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2026.07.13 らしくコラム

PIM(商品情報管理)システム開発の外注の進め方

LASSIC IT事業部|元請(プライムベンダー)としてシステム開発・保守を受託

商品情報のイメージ

この記事のポイント

  • PIM(商品情報管理)は、商品マスタ・属性・画像を一元管理し、自社ECやモール、カタログ、店舗など複数チャネルへ配信する仕組みを指します。
  • 全社のマスタ整合を担うMDMや、基幹の商品マスタ、在庫管理、CMSとは役割が異なり、連携させる前提で設計するのが実務的です。
  • パッケージ(PIM SaaS)とスクラッチの判断軸、そして属性モデルや多チャネル配信フォーマット、既存連携の確認点が外注先選びの分かれ目になります。

PIM(商品情報管理システム)とは——商品情報を一元管理し多チャネルへ配信する仕組み

商品データのイメージ

PIM(Product Information Management。商品情報管理)とは、商品名・仕様・属性・分類・価格・画像といった商品情報を一つのデータベースに集約し、自社ECやモール、紙カタログ、実店舗など複数の販売チャネルへ最適な形で配信するための仕組みを指します。商品仕様や属性、サイズ・カラーなどのバリエーション情報、画像や動画といったデジタルアセット、商品説明文やマーケティング情報を扱い、消費者や販売パートナーに「見せる情報」を中心に管理するのがPIMの役割です*3

図
図:PIMは各所に散らばる商品情報を集約し、チャネルごとの形式へ配信する

商品情報は本来、基幹システムの商品マスタや取引先から届くデータ、撮影した画像など、複数の場所に散らばりがちです。PIMはこれらを取り込んで一元化し、チャネルごとに求められる項目や形式へ変換して届けます。入力担当者と承認者を分けたワークフロー、必須項目の欠損チェック、多言語や多通貨への対応なども、PIMが担う主要な機能に含まれます。

商品を識別するコードの扱いも重要な論点です。GTIN(Global Trade Item Number)はGS1標準の商品識別コードの総称で、日本で広く使われるJANコード(GTIN-13)は13桁で構成されます*1。この13桁は、GS1事業者コード・商品アイテムコード・チェックデジットの3要素からなり、事業者コードは流通システム開発センターが事業者へ貸与する仕組みです*1。PIMではこうした識別コードを軸に、商品情報を正確に紐づけて管理していきます。

なぜ今PIMなのか——マルチチャネル販売で商品情報が分散する課題

PIMへの関心が高まる背景には、販売チャネルの多様化があります。経済産業省の令和6年度電子商取引に関する市場調査によると、2024年の日本国内におけるBtoC-EC市場規模は26.1兆円(前年比5.1%増)に拡大しました*4。うち物販系分野は15.2兆円で、物販系のEC化率は9.8%(前年比0.4ポイント増)へと上昇しています*4。ECの比重が増すほど、扱う商品情報の量と更新頻度も膨らんでいくわけです。

自社EC、モール、紙カタログ、実店舗のPOSと、チャネルが増えるにつれて、同じ商品の情報がそれぞれの場所で別々に管理されがちになります。担当者がスプレッドシートを手作業で更新し、モールごとに項目名や画像サイズを整え直す。こうした運用では、価格や仕様の食い違い、画像の差し替え漏れといった不整合が生じやすくなります。商品点数が数万を超えると、目視での突き合わせは現実的でなくなるでしょう。

取引先から届く商品データの取り込みも負荷の一つです。仕入先やメーカーごとにフォーマットが異なると、そのつど変換とチェックの手間がかかります。こうした業界横断の課題に対しては標準化の取り組みも進んでおり、GS1 Japanは2019年10月に「GS1 Japan Data Bank -商品情報-」を開始しました*2。ブランドオーナーが商品情報を一度登録すれば、国内外のデータベースへ連携・配信される仕組みです*2。社内のPIMは、こうした外部データ源との接続も見据えて設計するのが望ましい方向といえます。

基幹の商品マスタ・在庫管理・BtoB EC・CMS・MDMとの違いと連携

PIMを検討する際に混同されやすいのが、隣接するシステムとの役割分担です。いずれもPIMと連携させる前提で、境界を整理しておくとよいでしょう。

基幹の商品マスタ・在庫管理システムとの違い

基幹システムの商品マスタは、商品コード・原価・売価・取引条件など、受発注や会計に必要な「取引のためのデータ」を持ちます。在庫管理システムは数量や入出庫を扱います。一方でPIMが管理するのは、消費者に見せる詳細スペックや訴求文、画像といった「販促のためのデータ」です。コードや価格は基幹をマスタとし、PIMがそれを取り込んで販促向けの属性を肉付けする、という連携が基本形になります。

BtoB EC・CMSとの違い

BtoB ECや自社ECのサイトは、商品情報を「表示・販売する」チャネルにあたります。CMS(Content Management System)はページやコンテンツの管理を担います。PIMはこれらの手前で、配信元となる商品データを整える基盤です。ECサイトやCMSはPIMから商品データを受け取って表示する、という関係になります。BtoB受発注システムの構築そのものについては、別稿で扱っています。

MDM(マスターデータ管理)との関係

最も整理が必要なのがMDM(Master Data Management。マスターデータ管理)との関係です。MDMは顧客・取引先・仕入先・財務・人事など、企業活動全体にまたがるマスターデータの整合を担い、全社の単一の正(Single Source of Truth)を確立します*3。これに対しPIMは商品情報の「活用」に特化した仕組みで、両者は競合ではなく補完の関係にあります*3。PIMだけではコンプライアンスに必要な仕入先データまでは管理しきれず、MDMだけでは消費者に響く商品情報を作り込めない、という指摘もあります*3

これらの違いを一覧にすると、次のように整理できます。

システム 主な管理対象 PIMとの関係
基幹の商品マスタ 商品コード・原価・売価・取引条件 コード/価格の供給元。PIMが取り込む
在庫管理 在庫数量・入出庫 在庫はPIMの管理外。EC側で参照
BtoB EC・自社EC 商品の表示・販売・受発注 PIMから商品データを受け取る配信先
CMS ページ・コンテンツ PIMの商品データを表示に利用
MDM 全社マスタ(顧客・取引先ほか)*3 補完関係。商品領域をPIMが担う*3

パッケージ(PIM SaaS)とスクラッチ——PIM開発の選び方

PIMを用意する手段は、大きくパッケージ(PIM SaaS)の導入とスクラッチ開発に分かれます。どちらが適するかは、商品属性モデルの複雑さと既存システムとの連携要件で見極めるのが実務的です。

パッケージ(PIM SaaS)が向くケース

汎用的な属性管理やワークフロー、多チャネル配信の機能がひととおり揃っているのがパッケージの利点です。標準機能で要件の大半を賄えるなら、初期構築の期間とコストを抑えられます。商品カテゴリが比較的標準的で、扱う属性が既製の枠組みに収まるケースが対象です。一方で、自社固有の分類体系や特殊な承認フローを求めると、カスタマイズ費用がかさむこともある点は念頭に置きましょう。

スクラッチ開発が向くケース

商品属性のモデルが業種固有で複雑な場合や、既存の基幹・EC・物流システムとの密な連携が欠かせない場合には、スクラッチ開発が選択肢に入ります。たとえばアパレルのサイズ・カラー展開、食品の原材料やアレルゲン表示、製造業の型番派生など、属性の設計自体が競争力に直結する領域です。既存資産を活かしつつ独自要件を織り込みたいなら、要件定義から作り込む余地の大きいスクラッチが適します。ただし開発と保守の負荷は自社側に寄るため、体制の裏づけが前提になります。

現実には、パッケージを基盤にしながら連携部分を個別開発する折衷型も少なくありません。まずは自社の商品属性がどこまで標準に収まるかを棚卸しし、そのうえで判断するのが遠回りに見えて確実です。

PIM開発を外注する際の確認点——属性モデル・配信フォーマット・既存連携

EC商品のイメージ

PIM開発を外部に委託する場合、一般的なシステム開発の確認点に加えて、商品情報ならではの論点を押さえておく必要があります。とりわけ次の3点は、契約前にすり合わせておきたいところです。

複雑な商品属性モデルを表現できるか

商品によって、必要な属性はまるで異なります。カテゴリごとに項目が変わる、バリエーション(サイズ・カラー・容量)が階層で絡む、といった構造をデータモデルとして無理なく表現できるかが第一の関門です。将来のカテゴリ追加に耐える拡張性があるか、属性の型や必須条件をカテゴリ単位で定義できるかを、実際の商品例を用いて確認するとよいでしょう。

多チャネル配信フォーマットに対応できるか

自社EC、各モール、紙カタログ、店舗端末では、求められる項目名・文字数・画像仕様がそれぞれ違います。チャネルごとの出力フォーマットへ柔軟にマッピングでき、新しいチャネルの追加にも対応できる構造かどうかを見ます。GTINなどの識別コードを軸にした名寄せや、多言語・多通貨の出し分けが必要な場合は、その要件も明示しておきましょう*1

既存の基幹・ECとの連携方式が現実的か

PIMは単体では完結せず、基幹の商品マスタやEC、DAM(デジタルアセット管理)との連携が前提です。データの取り込みと配信をAPIで行うのか、バッチファイルで行うのか、更新のタイミングと整合性をどう担保するのかを詰めます。取引先からの商品データ取込がある場合は、フォーマットのばらつきをどこで吸収するかも重要な論点です。入力・承認ワークフローやデータ品質チェック(欠損・重複の検出)の要件も、あわせて仕様化しておくと後戻りを防げます。

内製と外注の分かれ目——商品データ運用の体制で判断する

PIMの導入可否や規模がおおむね固まってきたら、内製と外注のどちらで進めるかを検討します。分かれ目になるのは、商品データの運用と開発を担える社内体制があるかどうかです。

商品属性の設計、チャネルごとの配信要件の整理、基幹やECとの連携開発は、いずれも専門知識を要します。商品情報の運用に精通した担当者と、システム連携を担うエンジニアの双方が社内に揃っているなら、内製で進める余地があります。一方で、既存の担当者が通常業務と兼任する形になりがちなら、要件定義や検証に割ける時間は限られるでしょう。

専門パートナーへ委託する場合は、依頼できる範囲の広さが選定の分かれ目になります。属性モデルの設計から多チャネル配信の実装、既存システムとの連携、稼働後の保守までを一貫して任せられるかが確認ポイントです。商品点数やチャネル数、既存連携の複雑さによって必要な工数は変わってきます。現状の商品データ運用を診断したうえで、内製・外注の切り分けを検討するのが着実な進め方です。

まとめ:PIM開発の外注で押さえる3つの判断軸

本稿では、PIM(商品情報管理)システムの開発と外注の進め方を、公的情報をもとに整理してきました。要点は3つに集約できます。第一に、PIMは商品マスタ・属性・画像を一元管理し、複数チャネルへ配信する仕組みであり、全社マスタを担うMDMや基幹の商品マスタ、EC、CMSとは役割が異なります*3。第二に、用意する手段はパッケージ(PIM SaaS)とスクラッチに分かれ、商品属性モデルの複雑さと既存連携の要件が判断軸です。第三に、外注時は複雑な属性モデルの表現力、多チャネル配信フォーマットへの対応、既存の基幹・ECとの連携方式という3点を、実際の商品例で確認することが欠かせません。自社の商品データ運用の体制を見極めたうえで、内製と外注の最適なバランスを探ることをおすすめします。

LASSICに相談するメリット

LASSIC IT事業部は、業務システムの開発・連携を元請(プライムベンダー)として受託しています。商品属性モデルの設計から多チャネル配信の実装、基幹・EC・DAMとの連携、稼働後の保守まで、一貫して対応する体制を整えています。既存の商品データ運用を活かしながらPIMを検討したい企業様は、現状の診断からご相談いただけます。

よくある質問

PIMと基幹システムの商品マスタは何が違うのですか。

基幹の商品マスタは、商品コードや原価・売価など受発注や会計に使う取引データを管理します。PIMが扱うのは、消費者に見せる詳細スペックや訴求文、画像といった販促向けの情報です*3。実務では基幹をコードと価格の供給元とし、PIMがそれを取り込んで属性を肉付けする連携が基本になります。

PIMとMDMはどちらを導入すべきですか。

両者は競合ではなく補完の関係にあります。MDMは顧客・取引先を含む全社マスタの整合を担い、PIMは商品情報の活用に特化しています*3。商品情報の分散や多チャネル配信が課題ならPIMが起点になりますが、全社データの整合まで見据えるならMDMとの役割分担を設計段階で決めておくとよいでしょう。

PIMはパッケージとスクラッチのどちらが適していますか。

商品属性が標準的な枠組みに収まり、標準機能で要件の大半を賄えるならパッケージ(PIM SaaS)が有利です。業種固有の複雑な属性モデルや、既存システムとの密な連携が必要ならスクラッチが選択肢に入ります。パッケージを基盤に連携部分だけ個別開発する折衷型も現実的な解になります。

PIM開発を外注する際、まず何を確認すればよいですか。

複雑な商品属性モデルを表現できるか、多チャネルの配信フォーマットへ対応できるか、既存の基幹・ECとの連携方式が現実的かの3点を、実際の商品例を使って確認します。入力・承認ワークフローやデータ品質チェックの要件も、契約前に仕様化しておくと後戻りを防げます。

取引先から届く商品データのフォーマットがばらばらでも取り込めますか。

フォーマットの変換とチェックの層をPIM側に設ければ取り込めます。GTIN(JANコード)などの識別コードを軸に名寄せする設計が有効です*1。業界横断の標準化としてGS1 Japan Data Bankのような仕組みも整いつつあり、外部データ源との接続も見据えて設計しておくと拡張しやすくなります*2

著者:テレリモ総研編集部 鈴木 亮佑


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  1. *1 出典:GS1 Japan 一般財団法人流通システム開発センター「GTINとは」(https://www.gs1jp.org/standard/identify/gtin/introduction.html
  2. *2 出典:GS1 Japan 一般財団法人流通システム開発センター「GS1 Japan Data Bank -商品情報-とは?」(https://www.gs1jp.org/database_service/gjdb/about_gjdb.html
  3. *3 出典:Centric Software「PIMとMDMの違いとは?」(https://www.centricsoftware.com/ja/blogs/pim-vs-mdm/
  4. *4 出典:経済産業省「令和6年度電子商取引に関する市場調査」(2025年8月公表)


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