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文書管理システム(DMS)開発を外注で進める
LASSIC IT事業部|元請(プライムベンダー)としてシステム開発・保守を受託
この記事のポイント
- 文書管理システム(DMS)は文書の作成・取得から登録・保管・検索・廃棄までを一元管理する仕組みで、JIIMAは版管理やアクセス権限、メタデータ管理を主要な要素に挙げています*2。
- 電子帳簿保存法はスキャナ保存・電子取引データ保存のいずれについても真実性・可視性の確保を求めており、DMSの監査ログや検索機能と重なる部分があります*4*5。
- 記録管理の国際規格JIS X0902-1(ISO15489-1相当)は、透明性・説明責任の向上や法的コンプライアンスの確保を記録管理の目的に掲げています*3。
目次
文書管理システム(DMS)とは何か——散在する文書を一元管理し検索性と統制を高める仕組み
文書管理システム(DMS。Document Management Systemの略で、文書の作成から保存・廃棄までを一元的に管理するシステムを指します)とは、契約書・図面・規程・議事録・稟議書といった社内文書を電子データとして登録し、検索性と統制を両立させる仕組みです。JIIMA(公益社団法人日本文書情報マネジメント協会)は、印刷物や電子データ、スキャンされた紙、電子メールなど様々な形式を「文書情報」として捉え、その作成・取得から処理・保存・処分までの組織的な運用をマネジメントする考え方を提唱しています*1。
従来、文書のライフサイクルは「作成・取得から処分までの一連のプロセス」として捉えられてきましたが、近年は文書そのものの取扱いと、保存・運用の管理プロセスが並行して進む構造に変化していると整理されています*2。共有フォルダに個人の判断でファイルを置くだけの状態では、この一連のプロセスを組織として統制することは難しくなります。
対象となるのは契約書や見積書のような取引関連文書に限りません。設計図面、社内規程、議事録、稟議書、マニュアルなど、社内で発生するあらゆる文書がDMSの管理対象になり得ます。誰がいつ何を作成し、どこに保管され、いつまで残すのかを組織として把握できる状態を作ることが、DMS導入の出発点です。
DMSの主要機能——版管理・アクセス権限・全文検索・ワークフロー承認・保管期限・監査ログ・OCR全文化
DMSに求められる機能は多岐にわたりますが、JIIMAは文書情報マネジメントを支える要素として、版管理・履歴管理、アクセス権限管理、メタデータ管理、保存期間管理、操作履歴の記録などを挙げています*2。主要な機能を整理すると次の通りです。
| 機能 | 概要 |
|---|---|
| 版管理・履歴管理 | 改訂履歴を記録し、改ざんや誤ったすり替えに気づける状態を保つ*2 |
| アクセス権限管理 | 閲覧のみ・編集可などファイルやフォルダ単位で権限を業務範囲に応じて付与する*2 |
| メタデータ管理 | タイトル・分類・作成者・作成日・保存期限などを紐付け、検索と保存期間管理に活用する*2 |
| 全文検索 | 文書本文の文字列を対象に検索し、フォルダ構成に頼らず目的の文書へたどり着けるようにする |
| ワークフロー・承認 | 稟議や契約締結などの承認プロセスを画面上で回し、承認経路と履歴を残す |
| 保管期限・廃棄管理 | 保存期間の起算日から満了日までをスケジュール管理し、期限到来時の処分を促す*2 |
| 監査ログ | 閲覧・編集・削除などの操作履歴を記録し、真正性の確認や内部統制の根拠にする*2 |
| OCR全文化 | 紙文書やスキャン画像を文字データに変換し、全文検索の対象に加える |
この一覧のうち、どこまでを標準機能でまかない、どこから自社独自の運用ルールとして作り込むかによって、必要な開発工数は大きく変わります。特にワークフローの承認経路や保管期限のルールは、企業ごとの規程に合わせたカスタマイズが必要になりやすい部分です。
電子帳簿保存法や証跡管理とDMSの関係——真実性・可視性の確保という観点
DMSの検討では、電子帳簿保存法との関係を整理しておく必要があります。国税庁の一問一答によれば、スキャナ保存制度は請求書や領収書といった国税関係書類について、書面保存に代えてスキャン文書での保存を認める制度です*4。また電子取引データ保存では、請求書や注文書などを電子的に授受した場合、紙に出力せず電子データのまま保存することが求められます*5。
いずれの制度でも共通して求められるのが、真実性の確保(原本性を担保し改ざんを防止するための措置)と可視性の確保(検索機能の確保や保存形式の明確化)です*5。DMSが備える監査ログやタイムスタンプ連携、全文検索の機能は、この2つの要件と重なる部分が少なくありません。ただしDMS導入だけで電子帳簿保存法への対応が完結するわけではなく、対象書類の切り分けや保存要件の充足は別途の確認が必要です。電子帳簿保存法そのものの要件や対応システムの改修範囲については、別記事で詳しく解説しています。
より広い視点では、記録管理の国際規格であるJIS X0902-1(ISO15489-1に対応する日本産業規格)が参考になります。この規格は記録管理を「記録の作成、受領、維持、使用及び処分の効率的で体系的な統制に責任をもつ管理領域」と定義し、透明性・説明責任の向上や業務リスクの管理、法的コンプライアンスの確保をその目的に掲げています*3。DMSは、こうした記録管理の考え方を情報システムとして具現化する手段の一つと位置づけられます。
パッケージ/SaaS型とスクラッチ開発——DMSの選び方
DMSの導入形態は、大きくパッケージ・SaaS型と、要件に合わせて一から作り込むスクラッチ開発に分かれます。両者の特徴を比較すると次の通りです。
| 項目 | パッケージ/SaaS型 | スクラッチ開発 |
|---|---|---|
| 導入スピード | 契約後すぐに利用を開始しやすい | 要件定義から設計・開発を経るため時間を要する |
| 初期費用 | 比較的抑えやすく、月額課金が中心 | 要件の規模に応じて開発費用が発生する |
| カスタマイズ性 | 標準機能の範囲内での設定変更が中心になりやすい | 承認経路や権限設計を自社規程に合わせて作り込める |
| 既存システム連携 | 提供されるAPIや連携機能の範囲に依存する | 基幹システムや認証基盤との連携方式を個別に設計できる |
| 保守・運用 | 提供元によるアップデートやサポートを受けられる | 改修や機能追加のたびに開発を発注する体制が要る |
取り扱う文書量が多くない企業や、まず運用を試したい段階では、パッケージ・SaaS型から着手し、標準機能で足りない部分を洗い出す進め方が現実的です。一方、承認経路が複雑だったり、既存の基幹システムや認証基盤との連携が前提になったりする場合は、スクラッチ開発、あるいはパッケージへのアドオン開発を組み合わせる選択肢を検討することになります。
共有フォルダやSharePoint等からの移行で見落としやすい落とし穴
多くの企業では、DMS導入前の文書は共有フォルダやSharePointに保管されています。この状態からDMSへ移行する際、見落とされやすい点がいくつかあります。
まず、重複ファイルやファイル名の表記ゆれです。長年運用してきた共有フォルダには、同じ文書の複数バージョンが別名で保存されているケースが珍しくありません。移行前にどれを正本とするかを整理しないまま取り込むと、DMS上でも同じ混乱が再現されてしまいます。
次に、権限設計の再構築です。共有フォルダのアクセス権はフォルダ単位で緩やかに設定されていることが多く、DMSが備える文書単位・属性単位の権限管理をそのまま適用しようとすると、既存の運用実態との乖離が生じやすくなります。誰にどこまでの権限を与えるかを、部門や職務に応じて棚卸しする作業が必要です。
さらに、メタデータの付与コストも見落とされがちです。過去に蓄積された大量の文書に対して、分類やキーワードといったメタデータを後から付与するには、相応の工数がかかります。紙文書が残っている場合は、OCR全文化の対象範囲や精度の見極めも合わせて検討する必要があります。
移行作業そのものを終えた後も、新しい登録・検索のルールを現場に定着させる運用面のフォローが欠かせません。システムを切り替えるだけでなく、利用者側の運用ルールをどう変えるかまで含めて計画することが、移行を成功させる鍵になります。
内製と外注の分かれ目——DMS開発を委託する際の勘所
DMSの導入・開発を内製で進めるか外注するかは、対象文書の範囲や既存システムとの連携の複雑さによって変わります。パッケージの標準機能でおおむね足りる場合は、情報システム部門が中心となって設定・展開する内製対応も選択肢になります。
判断が分かれるのは、承認ワークフローの作り込みや、基幹システム・認証基盤(SSOやActive Directoryなど)との連携、大量の既存文書の移行が絡む場合です。これらは要件定義の段階で対象文書の棚卸し、権限設計、保存期間ポリシーの整理といった専門的な作業が必要になり、通常業務と並行する内製体制では手が回りにくくなることがあります。
外注する場合は、要件定義から移行、稼働後の保守までを一括して依頼できるかどうかが選定の分かれ目になります。特に既存文書の移行やメタデータ設計は、システム開発とは別の運用設計スキルが求められる領域です。委託先がこの部分までカバーできるかを事前にすり合わせておくと、稼働後のトラブルを抑えやすくなります。
。取り扱う文書の種類や量、既存システムとの連携範囲によって必要な工数は変わってきます。現状の文書運用を棚卸ししたうえで、内製・外注の切り分けを検討することが実務的です。
まとめ:文書管理システム(DMS)導入で押さえる3つの判断軸
本稿ではDMSの機能と導入の考え方を、公的な情報をもとに整理しました。要点は3つに集約できます。第一に、DMSは文書の作成から登録・保管・検索・廃棄までを一元管理する仕組みで、版管理やアクセス権限管理、メタデータ管理、保存期間管理が中核となる機能です*2。第二に、電子帳簿保存法が求める真実性・可視性の確保は、DMSの監査ログや検索機能と重なりますが、制度対応そのものは別途の確認が必要です*4*5。第三に、パッケージ/SaaS型かスクラッチ開発か、内製か外注かは、対象文書の量や既存システムとの連携範囲によって判断が分かれます。
よくある質問
文書管理システム(DMS)とファイルサーバーは何が違いますか。
ファイルサーバーはフォルダ階層でファイルを保管する場所であるのに対し、DMSは版管理やアクセス権限、メタデータ、保存期間、操作履歴といった管理機能を備えている点が異なります*2。フォルダ構成に頼らず、全文検索や属性検索で目的の文書にたどり着ける点も特徴です。
DMS導入で電子帳簿保存法に対応したことになりますか。
DMSの監査ログや検索機能は、電子帳簿保存法が求める真実性・可視性の確保と重なる部分がありますが*4*5、DMS導入だけで制度対応が完結するわけではありません。対象となる書類の範囲や保存要件の充足は別途確認が必要です。
パッケージ型とスクラッチ開発、どちらから検討すればよいですか。
標準機能でおおむね要件を満たせる場合はパッケージ・SaaS型から着手し、不足する部分を洗い出す進め方が現実的です。承認経路が複雑だったり基幹システムとの連携が前提になったりする場合は、スクラッチ開発やアドオン開発を組み合わせる選択肢を検討します。
共有フォルダからDMSへ移行する際、何から手をつければよいですか。
まず既存文書の重複や表記ゆれを整理し、どれを正本とするかを決めます。そのうえで部門や職務に応じたアクセス権限の棚卸しと、検索に使うメタデータの設計を行います。移行後は新しい登録・検索ルールを現場に定着させる運用フォローも大切なポイントです。
DMS開発を外部に委託する場合、何を確認すればよいですか。
対象文書の棚卸し方法、権限設計の考え方、既存システムとの連携範囲、既存文書の移行支援まで対応できるかを確認します。要件定義から稼働後の保守までを一括して依頼できるかどうかが、委託先選定の分かれ目になります。
著者:テレリモ総研編集部 鈴木 亮佑
ご不明な点はお問い合わせフォームからもご連絡いただけます。
- *1 出典:JIIMA(公益社団法人日本文書情報マネジメント協会)「文書情報マネジメントとは」(https://www.jiima.or.jp/basic/)
- *2 出典:JIIMA「これからの文書情報マネジメント(第2版)」(https://www.jiima.or.jp/basic/korekara_management/)
- *3 出典:日本産業標準調査会「JIS X0902-1:2019 情報及びドキュメンテーション-記録管理-第1部:概念及び原則」(ISO 15489-1に対応)(https://kikakurui.com/x0/X0902-1-2019-01.html)
- *4 出典:国税庁「電子帳簿保存法一問一答【スキャナ保存関係】」(https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/07scan/index.htm)
- *5 出典:国税庁「電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】」(https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/07denshi/index.htm)