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工期の比率と工数の比率の違い、製作は工数側が0.07高い
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)
この記事の結論
- 製作は工数側が0.07高い:工期0.244に対し工数0.316*2。
- 総合テストは逆向き:工期0.173に対し工数0.119*2。
- 3つの開発種別で同じ向き:改良は+0.069、再開発は+0.052*2。
※ 本記事は2026年9月時点の公式情報(省庁・公的機関・ベンダー公式ドキュメント)に基づきます。
稼働の人数を決めるとき、どの工程に足すかで結果が変わります。
手がかりは、工程が占める期間の比率と人手の比率がずれるという点です。
IPAが公開している開発プロジェクトのデータでは、この2つが別の表として整理されています*1*2。
新規開発の製作工程では、中央値が工期の比率0.244に対し工数の比率0.316でした*2。差は0.072です*2。
総合テストは逆でした*2。工期の比率0.173に対し工数の比率0.119で、差はマイナス0.054です*2。
目次
期間と人手を分けて見る
人数を増やす判断は、工程を選ばないと空回りします。期間が長い工程と、人手が要る工程は同じではありません。
その差を業界の分布として測れる資料があります*1。IPAの「ソフトウェア開発分析データ集2022」で、公開は2022年9月26日、最終更新は2025年8月28日と記されています*1。
規模も示されています*1。これまでに収集した5,546プロジェクトの定量データから分析したと書かれています*1。
性質を先に書きます*1。この資料には「事業終了に伴い今後の発行予定はございません」と明記されています*1。最新の調査ではありません*1。
構成も確かめられます*4。本編のほかに業種編3編、サマリー版、マンガ解説版、グラフデータが公開されています*4。
対象の条件が決まっています*2。開発5工程、つまり基本設計から総合テストまでのフェーズがすべてそろったプロジェクトだけを集計しています*2。
比率の作り方も書かれています*2。各プロジェクトで5工程の合計を分母にして、それぞれの工程の比率を出す形です*2。
本編は注意も添えています*2。P25や中央値やP75をそれぞれ合計しても1にはならないと明記されています*2。
数値の扱いを書きます*2*3。中央値は本編の表に示された値をそのまま引き、差はその値から筆者が算出しました*2*3。
グラフデータの著作権はIPAが保有しています*3。使用条件に従い、著作権表示としてCopyright 2022 IPAを記します*3。
照合もしました*2*3。グラフデータの各シートに同じ表が入っており、値が本編と一致することを確認しています*2*3。
沿革も書かれています*4。IPAは2005年からエンタプライズ分野の開発データを収集し、2020年に書籍版の名称を変えて現在の形になったとされています*4。
図表の形も添えられています*2。それぞれの表には箱ひげ図が併載され、過去のデータ白書2018の図表に対応すると注記されています*2。
まず工期の比率から見ます*2。
工期の比率は製作が0.244で上端
本編の表A3-3-5は、新規開発の工程別の実績月数の比率を示しています*2。Nは192です*2。
いちばん高いのは製作でした*2。中央値0.244です*2。
次が結合テストです*2。中央値0.192でした*2。
基本設計はその直後に並びます*2。中央値0.190で、結合テストとの差は0.002しかありません*2。
そのあとが総合テストの0.173です*2。
下端は詳細設計でした*2。中央値0.163です*2。
ばらつきも示されています*2。製作はP25が0.194、P75が0.290で、四分位の幅が0.096あります*2。
基本設計も同じ幅です*2。P25が0.147、P75が0.247で0.100の幅でした*2。
本編の読み方も添えられています*2。新規開発では他の工程に比べて基本設計工程と製作工程の月数の比率が高いとされています*2。
時系列にも触れています*2。これは2014年度から2019年度と同様であると書かれています*2。
読み方を限定します*2。ここで分かるのは工程が占める期間の割合だけで、人数や工数は含まれていません*2。
期間の話と人手の話は別に並んでいます*2。次に工数の側を見ます*2。
工数の見積りそのものを外に任せる進め方は別に整理されています。工数見積り技法を外注で精度向上が参考になります。
工数の比率は製作が0.316まで上がる
本編の表A3-3-8は、新規開発の工程別の実績工数の比率を示しています*2。Nは270です*2。
ここでも上端は製作でした*2。ただし中央値は0.316まで上がります*2。
2番目は結合テストです*2。中央値0.201でした*2。
基本設計は0.165、詳細設計は0.158です*2。上位2つとは離れます*2。
下端は総合テストでした*2。中央値0.119です*2。
ばらつきも大きくなります*2。製作はP25が0.237、P75が0.397で、四分位の幅は0.160あります*2。
工期の側では0.096でした*2。同じ製作工程でも、工数の側のほうが幅が広い分布です*2。
ここで前提を確認します*2。工期の表と工数の表はNが192と270で違います*2。
つまり同じプロジェクト集合ではありません*2。2つの分布を並べているだけで、同じ案件の中で期間と工数を突き合わせた集計ではありません*2。
それでも並べる意味があります*2。業界の分布として、どの工程が期間側に寄りどの工程が人手側に寄るかという形が見えます*2。
資料は工程ごとの人数を聞いていません*2。何人でその工数を消化したのかは読めません*2。
本編の説明も添えられています*2。この節以降は各プロジェクトで開発5工程の実績月数または工数の合計を分母として、各工程の比率を算出すると書かれています*2。
次に、2つの並びの差を出します*2。
差を出すと製作だけ大きくプラス
工程ごとに、工数の中央値から工期の中央値を引きます*2。
製作はプラス0.072でした*2。工数0.316から工期0.244を引いた値です*2。
結合テストもプラスです*2。0.201から0.192を引いてプラス0.009でした*2。
ただし幅がまったく違います*2。製作の0.072に対し、結合テストは0.009にとどまります*2。
残る3工程はマイナスでした*2。基本設計がマイナス0.025、詳細設計がマイナス0.005です*2。
いちばん大きいマイナスは総合テストでした*2。0.119から0.173を引いてマイナス0.054です*2。
並べると形が決まります*2。製作は人手の側に寄り、総合テストは期間の側に寄る分布です*2。
この差は中央値の差です*2。Nが違う2つの表から引いた値なので、案件ごとの差ではありません*2。
実務での意味はここです。人を増やす判断は、人手の比率が高い工程で数字として大きく動きます。
逆に期間の比率が高いだけの工程では、増やしても全体工数に占める割合が小さいままです。
ただし資料は因果を示していません*2。人を足した結果どうなったかという集計は含まれていません*2。
工程ごとにどこを自社に残しているかの分布は別に集計しました。工程別の内製化|設計開発テストだけ委託が34.4%で扱っています。
改良開発と再開発でも向きは同じ
同じ集計が開発の種別ごとに用意されています*2。
改良開発の工期は表A3-3-6でNが378、工数は表A3-3-9でNが580です*2。
製作の差はプラス0.069でした*2。工数の中央値0.297から工期の中央値0.228を引いた値です*2。
新規開発の0.072とほぼ同じ水準です*2。向きも幅も揃っています*2。
改良開発の中央値も並べます*2。工期は基本設計0.200、詳細設計0.179、製作0.228、結合テスト0.193、総合テスト0.157でした*2。
工数の側はこうです*2。基本設計0.153、詳細設計0.152、製作0.297、結合テスト0.200、総合テスト0.142です*2。
他の工程も同じ向きでした*2。基本設計がマイナス0.047、詳細設計がマイナス0.027、結合テストがプラス0.007、総合テストがマイナス0.015です*2。
再開発も見ます*2。工期は表A3-3-7でNが40、工数は表A3-3-10でNが63でした*2。
製作の差はプラス0.052です*2。工数0.314から工期0.262を引いた値でした*2。
結合テストはここだけ大きくなります*2。プラス0.033で、他の2つの開発種別の0.007から0.009より高い値です*2。
再開発の中央値も書いておきます*2。工期は基本設計0.186、詳細設計0.174、製作0.262、結合テスト0.176、総合テスト0.143でした*2。
工数の側は基本設計0.143、詳細設計0.152、製作0.314、結合テスト0.209、総合テスト0.136です*2。
ただしNが小さいです*2。工期が40件、工数が63件なので、幅を持たせて読む必要があります*2。
3つの種別で共通するのは製作の向きです*2。プラス0.072、プラス0.069、プラス0.052と、いずれも人手の側に寄ります*2。
本編の読み方も添えられています*2。改良開発の工数については、新規開発に比べて総合テスト工程の工数の比率が高いとされています*2。
基幹システムの側から費用を整理した記事は別にあります。基幹システム開発のコスト削減をご覧ください。
合計は1にならないという前提
この比率の読み方には、資料が明記している制約があります*2。
P25や中央値やP75をそれぞれ合計しても1にはならないと書かれています*2。
理由は分位点の性質です*2。各工程の中央値はそれぞれ別のプロジェクトで実現した値なので、足し合わせても意味を持ちません*2。
実際に足しても1になりません*2。新規開発の工数の中央値5つを足すと0.959、工期の中央値5つを足すと0.962です*2。
つまり構成比の分解としては使えません*2。「製作が全体の31.6%」という言い方はできません*2。
使えるのは工程間の比較です*2。どの工程の比率が高い側にあるかという順序と、その差を見る用途に限られます*2。
母数の条件も押さえます*2。5工程がすべてそろったプロジェクトだけが対象なので、一部の工程しか実施していない案件は含まれません*2。
開発の種別も分けられています*2。新規開発、改良開発、再開発の3つで、それぞれ工期と工数の表が用意されています*2。
資料は工程の定義も添えています*2。5工程は基本設計、詳細設計、製作、結合テスト、総合テストで、総合テストは受注した側が確認する範囲までとされています*2。
同じ5工程の範囲は別の記事でも扱いました。外部委託工数比率とは、中央値63.4%が示す体制の相場をご覧ください。
比較の対象も限定します*2。工期のNと工数のNが違うため、割合の差を細かく論じることはしません*2。
言えるのは向きと大きさの順です*2。製作が人手側、総合テストが期間側という並びです*2。
それでも使い道はあります*2。どの工程が人手側に寄るかを、5,546プロジェクトを収集した資料の分布として社内に示せます*1*2。
次に、これを稼働の設計に落とします*2。
稼働を工程単位で設計する順番
ここまでの分布を、自社の手順に落とします*2。
| 工程 | 工期の比率(N=192) | 工数の比率(N=270) | 差 |
|---|---|---|---|
| 基本設計 | 0.190 | 0.165 | −0.025 |
| 詳細設計 | 0.163 | 0.158 | −0.005 |
| 製作 | 0.244 | 0.316 | +0.072 |
| 結合テスト | 0.192 | 0.201 | +0.009 |
| 総合テスト | 0.173 | 0.119 | −0.054 |
1段目は分けて書くことです。自社の案件について、5工程それぞれの期間と工数を別々に書き出します。
同じ工程で2つの数字が出ます。期間が長いのに工数が小さい工程と、その逆の工程が見えます。
2段目は人手の比率が高い工程を選ぶことです。人を足す効果が数字として大きいのはこちら側です。
分布と比べる材料があります*2。製作は工数の中央値0.316で、工期の0.244より0.072高い位置にあります*2。
3段目は期間だけ長い工程の扱いです。ここは人数を据え置き、期間の見直しで対応する範囲になります。
分布でもその向きです*2。総合テストは工期の中央値0.173に対し工数が0.119で、0.054低い位置にあります*2。
4段目は選んだ工程だけ外から足すことです。全体に人を配るのではなく、工程を絞って入れます。
順番を逆にすると進みません。人数を先に決めてから工程を選ぶと、期間だけ長い工程に人が入って余ります。
実務では、製作と結合テストが増減の対象になりやすい工程です。設計と総合テストは社員に残す形が取りやすくなります。
期間を区切って入れるなら、フリーランスを含む業務委託の使い方が合います。量が増える工程だけ人を足し、終わったら戻す形にします。
この集計から読めないことも押さえます*2。工程ごとの人数や単価、人を足した結果どうなったか、同じプロジェクトでの期間と工数の対応は含まれていません*2。
時点の限界もあります*1。この資料は2022年の公開で、事業終了に伴い今後の発行予定はないと明記されているため、それより後の傾向は読めません*1。
まとめ:人手側の工程を選ぶ
第一に、資料の性質です。IPAの「ソフトウェア開発分析データ集2022」は公開が2022年9月26日、最終更新が2025年8月28日となっており、これまでに収集した5,546プロジェクトの定量データから分析されています。事業終了に伴い今後の発行予定はないと明記されているため、最新の調査ではありません。中央値は本編の表に示された値で、差はその値から筆者が算出しました。グラフデータの著作権はIPAが保有しており、著作権表示としてCopyright 2022 IPAを記します。第二に、対象の条件です。開発5工程、つまり基本設計から総合テストまでがすべてそろったプロジェクトだけを集計し、各プロジェクトで5工程の合計を分母にした比率を出しています。第三に、工期の比率です。新規開発では製作が中央値0.244で上端、基本設計0.190、結合テスト0.192、総合テスト0.173、詳細設計0.163でした。Nは192です。第四に、工数の比率です。同じ新規開発では製作が0.316まで上がり、結合テスト0.201、基本設計0.165、詳細設計0.158、総合テスト0.119でした。Nは270です。第五に、その差です。工数の中央値から工期の中央値を引くと、製作がプラス0.072、結合テストがプラス0.009、詳細設計がマイナス0.005、基本設計がマイナス0.025、総合テストがマイナス0.054になります。第六に、他の種別です。改良開発では製作がプラス0.069、再開発ではプラス0.052で、3つの種別すべてで製作が人手の側に寄ります。ただし再開発はNが40件と63件で小さく、幅を持たせて読む必要があります。第七に、制約です。本編はP25や中央値やP75をそれぞれ合計しても1にならないと明記しており、構成比の分解としては使えません。工期と工数はNの違う別の表なので、同じプロジェクト集合での対応も取れません。工程ごとの人数や単価、人を足した結果、2022年より後の傾向も今回の集計には含まれていません。
よくある質問
工期の比率がいちばん高い工程はどこですか。
IPAのソフトウェア開発分析データ集2022の表A3-3-5では、新規開発の実績月数の比率の中央値が製作で0.244と上端でした。次が結合テストの0.192、基本設計の0.190、総合テストの0.173、詳細設計の0.163です。Nは192です(確認日2026年9月4日)。
工数の比率では順番が変わりますか。
変わります。表A3-3-8では新規開発の実績工数の比率の中央値が製作で0.316、結合テストで0.201、基本設計で0.165、詳細設計で0.158、総合テストで0.119でした。Nは270です。総合テストは工期では3番目でしたが工数では下端になります。
期間と人手の差はどれくらいありますか。
工数の中央値から工期の中央値を引くと、製作がプラス0.072でいちばん大きく、結合テストがプラス0.009、詳細設計がマイナス0.005、基本設計がマイナス0.025、総合テストがマイナス0.054です。改良開発でも製作はプラス0.069、再開発でもプラス0.052で向きは同じです。
この比率を足して構成比として使えますか。
使えません。本編は「P25、中央値、P75などをそれぞれ合計しても1とはならない」と明記しています。各工程の中央値はそれぞれ別のプロジェクトで実現した値だからです。実際に新規開発の工数の中央値5つを足すと0.959になります。工程間の順序と差を見る用途に限られます。
同じプロジェクトで期間と工数を比べたものですか。
違います。工期の比率と工数の比率は別の表で、新規開発ではNが192件と270件と異なります。同じプロジェクト集合ではないため、案件ごとの対応は取れません。業界の分布として、どの工程が期間側に寄りどの工程が人手側に寄るかという形を見るための比較です。
出典
- *1 参考:IPA「ソフトウェア開発分析データ集2022」(https://www.ipa.go.jp/digital/software-survey/metrics/metrics2022.html)。公開日・最終更新日・5,546プロジェクト・事業終了に伴う発行予定なしの記述の一次情報として(2026年9月確認)
- *2 参考:IPA「ソフトウェア開発分析データ集2022」本編(https://www.ipa.go.jp/digital/software-survey/metrics/hjuojm000000c6it-att/000102171.pdf)。表A3-3-5から表A3-3-10の中央値・N・対象条件・比率の作り方の注意書きとして(2026年9月確認)
- *3 参考:IPA「ソフトウェア開発分析データ集2022グラフデータ」(https://www.ipa.go.jp/digital/software-survey/metrics/hjuojm000000c6it-att/000103288.zip)。同じ表の値の確認として。著作権はIPAが保有(Copyright 2022 IPA)(2026年9月確認)
- *4 参考:IPA「ソフトウェア開発分析データ集」(https://www.ipa.go.jp/digital/software-survey/metrics/index.html)。業種編3編・サマリー版・グラフデータという構成の記述として(2026年9月確認)