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健康管理システムとストレスチェック開発を外注
LASSIC IT事業部|元請(プライムベンダー)としてシステム保守・運用を受託
この記事のポイント
- ストレスチェックは労働安全衛生法により、常時50人以上の労働者を使用する事業場に年1回の実施が義務付けられています。
- 健康診断結果やストレスチェック結果などの健康情報の多くは要配慮個人情報に該当し、取得・提供には労働者本人の同意が原則必要です。
- 健康管理システムは健診結果管理から集団分析・面接指導勧奨・産業医連携まで機能範囲が広く、既製サービスとスクラッチ開発のどちらを選ぶかで対応できる範囲が変わります。
目次
健康管理・ストレスチェックシステムとは——人事・産業保健業務を支える仕組み
健康管理システムとは、従業員の健康診断結果やストレスチェックの実施状況、面接指導の記録などを一元管理し、人事・総務担当者や産業医・保健師といった産業保健スタッフが必要な情報にアクセスできるようにする仕組みを指します。紙やExcelでの管理では、有所見者へのフォロー漏れや、ストレスチェック実施状況の把握遅れが起こりやすくなります。
こうしたシステムへの関心が高まっている背景には、健康経営を経営課題として位置づける企業が増えていることがあります。経済産業省は、従業員等の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に実践することを健康経営と位置づけ、健康経営銘柄や健康経営優良法人認定制度を通じて取り組みの見える化を進めています*7。人事・総務部門が健診結果やストレスチェックの実施状況を継続的に把握し、経営層へ報告できる体制を整える必要性は、こうした潮流とも無関係ではありません。事業場が複数拠点にまたがる企業や、従業員数の多い企業ほど、手作業による管理の限界に直面しやすくなります。
システムに求められる機能は、健康診断結果の管理だけにとどまりません。ストレスチェックの実施案内・回答収集・高ストレス者の判定、集団ごとの分析、面接指導の勧奨、産業医との情報共有、長時間労働者の把握まで、産業保健業務の一連の流れをカバーする設計が一般的です。健康経営優良法人認定制度のように、取り組み状況を指標として管理する場面でも、システムに蓄積されたデータが基礎資料になります*7。
労働安全衛生法が定めるストレスチェックの実施義務——対象事業場と実施者要件
ストレスチェック制度は、労働安全衛生法に基づき2015年12月から施行されている「心理的な負担の程度を把握するための検査」です*2。常時50人以上の労働者を使用する事業場は、1年以内ごとに1回、定期にストレスチェックを実施する義務を負っています*1*2。これまで努力義務にとどまっていた50人未満の事業場についても、2025年5月に公布された改正法により実施が義務付けられ、公布後3年以内に政令で定める日から施行される見込みです*4。
実施者になれるのは、医師・保健師のほか、厚生労働大臣が定める研修を修了した歯科医師・看護師・精神保健福祉士・公認心理師に限られます。人事権を持つ者を実施者に選任することは想定されていない仕組みです。社内に有資格者を確保できないケースも多く、外部機関へ実施そのものを委託する事業場が目立ちます。
ストレスチェックの結果は本人に直接通知され、労働者の同意を得ないまま事業者へ提供することは認められていません*3。ただし衛生委員会での審議を経て、事業者が個々人の結果を把握しない運用にする場合は、同意取得の手続き自体を省略できるとされています*3。集団ごとの分析は、労働者数にかかわらず努力義務であり、実施そのものが法令上義務付けられているわけではありません*3。
システムが担う機能——健診結果管理・有所見者フォロー・集団分析・面接指導勧奨
健康診断結果の管理と有所見者フォロー
定期健康診断の結果は、就業判定や保健指導の起点になります。健康管理システムでは、検査項目ごとの数値や所見の推移を従業員単位で蓄積し、要観察・要治療といった判定に応じてフォロー状況を記録できるようにする設計が一般的です。産業医が就業上の措置を検討する際、過去数年分の推移を一覧で参照できるかどうかは実務上の使い勝手を左右します。
ストレスチェックの実施と集団分析
ストレスチェックの機能では、実施案内の配信から回答収集、高ストレス者の判定、集団ごとの分析結果の出力までを扱います。部署や職種といった単位で分析し、職場環境の改善につなげる運用が想定されています*3。回答データそのものと、集計・分析結果とで閲覧できる担当者の範囲を分けて設計する点が実務上の要点です。
面接指導の勧奨と長時間労働者の把握
高ストレスと判定され面接指導を申し出た労働者への対応に加え、時間外・休日労働が一定時間を超える労働者を把握し、産業医との面談につなげる機能も求められます。産業医の職務には、健康診断や面接指導の実施結果に基づく就業上の措置についての意見が含まれています*5。長時間労働者の把握機能は、勤怠システムのデータと連携させて初めて実用的になる場合が多いようです。
健康経営の指標管理との接続
健康経営優良法人認定制度への申請では、健診受診率やストレスチェックの受検率、有所見者へのフォロー状況などが調査項目として問われます*7。健康管理システムに実施記録が蓄積されていれば、申請のたびに各部署へ個別に数値を照会する手間を減らせます。集計対象の期間や単位を柔軟に変更できるかどうかは、経年での変化を追ううえでの実務上のポイントになります。
健康情報は要配慮個人情報——取得・保管・産業医連携で押さえる取扱いルール
健康診断の結果やストレスチェックの結果、病歴といった健康情報の多くは、個人情報保護法上の要配慮個人情報に該当します。取得には原則として本人の同意が必要で、第三者提供についてもオプトアウトによる方法は認められていません*6。
診断名や検査値といった詳細な医学情報の取扱いは、産業医や保健師といった産業保健業務従事者に行わせることが望ましいとされ、それ以外の担当者へ提供する場合は適切な加工を施すことが求められます*6。事業場内では、利用目的や取扱方法、安全管理体制、取扱者の権限、開示請求への対応方針などを規程として定め、労働者へ周知することが望ましいとされています*6。
システム面では、アクセス権限を役割ごとに分け、人事権を持つ担当者が個々のストレスチェック結果や詳細な医学情報を閲覧できないように制御することが実務上の要点になります。委託先を選ぶ際は、データの保管場所や暗号化の方法に加え、社内の運用ルールと矛盾しない権限設計ができるかどうかも確認材料です。
具体的には、産業医・保健師のみが詳細な検査値を閲覧できる区分、人事担当者が確認できるのは就業判定や面接指導の要否といった加工済み情報にとどめる区分、といった段階分けが実務でよく見られる設計です。誰がどの操作を行ったかを追跡できるログの保持も、開示請求への対応や委託先の管理体制を確認するうえで判断材料になります。退職者の健康情報をいつまで保持し、いつ削除するかという運用ルールも、開発の要件定義段階で決めておく事項の一つです。
既製サービスとスクラッチ開発——健康経営の指標管理まで見据えた選び方
導入形態は大きく分けて、SaaS型の既製サービスを利用する形と、自社の運用に合わせてスクラッチ開発する形があります。それぞれの特徴を整理すると次の通りです。
| 項目 | 既製サービス(SaaS) | スクラッチ開発 |
|---|---|---|
| 導入スピード | 短期間で開始しやすい | 要件定義から必要になる |
| 制度改正への追随 | 提供元がアップデートで対応 | 改正のたびに個別対応が発生 |
| 既存システムとの連携 | 提供元のAPI仕様の範囲にとどまる | 勤怠・人事給与システムと柔軟に連携可能 |
| 健康経営指標の管理 | 標準レポートの範囲で対応 | 個社ごとの指標設計や集計ロジックを組み込める |
| コスト構造 | 月額利用料が中心 | 初期開発費が中心、保守は別途発生 |
既製サービスは、ストレスチェックの実施義務や実施者要件といった制度対応の部分を提供元がアップデートする点が利点です。一方でスクラッチ開発は、勤怠システムの長時間労働データや人事システムの異動情報と突き合わせる個社固有の分析軸や、健康経営度調査で使う指標の集計ロジックを組み込みたい場合の選択肢になります*7。どちらを選ぶ場合でも、要配慮個人情報を扱う前提でのアクセス制御設計は共通して必要になります。
外注で進める場合の流れと確認しておきたいポイント
外注する場合、まず現状の運用(紙・Excel・複数システムの併用など)を棚卸しし、健診結果管理・ストレスチェック・面接指導勧奨・産業医連携のうち、どの範囲をシステム化するかを整理する段階から始まります。要配慮個人情報を扱う開発である以上、要件定義の段階からアクセス権限設計と委託先の情報管理体制を確認しておくことが実務上の要点です。
委託先を選ぶ際は、労働安全衛生法や個人情報保護法の改正に継続的に対応できる体制か、産業医・保健師とのやり取りを想定した権限設計の実績があるか、勤怠・人事給与システムとの連携実績があるかを確認します。開発後の運用保守を誰が担うかについても、契約前にすり合わせておく点になります。
紙やExcelで蓄積してきた過去数年分の健診結果を新システムへ移行する場合は、データ形式の統一やクレンジングに想定以上の時間がかかることがあります。移行対象の年数や項目数を早い段階で洗い出し、要件定義とあわせてスケジュールに組み込んでおくことが、後工程での手戻りを抑えるコツです。従業員数が多い企業では、この移行作業だけで数か月を要する例も見られます。
。対象従業員数や連携するシステムの範囲によって必要な工数は変わってきます。現状の運用を診断したうえで、既製サービスとスクラッチ開発、内製と外注の切り分けを検討することが実務的です。
まとめ:健康管理・ストレスチェックシステム開発で押さえる3つの要点
本稿では健康管理・ストレスチェックシステムの開発を外注する際に押さえておきたい制度と機能を整理しました。要点は3つに集約できます。第一に、ストレスチェックは労働安全衛生法により常時50人以上の事業場に年1回の実施が義務付けられており、50人未満の事業場も今後義務化が予定されています*1*4。第二に、健康診断結果やストレスチェック結果などの健康情報の多くは要配慮個人情報に該当し、取得・保管・産業医連携のいずれの場面でも取扱いルールの整備が欠かせません*6。第三に、既製サービスとスクラッチ開発は連携範囲や健康経営の指標管理の柔軟性で特徴が異なり、自社の運用実態に合わせた選定が必要です。
よくある質問
ストレスチェックの実施は、従業員が50人未満の事業場でも義務ですか。
現時点では常時50人以上の労働者を使用する事業場が実施義務の対象です*1。50人未満の事業場は努力義務にとどまっていますが、2025年5月に公布された改正法により実施が義務付けられ、公布後3年以内に政令で定める日から施行される見込みです*4。
ストレスチェックの結果を、本人の同意なく人事担当者が閲覧することはできますか。
労働者の同意を得ないまま、個々人のストレスチェック結果を事業者へ提供することは認められていません*3。衛生委員会での審議を経て、事業者が個々人の結果自体を把握しない運用にする場合は、同意取得の手続きを省略できるとされています*3。
健康診断結果はどのような個人情報として扱う必要がありますか。
健康診断の結果や病歴などの健康情報の多くは、個人情報保護法上の要配慮個人情報に該当します。取得には原則として本人の同意が必要で、詳細な医学情報の取扱いは産業医や保健師といった産業保健業務従事者に行わせることが望ましいとされています*6。
既製サービスとスクラッチ開発は、どちらを選べばよいですか。
制度改正への追随や導入スピードを重視するなら既製サービス、勤怠・人事給与システムとの独自連携や健康経営の指標管理までシステムに組み込みたい場合はスクラッチ開発が選択肢になります。どちらを選ぶ場合でも、要配慮個人情報を扱う前提でのアクセス制御設計は共通して必要です。
開発を外注する場合、委託先に何を確認すればよいですか。
法改正への継続的な対応体制、産業医・保健師とのやり取りを想定した権限設計の実績、勤怠・人事給与システムとの連携実績を確認します。開発後の運用保守の分担についても、契約前にすり合わせておくことが大切です。
著者:テレリモ総研編集部 鈴木 亮佑
ご不明な点はお問い合わせフォームからもご連絡いただけます。
- *1 出典:厚生労働省「ストレスチェック制度・メンタルヘルス対策」(https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/anzeneisei12/index.html)
- *2 出典:厚生労働省 こころの耳「ストレスチェック制度について」(https://kokoro.mhlw.go.jp/etc/kaiseianeihou/)
- *3 出典:厚生労働省 こころの耳「ストレスチェック制度関係Q&A」(https://kokoro.mhlw.go.jp/etc/kaiseianeihou/qa/)
- *4 出典:厚生労働省「『小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアル』を公表します」(https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_69680.html)
- *5 出典:厚生労働省「産業医について教えて下さい」(よくある質問)(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/faq/newpage_50446.html)
- *6 出典:個人情報保護委員会「雇用管理分野における個人情報のうち健康情報を取り扱うに当たっての留意事項」(https://www.ppc.go.jp/personalinfo/legal/ryuuijikou_health_condition_info/)
- *7 出典:経済産業省 健康経営優良法人認定制度ポータル「ACTION!健康経営」(https://kenko-keiei.jp/about/)