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2026.07.23 らしくコラム

治験・臨床試験のEDC/CTMS入門と外注ガイド

LASSIC IT事業部|元請(プライムベンダー)としてシステム保守・運用を受託

臨床試験データ管理のイメージ

この記事のポイント

  • 治験・臨床試験のデータ収集はEDC(症例報告書の電子化)、進捗・施設・モニタリングの管理はCTMSが担い、両者は目的が異なるシステムです。
  • GCP省令やER/ES指針は、電磁的記録に真正性・見読性・保存性という3要件を求めており、システム選定や運用設計はこれを満たす前提で進める必要があります。
  • 規制知識・バリデーション・保守運用まで含めて内製するか外注するかは、費用構造とリスク対応の両面から判断する必要があります。

治験・臨床試験がシステム化を迫られる背景

製薬研究のイメージ

新薬の承認申請に向けた治験・臨床試験は、「医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令」(GCP省令、平成9年厚生省令第28号)に基づいて実施されます*1。GCP省令は、被験者の人権保護と科学的な質・データの信頼性確保を治験実施の前提としており、記録の作成・保存や治験審査委員会・モニタリングの体制もこの省令が定める枠組みの中に位置づけられます*1

近年は、この枠組みの中で紙運用から電子運用への移行が進んでいます。GCP省令のガイダンスは令和5年12月の改正で、治験依頼者と実施医療機関・受託者との間の文書提出や契約締結を電磁的方法で行えることを明確化しました*2。あわせて厚生労働省は、治験関連文書を電磁的記録として活用する際の基本的な考え方も事務連絡として整理しています*3。データ収集・試験管理・説明同意といった一連の業務を支えるシステムが、EDC(電子的データ収集システム)やCTMS(治験管理システム)です。

なお、本記事が扱うのは製薬会社・CROが新薬開発の治験・臨床試験で使うEDC・CTMSであり、病院内の標準型電子カルテや電子処方箋といった医療機関向けの医療DXとは対象が異なります。両者はいずれも医療分野のシステムですが、データの発生源・利用目的・適用される規制が別物である点にご留意ください。

データの信頼性確保に求められる3要件

治験データを電磁的記録として扱う場合、厚生労働省のER/ES指針(「医薬品等の承認又は許可等に係る申請等における電磁的記録及び電子署名の利用について」、平成17年4月1日薬食発第0401022号)は、真正性・見読性・保存性という3つの要件を示しています*4。真正性は、作成・変更・削除の責任の所在が明確であり、完全・正確で信頼できる状態を指し、見読性は記録を人が読める形式で出力できること、保存性は保存期間中この2つが確保された状態を維持することを意味します*4

治験関連文書の電磁的記録活用に関する基本的考え方でも、同様に見読性・真正性・保存性の確保が求められており、電子メール・記録媒体・クラウドシステムなど複数の交付方法を使う場合でも、必要な情報が適切に届き、事実経過を検証でき、適切に保存されることが条件とされています*3。EDC・CTMSを選定・運用する際は、この3要件を満たせる設計になっているかを最初に確認する視点が欠かせません。データの完全性(データインテグリティ)という考え方も国際的に広く参照されていますが、個別のシステムがどこまでこれに対応しているかは、ベンダーの公式情報で個別に確認する必要があります。

EDCとは?症例報告書を電子的に収集するシステム

EDC(Electronic Data Capture)とは、治験における症例報告書(CRF)の作成・収集を電子的に行うシステムです。被験者ごとの観察結果や検査値を、実施医療機関の担当者がブラウザ上のフォームへ直接入力し、データセンター側でリアルタイムに蓄積する仕組みが一般的です。紙のCRFを回収してから入力・照合する運用に比べ、入力内容へのその場での確認や、モニタリング担当者による進捗把握を早い段階で行いやすくなる点が特徴として挙げられます。

EDCの中核機能には、入力項目ごとの整合性チェック、疑義事項(クエリ)の発行と回答履歴の管理、変更履歴を残す監査証跡の記録が含まれます。これらの機能は前章で触れた真正性・見読性・保存性の要件と直接関わるため*4、単に入力画面を電子化するだけでなく、権限管理・ログ管理まで含めてシステムを設計する必要があります。

CTMSとは?治験の進捗・施設・モニタリングを管理するシステム

CTMS(Clinical Trial Management System)とは、個々の被験者データではなく、治験プロジェクト全体の進捗・実施医療機関・モニタリング計画・予算といった管理情報を一元的に扱うシステムです。実施医療機関ごとの契約状況や被験者の登録進捗、モニタリング訪問の計画と実績、逸脱事項の対応状況などをダッシュボード上で横断的に把握できるようにする役割を担います。

EDCが「被験者データの収集」を担うのに対し、CTMSは「試験そのものの運営管理」を担うという住み分けです。両者は別システムとして提供される場合と、統合プラットフォームの一部として提供される場合があり、既存の社内システムとの連携要件や、複数の実施医療機関にまたがるデータ集約の方法によって、選定の考え方が変わってきます。

eConsent・ePROなど周辺システムの広がり

EDC・CTMSに加え、被験者からの説明・同意取得を電磁的方法で行うeConsentや、被験者自身が症状や服薬状況を報告するePRO(電子的患者報告アウトカム)といった周辺システムの利用も広がっています。厚生労働省は令和5年3月30日付の通知で、治験及び製造販売後臨床試験における電磁的方法を用いた説明・同意の留意点を示しました*6。対面と同等の説明・質疑応答を医師の責任のもとで行うことを前提に、身分確認書類の提示や多要素認証による本人確認、プライバシーが確保された実施場所、単なる自己学習形式にとどめない説明方法、システムトラブル時に書面や対面へ切り替えられる代替手段の確保が求められています*6

こうした電子的な説明同意や来院回数を抑えた遠隔要素の組み合わせは、分散型治験(DCT)と呼ばれる実施形態の広がりとも関係します。ePRO・ウェアラブル機器によるデータ収集・オンラインでのやり取りを組み合わせる設計は、EDC・CTMSへのデータ連携方法にも影響するため、導入検討の初期段階から周辺システムとの接続要件を洗い出しておくことが望ましいでしょう。

システムに求められる要件(電磁的記録・バリデーション・監査証跡)

EDC・CTMSに求められる要件は、大きく3つに整理できます。第一に、前述したER/ES指針の真正性・見読性・保存性です*4。第二に、システムが意図したとおりに動作することを検証するバリデーション(コンピュータ化システムバリデーション、CSV)という考え方です。厚生労働省の「コンピュータ化システム適正管理ガイドライン」は、GMP・GQP省令の対象システムを念頭に、設計時・据付時・運転時・性能適格性という段階を踏んだ検証と、開発から廃棄までのライフサイクル全体での文書管理を求めています*5。治験システムに同ガイドラインがそのまま適用されるわけではありませんが、システムの信頼性を段階的に検証するという考え方自体は、EDC・CTMSの導入判断でも参考になる視点です。

第三に、監査証跡(オーディットトレイル)です。誰が、いつ、どの項目を、どのように変更したかを自動で記録し、後から追跡できる仕組みが必要になります。これら3つの要件は独立したものではなく、権限管理・ログ設計・変更履歴の保存方法として一体で設計されるべき要素です。導入前の要件定義段階で、ベンダーの公式資料に基づき対応状況を確認しておく必要があります。

データマネジメント業務とシステムの関係

EDC・CTMSは、データマネジメント業務を支える土台です。入力されたデータに矛盾や欠測がないかを確認し、疑義があればクエリを発行して実施医療機関に問い合わせ、回答を反映したうえでデータを固定する(データロック)という一連の流れは、EDCの整合性チェック機能とクエリ管理機能に支えられています。CTMS側では、この作業がどの実施医療機関でどの程度進んでいるかを進捗管理の観点から把握します。

データマネージャーやモニタリング担当者が日々の業務でシステムに触れる以上、操作性や画面設計も軽視できない要素です。しかし優先すべきは、前章までに挙げた電磁的記録の3要件・バリデーション・監査証跡が満たされているかどうかであり、操作性はその上で比較検討する項目と位置づけるのが実務的な進め方と言えるでしょう。

内製と外注委託の判断軸

EDC・CTMSの導入を自社で担うか、外部パートナーへ委託するかは、規制知識・バリデーション対応・保守運用体制という観点から検討する必要があります。以下の表に主な違いを整理しました。

比較項目 内製 外注委託
規制知識(GCP・ER/ES指針等) GCP省令やER/ES指針の要件を自社で継続的に把握・追随する必要があります*1*4 規制対応の実績を持つパートナーの知見を活用でき、要件把握を任せられます
バリデーション・監査証跡設計 検証項目の洗い出しからログ設計まで自社の体制で実施します CSVの考え方に沿った検証手順を委託先の体制で構築できます*5
保守・アップグレード対応 バージョンアップ時の動作検証や不具合対応を自社で継続します 動作検証を含めた保守・運用まで一括で任せられます
導入スピード 要件定義から構築まで自社リソースの空き状況に左右されます 複数案件の知見を活かし、構築期間を圧縮しやすくなります
図
図:治験データの流れ(被験者データ発生→EDCで収集→CTMSで進捗管理→監査証跡付きの承認申請データ)

内製・外注のどちらを選ぶ場合でも、出発点は自社の治験規模・実施医療機関数・将来の案件見込みを踏まえた要件整理です。規制知識やバリデーション対応の専門人材を継続的に確保できる体制が社内にあるかどうかが、最初の判断材料になるでしょう。

まとめ:治験システム導入で押さえる3つの視点

本稿では、治験・臨床試験を支えるEDC・CTMSについて、GCP省令や厚生労働省の各種通知に基づき整理しました。要点は次の3つに集約されるでしょう。第一に、EDCは症例報告書の電子的収集、CTMSは進捗・施設・モニタリングの管理という役割分担があり、eConsent・ePROといった周辺システムとの連携も広がっています*6。第二に、システムはER/ES指針が示す真正性・見読性・保存性を満たす設計が前提であり、バリデーションと監査証跡の考え方もあわせて確認する必要があります*4*5。第三に、規制知識・バリデーション対応・保守運用まで含めた体制を自社で継続できるかどうかが、内製と外注委託を分ける判断軸になります。

LASSICに相談するメリット

LASSIC IT事業部は、元請(プライムベンダー)としてシステム開発・保守運用を受託する体制を持ち、GCP省令やER/ES指針といった公式要件を踏まえたシステム開発のご相談に対応しています。EDC・CTMSの要件整理から、監査証跡・権限管理を含めた設計、既存システムとの連携確認まで、貴社の体制や規模に合わせてご提案します。まずは現状の治験運営体制と、電子化を検討している業務範囲の棚卸しからご相談ください。

よくある質問

EDCとCTMSはどう違いますか。

EDCは被験者ごとの症例報告書(CRF)を電子的に収集するシステムで、CTMSは実施医療機関の進捗・モニタリング計画・予算といった試験全体の管理情報を扱うシステムです。役割が異なるため、統合プラットフォームの一部として提供される場合と、別システムとして提供される場合があります。

治験システムを外注する際、何を確認すべきですか。

ER/ES指針が示す真正性・見読性・保存性への対応状況*4、バリデーションの考え方に沿った検証手順、監査証跡の記録方法、既存の社内システムとの連携要件を確認することが重要です。委託先が公式情報に基づいた対応実績を持つかどうかも判断材料になります。

eConsentはすべての治験で利用できますか。

厚生労働省の通知は、対面と同等の説明・質疑応答を医師の責任のもとで行うことを前提に、本人確認や実施場所、代替手段の確保などの留意点を示しています*6。個々の治験でeConsentを採用できるかどうかは、実施計画書の内容や規制当局・治験審査委員会の判断も踏まえ、個別に確認する必要があります。

治験関連文書を電磁的記録として保存する際の要件は何ですか。

厚生労働省の事務連絡は、見読性・真正性・保存性の確保を求めており、電子メールや記録媒体、クラウドシステムなど複数の交付方法を使う場合でも、必要な情報が適切に届き、事実経過を検証でき、適切に保存されることが条件とされています*3

病院の電子カルテと治験のEDC・CTMSは同じシステムですか。

異なります。電子カルテは医療機関が診療情報を記録・管理するためのシステムであるのに対し、EDC・CTMSは製薬会社・CROが新薬開発の治験・臨床試験におけるデータ収集と試験管理を目的として使うシステムです。データの発生源や適用される規制も異なります。

著者:テレリモ総研編集部 鈴木 亮佑


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  1. *1 出典:e-Gov法令検索「医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令」(https://laws.e-gov.go.jp/document?lawid=409M50000100028
  2. *2 出典:厚生労働省「「医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令」のガイダンスについて」の改正について(令和5年12月26日医薬薬審発第1226004号)(https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00tc8160&dataType=1&pageNo=1
  3. *3 出典:厚生労働省「治験関連文書における電磁的記録の活用に関する基本的考え方について」(平成25年7月1日事務連絡)(https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00tb9517&dataType=1&pageNo=1
  4. *4 出典:厚生労働省「医薬品等の承認又は許可等に係る申請等における電磁的記録及び電子署名の利用について」(ER/ES指針、平成17年4月1日薬食発第0401022号)(https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00ta8216&dataType=1&pageNo=1
  5. *5 出典:厚生労働省「医薬品・医薬部外品製造販売業者等におけるコンピュータ化システム適正管理ガイドラインについて」(平成22年10月21日薬食監麻発第1021011号)(https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00tb6573&dataType=1&pageNo=1
  6. *6 出典:厚生労働省「治験及び製造販売後臨床試験における電磁的方法を用いた説明及び同意に関する留意点について」(令和5年3月30日薬生薬審発0330第6号・薬生機審発0330第1号)(https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00tc7518&dataType=1&pageNo=1


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