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2026.07.24 らしくコラム

ハラスメント防止措置の体制と記録の仕組み化

LASSIC IT事業部|元請(プライムベンダー)としてシステム開発・保守を受託

相談窓口のイメージ

この記事のポイント

  • パワハラ防止措置は労働施策総合推進法、セクハラ・マタハラ防止措置は男女雇用機会均等法と育児介護休業法が根拠であり、中小企業もすでに義務化されています*1
  • 事業主には方針の明確化、相談窓口の整備、事実確認と迅速な対応、プライバシー保護・不利益取扱いの禁止という一連の措置が求められます*1
  • 相談・調査の記録を多拠点・多部門でも一貫して残せる体制づくりが、義務履行の証跡として重要になります。

ハラスメント防止措置義務とは何か。対象範囲と根拠法の整理

ハラスメント防止体制のイメージ

本記事は、パワハラ防止措置法などに基づく事業主のハラスメント相談窓口設置・調査記録の体制整備をテーマとして扱います。当サイトで別に扱う勤怠管理や採用管理(ATS)といった人事システムとは目的が異なる領域である点を、まず明確にしておきます。

職場におけるハラスメント防止措置は、ハラスメントの種類によって根拠法が分かれます。パワーハラスメントは労働施策総合推進法、セクシュアルハラスメントと妊娠・出産等に関するハラスメントは男女雇用機会均等法、育児・介護休業等に関するハラスメントは育児介護休業法に基づき、事業主に雇用管理上の措置義務が課されています*1

パワーハラスメント防止措置は、大企業では令和2年6月1日から、中小企業でも令和4年4月1日から義務化されており*3、企業規模を問わずすべての事業主が対応済みであることが前提となる制度です。セクシュアルハラスメント・マタニティハラスメントの防止措置はこれに先立ち義務化されているため*1、新たに事業を開始する企業や組織再編を行う企業では、既存の措置が現行の体制に引き継がれているかを確認する視点が欠かせません。

厚生労働省の指針は、パワーハラスメントを「優越的な関係を背景とした言動であって、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、労働者の就業環境が害されるもの」と整理しています*2。この定義に該当するかどうかの一次的な判断は、社内の相談窓口や調査担当者が行うことになるため、判断基準を属人化させず、組織として一貫した運用ルールを持つ必要があります。

措置の対象となる労働者の範囲は、正社員に限られません。パートタイム労働者や有期契約労働者も雇用形態を問わず対象に含まれ、派遣労働者を受け入れる場合は派遣先にも同様の対応が求められる場面がある点に留意が必要です*1。多様な雇用形態が混在する企業ほど、相談窓口の周知が一部の従業員層に届かないという抜け漏れが起きやすく、周知の対象範囲そのものを定期的に点検する視点が求められます。

事業主が講ずべき4つの防止措置

厚生労働省は、事業主が雇用管理上講ずべき措置として、大きく4つの柱を示しています*1。第一に方針の明確化と周知・啓発、第二に相談体制の整備、第三に事実関係の迅速かつ正確な確認と適正な対処、第四に相談者・行為者のプライバシー保護と不利益取扱いの禁止です。以下の表に、それぞれの内容と実務上のポイントを整理しました。

図
図:ハラスメント防止措置の体制フロー(方針明確化・周知啓発→相談窓口の受付・記録→事実確認・調査→対応・是正とプライバシー保護)
措置の柱 内容 実務上のポイント
方針の明確化・周知啓発 事業主の方針を就業規則等に定め、管理・監督者を含む労働者に周知・啓発すること*1 研修の実施履歴や周知資料の配布記録が、義務履行の証跡になります
相談体制の整備 相談・苦情に応じ、適切に対応するために必要な体制を整備すること*1 窓口担当者を明確にし、プライバシーが確保できる相談環境を用意する必要があります*4
事実確認と迅速・適切な対応 事実関係を迅速かつ正確に確認し、被害者・行為者双方へ適正に対処、再発防止策を講じること*1 聴取内容・日時・対応経過を時系列で記録し、双方の言い分を公平に扱う体制が求められます
プライバシー保護・不利益取扱いの禁止 相談者・行為者等のプライバシーを保護し、相談を理由とする不利益取扱いの禁止を定め周知すること*1 記録へのアクセス権限を必要最小限の担当者に絞り込む設計が欠かせません

相談窓口は、社内窓口に加え、社外の弁護士や専門機関に委託する形も選択肢とされています*4。あかるい職場応援団は、相談担当者向けのチェックリストとして、相談者のプライバシーが確保できる部屋の準備や、公平な立場での対応を挙げています*4。窓口を複数用意する企業ほど、どの窓口で受け付けた相談も同じ基準で記録・対応できる仕組みが重要になります。

パワーハラスメント・セクシュアルハラスメント・妊娠出産等に関するハラスメントを別々の窓口で運用するのではなく、一元的に相談に応じられる体制を整備することが望ましいとされています*1。窓口ごとに担当者や記録様式が異なると、複数のハラスメントが絡み合う相談を受けた際に情報が分散し、事実確認の全体像を把握しづらくなります。この論点は、後述するシステム化の要件を検討するうえでも土台となる考え方です。

措置義務への対応に不備がある場合、当事者からの申立てを受けて都道府県労働局長が助言・指導・勧告を行う、あるいは紛争調整委員会による調停に移行する制度が設けられています*5。勧告に従わない事業主名が公表される可能性もある制度設計であるため、日頃からの記録整備は、こうした行政手続きへの対応場面でも意味を持つ取り組みと言えるでしょう。

相談・調査の記録管理と保存の考え方

相談を受け付けた際は、いつ・どこで・誰が・誰に対して・何を・どのように行ったかという5W1Hを軸に記録することが、事後の事実確認を円滑に進める基本とされています*4。記録すべき主な項目は、次のとおりです。

  • 相談者・行為者の氏名、所属、相談者との関係
  • 相談を受け付けた日時と担当者
  • 相談内容の詳細(発生日時・場所・具体的な言動)
  • 調査で確認した事実関係と関係者への聴取記録
  • 対応内容(行為者への措置、再発防止策、相談者へのフォロー)

これらの記録は、事実確認の正確性を担保するだけでなく、行政指導や訴訟に発展した場合に、事業主が措置義務を適切に履行していたことを示す資料としても位置づけられます。一方で、記録の保存期間について厚生労働省が一律の年数を示している公表資料は確認できませんでした。社内の文書管理規程や労働関係書類の保存実務に準じて期間を定め、公式情報での確認が必要な場合は所管の労働局へ問い合わせる運用が現実的でしょう。

調査を進める際は、相談者側の主張だけを記録するのではなく、行為者からの聴取内容や、周囲の第三者への確認結果もあわせて記録することが公平性の観点から欠かせません。事実確認が一方の言い分に偏ると、対応の妥当性そのものが後から問われかねないためです。あかるい職場応援団のチェックリストも、相談を受ける際は特定の立場に偏らない中立的な姿勢を保つことを求めています*4

記録を残す際は、プライバシー保護の観点から、紙のメモや個別のファイルによる管理では、閲覧権限の統制や検索性の面で限界が生じやすいという課題もあります。特に相談件数が増えるほど、誰がどの記録にアクセスできるかを個別に管理する負担は大きくなります。

多拠点・多部門で運用する難しさとシステム化の要件

拠点や部門が複数にまたがる企業では、相談窓口の運用に固有の難しさが生じます。本社と支店で相談の受付ルートが分かれていると、同一人物に関する複数の相談が別々に管理され、対応の重複や矛盾につながりやすいでしょう。また、対応の進捗が各拠点の担当者の記憶や個別のファイルに依存すると、異動や退職の際に引き継ぎが漏れるリスクも高まります。

こうした課題は、相談受付から対応完了までを一つの仕組みで管理することで軽減できます。システム化を検討する際に押さえておきたい要件は、次のとおりです。

  • 相談受付と記録の一元化:拠点・部門を問わず、相談内容と初期対応を同じ形式で記録・蓄積できること
  • 対応フローと進捗の可視化:事実確認・関係者聴取・対応決定・フォローアップという段階ごとの進捗を担当者間で共有できること
  • アクセス権限とプライバシー保護:記録を閲覧できる担当者を役割ごとに限定し、相談者・行為者双方の情報を必要最小限の範囲で共有できること
  • 研修受講管理:管理・監督者を含む周知・啓発研修の実施履歴を、拠点横断で記録・追跡できること
  • 証跡の保持:方針の周知記録や対応記録を、後日の確認に耐える形で一定期間保持できること

これらの要件は、勤怠管理システムや採用管理システムが担う打刻・応募者管理といった機能とは性質が異なり、機密性の高い相談内容を扱う前提で権限設計を組む必要がある点が特徴です。既存の人事システムに無理に機能を追加するより、目的に応じた仕組みを個別に検討したほうが、権限設計やログ管理をシンプルに保ちやすい場合もあります。

汎用的なグループウェアやスプレッドシートで代用しようとすると、アクセスログが残らない、検索性が低い、拠点ごとに運用ルールがばらつくといった問題が生じがちです。自社の拠点数・部門数・相談件数の見込みに応じて、どこまでを専用の仕組みで担うかを整理することが、体制整備の出発点になるでしょう。

権限設計やログ管理を伴う仕組みを社内の情報システム部門だけで一から構築しようとすると、要件定義から運用設計まで幅広い工程を抱えることになります。相談内容という機密性の高い情報を扱う以上、設計段階でのレビュー体制も必要になるため、複数の拠点を持つ企業の業務システムを手がけてきた専門ベンダーの知見を借りる選択肢も、あわせて検討する価値があるでしょう。

まとめ:体制整備と記録管理を両輪で進める

本稿では、ハラスメント防止措置義務の全体像と、事業主が講ずべき4つの措置、相談・調査の記録管理の考え方を、公式情報に基づいて整理しました。要点は次の3つに集約されます。第一に、パワハラ・セクハラ・マタハラの防止措置は根拠法こそ異なるものの、方針明確化・相談体制整備・事実確認・プライバシー保護という共通の枠組みで運用されており、中小企業もすでに義務化の対象です*1*3。第二に、相談・調査の記録は5W1Hを軸に残し、事後の事実確認と義務履行の証跡の両方に活用できるようにすることが求められます。第三に、多拠点・多部門で一貫した対応を行うには、受付・記録・進捗・権限管理を一つの仕組みでつなぐシステム化が有効な選択肢となります。

これらは一度整備して終わりではなく、組織変更や拠点の増減、担当者の異動に応じて継続的に見直す性質のものです。相談件数が少ない段階では手作業の運用でも回せていた企業であっても、拠点数や従業員数の増加にあわせて、記録の一元管理や権限設計を見直す時期はいずれ訪れます。自社の現状がどの段階にあるかを把握することが、次の一歩を検討する出発点になるでしょう。

LASSICに相談するメリット

LASSIC IT事業部は、元請(プライムベンダー)として業務システムの構築・運用を受託しています。相談受付と記録の一元管理、対応フローの進捗管理、拠点・部門ごとのアクセス権限設計、研修受講管理まで、貴社の相談窓口体制の要件を踏まえたシステム構築を支援できる体制を整えています。自社の運用に合わせた仕組みづくりに関心がある企業様は、まずは現状の相談窓口体制の棚卸しからご相談ください。

よくある質問

ハラスメント防止措置は中小企業にも義務がありますか。

はい。パワーハラスメント防止措置は、大企業が令和2年6月1日から、中小企業も令和4年4月1日からすべて義務化されています*3。セクシュアルハラスメント・マタニティハラスメントの防止措置は、企業規模を問わずこれに先立ち義務化されています*1

相談窓口はどのような体制を整える必要がありますか。

相談に適切に対応できる体制の整備が求められ、担当者を明確にし、相談者のプライバシーが確保できる環境を用意することが基本です*1*4。社内窓口に加え、社外の専門機関へ委託する形も選択肢とされています*4

相談・調査の記録はどのように残せばよいですか。

いつ・どこで・誰が・誰に対して・何を・どのように行ったかという5W1Hを軸に、相談内容・調査経過・対応内容を記録することが基本とされています*4。保存期間の一律の目安は公表資料で確認できないため、自社の文書管理規程に沿って定めることが現実的です。

相談したことを理由に不利益な取扱いを受けることはありますか。

事業主には、相談したことを理由とする不利益な取扱いを行わない旨を定め、労働者に周知・啓発することが義務として求められています*1。相談者・行為者双方のプライバシー保護も、あわせて講ずべき措置に含まれます*1

著者:テレリモ総研編集部 鈴木 亮佑


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  1. *1 出典:厚生労働省「職場におけるハラスメントの防止のために」(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/seisaku06/index.html
  2. *2 出典:厚生労働省「事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」(令和2年厚生労働省告示第5号)(https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000605661.pdf
  3. *3 出典:厚生労働省「職場におけるパワーハラスメント対策が令和2年6月1日から大企業の義務になります」(https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000595059.pdf
  4. *4 出典:あかるい職場応援団「相談窓口のご案内」(https://www.no-harassment.mhlw.go.jp/inquiry-counter/
  5. *5 出典:e-Gov法令検索「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」(https://laws.e-gov.go.jp/law/341AC0000000132


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