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2026.07.24 らしくコラム

労働条件明示のルールと記録管理|2024年改正対応

LASSIC IT事業部|元請(プライムベンダー)としてシステム保守・運用を受託

労働契約・雇用のイメージ

この記事のポイント

  • 労働条件明示は、労働契約を結ぶ際に賃金や労働時間などを明示する労働基準法第15条上の義務です。2024年4月の改正で新たに4つの事項が追加されました。
  • 明示すべき内容は雇用形態や契約更新の有無によって異なり、パートタイム・有期雇用労働者には別途4項目の追加明示が求められます。
  • 雇用形態や契約更新のたびに明示事項を漏れなく管理するには、記録の保存とテンプレート整備をシステム化する視点が欠かせません。

労働条件明示とは何か 労働基準法第15条の明示義務と方法

労働条件通知の管理のイメージ

労働条件明示とは、使用者が労働者と労働契約を結ぶ際に、賃金・労働時間・就業の場所などの労働条件を明示する労働基準法第15条上の義務を指します。2024年4月の改正では、就業場所・業務の変更の範囲など新たに4つの事項が追加されました*2

本稿が扱うのは、この労働条件明示の義務と明示記録の管理をシステム化する視点です。応募者管理(ATS)や労働者派遣に関する制度とは目的が異なるため、本稿では立ち入りません。ATSは応募者情報の収集・選考管理を、労働者派遣は派遣元・派遣先間の契約関係を扱う枠組みであり、適用される法令や管理対象は労働条件明示と異なります。

図

明示が必要になるタイミングは契約の締結時と有期契約の更新時

労働条件明示が必要になるタイミングは、労働契約を新たに締結する時点と、有期労働契約を更新する時点の2つに整理できます。正社員等の期間の定めのない契約は締結時に整えれば足りますが、有期契約は更新のたびに最新の条件を明示し直す必要があります*3

2024年4月の改正で追加された更新上限・無期転換申込機会・無期転換後の労働条件という3項目は、契約更新の場面を前提とした規定です*2。契約締結時だけでなく、更新の都度必要な明示事項を確認する運用が求められるでしょう。

明示すべき絶対的明示事項と、定めがある場合の相対的明示事項

労働基準法施行規則第5条は、労働契約を結ぶ際に明示すべき事項を定めています。労働契約の期間、就業の場所・従事すべき業務、始業・終業の時刻や休憩・休日・休暇等が該当します。ほかに、賃金の決定・計算・支払方法、退職に関する事項(解雇の事由を含む)なども該当し、これらは書面の交付等によって明示する必要があります*1

これらは「絶対的明示事項」と呼ばれ、昇給に関する事項を除き書面交付等が必須です。一方、退職手当や賞与等の臨時の賃金、食費・作業用品等の負担、安全衛生、職業訓練といった項目もあります。これらは、定めをした場合にのみ明示が必要な「相対的明示事項」に位置づけられます*1。相対的明示事項は、就業規則で退職手当や賞与の制度を定めている企業ほど、明示漏れが起こりやすい項目と言えるでしょう。

明示方法は書面交付が原則

明示方法は書面の交付が原則です。労働者が希望した場合に限り、FAX、Webメールサービス(Eメール等)、SNSのメッセージ機能(LINE等)による明示も認められます。ただし、いずれも出力して書面を作成できるものに限られます*1。口頭で説明するだけ、あるいは記載した書面を見せるだけの対応は認められません*1

厚生労働省のリーフレットは、入社後に交付する、契約更新の際に交付しない、辞令のみで済ませるといった対応を不適切な事例として挙げています*1。こうした事例に該当しないよう、契約締結・更新のタイミングを起点に明示のチェックを組み込む必要があるでしょう。

2024年4月改正で追加された4つの明示事項

2024年4月1日から、労働基準法施行規則第5条の改正と雇止め告示の改正により、明示すべき事項が4つ追加されました*3。対象となるのは、2024年4月1日以降に締結または更新される労働契約です*3。同日より前から続く有期契約であっても、同日以降に迎える最初の更新では新しい4項目の明示が必要になります*3

追加された4項目のうち、就業場所・業務の変更の範囲はすべての労働契約が対象となり、残り3項目は有期労働契約に関わる事項です*2。内容を以下の表に整理しました。

追加された明示事項 対象となる契約 明示のポイント
就業場所・業務の変更の範囲 全ての労働契約(締結時・有期契約は更新時も) 雇い入れ直後の場所・業務に加え、将来の配置転換等で変わり得る範囲も明示します*2
更新上限の有無と内容 有期労働契約(締結時・更新時ごと) 通算契約期間または更新回数の上限の有無・内容を明示します。新設・短縮時は事前説明が必要です*2
無期転換申込機会 無期転換申込権が発生する更新のタイミング 無期労働契約への転換を申し込める旨を明示します*2
無期転換後の労働条件 無期転換申込権が発生する更新のタイミング 転換後の労働条件を明示します。他の通常の労働者との均衡を考慮した事項の説明は努力義務です*2

更新上限を最初の契約締結時より後から新設・短縮する場合、その理由についてあらかじめ労働者へ説明することが求められます*2。無期転換後の労働条件を明示する際は、正社員など他の通常の労働者との均衡を考慮した業務内容・責任の程度・異動の有無や範囲等を説明する努力義務も新設されました*2

追加事項が企業実務に与える影響

就業場所・業務の変更の範囲は、転勤や部署異動を想定していない企業であっても、将来的に配置転換の可能性がある限り明示が必要になる点に注意が必要です*2。想定がない場合はその旨を明示する対応になります。

更新上限に関する説明義務は、契約当初になかった上限を新たに設ける場合を想定した規定であり、当初から定めていた上限をそのまま更新する場合とは扱いが異なります*2。既存の運用が改正後の要件を満たしているか、契約類型ごとに確認する作業が発生するでしょう。

労働条件通知書の記録・保存という実務

モデル労働条件通知書が示す記載項目

厚生労働省が公開するモデル労働条件通知書には、労働契約の期間、就業場所・業務の変更の範囲、始業・終業の時刻を記載する欄があります。ほかに、休憩、休日、賃金、退職に関する事項、更新上限、無期転換申込機会を記載する欄も設けられています*4。様式は厚生労働省のページからダウンロードできます*5

労働条件通知書は、雇用契約書を兼ねて交付する運用も一般的です。いずれの形式であっても、明示した内容と交付日時を後から確認できる状態で保存しておくことが実務上の要点になります。

電子データで交付した場合も記録として保存する

FAXやEメール等で明示した場合も、労働者が出力して書面を作成できる状態であることが条件です*1。交付した通知書は労働契約に付随する記録として、契約締結時・更新時それぞれの版を保存しておく必要があるでしょう。

厚生労働省のリーフレットが不適切事例として挙げる「更新の際に交付しない」対応は*1、記録の欠落そのものと言えます。改正のたびに様式を見直し、担当者が変わっても過去の交付履歴をたどれる状態を保つことが、実務上の課題になっています。

様式改定と交付履歴の管理という運用課題

労働条件通知書の様式は、法改正のたびに見直しが必要です。2024年4月の改正のように明示事項が追加される場合、既存の様式に項目を加えるだけでなく、改正前後どちらの様式で交付したかを区別できる状態を保つ必要があります。

担当者が異動・退職した場合でも、過去にどの版の様式でいつ誰に交付したかを追跡できなければ、記録としての意味が薄れてしまうでしょう。契約件数が増えるほど、この履歴管理を人手だけで維持する負担は大きくなります。

多人数・多雇用形態の管理を難しくする3つの要因

多くの雇用形態を抱える企業では、明示すべき事項そのものに加え、確認・記録・更新という運用を安定させることが課題になります。ここでは代表的な3つの要因を整理します。

雇用形態ごとに明示事項が異なる

パートタイム・有期雇用労働者には、パート・有期労働法第6条に基づく追加の明示事項があります。昇給の有無・退職手当の有無・賞与の有無・相談窓口という4項目を、文書交付等で明示する必要があります*1。正社員・契約社員・パートが混在する企業では、雇用形態ごとに異なるひな形を使い分けなければなりません。

更新のたびの確認漏れという失敗コスト

有期契約の更新は、更新上限・無期転換申込機会・無期転換後の労働条件という2024年改正事項を都度確認する場面でもあります*2。担当者が手作業で個別に確認する運用では、更新件数が増えるほど記載漏れを防ぎきれません。記載漏れは、厚生労働省が示す不適切事例に該当しかねない対応です*1

システムに求められる3つの機能要件

多人数・多雇用形態を抱える企業が明示事項を管理するには、3つの機能が実務上の要件になります。テンプレートの一括更新機能、雇用形態別の出し分け機能、交付記録の保存・検索機能です。

手作業でこれらを維持しようとすると、法改正のたびに全テンプレートを人手で洗い出す作業が発生し、更新漏れのリスクが高まるでしょう。契約件数や雇用形態の種類が増えるほど、システム化による一元管理の有効性は高まります。

内製で管理する場合と専門パートナーに委託する場合の違い

社内だけで対応する場合、労働基準法・パート有期労働法の改正内容を追い続ける体制と、雇用形態別のテンプレートを更新・配布する仕組みが必要です。改正のたびに様式を作り直す作業は、人事労務担当者の本来業務を圧迫しかねません。

この管理を専門パートナーへの委託によって仕組み化すれば、テンプレートの一括更新や交付記録の一元管理を、システムとして継続的に維持できます。内製・委託のどちらを選ぶ場合も、まずは自社の雇用形態と更新頻度を整理することが出発点です。

専門パートナーは、複数の企業の労務システム構築を通じて蓄積した知見を持っています。雇用形態別のテンプレート設計や交付記録の一元管理を仕組み化できる点が、内製との違いです。自社の情報システム部門だけで検討・検証を重ねる場合と比べ、稼働までの期間を短縮しやすくなるでしょう。

まとめ:労働条件明示・記録管理の3つの実務ポイント

本稿では、労働条件明示の基本と2024年4月改正の内容を、厚生労働省の公式情報に基づいて整理しました。要点は次の3つに集約されるでしょう。第一に、労働契約の締結時には絶対的明示事項を書面交付等で明示する必要があります*1。第二に、2024年4月の改正で追加された4項目は、契約更新の都度確認する運用が欠かせません*2。第三に、雇用形態が多岐にわたる企業ほど、明示事項の管理と記録の保存をシステム化する意義が大きくなります。改正のたびにテンプレートと交付記録を漏れなく更新できる仕組みを持つことが、労務管理の信頼性を支える土台になるでしょう。

LASSICに相談するメリット

LASSIC IT事業部は、人事・労務領域を含む業務システムの構築・運用を元請(プライムベンダー)として受託しています。労働条件通知書のテンプレート管理や交付記録の一元化など、雇用形態が多岐にわたる企業の実務要件に合わせたシステム構築に対応する体制を整えています。既存の労務管理システムとの連携や、雇用形態が混在する組織特有の要件整理からも伴走できる体制です。自社の運用に不安がある企業様は、まず管理の現状整理からご相談ください。

よくある質問

労働条件明示は口頭の説明だけで済ませてもよいですか。

いいえ、原則として書面の交付が必要です。労働者が希望した場合に限り、FAXやEメール、SNSのメッセージ機能等でも明示できますが、口頭の説明のみや書面を見せるだけでは足りません*1。明示を怠った対応は、厚生労働省が示す不適切事例に該当する可能性があるため注意が必要です*1

2024年4月の改正はいつ締結した契約から対象になりますか。

2024年4月1日以降に締結または更新される労働契約が対象です*3。それより前から続く契約であっても、次の更新のタイミングでは新しい4項目の明示が必要になります。契約締結日ではなく、明示すべきタイミングごとに対象かどうかを確認する点が実務上のポイントです。

パートタイム・有期雇用労働者に特有の明示事項はありますか。

あります。パート・有期労働法第6条に基づき、昇給の有無・退職手当の有無・賞与の有無・相談窓口という4項目を文書交付等で明示する必要があります*1。正社員向けのひな形とは別に、パート・有期雇用労働者専用の様式を用意しておくと確認漏れを防ぎやすくなります。

多くの雇用形態を抱える企業は、明示事項の管理をどう整備すればよいですか。

雇用形態別のテンプレートを整備し、更新のたびに明示事項を漏れなく確認できる仕組みを持つことが実務上の対応になります。手作業では改正時の一斉更新や交付記録の管理が煩雑になるため、システム化の検討が有効です。契約更新のタイミングで必要な明示事項を自動的に洗い出せる仕組みがあれば、担当者の負担も軽減できるでしょう。

著者:テレリモ総研編集部 鈴木 亮佑


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  1. *1 出典:厚生労働省(茨城労働局/常総労働基準監督署)リーフレット「労働条件の明示を適切に行っていますか?」(https://jsite.mhlw.go.jp/ibaraki-roudoukyoku/content/contents/kantoku_jyousou_r021202meiji.pdf
  2. *2 出典:厚生労働省リーフレット「2024年4月から労働条件明示のルールが変わりました」2024年9月版(https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/001298245.pdf
  3. *3 出典:厚生労働省「2024年4月から労働条件明示のルールが変わります」まとめページ(https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_32105.html
  4. *4 出典:厚生労働省 モデル労働条件通知書(https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/001156118.pdf
  5. *5 出典:厚生労働省「労働条件通知書の様式」ページ(https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/roudoujouken01/index.html


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