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IT重説導入ガイド|不動産オンライン重説の要件と流れ
LASSIC IT事業部|元請(プライムベンダー)としてシステム保守・運用を受託
この記事のポイント
- IT重説(ITを活用した重要事項説明)は、賃貸取引が平成29年10月1日、売買取引が令和3年3月30日に本格運用へ移行した制度です。
- 重要事項説明書等の電子交付(書面電子化)は令和4年5月18日施行の宅地建物取引業法関連規定により法令上実施可能となった、IT重説とは別枠の制度です。
- 対応システムには、双方向の映像・音声環境、宅建士証の視認確認、電子書面の改変防止措置、記録保存の各機能が求められます。
目次
IT重説とは?宅建業法における対面規制緩和と本格運用までの経緯
IT重説とは、テレビ会議等のITを活用して行う重要事項説明を指します*1。宅地建物取引業法(以下「宅建業法」)第35条は、宅地建物取引士(以下「宅建士」)が売買・貸借の相手方等に対し、書面を交付して重要事項を説明することを義務づけていますが、従来はこの説明を対面で行うことが前提とされていました。
この対面規制の見直しは、平成25年6月の「世界最先端IT国家創造宣言」(閣議決定)を受けて策定された「IT利活用の裾野拡大のための規制制度改革集中アクションプラン」で対処方針として示されたことに始まります*1。国土交通省は平成26年4月に検討会を立ち上げ、平成27年1月の「最終とりまとめ」でIT重説を社会実験として試行し、検証のうえ本格運用へ進めることが適当とされました*1。
社会実験は平成27年8月31日に開始され、検証検討会での議論を経て、平成29年3月13日開催の検証検討会(第3回)で「目立ったトラブルは発生せず、IT重説の実施に支障がない」ことが認められました*1。これにより、賃貸取引は同年10月1日から本格運用へ移行しています*1。売買取引についても、令和3年1月25日開催の検証検討会(第7回)で同様に認められ、同年3月30日から本格運用へ移行しました*1。
国土交通省が示す「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」(解釈運用通知)は、IT重説を対面による宅建業法第35条の重要事項説明と同様に取り扱うものとしています*1。つまりIT重説は対面説明の例外や簡易版ではなく、要件を満たせば対面と同等に扱われる正式な実施方法という位置づけです。
書面電子化とIT重説の関係:宅建業法が定める2つの電子化
IT重説の議論と並行して、書面の電子交付についても検討が進められてきました。令和元年10月1日からは賃貸取引について宅建業法第35条・第37条に基づく書面を対象に電磁的方法による提供の社会実験が始まり、売買取引については第34条の2に基づく書面も対象に加えたうえで、令和3年3月10日から社会実験が開始されています*1。
令和3年5月に成立・公布された「デジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律」(令和3年法律第37号)による宅建業法関連規定の改正を受け、政省令が令和4年4月27日に公布・同年5月18日に施行されました*1・*3。これにより、媒介契約締結時書面(第34条の2書面)・重要事項説明書(第35条書面)・契約締結時書面(第37条書面)を電子メールやWebダウンロード形式等の電磁的方法で提供すること(以下「書面電子化」)が法令上実施可能となりました*1・*3。
ここで実務上の混同が起きやすいのが、IT重説と書面電子化の関係です。国土交通省のマニュアルによれば、書面電子化を行うからといって重要事項説明をIT重説で実施する必要はなく、反対にIT重説を実施するからといって重要事項説明書を電子書面で提供する必要もありません*1。つまり両者は独立した別枠の制度であり、対面説明+電子書面という組み合わせも、IT重説+紙の重要事項説明書という組み合わせも制度上は成立します。システムを検討する際は、この2つの要件をそれぞれ切り分けて整理することが出発点になります。
IT重説に必要な要件①:双方向の映像・音声環境と宅建士証の視認確認
解釈運用通知が求める「双方向でやりとりできる環境」
解釈運用通知は、IT重説の実施について「その内容を十分に理解できる程度に、映像を視認でき、かつ、音声を聞き取ることができるとともに、双方向でやりとりできる環境において実施していること」を規定しています*1。具体的な機器やソフトウェアの仕様は定められていませんが、この要件を満たせる機器やサービスを用意する必要があります*1。
画面は、相手方側で宅建士証の記載文字や図面が視認できる大きさ・解像度が必要とされ、宅建士側は自分の映り方を確認できるワイプ画面表示が有効とされています*1。カメラは宅建士証を鮮明に映せる性能、マイクや回線は開始から終了まで動画・音声を一体的に送受信できる品質が条件です*1。
利用するテレビ会議等のサービスは、インスタントメッセンジャー型・テレビ会議サービス型・テレビ電話サービス型の3パターンに大別され、いずれも双方向でやりとりできるIT環境が前提です*1。録画・録音を行う場合は、サービスがこれに対応しているかも事前に確認する必要があります*1。
宅建士証の視認確認は形式的な手続きではない
宅建士は、説明の相手方が宅建士証を視認できたことを確認しなければなりません。これは宅建士でない者が説明を行ったり、名義貸しが行われたりすることを防止するための要件です*1。実務では、宅建士証をカメラにかざしたうえで、相手方に氏名を読み上げてもらう、あるいは提示を受けたことを声に出して答えてもらうといった方法で確認します*1。なお個人情報保護の観点から、宅建士証の住所欄に容易に剥がせるシールを貼ったうえで提示することは差し支えないとされています*1。
IT重説に必要な要件②:重要事項説明書の事前送付と実施前確認
IT重説は、説明の相手方の手元に重要事項説明書及び添付書類がある状態で実施する必要があり、実施に先立ち宅建士により記名された書類を相手方に送付しておかなければなりません*1。電子書面で提供する場合は、書面電子化の要件を満たした電子書面を実施前に提供する必要があります*1。
実施前には、双方の映像・音声が互いの端末で確認できること、事前送付した書面が相手方の手元にあることを確認する必要があります*1。実施途中で映像・音声に支障が生じた場合、宅建士はIT重説を中断し原因を解消したうえで再開しなければならず、解消が困難な場合は中止する必要があります。中止後は当事者の希望により、残りを対面説明に切り替える対応も可能です*1。
重要事項説明書等の電子交付に必要な要件:承諾取得と改変防止措置
書面電子化には、まず説明の相手方等から承諾を得る必要があります。宅建業者は承諾に先立ち、電子書面の提供方法(電子メール等・Webダウンロード形式・CD-ROMやUSBメモリ等の交付)とファイル記録方式を相手方に示さなければなりません*1。承諾は書面(紙)または紙に出力可能なファイル形式で取得し、相手方は承諾後でも拒否を申し出ることが可能で、拒否の申出があれば電磁的方法による提供をしてはならないと定められています*1。
提供する電子書面自体にも要件があります。相手方が出力して書面(紙)を作成できること、改変されていないか確認できる措置(改変防止措置)を講じていることが必要です*1。改変防止措置には電子署名やタイムスタンプが想定され、有効期間があるため期限後の取扱いを事前に説明しておくことが望ましいとされています*1。加えて、重要事項説明書(第35条書面)・契約締結時書面(第37条書面)の電子書面には宅建士の記名が必要です*1。
IT重説と書面電子化は要件の観点が異なるため、以下に主な違いを整理しました。
| 比較項目 | IT重説 | 書面電子化(電子交付) |
|---|---|---|
| 対象となる行為 | 宅建業法第35条の重要事項説明そのものの実施方法 | 第34条の2書面・第35条書面・第37条書面の交付方法 |
| 本格運用・施行時期 | 賃貸:平成29年10月1日/売買:令和3年3月30日*1 | 令和4年5月18日施行*1・*3 |
| 中心となる要件 | 双方向の映像・音声環境、宅建士証の視認確認*1 | 相手方の承諾取得、改変防止措置、宅建士の記名*1 |
| 組み合わせの自由度 | 両制度は独立しており、対面+電子書面、IT重説+紙の書面のいずれも制度上成立する*1 | |
本人確認・電子契約・録画記録に関する留意点
重要事項説明は、契約当事者が取引条件や権利関係を事前に理解したうえで契約を締結し、トラブルを未然に防止するための制度です。したがって説明の相手方が契約当事者本人(代理人を含む)であることは、重要事項説明の前提と位置づけられています*1。特に売買取引(媒介・代理を含む)では、マネー・ローンダリングを防止する観点から、犯罪による収益の移転防止に関する法律に基づく本人確認を行う必要があるとされています*1。
なお国土交通省のマニュアルは宅建業法の規制範囲での取扱いを示すものであり、同法に根拠を持たない民間の取引慣行による押印行為等は対象外です*1。売買契約書自体の電子契約を検討する場合は、第37条書面としての要件と、契約当事者間の取引慣行に基づく部分とを分けて整理する必要があります。
IT重説の実施状況を録画・録音することは、トラブル発生時の解決手段として有効と考えられますが、宅建士や取引関係者の個人情報が含まれることから、利用目的を明らかにしたうえで双方の了解のもとで行うことが求められます*1。機微情報が含まれる場面では録画・録音を中断し、相手方の求めに応じて複製を提供するといった対応も必要です*1。取得した録画・録音記録は個人情報保護法に則った管理が必要であり、他の顧客情報と同様に保存期間等を取り扱う必要があります*1。
IT重説対応システムに求められる機能
ここまでの要件を踏まえると、IT重説対応システムには次のような機能が求められます。
第一に、意向確認・日程調整機能です。相手方の意向確認と承諾(または拒否)の記録、実施日時の調整履歴を保存できることが望まれます*1。第二に、電子書面の交付機能です。提供方法・記録方式の事前提示、電子署名やタイムスタンプによる改変防止措置、宅建士の記名処理を一連の流れで扱えることが必要です*1。
第三に、ビデオ通話・宅建士証提示機能です。双方向の映像・音声環境とワイプ表示、重要事項説明書の画面共有機能が実務上有効です*1。第四に、売買取引の本人確認機能と、録画・録音データを個人情報保護法に沿って保存・管理する記録保存機能も欠かせません*1。
なお、こうした機能は、入居者・契約・原状回復を扱う賃貸管理システムとは目的が異なります。実際の導入では、既存の物件・顧客管理システムと連携し、重説対象物件や相手方の情報を受け渡す設計が現実的です。
導入の進め方:内製と委託の判断軸
導入を進める際は、まず自社の重要事項説明の実施フローを棚卸しし、IT重説と書面電子化のどちらを、どの取引類型(賃貸・売買)に適用するかを整理することが出発点です。そのうえで映像・音声環境、宅建士証提示、承諾取得、改変防止措置、記録保存の各要件を定義に落とし込み、既存システムとの連携範囲を確定させる流れが基本です。
内製で構築する場合は、解釈運用通知や省令改正への追随、電子署名・タイムスタンプサービスとの連携、個人情報保護法に沿った録画・録音データの管理体制まで、複数分野の専門知識を自社で維持する必要があります。専門パートナーへ委託する場合は、制度改正へのキャッチアップやセキュリティ対応を任せられる一方、自社システムとの連携要件を明確に伝えられるかが導入期間を左右します。どちらの進め方でも、まずは取引類型と現行フローの整理が判断の土台になるでしょう。
まとめ:IT重説対応システム導入で押さえるべき3つの視点
本稿では、国土交通省の公式マニュアル等に基づき、IT重説と書面電子化に対応するシステムの要点を整理しました。要点は次の3つに集約されます。第一に、IT重説(賃貸は平成29年10月1日、売買は令和3年3月30日に本格運用へ移行)と書面電子化(令和4年5月18日施行)は、宅建業法上それぞれ別枠の制度であり、要件を切り分けて整理する必要があります*1・*3。第二に、システムには双方向の映像・音声環境、宅建士証の視認確認、電子書面の改変防止措置、宅建士の記名処理、記録保存といった機能が求められます*1。第三に、賃貸管理システム等の既存基盤とは目的を分けたうえで連携させる設計が、導入判断の土台になるでしょう。
よくある質問
IT重説と重要事項説明書の電子交付(書面電子化)は同じ制度ですか。
いいえ、異なる制度です。IT重説は重要事項説明そのものをテレビ会議等で実施する方法であり、書面電子化は重要事項説明書等の書面を電磁的方法で交付する方法です。国土交通省のマニュアルは、両者はそれぞれ独立しており、どちらか一方のみを実施することも制度上可能としています*1。
IT重説はいつから本格運用されていますか。
賃貸取引は平成29年10月1日から、売買取引は令和3年3月30日から、それぞれ本格運用へ移行しています*1。いずれも国土交通省の検証検討会がトラブルの有無等を検証したうえで移行時期が決まりました。
IT重説の実施にはどのような機器要件がありますか。
解釈運用通知に基づき、映像を視認でき、音声を聞き取ることができ、かつ双方向でやりとりできる環境が必要です*1。加えて、相手方の画面で宅建士証の記載内容が確認できる解像度や、開始から終了まで品質を維持できる通信回線も求められます*1。
重要事項説明書を電子書面で交付する際、宅建士の記名は必要ですか。
はい、必要です。重要事項説明書(第35条書面)及び契約締結時書面(第37条書面)を電子書面で提供する場合、当該宅建士の記名が要件として定められています*1。
IT重説の録画・録音は必須ですか。
録画・録音自体は必須ではありません。ただし実施する場合は、利用目的を明らかにしたうえで双方の了解のもとで行い、取得した記録は個人情報保護法に則って管理する必要があるとされています*1。
著者:テレリモ総研編集部 鈴木 亮佑
ご不明な点はお問い合わせフォームからもご連絡いただけます。
- *1 出典:国土交通省「重要事項説明書等の電磁的方法による提供及びITを活用した重要事項説明実施マニュアル」(令和4年4月/令和6年12月版)(https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/content/001853617.pdf)
- *2 出典:国土交通省「建設産業・不動産業:ITを活用した重要事項説明及び書面の電子化について」(https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/sosei_const_tk3_000092.html)
- *3 出典:国土交通省「報道発表資料:不動産取引時の書面が電子書面で提供できるようになります。~宅地建物取引業法施行規則の一部改正等を行いました~」(https://www.mlit.go.jp/report/press/tochi_fudousan_kensetsugyo16_hh_000001_00036.html)