LASSIC Media らしくメディア

2026.07.23 らしくコラム

医療広告の規制対応|ガイドライン違反を防ぐ審査体制

監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)

医療機関サイトの広告表現チェックのイメージ

この記事の結論

  • 医療広告ガイドラインは医療法に基づいて医療機関の広告を規制するもので、薬機法の広告規制とは根拠法も対象も異なります。
  • 2018年6月からは医療機関のウェブサイトも規制の対象となり、患者の体験談の広告などが禁止されています。
  • 掲載前の審査は担当者の経験だけに頼ると判断がばらつくため、チェックリストとNG表現辞書を使い、承認の記録を残す手順にします。

※ 本記事は2026年9月時点の公式情報(省庁・公的機関、および製品やサービスを提供する事業者が公開している資料)に基づきます。

ホームページの症例紹介に患者さんの感想を載せたいが、載せてよいのか分からない。SNSで新しい施術を紹介したいが、どこまで書いてよいのか判断がつかない——。病院やクリニックの広報の現場では、こうした迷いが起こりがちです。医療広告ガイドラインとは、医療法に基づいて厚生労働省が示している、医療機関の広告についての指針です。

ガイドラインを押さえておくと、表現に問題がないかを院内で判断しやすくなります。ただし万能ではなく、個別の表現が広告に当たるかどうかは、文言やページの作りによって変わります。本記事では、医療機関の広報・経営企画の担当者と制作会社に向けて、規制の対象、禁止される広告、広告できる事項を広げるための要件(限定解除)、違反したときの流れ、そして審査の手順を作るときに確認したい点を整理します。

医療広告ガイドラインとは

ガイドラインの正式名称は「医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関する広告等に関する指針」で、厚生労働省が医療法第6条の5などの規定を踏まえて示しています。*1 対象は病院や診療所だけでなく、歯科医院や美容医療のクリニックも含みます。医薬品や化粧品、健康食品の表示を規制する薬機法とは根拠法も対象も別で、そちらは「薬機法の広告チェックを仕組み化」で扱っています。

規制の重さは、大きな病院でも個人開設のクリニックでも基本的に変わりません。ただ、注意すべき点は業態で違います。保険診療が中心の病院や診療所では、広告できる事項を正しく理解することが中心です。インプラントのように自由診療が混ざる歯科医院では、保険診療と自由診療のメニューで記載を分けて管理します。自由診療が中心の美容医療では、限定解除の要件、とくに費用とリスクの記載が審査の中心になります。

院内で最終的な責任を負うのは多くの場合院長や理事長ですが、原稿作成と最初の確認は広報や経営企画の担当者が受け持つのが一般的です。医師は広告規制の細部まで把握していないことがあり、広報担当者は治療内容の正確さまでは判断しきれません。誰が最初に確認し、誰が承認するのかを先に決めておくことが、審査を続ける前提になります。

規制の対象になる広告

医療法の広告規制は、以前はテレビCMや新聞広告、パンフレットが主な対象でした。平成29年の医療法等の改正により、2018年(平成30年)6月からは医療機関のウェブサイトも規制の対象になっています。*1 「ホームページは広告ではない」と考えている場合は、見直しが必要です。

ガイドラインは、患者の受診などを誘う意図があること(誘引性)と、医師の氏名や病院・診療所の名称が特定できること(特定性)の両方を満たすものを広告として扱います。*1 診療案内のページ、検索結果に表示する広告、バナー広告、SNSの投稿、動画も、両方を満たす限り広告です。一方、学術論文や学会発表、職員の採用を目的とした求人広告は、広告に当たらない例に挙げられています。

SNSでは、公式アカウントだけが対象ではありません。医療機関が対価を払って第三者に投稿を頼んだ場合や、院長が個人のアカウントで自院の施術を紹介した場合も、広告として扱われ得ます。*3 一方、口コミサイトは、第三者が独自に運営し、医療機関が原稿にも費用にも関わっていなければ、直ちに規制の対象にはなりません。反対に、医療機関が自ら情報を入力するポータルサイトのページは広告です。

禁止される広告

医療法は、虚偽の広告を禁じたうえで、他の病院や診療所と比べて優良だとする広告(比較優良広告)、誇大な広告、公の秩序や善良の風俗に反する内容の広告をしてはならないと定めています。*7 虚偽広告は程度にかかわらず禁止です。比較優良広告の典型は、地域で最も優れているといった、客観的な根拠のない比較です。誇大広告には、「○○手術は効果が高く、おすすめです」のように、科学的な根拠が乏しいまま効果を強調するものが当たります。*1 公序良俗に反する広告とは、わいせつや残虐な図画・映像、差別を助長する表現などを使った広告です。

2018年の改正では、患者の主観や伝聞にもとづく、治療の内容や効果についての体験談の広告が新たに禁止されました。都合のよい感想だけを選んで強調すると、虚偽・誇大に当たります。ランキングサイトを装って特定の医療機関を目立たせると、比較優良広告に当たる可能性があります。*2 治療の前後の写真も、治療の内容・費用・主なリスクや副作用などの説明を付けずに載せると、患者を誤認させるおそれがあるため認められません。*1

動画やSNSでは、文章とは違う形で規制に触れやすくなります。施術を再現したドラマ仕立ての動画で実際以上の効果を演出すれば誇大広告に当たり得ますし、加工や修正をした治療前後の写真は虚偽広告として扱われます。フォロワー数や再生回数だけを根拠に「支持されています」と強調する表現も、他院より優れていると訴える表現と受け取られるおそれがあります。自由診療のメニューは、価格や内容を医療機関ごとに決められ、他院との違いを強調しがちなため、重点的に確認します。

広告できる事項とは

医療広告は、禁止される表現を定めるだけでなく、広告してよい事項も法律で限っています。医療法第6条の5第3項は、診療科名、名称・電話番号・所在地、診療日や診療時間、予約による診療の有無などを列挙し、原則としてこれ以外は広告できないとしています。*7 審査では、表現に問題がないかと、載せる事項が法律で挙げられた事項に入っているかという2つの基準を、別々に確かめる必要があります。

カテゴリー別に見た広告できる事項の例
カテゴリー 広告できる事項の例
医療機関の基本情報 診療科名、名称、電話番号、所在地、診療日・診療時間、予約診療の実施有無
医師・歯科医師に関する事項 氏名、性別、年齢、略歴、専門性に関する事項(学会等が認定する専門医の資格等)
提供する医療の内容 厚生労働大臣が定める検査・手術等の治療方法、対応可能な言語、健康保険の取り扱い
医療の提供体制・実績 平均的な入院日数、外来患者・入院患者数、一定の手術の実施件数

注意したいのは、治療の結果を示す数値です。手術の成功率や治癒率、死亡率は、事実であっても広告できる事項には含まれていません。*1 「事実だから問題ない」と考えて通すと、法律に挙げられた事項しか広告できないという前提を見落とします。費用を載せるときは、ほとんど適用されない条件の価格を通常の価格のように示していないかといった、価格表示そのものの正確さもあわせて確かめます。

限定解除の4つの要件

広告できる事項が限られたままだと、患者は自由診療の費用やリスクといった、治療を選ぶのに必要な情報を得にくくなります。そこで、一定の要件を満たしたときに限定を解く仕組みが限定解除です。要件は医療法施行規則第1条の9の2が定める次の4つです。*1

  • 患者等が自ら求めて入手する情報を表示するウェブサイト等であること
  • 問い合わせ先を記載する等、患者等が容易に照会できるようにすること
  • 自由診療に係る治療の内容や費用等の情報を提供すること(自由診療を扱う場合)
  • 自由診療に係る主なリスクや副作用等の情報を提供すること(自由診療を扱う場合)

3つ目と4つ目は自由診療の情報を載せる場合に求められ、保険診療だけのページでは1つ目と2つ目を満たせば足ります。美容医療では、費用・治療内容・リスクの3つが漏れなく載っているかが要で、欠けたまま自由診療の詳細を載せると、要件を満たさない広告として扱われるおそれがあります。なお、限定解除は事項の限定を解くだけで、虚偽や誇大などの禁止はそのまま適用されます。

迷いやすいのは、リスクや副作用をどこまで書けば「主なリスク」を書いたことになるかです。回復までの期間、感染や腫れのような一般的な合併症、まれな重い合併症のどこまでを書くかは施術によって違います。院内のインフォームドコンセント(治療前の説明と同意)の資料とウェブサイトの記載が食い違っていないかを突き合わせ、メニューを追加・改定するたびに、3つの情報がそのページかリンク先にそろっているかを確かめます。

違反したときの流れ

違反が疑われる広告を見つけた場合、都道府県や保健所を設置する市などは、通常はまず行政指導で広告の中止や是正を求めます。指導に従わない場合や違反を繰り返す場合は、医療法第6条の8にもとづく報告命令や立入検査、期限を定めた中止命令・是正命令へと進みます。虚偽広告には刑罰(拘禁刑や罰金)の規定が、報告命令や立入検査に応じない場合にも罰金の規定があります。*7 最初の指導の段階で速やかに表現を直せる体制を整えておくことが、その後のリスクを抑える現実的な方法です。

行政の指導とは別に、厚生労働省は「医業等に係るウェブサイトの監視体制強化事業」を民間事業者に委託しています。通称「医療機関ネットパトロール」で、ホームページのほかブログ・SNS・動画・口コミサイトも監視し、通報窓口を設けています。*5 不適切な表示が見つかると、まず医療機関に自主的な見直しが求められ、改善されなければ所管の自治体へ情報が提供されます。複数の都道府県に拠点がある場合は、ある拠点で指摘を受けたら、同じ表現を使う他の拠点のページも一緒に点検します。

院内の審査手順の作り方

担当者の知識と経験だけで広告表現を確かめる体制には限界があります。原稿が増えるほど確認の量は膨らみ、担当者が不在の間は確認が止まり、拠点ごとに判断がばらつきます。ガイドラインやQ&Aの改正を一人で追い続けるのも現実的ではありません。そこで、掲載前の審査の流れを図のように決めておきます。

医療広告の掲載前審査の流れを4つの箱で示した図。原稿作成(担当者が広告文・LP案を起案)、NG語辞書スクリーニング(禁止表現を自動検知)、限定解除要件チェック(費用・リスク等を確認)、承認・記録保存(複数担当者が承認し修正履歴を保全)の順に進む

まず、広告できる事項・禁止される類型・限定解除の4要件をチェックリストにまとめます。次に、比較優良の表現や効果を言い切る表現、体験談に見える表現をNG表現辞書(使わない表現の一覧)に登録し、確認が要る箇所を機械的に拾えるようにします。辞書が拾うのは候補までで、該当するかどうかは文脈を踏まえて人が判断します。それでも、確認が要る箇所を機械で先に拾うだけで、審査の負担は大きく変わります。辞書を誰が更新するかも決めておかないと、古い基準のまま使われ続けます。

承認の段階では、誰がいつどの原稿を確かめ、どんな理由で承認または差し戻したかを記録に残します。通報や照会があったときに、どんな審査を経て掲載したかを示せるようにするためです。紙やメールでは履歴が散らばるため、記録はシステム上にまとめます。指摘を受けた事例を辞書に加えていけば、担当者が替わっても同じ指摘を繰り返さずに済みます。公開後も、費用の改定やキャンペーンの終了に合わせて見直す時期を決めておきます。

拠点や媒体が多い医療機関では、原稿の提出から承認までを画面上で進めるシステムを入れると、同じ基準で確認でき、費用・治療内容・リスクの記載漏れを入力画面で見つけられます。WordPressなどのCMS(ウェブサイトを更新する仕組み)を使っている場合は、審査が済むまで公開できないよう権限を設定すると、審査を経ない公開を防げます。導入の順は、発信している媒体を書き出し、チェックリストを作り、辞書と承認の流れをシステムに組み込み、最後に定期的な見直しを加える形が現実的です。

外部に委託するときに確認しておきたい点

審査のシステムを自院だけで作るには、医療法の知識に加えてシステム開発の知識も求められます。院内で作るか外部に委託するかは、規模や更新の頻度に応じて判断します。

院内で作る場合と外部に委託する場合の比較
比較項目 院内で作る 外部に委託する
必要な知識 医療法・ガイドラインの継続的な理解に加え、チェックツールの開発・保守の技術が必要です 医療広告規制の実務知識とシステム開発の両方を持つ会社に任せられます
NG表現辞書の整備 改正のたびに自院で辞書の内容を見直し、更新し続ける体制が必要です 改正の動きを踏まえた辞書の更新まで含めて依頼できます
承認の流れと記録の管理 承認の経路や記録する項目の設計・保守を自院で受け持ちます 承認ログ・修正履歴の保存を含めた仕組みを構築してもらえます
担当者の教育 教材やマニュアルの作成・更新を自院で続ける必要があります 運用が定着するまでの教材の整備やサポートまで依頼できます

委託する場合は、辞書の更新をどこまで任せるのかと、承認の記録に残す項目を、要件を決める段階ですり合わせておくと、認識のずれを防げます。

まとめ:医療広告で確かめておきたい3つの点

医療広告ガイドラインに沿って広告を出すうえで、確かめておきたい点は3つに整理できます。第一に、ウェブサイトやSNSも、誘引性と特定性を満たせば広告として扱われると知っておくこと。第二に、禁止される表現と、広告できる事項・限定解除の要件という2つの基準を、別々に確かめること。第三に、チェックリスト・NG表現辞書・承認の記録で掲載前の審査の手順を作り、改正に合わせて更新し続けることです。この3点を踏まえておけば、「気づかないうちに載せていた体験談で指導を受けた」という事態を避けやすくなります。審査の手順づくりに迷いがあれば、外部の手を借りるのも一つの選択肢です。

LASSICに相談するメリット

LASSICは元請(プライムベンダー)として、医療機関や医療系の広告代理店に向けた、掲載前審査のワークフローシステムの構築をお受けしています。ガイドラインに沿ったチェックリストの設計、NG表現辞書で確認が要る表現を拾う機能、限定解除に必要な記載項目の確認、承認ログと修正履歴の保存まで、まとめて対応できます。WordPressなどのCMSと組み合わせた設計や、複数の拠点・診療科にまたがる審査状況の一元管理についても、要件を整理する段階からご相談いただけます。

よくある質問

医療広告ガイドラインと薬機法の両方を確かめるのは、どんな場合ですか

自院のウェブサイトに、医薬品や化粧品を紹介するページがある場合です。医療機関の広告としては医療法、製品の効能の表現としては薬機法と、2つの基準をそれぞれ確かめます。

判断に迷う表現は、どこに相談できますか

所管の自治体の相談窓口に、事前に照会できる場合があります。*4 回答までの期間は自治体によって差があるため、院内で審査したうえで、なお判断が割れる点に絞って照会します。広告審査に詳しい弁護士などへの相談経路も決めておくとよいでしょう。

医療機能情報提供制度は、広告規制とどう違いますか

医療機能情報提供制度は、医療法第6条の3に基づき、医療機関が診療科名や診療日などを都道府県知事に報告し、その情報が公表される制度です。2024年4月からは「医療情報ネット(ナビイ)」で全国の情報を検索できます。*6 受診を促す情報発信を規制する広告規制とは、目的が違います。

ITアウトソーシング・システム開発のご相談はLASSICへ

元請(プライムベンダー)として、貴社の課題に合わせた体制構築・開発支援をご提案します。まずはお気軽にご相談ください。

Remoguとリラシクなら、医療広告の審査ワークフローの構築やCMSの改修に加わるITエンジニアも探せます。

Remoguは、リモート前提で全国から即戦力のITプロ人材を調達するサービスです。リラシクは、扱う求人がすべてリモートワークのITエンジニア専門転職エージェントです。どちらもLASSICが運営しています。

無料相談はこちら

出典

  1. *1 参考:厚生労働省「医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関する広告等に関する指針」(医療広告ガイドライン)(https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/000927804.pdf)。出典:広告の定義(誘引性・特定性)、広告に該当しないものの例、禁止される広告、広告可能事項、限定解除、指導の手順を参照(2026年9月確認)
  2. *2 参考:厚生労働省「医療広告ガイドラインに関するQ&A」(https://www.mhlw.go.jp/content/000371812.pdf)。出典:体験談・口コミ(A2-9)、ランキングサイト(A2-10)を参照(2026年9月確認)
  3. *3 参考:厚生労働省「医療広告規制におけるウェブサイト等の事例解説書」(https://www.mhlw.go.jp/content/001439423.pdf)。出典:SNSや第三者への依頼による投稿などの事例を参照(2026年9月確認)
  4. *4 参考:厚生労働省「医療法における病院等の広告規制について」(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/kokokukisei/index.html)。出典:医療広告規制の特設ページ(自治体の相談窓口など)を参照(2026年9月確認)
  5. *5 参考:厚生労働省委託事業「医療機関ネットパトロール」(https://iryoukoukoku-patrol.mhlw.go.jp)。出典:監視の対象と通報窓口を参照(2026年9月確認)
  6. *6 参考:厚生労働省「医療情報ネット(ナビイ)」(https://www.iryou.teikyouseido.mhlw.go.jp/znk-web/juminkanja/S2300/initialize)。出典:医療機能情報提供制度と全国統一の検索サイトを参照(2026年9月確認)
  7. *7 参考:e-Gov法令検索「医療法」(https://laws.e-gov.go.jp/law/323AC0000000205/)。出典:医療法(昭和23年法律第205号)第6条の5(広告の禁止と広告可能事項)、第6条の8(報告命令・立入検査、中止命令・是正命令)、罰則の規定を参照(2026年9月確認)




View