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2026.08.27 らしくコラム

EU修理する権利の対応手順と記録の設計




監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)

この記事の結論

  • 2026年7月31日から適用:国内法化も適用もこの日からで、それより前に買われた製品にも修理義務が及びます*1。
  • 義務は二本立て:法定保証の内側は12か月の延長、外側は附属書IIの製品への修理義務です*1。
  • システムの勘どころ:受付の記録に「修理を選んだ事実」を残せるか。延長の起算がここに掛かります。

※ 本記事は2026年8月時点の公式情報(省庁・公的機関・ベンダー公式ドキュメント)に基づきます。

壊れたら買い替える、という前提が制度の側から動かされています。EUの「修理する権利」の指令(指令(EU) 2024/1799)は2024年6月13日に採択され、加盟国の国内法化も適用も2026年7月31日からです*1*2。規則(EU) 2017/2394と、指令(EU) 2019/771および(EU) 2020/1828を改正する形をとります*1。

内容は二本立てです。法定保証の内側では、消費者が交換ではなく修理を選んだ場合に法定保証が12か月延長されます*1。法定保証の外側では、修理可能性要件の対象となる製品の製造者が、合理的な期間内に合理的な価格で修理する義務を負います*1。

本記事は、EU向けに製品を出す企業の情報システム担当と、修理受付や保証管理の仕組みを受託する立場に向けて、何が義務になり、どの記録が要るのかを整理します。制度の解釈が必要な部分は、公式資料と現地の専門家への確認を経て進めてください。

作業場の工具ラックに、プライヤーやレンチなどの手工具が整理して差し込まれている様子

二本立ての義務と、適用の起点

まず全体像です。義務の主体が二つに分かれる点が、この指令の骨格になります*1。

EUの修理する権利の指令(EU) 2024/1799が2026年7月31日から国内法化・適用され、法定保証の内側では消費者が交換ではなく修理を選ぶと法定保証が12か月延長され販売者に説明義務が生じること、法定保証の外側では附属書IIに挙がる製品について製造者が合理的な期間内に合理的な価格で修理する義務を負い、その義務が続く長さは実際には5年から10年程度であること、そして仕組みとして2028年1月に稼働予定の欧州オンライン修理プラットフォームと、提示すると条件が30日間有効になる任意・無償の欧州修理情報フォームが用意されることを整理した図

適用の起点は明快です。加盟国は指令を国内法へ移し、2026年7月31日からその規定を適用します*1。そしてその日から、製造者は適用日より前に買われた製品についても、対象となる製品を修理する義務を負います*1。ただし修理義務が及ぶのは、その製品が修理可能性要件、とくに附属書IIに挙げられた法的措置に従って予備部品を提供する義務の対象である間に限られます*1。

製造者は、修理義務についての情報を、その適用期間を含めて公表しなければならないとされています*1。加えて、修理サービスに関する情報を容易にアクセスできる形で提供する必要があり、たとえば自社のウェブサイトや取扱説明書でこれを行うことが考えられます*1。典型的な修理について請求される目安の価格を、無償でアクセスできるウェブサイトで消費者に知らせることも求められます*1。

範囲の限定も押さえておきます。修理義務が適用されるのは消費者向けの製品、つまり自然人が業務以外の目的で取得した製品に限られ、事業者間の取引には適用されません*1。一方で、EU域外の企業も対象です。製造者がEU域外にある場合、その授権代理人、輸入者、そして最後の手段として当該製品の販売者が修理義務を履行することになります*1。

法定保証の外側——附属書IIの製品と、拒めない理由

製造者側の義務は、対象製品のリストに紐づいています*1。

表1:修理義務の対象として挙げられている製品(附属書II・Q&A時点)
区分 製品
白物家電 洗濯機、洗濯乾燥機、冷蔵庫、食器洗い機、乾燥機、掃除機
映像・情報機器 テレビ、スマートフォン、タブレット、コードレス電話、サーバーおよびデータストレージ製品
その他 溶接機器、軽輸送手段用バッテリーを組み込んだ製品

このリストは固定ではありません。附属書IIは、新しい製品について修理可能性要件が確立されるたび、とくにエコデザイン規則(ESPR)の枠組みで、毎年更新されるとされています*1。修理可能性要件とは、製品をEU市場で販売するために満たすべき技術的要件で、実務上は予備部品の入手可能性、分解、ソフトウェアとファームウェアの更新に関わるものです*1。

義務が続く長さも、製品ごとに違います。修理義務の期間は、その製品に適用される修理可能性要件に従って製造者が予備部品を入手可能にしなければならない期間に依存し、実際には製品と部品に応じて5年から10年になるとされています*1。修理義務は、消費者がその製品を買った時点から始まります*1。

価格については「合理的」という基準が置かれました。合理的な価格とは、法外でない価格、つまり消費者が修理義務の利益を受けることを思いとどまらせない価格と理解すべきものとされ、製造者は製品の価値も考慮しつつ、修理サービスと予備部品の価格を個別に決めるべきだと説明されています*1。輸送費によって修理の総費用が上がり得ることにも触れられています*1。

実務で重いのが、拒否できる範囲の狭さです。製造者は修理が不可能な場合には拒めますが、予備部品の費用のような純粋に経済的な理由で不可能を主張することはできません*1。さらに、過去に他の修理業者や消費者自身が修理を行ったという理由だけで、修理が不可能だと主張することもできないとされました*1。附属書IIの法的措置により製造者が入手可能にしなければならない部品に欠陥が関わる場合、独立系の修理業者が以前に修理していたとしても、修理を拒めません*1。

「社外で開けられた形跡があるから断る」が通らないということです。修理受付の判定ロジックに開封痕や過去の修理履歴を組み込んでいる場合、その扱いを見直す必要が出てきます。保証と修理の管理で扱う判定の条件が、そのまま論点になります。

法定保証の内側——修理を選ぶと12か月延びる

販売者側に重くのしかかるのがこちらです*1。

この指令は物品売買指令を改正し、消費者が欠陥品を交換する代わりに修理を選んだ場合に、法定保証がもう1年延びるという新しい権利を与えます*1。あわせて販売者は、修理と交換のどちらを選ぶかという権利と、修理を選んだ場合の法定保証の延長について、消費者に情報を提供する義務を負います*1。

適用の範囲には条件があります。法定保証の延長が適用されるのは、2026年7月31日以降に買われた商品に限られます*1。加盟国は国内法化にあたって、より長い延長期間を導入することもできます。法定保証の期間が固定されていない国や、消滅時効のみが適用される国では、修理の場合に販売者は少なくとも3年間責任を負うこととされました*1。

延長の効き方も定められています。1年の延長は製品全体に適用され、延長期間中、消費者は当初の引渡し時点で存在していたあらゆる欠陥について修理または交換を求める権利を持ちます*1。ただしこの延長は、法定保証の下で複数回修理された場合でも一度だけです*1。各国の法律が、交換された部品にのみ追加の保証期間を設けるといった、より手厚い権利を維持・導入することは妨げられません*1。

立証責任の位置も押さえておきます。法定保証の下で販売者が責任を負うのは引渡し時点で存在していた欠陥です。最初の1年は欠陥が引渡し時点で存在していたと推定されますが、2年目と修理後の延長期間中は、販売者が消費者に対して、欠陥が引渡し時点で存在していたことの証明を求めることができます*1。国によっては、この推定が2年間適用されます*1。

ここがシステムに直結します。「いつ買われたか」「修理を選んだか」「その修理はいつか」の三つを、購入から数年後に引ける形で持てているか。延長の起算も、立証責任の切り替わりも、この記録に掛かります。ECサイトの運用で扱う注文データと、修理受付のデータが別々だと、この照合が手作業になります。

欧州オンライン修理プラットフォーム

消費者が修理業者を見つけやすくするための仕組みが用意されます*1*2。

欧州オンライン修理プラットフォームは、消費者が修理業者を探しやすくするために設けられるものです*1。インフラの整備は欧州委員会が担い、修理業者の登録の管理は各加盟国が担当します*2。稼働は2028年1月が予定されています*2。

登録の対象は修理業者だけではありません。各国のセクションについては、修理業者に加えて、再生(リファービッシュ)された商品の販売者、再生のために欠陥品を購入する者、地域主導の修理イニシアチブなども登録の対象になり得ます。加盟国は、EU法に従って、自国セクションへの登録のアクセスに関する条件を定めることができ、その条件には各国の連絡窓口による事前承認や、職業資格の要件が含まれ得るとされています*1。

受託の観点では、二つの見方ができます。一つは、自社の修理拠点や提携先をこのプラットフォームへ載せる手続きが増えること。もう一つは、消費者の入口が自社サイトの外にも生まれることです。プラットフォーム経由の問い合わせを、自社の受付とどう合流させるかを決めておかないと、二つの窓口が並走します。修理工場の業務システムで扱うような、受付の入口を束ねる設計が土台になります。

欧州修理情報フォーム——出したら30日間有効

見積の扱いを変えるのが、この標準フォームです*1。

欧州修理情報フォームは、修理業者が修理に関する関連情報を透明で標準的な方法で提供できるようにし、消費者が複数の修理サービスの申出を比べやすくするためのものです*1。修理業者がこのフォームを消費者に提供した場合、価格を含む修理の申出の詳細は30日間有効になります*1。これにより消費者は、他の修理業者を探して良い申出を選ぶだけの時間を得られます*1。そして消費者が申出を受け入れれば、原則として修理業者はそのサービスを履行する義務を負います*1。

費用の扱いも定められています。修理業者がフォームを提供することを選んだ場合、そのフォームは無償で提供しなければなりません*1。ただし、欠陥の性質や修理の方法が特定の診断なしには判断できない場合には、診断サービスに必要な費用の支払いを消費者に求めることができ、消費者が修理に進む場合には最終的にその費用を修理代金から差し引くこともできます*1。他の消費者向けサービスと同様に、修理業者は診断サービスの価格を事前に消費者へ知らせ、消費者が情報を得たうえで判断できるようにする必要があります*1。

強制ではない点も明確です。フォームの提供はすべての修理業者にとって任意であり、フォームを提供する意図がなくてもプラットフォームに登録できるとされています*1。

システムに落とすと、見積が「参考価格」から「期限つきの申出」に変わるという設計変更になります。発行日、有効期限、提示した条件の内容、受諾の記録。これらを持てていないと、30日間の有効性と履行義務を運用できません。製品情報の管理で扱う部品と価格のデータが、この見積の裏付けになります。

受託・システム側で押さえる要点

着手の順序を挙げます。適用はすでに始まっているため、記録の側から手を付けるのが現実的です。

第一に、購入日と修理の選択を紐づけて持つことです。法定保証の12か月延長は、消費者が交換ではなく修理を選んだことを起点にします*1。注文データと修理受付データが別管理だと、延長の対象かどうかを判定できません。

第二に、修理履歴を拒否の理由にしない前提で作ることです。過去に他の修理業者や消費者が修理したことを理由に、修理を拒むことはできません*1。受付の判定に開封痕や履歴を使っている場合は、扱いを見直します。

第三に、見積に有効期限と受諾の記録を持たせることです。欧州修理情報フォームを提供する場合、条件は30日間有効になり、受諾されれば履行義務が生じます*1。発行・提示・受諾の各時点を記録できる形にしておきます。

第四に、部品の提供期間を製品ごとに持つことです。修理義務が続く期間は、予備部品を入手可能にする期間に依存し、製品と部品によって5年から10年と幅があります*1。製品マスタにこの期間がないと、いつまで義務が続くかを引けません。

受託で進める場合の要点も挙げておきます。

公表する情報の置き場所を決めることです。修理義務とその適用期間、修理サービスの情報、典型的な修理の目安価格。これらは公表や無償でのアクセスが求められます*1。商品ページの一部として持つのか、別のページにするのかで、更新の運用が変わります。

制度解釈の担い手を決めることです。修理が不可能かどうかの判断は、最終的には各国の当局と裁判所に委ねられるとされています*1。開発側が判定ロジックを作り込むより、判定の結果を受け取る作りのほうが安全側でしょう。

他のEU規制と土台を共有することです。消費者エンパワーメント指令では、販売時点で耐久性や修理可能性の情報を示すことが求められます。玩具の規則包装規則と同じく、製品データを構造化して持てているかが分かれ目になります。

体制としては、修理の実務とEUの消費者法の両方を追える要員が入れるかが分かれ目です。法定保証と修理義務の切り分け、予備部品の提供期間、見積の拘束力。これらは仕様書の項目名だけを見ていても判断できません。越境ECの実務で扱う仕向地ごとの運用と合わせて、どこまでを共通化するかを早めに決めておきたいところです。

まとめ:修理する権利で押さえる3つの視点

EUの修理する権利の指令(指令(EU) 2024/1799)は2024年6月13日に採択され、加盟国の国内法化も適用も2026年7月31日からです。押さえたい視点は三つあります。第一に、義務が二本立てであること。法定保証の内側では、消費者が交換ではなく修理を選ぶと法定保証が12か月延長され、販売者はその選択権と延長について説明する義務を負います。この延長は2026年7月31日以降に買われた商品に適用され、製品全体に対して一度だけです。法定保証の外側では、附属書IIに挙がる製品の製造者が、合理的な期間内に合理的な価格で修理する義務を負います。第二に、拒否できる範囲が狭いこと。予備部品の費用のような純粋に経済的な理由で修理が不可能だとは主張できず、過去に他の修理業者や消費者が修理したことを理由に拒むこともできません。第三に、仕組みが用意されること。欧州オンライン修理プラットフォームは2028年1月の稼働が予定され、任意・無償の欧州修理情報フォームを提供すると、価格を含む条件が30日間有効になり、受諾されれば原則として履行義務が生じます。システム側の備えとしては、購入日と修理の選択を紐づけて持つこと、修理履歴を拒否の理由にしない前提で作ること、見積に有効期限と受諾の記録を持たせることの三つから着手するのが堅実でしょう。

LASSICに相談するメリット

LASSIC IT事業部は、元請(プライムベンダー)として、修理受付や保証、部品の在庫を扱う業務システムの開発と改修を受託しています。注文データと修理履歴を紐づける台帳、見積に有効期限と受諾を持たせる構造、製品ごとに部品の提供期間を持つマスタ、外部の窓口からの問い合わせを自社の受付へ合流させる連携まで、制度が動く前提の案件に耐える形をご提案できるのが強みです。

よくある質問

修理する権利の指令はいつから適用されますか。

指令(EU) 2024/1799は2024年6月13日に採択され、加盟国は国内法化のうえ2026年7月31日からその規定を適用します。その日から、製造者は適用日より前に買われた製品についても対象製品を修理する義務を負います。ただし修理義務が及ぶのは、その製品が修理可能性要件、とくに予備部品を提供する義務の対象である間に限られます。

どの製品が修理義務の対象ですか。

指令の附属書IIに挙げられた製品です。Q&Aの時点では、洗濯機、洗濯乾燥機、冷蔵庫、食器洗い機、テレビ、掃除機、乾燥機、溶接機器、スマートフォン、タブレット、コードレス電話、サーバーおよびデータストレージ製品、軽輸送手段用バッテリーを組み込んだ製品が挙げられています。このリストは、新しい製品に修理可能性要件が確立されるたび毎年更新されるとされています。

修理を断れるのはどんな場合ですか。

修理が不可能な場合ですが、その範囲は狭く解されています。予備部品の費用のような純粋に経済的な理由で不可能を主張することはできません。また、過去に他の修理業者や消費者自身が修理を行ったという理由だけで不可能だと主張することもできない点に注意が必要です。不可能かどうかの判断は、争いになった場合は各国の当局と裁判所に委ねられます。

法定保証の12か月延長はどう効きますか。

消費者が交換ではなく修理を選んだ場合に、法定保証がもう1年延びます。延長は製品全体に適用され、その期間中は当初の引渡し時点で存在していたあらゆる欠陥について修理または交換を求められます。ただし複数回修理された場合でも延長は一度だけで、対象は2026年7月31日以降に買われた商品です。2年目と延長期間中は、販売者が消費者に欠陥の存在の証明を求めることができます。

欧州修理情報フォームは出す必要がありますか。

提供は任意です。ただし提供する場合は無償でなければならず、価格を含む修理の申出の詳細が30日間有効になります。消費者が申出を受け入れれば、原則として修理業者はそのサービスを履行する義務を負います。欠陥の性質や修理方法が特定の診断なしに判断できない場合は、事前に価格を知らせたうえで診断費用を請求でき、修理に進む場合は修理代金から差し引くこともできます。

修理受付と保証管理の仕組みづくりはLASSICへ

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出典

  1. *1 参考:欧州委員会「Questions & Answers」(Directive (EU) 2024/1799、2024年7月30日)(https://commission.europa.eu/document/download/2d443b31-dc2a-4e54-a9ec-5fbb61c895e9_en?filename=2024_07_18_QA_Right2repair_FINAL.pdf)。適用開始日と遡及の範囲、附属書IIの対象製品と毎年の更新、修理義務の期間と合理的な価格、修理不可能の解釈、B2Bの除外とEU域外製造者の扱い、法定保証の12か月延長と立証責任、欧州オンライン修理プラットフォームの登録条件、欧州修理情報フォームの30日間の有効性と無償提供の一次情報として(2026年8月確認)
  2. *2 参考:欧州委員会「Directive on repair of goods」(消費者保護法)(https://commission.europa.eu/law/law-topic/consumer-protection-law/directive-repair-goods_en)。指令の採択日2024年6月13日、国内法化期限と適用開始が2026年7月31日であること、欧州オンライン修理プラットフォームの稼働が2028年1月に予定されていること、修理情報フォームの条件が30日間有効であることの確認として(2026年8月確認)
  3. *3 参考:欧州委員会「Right to repair: New consumer rights for easy and attractive repairs」(2026年7月31日)(https://commission.europa.eu/news-and-media/news/right-repair-new-consumer-rights-easy-and-attractive-repairs-2026-07-31_en)。2026年7月31日から新しいルールが実施されること、合理的な期間・合理的な価格での修理、法定保証の12か月以上の延長、修理サービス情報と予備部品へのアクセスの確認として(2026年8月確認)




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