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2026.07.13 らしくコラム

固定資産管理システムの開発を外注する進め方

LASSIC IT事業部|元請(プライムベンダー)として業務システムの開発・保守を受託

固定資産管理のイメージ

この記事のポイント

  • 固定資産管理システムは、資産台帳・減価償却計算・現物棚卸・償却資産税申告を一元管理する仕組みです。
  • 減価償却には定額法・定率法があり、会計上の処理と税務上の償却限度額にはずれが生じる場合があります。
  • 2027年4月以降は新リース会計基準の適用も控えており、パッケージとスクラッチのどちらを選ぶか、外注の進め方を含めた検討が求められます。

固定資産管理システムとは——資産台帳・減価償却・現物管理を一元化する仕組み

減価償却のイメージ

固定資産管理システムとは、機械装置・工具器具備品・車両運搬具・建物附属設備といった事業用の固定資産について、取得から除却までのライフサイクルを一元的に管理する仕組みを指します。資産台帳の登録・更新に加えて、減価償却費の自動計算、現物棚卸の支援、償却資産税申告に使うデータの出力までを一つの仕組みでカバーする点が特徴です。

図
図:固定資産管理システムが一元化する4つの管理プロセス(資産台帳→減価償却計算→現物棚卸→償却資産税申告)

対象となる資産は企業によって幅があります。本社と複数拠点に分散した設備、リース資産、少額の什器備品まで含めて管理する企業もあれば、一定金額以上の資産に絞って管理する企業もあるでしょう。経理部門が中心となって運用するケースが多いものの、拠点管理や情報システム部門が現物棚卸を担当する体制も珍しくありません。拠点数の増加やM&Aによる資産の統合、上場準備に向けた内部統制の整備などをきっかけに、固定資産管理システムの導入を検討し始める企業も見られます。

Excel管理の限界——台帳と現物、会計システムとの突合が属人化するリスク

固定資産の管理を表計算ソフトで行っている企業は少なくありません。取得・移動・除却のたびに担当者が手作業でシートを更新し、減価償却費は数式のコピーで計算するという運用です。資産点数が少ないうちは大きな支障が出にくい一方、拠点数や資産点数が増えるにつれて、いくつかの課題が表面化しやすくなります。

まず、拠点ごとにファイルが分散し、どれが最新版か分かりにくくなる問題が挙げられます。次に、除却や移動の登録が漏れると、実際には廃棄済みの資産が台帳上に残り続け、償却資産税の申告額に影響する可能性があります。さらに、数式の参照範囲がずれたまま気づかずに運用されているケースも少なくないでしょう。誤った計算結果がそのまま会計システムへ転記されれば、台帳と会計帳簿の数値が一致しているかを都度確認する手間もかかります。監査や税務調査の場面で、固定資産台帳の整備状況について確認を求められることもあるため、属人化した運用のままで良いかどうかは一度見直す価値があるテーマです。

減価償却計算の基本——定額法・定率法と会計・税務上の差異

減価償却とは、固定資産の取得に要した金額を、法定耐用年数にわたって各年の費用として配分していく手続きです*1。平成19年4月1日以後に取得した減価償却資産には、主に定額法と定率法という2つの計算方法が用いられます*2。定額法は取得価額に一定の償却率を掛けて毎年ほぼ同額を計上する仕組みで、建物や建物附属設備、構築物には定額法のみが適用されます*1*2。定率法は期首の未償却残高に償却率を掛ける方法で、初年度の償却費が相対的に大きく、年を追うごとに逓減していきます*2。調整前償却額が償却保証額を下回った年分以後は、改定取得価額に改定償却率を掛けた金額に切り替わり、以後は毎年同額となります*2。償却方法を選定しない場合は、資産の種類ごとに定められた法定償却方法が適用されます*1。耐用年数についても、資産の構造・用途ごとに細かく区分が設けられており、同じ「パソコン」であっても管理部門と製造現場のどちらで使うかによって年数の考え方が変わる場合があります。耐用年数の当てはめを誤ると、その後の減価償却費が長期にわたってずれ続けるおそれがあるでしょう。

両者の違いを整理すると次の通りです。

項目 定額法 定率法
計算式 取得価額×定額法の償却率*2 期首未償却残高×定率法の償却率*2
償却費の推移 毎年ほぼ同額*2 初期が大きく年々逓減*2
切替のタイミング 該当なし 償却保証額を下回った年分以後は改定取得価額×改定償却率に切替*2
対象資産の例 建物・建物附属設備・構築物は定額法のみ*1 機械装置・工具器具備品等で選択可能な場合がある*1

会計上の減価償却費と、税務上損金に算入できる償却限度額との間には、ずれが生じる場合があります。法人税の申告書では別表十六などの明細書を用いて償却費の計算過程を示す運用が一般的ですが、記載内容や調整の要否は資産の種類や会計方針によって異なるケースもあるでしょう。固定資産管理システムを検討する際は、会計上の帳簿価額と税務上の限度額の両方を扱えるかどうかが論点になりやすく、具体的な処理は顧問税理士など専門家に確認することをおすすめします。

リース資産・少額減価償却資産・一括償却資産——制度ごとに異なる取り扱い

固定資産管理システムを選ぶ際は、通常の減価償却資産以外に、いくつかの区分が存在する点も押さえておく必要があります。取得価額が10万円未満の資産は、事業の用に供した事業年度に取得価額相当額を損金経理すれば、その全額を損金に算入できます*4。取得価額が20万円未満の資産については、一括償却資産として合計額を3年間で均等に償却する制度を選択することも可能です*4。ただし令和4年4月1日以後に貸付事業の用に供した資産は、この制度の対象外とされています*4

なお、これらの少額かどうかの判定は取得価額をもとに行われますが、消費税を税込みで経理するか税抜きで経理するかによって、判定に使う取得価額の金額が変わる場合があります。自社の経理処理方針とあわせて確認しておくことが大切です。加えて、中小企業者等については、取得価額が30万円未満の減価償却資産を取得して事業の用に供した場合に、一定の要件のもとで取得価額に相当する金額を損金算入できる特例があります*3。対象は青色申告書を提出する中小企業者等で、常時使用する従業員数が500人以下(特定法人については300人以下)の法人です*3。年間の適用限度額は300万円とされています*3。国税庁は本稿執筆時点でこの特例の適用期間を令和8年3月31日までと案内していますが、適用期限や上限額は税制改正で見直されることがあるため、最新の内容は国税庁の公表情報や顧問税理士への確認が欠かせません*3

リース資産の扱いにも変化があります。企業会計基準委員会は2024年9月13日、企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」等を公表しました*6。新基準では、借手のリース取引を使用権資産とリース負債としてオンバランス処理する仕組みが導入され、原則として2027年4月1日以後に開始する連結会計年度および事業年度の期首から適用されます*6。適用対象は上場企業やその関連会社、会計監査人設置会社などが中心とされています*6。固定資産管理システムでリース資産を扱う場合は、使用権資産の登録やリース料スケジュールの管理に対応できるかどうかも確認材料になります。

現物棚卸の効率化と償却資産税申告——QRコード・バーコード・RFIDと市町村への申告

棚卸のイメージ

台帳上の情報と現物が一致しているかどうかを確かめる棚卸作業も、固定資産管理では欠かせない工程です。台帳への登録漏れや除却の反映漏れがあると、実際には存在しない資産や使われていない資産が課税対象として残り続けるおそれがあります。棚卸の頻度が低い企業ほど、この乖離が積み重なりやすい傾向があります。

効率化の手段としては、資産ごとにQRコードやバーコードのラベルを貼付し、ハンディターミナルやスマートフォンで読み取って台帳と突合する運用が広く採用されています。資産点数が多い工場や倉庫では、複数のタグを一括で読み取れるRFIDを採用する例も見られるでしょう。棚卸の結果をシステムに反映すれば、台帳の是正と減価償却費の再計算を連動させやすくなります。

棚卸の結果は、償却資産税の申告にも関わってきます。土地・家屋以外の事業用資産である償却資産は、固定資産税の課税対象に含まれ、毎年1月1日(賦課期日)時点の所有状況をもとに評価されます*5。所有者は、資産の所在する市町村に対して申告する義務を負っています*5。標準的な税率は1.4%とされていますが*5、税率や申告様式は市町村ごとに定められる場合があるため、詳細は各自治体の案内で確認する必要があります。固定資産管理システムの中には、申告書に必要な種類別明細書の形式でデータを出力できるものもあり、台帳・棚卸・申告の各工程をつなげて考えることが実務上の負担軽減につながります。

パッケージ導入かスクラッチ開発か——外注の進め方と連携の設計

固定資産管理システムの導入方法は、大きくパッケージ製品の導入とスクラッチ開発(自社の要件に合わせた個別開発)に分かれます。パッケージ製品は、減価償却計算のロジックがあらかじめ実装されており、税制改正への追随も提供元によって行われる場合が多い点が利点です。一方で、自社固有の資産区分や、複数の基幹システムとの複雑な連携が必要な場合は、標準機能だけでは対応しきれないこともあります。

スクラッチ開発やパッケージのカスタマイズが向くのは、拠点数が多く既存の会計システムやERPとの連携要件が細かい場合、あるいは業種特有の資産区分(製造業の設備、建設業のリース機材など)を扱う場合です。連携方式にはAPIによるリアルタイム連携と、CSVなどによるバッチ連携があり、既存システムの仕様や更新頻度に応じて選ぶことになります。

外注で進める場合の一般的な流れは、現行のExcel運用やパッケージ利用状況の可視化から始まります。続いて、資産区分・償却方法・拠点数・棚卸方式といった要件を定義し、概算見積もりやPoC(概念実証)を経て開発に入ります。開発後は、既存の資産台帳データをクレンジングして新システムへ移行し、一定期間は旧運用と並行稼働させながら数値の整合性を確認する進め方が一般的です。内製で計算ロジックを保守し続ける場合は、会計・税務の知識を持つ人材の確保に加えて、税制改正のたびにロジックを更新する体力も必要になります。人手に限りがある企業ほど、この継続的な追随コストが外注を検討するきっかけになりやすいでしょう。委託先を選ぶ際は、会計・税務の基礎知識を持つエンジニアが在籍しているか、既存の会計システムとの連携実績があるか、稼働後の保守体制がどうなっているかを確認しておくと、導入後のトラブルを抑えやすくなります。

まとめ:固定資産管理システム開発で押さえる3つの判断軸

本稿では固定資産管理システムの機能と検討ポイントを、公的情報をもとに整理しました。要点は3つに集約できます。第一に、固定資産管理システムは資産台帳・減価償却計算・現物棚卸・償却資産税申告を一元管理する仕組みであり、Excel管理では属人化やデータ不整合のリスクが積み重なりやすいという点です。第二に、減価償却には定額法・定率法があり*2、少額資産の区分(10万円未満・20万円未満・30万円未満)やリース会計基準の改正など*3*4*6、制度ごとに異なる扱いをシステムがどこまでカバーできるかが選定の分かれ目になります。第三に、パッケージとスクラッチのどちらを選ぶかは、拠点数や既存システムとの連携要件によって変わり、外注先には会計・税務の理解と保守体制の両方が求められます。

LASSICに相談するメリット

LASSIC IT事業部は、元請(プライムベンダー)として業務システムの要件定義から開発・保守までを一貫して受託する体制を整えています。既存の会計システムやERPとの連携設計、Excel運用からの移行、現物棚卸の効率化まで、お客様の運用実態に合わせた構成をご提案します。パッケージとスクラッチのどちらが自社に合うか判断がつかない企業様は、現状の運用診断からご相談いただけます。

よくある質問

固定資産管理システムを導入するメリットは何ですか。

資産台帳の更新漏れや、拠点間でのファイル分散といったExcel運用特有のリスクを抑えやすくなる点が挙げられます。減価償却計算を自動化できるほか、現物棚卸のデータと台帳を突き合わせやすくなり、償却資産税申告の準備にかかる工数も軽減しやすくなります。

定額法と定率法はどちらを選べばよいですか。

建物や建物附属設備、構築物は定額法のみが対象とされています*1。それ以外の資産では選択できる場合がありますが、資産の使用実態や会計方針によって適した方法は異なります。届出の期限も定められているため、具体的な選定は税理士など専門家への確認をおすすめします*1

少額の資産はすべてシステムで管理する必要がありますか。

取得価額10万円未満、20万円未満、30万円未満のそれぞれで損金算入や償却の扱いが異なります*3*4。管理対象の範囲は企業の方針によりますが、償却資産税の申告対象になるかどうかを含めて、どの資産をシステムで管理するかを事前に整理しておくと運用が安定しやすくなります。

償却資産税の申告にシステムはどう役立ちますか。

償却資産は毎年1月1日時点の所有状況をもとに評価され、所在する市町村への申告が必要です*5。固定資産管理システムで台帳と現物棚卸の結果を連動させておけば、申告に必要な資産の異動状況を洗い出す作業を効率化しやすくなります。

開発を外注する場合、何を確認すればよいですか。

会計・税務の基礎知識を持つエンジニアが在籍しているか、既存の会計システムやERPとの連携実績があるか、稼働後の保守体制がどうなっているかを確認します。あわせて、データ移行時のクレンジング方針や並行稼働期間の設計についても、契約前にすり合わせておくと、稼働後の認識のずれを防ぎやすくなります。

著者:テレリモ総研編集部 鈴木 亮佑


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  1. *1 出典:国税庁「No.2100 減価償却のあらまし」(タックスアンサー)(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2100.htm
  2. *2 出典:国税庁「No.2106 定額法と定率法による減価償却(平成19年4月1日以後に取得する場合)」(タックスアンサー)(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2106.htm
  3. *3 出典:国税庁「No.5408 中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例」(タックスアンサー)(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5408.htm
  4. *4 出典:国税庁「No.5403 少額の減価償却資産になるかどうかの判定の例示」(タックスアンサー)(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5403.htm
  5. *5 出典:総務省「固定資産税の概要」(地方税制度)(https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_zeisei/czaisei/czaisei_seido/149767_08.html
  6. *6 出典:企業会計基準委員会「企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」等の公表」(2024年9月13日)(https://www.asb-j.jp/jp/accounting_standards/y2024/2024-0913.html


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