題を洗い出し、申請者・承認者・経理担当者それぞれの立場から必要な機能を要件として整理する段階です。第二に、要件をもとにパッケージ製品を比較検討するか、スクラッチ開発を委託するかを判断します。第三に、選定した方式に沿って基本設定または開発を進め、試験運用を経て本稼働に移行するという流れです。

要件整理の段階では、現時点で必要な機能だけでなく、将来的に広げたい範囲も視野に入れておくことが重要です。当初は交通費・交際費の立替精算だけを想定していても、運用が安定した後に、事前申請や請求書処理まで対象を広げたくなるケースは珍しくありません。拡張の余地を見込んだ要件定義にしておくと、後からの手戻りを抑えられます。

開発を外部に委託する場合は、依頼範囲の明確さが選定の分かれ目です。要件定義から設計・開発・テスト・会計システムとの連携検証・電子帳簿保存法対応の確認までを一括して依頼できるか、それとも個別のフェーズごとに委託先が変わるのかによって、進行管理の負荷は大きく変わります。特に、既存の会計システムや人事システムとの連携部分は、委託先が過去に類似の連携実績を持っているかどうかで、手戻りの発生しやすさが変わってきます。契約前には、要件定義書のレビュー体制、検証環境での確認範囲、保守運用フェーズへの引き継ぎ方法についてもすり合わせておくことが望ましいです。

。委託先の選定にあたっては、パッケージ導入とスクラッチ開発のどちらが自社に適しているかを含めて相談できる相手かどうかも、判断材料になります。

まとめ:経費精算システム開発を外注する際の3つの判断軸

本稿では経費精算システムの主要機能と、開発方式の選び方、電子帳簿保存法・インボイス制度との関わりを整理しました。要点は3つに集約できます。第一に、経費精算システムは申請・承認ワークフローを土台に、OCR、ICカード連携、規程チェック、会計連携までを担う仕組みです。第二に、パッケージ・SaaS型とスクラッチ開発は、固有の承認ルールや既存基幹システムとの連携要件の深さによって向き不向きが分かれます。第三に、電子帳簿保存法のスキャナ保存要件やインボイス制度の特例は国税庁の一問一答で示されており*1*3、自社の運用がこれらに沿っているかを確認したうえでシステムの機能を見極めることが実務的です。

LASSICに相談するメリット

LASSIC IT事業部は、元請(プライムベンダー)として業務システムの開発・保守運用を受託しています。経費精算システムの要件定義から、会計・人事システムとの連携設計、電子帳簿保存法への対応確認まで、一貫して伴走する体制を整えています。パッケージ導入とスクラッチ開発のどちらが適しているか迷っている段階からご相談いただけます。

よくある質問

経費精算システムはパッケージとスクラッチ開発のどちらを選べばよいですか。

一般的な申請・承認・会計連携の範囲であれば、パッケージ・SaaS型のほうが短期間で導入しやすい傾向にあります。固有の承認ルールや複数の基幹システムとの連携が必要な場合は、スクラッチ開発やアドオン開発を検討するとよいでしょう。まずは自社の業務フローを整理し、パッケージの標準機能で足りる範囲かどうかを見極めることが出発点になります。

領収書のOCR読み取りは電子帳簿保存法のスキャナ保存要件を満たしますか。

OCR機能自体が要件を満たすかどうかは、読み取ったデータの保存方法や運用によって変わります。国税庁の一問一答では、タイムスタンプの付与期限や訂正・削除履歴が残る仕組みの要否など、具体的な要件が示されています*1。導入予定のシステムがこれらの要件に対応しているか、事前に確認することをおすすめします。

インボイス制度に対応するために経費精算システムで確認すべき点はありますか。

従業員が受け取る領収書やレシートが適格請求書の記載事項を満たしているかを確認できる仕組みがあるかが一つの観点です*2。あわせて、出張旅費や日当のようにインボイスの交付を受けにくい支出については、一定要件のもとで帳簿のみの保存が認められる特例があるため*3、システム側でこうした支出を区分できるかも確認材料になります。

会計システムとの連携はどこまで自動化できますか。

承認済みの経費データを勘定科目ごとの仕訳データへ変換し、会計ソフトへ取り込むところまでは多くのシステムで対応できます。ただし連携方式はCSV取込かAPI連携かによって異なり、既存の会計システムが対応する連携手段に左右されます。自社の会計システムがどの連携方式に対応しているかを事前に確認しておくとスムーズです。

開発を外部委託する場合、何を確認すればよいですか。

要件定義から開発・テスト・会計システムとの連携検証・電子帳簿保存法対応の確認までを一括して依頼できるかをまず確認します。加えて、既存の会計システムや人事システムとの連携実績があるかどうかも選定の目安です。契約前に検証環境での確認範囲や、保守運用フェーズへの引き継ぎ方法をすり合わせておくと、運用開始後のトラブルを抑えやすくなります。

著者:テレリモ総研編集部 鈴木 亮佑


ITアウトソーシング・システム開発のご相談はLASSICへ

元請(プライムベンダー)として、貴社の課題に合わせた体制構築・開発支援をご提案します。まずはお気軽にご相談ください。

無料相談はこちら

ご不明な点はお問い合わせフォームからもご連絡いただけます。

  1. *1 出典:国税庁「電子帳簿保存法一問一答【スキャナ保存関係】」(https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/07scan/index.htm
  2. *2 出典:国税庁「No.6498 適格請求書等保存方式(インボイス制度)」(タックスアンサー)(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6498.htm
  3. *3 出典:国税庁「インボイス制度における特例②(出張旅費等特例)」(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/pdf/0024003-138.pdf


View