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2026.08.27 らしくコラム

カリフォルニアAB2013、訓練データ開示の12項目




監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)

この記事の結論

  • 期限は2026年1月1日:2022年1月1日以後に公開されたものが対象に入ります*1。
  • 掲示するのは12項目:出所、件数、著作権の有無、個人情報の有無、加工の有無などです*1。
  • ファインチューニングも対象:機能や性能を実質的に変える更新は、そのつど掲示が要ります*1。

※ 本記事は2026年8月時点の公式情報(省庁・公的機関・ベンダー公式ドキュメント)に基づきます。

生成AIの訓練データについて、何を使ったかを自社サイトに書けと定めた法律があります。カリフォルニア州のAB2013、民法典に新設された第15.2編「人工知能の訓練データの透明性」です*1。

この法律は2024年9月28日に知事の承認を得て、2024年法律第817章となりました*2。掲示の期限は2026年1月1日で、2022年1月1日以後に公開されたものが対象に入ります*1。

本記事では、生成AIを組み込んだ製品を出している企業と、そうした開発を受託する立場に向けて、誰が対象になり、何を書くことになるのかを整理します。個別の適用は事情によりますので、法務の確認を経て進めてください。

書籍や書類が並ぶ木製の棚

「開発者」は思ったより広い

まず定義から見ます*1。

カリフォルニア州AB2013が民法典に新設した第15.2編第3111条により、2026年1月1日までに、2022年1月1日以後に公開された生成AIのシステムやサービスとその実質的な改変について、訓練データに関する文書を開発者のウェブサイトに掲示することが求められること、掲示する12項目がデータセットの出所や所有者・意図した目的にどう資するか・データポイント数・データポイントの種類・著作権や商標や特許で保護されたデータを含むかまたは全部が公有か・購入かライセンスか・個人情報を含むか・集約消費者情報を含むか・クリーニングや加工をしたかとその目的・収集した期間・開発で最初に使った日・合成データ生成を使ったかであること、セキュリティと完全性の確保のみを目的とするもの、国内空域での航空機の運航のみを目的とするもの、連邦機関にのみ提供される安全保障や軍事や防衛用途は掲示が不要であることを整理した図

第3110条(b)は開発者(developer)を、公衆の構成員による利用に供するAIのシステムまたはサービスを設計、コード化、製作、または実質的に改変する個人、組合、州もしくは地方の政府機関、または法人としています*1。

ここで見落とされやすいのが「実質的に改変する」です*1。第3110条(d)は、実質的な改変を、生成AIのシステムまたはサービスの機能または性能を実質的に変える新バージョン、新リリースその他の更新とし、再訓練やファインチューニングの結果を含むとしています*1。

つまり、既製のモデルをファインチューニングして公衆向けに出しているなら、この定義に当たりうるということです*1。ゼロから訓練していなくても外れません*1。

「訓練する」の意味も条文にあります*1。第3110条(f)は、生成AIのシステムまたはサービスを訓練することに、開発者によるテスト、検証、ファインチューニングが含まれるとしています*1。

生成AIは、訓練データの構造と特性を模した派生的な合成コンテンツ(テキスト、画像、動画、音声など)を生成できるAIとされています*1。

なお「公衆の構成員」には、第1799.1a条(c)(1)(A)に定義する関連会社と、病院の医療スタッフは含まれないとされています*1。社内向けやグループ内向けの仕組みは、この定義の外に置かれる余地があります*1。

境界の判断は、実務では思ったより悩ましくなります。プロンプトの工夫やシステムプロンプトの調整は、モデルそのものを変えていません。一方、社内データでファインチューニングしたモデルを製品に載せているなら、条文の言う実質的な改変に近づきます*1。RAGのように外部の知識を検索して渡す構成は、モデルの重みを変えていない点で前者に近い性質を持ちます。ただし条文はRAGを名指ししていませんので、構成の実態に照らして個別に判断することになります。

もう一つ、公開の単位にも注意が要ります*1。条文は「システムまたはサービス」を単位としています*1。同じモデルを複数の製品に載せているなら、製品ごとに掲示が要るのか、モデル単位でまとめてよいのか。この整理を先にしておかないと、リリースのたびに判断が揺れます。

自社が既製モデルをそのまま呼び出しているだけなのか、手を入れて出しているのか。この切り分けが最初の分かれ目になります。LLMのファインチューニングで扱う作業に手を出した時点で、掲示の要否が変わりうると考えておくのが安全側です。

掲示する12項目

第3111条が本体です*1。2026年1月1日までに、そして2022年1月1日以後に公開された生成AIのシステムもしくはサービス、またはその実質的な改変が、カリフォルニア州民の利用に供されるつど、その前に、開発者は自らのウェブサイトに訓練データに関する文書を掲示することとされています*1。利用の条件に対価が含まれるかどうかは問わないとされています*1。

掲示するのは、開発に用いたデータセットの高水準の要約で、次を含むとされています(これらに限られないとも書かれています)*1。

表1:第3111条(a)が挙げる項目
書く内容 実務での詰まりどころ
(1) データセットの出所または所有者 再委託先が集めた分の把握
(2) そのデータセットが、システムまたはサービスの意図した目的にどう資するかの説明 目的の文言を揃えること
(3) データセットに含まれるデータポイントの数(おおまかな範囲でよく、動的なデータセットは推計値でよい) 動的な取り込みの計上
(4) データポイントの種類の説明(ラベル付きなら用いたラベルの種類、ラベルなしなら一般的な特性) ラベル体系の言語化
(5) 著作権、商標、特許で保護されたデータを含むか、または全部が公有(パブリックドメイン)か スクレイピング分の判定
(6) データセットを開発者が購入またはライセンスしたものか 契約書の棚卸し
(7) 個人情報(第1798.140条(v)の定義による)を含むか CCPAの定義との突合
(8) 集約消費者情報(第1798.140条(b)の定義による)を含むか 同上
(9) 開発者によるクリーニング、処理その他の加工があったか。あった場合、その意図した目的 前処理スクリプトの記録
(10) データが収集された期間。収集が継続中であればその旨の告知 継続収集の明示
(11) そのデータセットを開発の過程で最初に使用した日 過去分の遡及調査
(12) 開発で合成データ生成を用いたか、または継続的に用いているか 合成データの位置づけ

(12)については、システムまたはサービスの意図した目的との関係で、合成データの機能的な必要性や望ましい目的の説明を加えてもよいとされています*1。

合成データ生成は、シードデータを用いて、そのシードデータの統計的特性の一部を持つ人工的なデータを作り出すプロセスと定義されています*1。

項目の性格を見ると、三つの層に分かれています。調達の層が(1)(5)(6)、中身の層が(3)(4)(7)(8)(12)、加工と時間の層が(2)(9)(10)(11)です。担当部署がそれぞれ違うのが普通で、ここが集約の難所になります。

「高水準の要約(high-level summary)」という言い回しも読みどころです*1。条文はデータの逐一の開示までは求めておらず、要約でよいとしています*1。ただし(3)は件数を、(11)は最初に使用した日を求めており、要約とはいえ数字と日付は避けられません*1。どこまで丸めてよいかは、(3)が「おおまかな範囲でよい」「動的なデータセットは推計値でよい」と明示している一方、(11)には同様の緩和が置かれていない点が手がかりになります*1。

この12項目を眺めると、条文が求めているのはデータセット単位の台帳だと分かります。どこから来て、いつ入れて、何が入っていて、どう加工したか。訓練を回した後にまとめて書こうとすると、(11)の「最初に使用した日」あたりで手が止まりがちです。

掲示が要らない三つの場合

第3111条(b)が除外を挙げています*1。三つだけです*1。

第一に、セキュリティと完全性(security and integrity)の確保のみを目的とする生成AIのシステムまたはサービスです*1。この用語は第1798.140条(ac)の定義によるとされ、ただし事業者(同条(d)の定義)に限らず、あらゆる開発者または利用者に適用される形で読むとされています*1。

第二に、国内空域における航空機の運航のみを目的とするものです*1。

第三に、国家安全保障、軍事、または防衛の目的で開発され、連邦の機関にのみ提供されるものです*1。

除外はこれだけです*1。規模による免除も、売上による線引きもありません*1。同じカリフォルニア州のSB53が演算量と収入で線を引いているのとは対照的です*1。

つまり、小規模な事業者であっても、生成AIのシステムやサービスを州民向けに公開しているなら掲示の対象になりうるという読み方になります*1。

この設計は、法律の狙いをよく表しています。SB53が「破滅的リスクを生みうる巨大なモデル」を対象にしているのに対し、AB2013は訓練データの由来という一点を、公開しているすべての生成AIについて問うています*1。守るべき利益が違うので、線の引き方も違うわけです。

実務への含意もはっきりしています。「うちは大手ではないから関係ない」という整理が取れません*1。社内データで小さなモデルを作り、それを顧客向けの機能として出しているような構成も、公衆の利用に供している以上は検討の対象に入ってきます*1。

「セキュリティと完全性のみ」という除外は、範囲が狭いことに注意が必要です*1。唯一の目的であることが条件なので、セキュリティ用途と業務用途を兼ねている仕組みは、この除外には乗りません*1。

12項目を書けるようにする作業

掲示そのものは文書を1枚置くだけですが、そこに書く中身を集める作業が本体です。順序をつけます。

第一に、対象の判定です。自社は開発者に当たるか*1。ファインチューニングや再訓練をしているなら、当たる可能性を前提に進めるのが現実的です*1。逆に、既製モデルをそのまま呼び出しているだけなら、この法律の名宛人ではありません*1。

第二に、データセットの棚卸しです。12項目のうち、(1)(5)(6)(7)(8)は調達と契約の話です*1。どこから買ったか、ライセンス条件は何か、個人情報が混ざっていないか。ここは法務と一緒に進める領域になります。

第三に、取り込みの記録です。(3)(10)(11)はいつ・どれだけの話です*1。継続的に取り込んでいるデータについては、収集が継続中である旨を告知することとされています*1。取り込みのログが残っていないと、後から作れません。

第四に、前処理の記録です。(9)はクリーニングや加工と、その意図した目的を求めています*1。スクリプトが残っていても、なぜそう加工したのかが残っていないことがよくあります。

第五に、更新の運用です。実質的な改変のつど、公開の前に掲示することとされています*1。リリースのたびに文書を更新する手順を、リリースフローに組み込んでおくことです*1。

台帳の設計についても、実務的な勘どころがあります。データセットの粒度をどう切るかです。ファイル単位で切ると数が爆発し、大きくまとめすぎると(4)の「データポイントの種類」が書けなくなります。取得元と取得時期が同じものを一つの単位とする切り方が、12項目と対応が取りやすい傾向にあります。

「不明」をどう扱うかも決めておく必要があります。過去に取り込んだデータについて、出所が辿れないものが出てくるのは珍しくありません。条文は(3)や(10)について概数や推計を認める書き方をしていますが*1、出所そのものが不明である場合の扱いは書かれていません*1。実務としては、不明であることを不明と書ける形にしておくか、そのデータセットを訓練から外すかの二択になります。この判断は法務と一緒に決める性質のものです。

受託で進める場合の要点も挙げます。

データセット台帳を成果物に含めることです。12項目に対応する欄を最初から持った台帳を作り、データを入れるたびに埋める。これが結局いちばん早い進め方です。後から掘り起こすと、(11)の日付は推定になってしまいます*1。

スクレイピング分の扱いを先に決めることです。(5)は著作権・商標・特許で保護されたデータを含むかを問うています*1。ウェブから集めた分について「含まない」と書ける根拠があるのか。この判断は、集めてからでは遅くなります。

掲示文書をリリース成果物として扱うことです。公開の前に掲示することとされている以上、リリース判定のチェック項目に入れておく必要があります*1。リリース戦略の設計に組み込む形が自然です。

掲示の場所を決めておくことです。条文は「開発者のインターネットウェブサイト」に掲示するとしています*1。製品ページに置くのか、法務ページの下に置くのか。探して見つかる場所であることが実質的な要件になります。掲示先URLを社内で一つに決めておくと、リリースごとの迷いがなくなります。

他の法域と項目を突き合わせることです。EU AI規則への対応も訓練データの要約の公開を扱います。求められる粒度は違いますが、集める元データは重なります。別々に集めると二度手間になります。全体像は米国のAI規制で扱っています。

掲示の変更履歴を残すことです。条文は改変のつど掲示することを求めていますが*1、過去にどう掲示していたかを保持せよとは書いていません*1。それでも、後から「その時点で何を掲示していたか」を示せる形にしておくほうが、説明の場では強くなります。掲示ページを版管理下に置くのが簡単な方法です。

体制としては、データを集めた人と、契約を結んだ人と、前処理を書いた人が同じ場に集まれるかが分かれ目になります。12項目のうち、一人で全部答えられる項目はほとんどありません。関係者を横断して聞き取れる進め方ができる委託先かどうかを、選定の観点に入れておくとよいでしょう。

まとめ:AB2013で押さえる3つの視点

カリフォルニア州のAB2013は2024年9月28日に知事の承認を得て2024年法律第817章となり、民法典に第15.2編「人工知能の訓練データの透明性」を新設しました。押さえたい視点は三つです。第一に、対象が広いこと。公衆の利用に供するAIのシステムやサービスを設計・コード化・製作・実質的に改変する者が開発者とされ、実質的な改変には再訓練やファインチューニングの結果が含まれます。規模や売上による免除はなく、除外はセキュリティと完全性の確保のみを目的とするもの、国内空域での航空機の運航のみを目的とするもの、連邦機関にのみ提供される安全保障・軍事・防衛用途の三つだけです。第二に、期限と遡及。2026年1月1日までに、そして2022年1月1日以後に公開されたシステムやサービス、その実質的な改変が州民の利用に供されるつど、その前にウェブサイトへ文書を掲示することとされています。対価の有無は問いません。第三に、書く中身が台帳であること。データセットの出所や所有者、意図した目的への寄与、データポイントの数と種類、著作権等で保護されたデータの有無、購入かライセンスか、個人情報や集約消費者情報の有無、加工の有無とその目的、収集期間、最初に使用した日、合成データ生成の利用。この12項目は、訓練を回した後からでは埋めきれません。データを入れるたびに埋める台帳を先に用意するのが現実的です。

LASSICに相談するメリット

LASSIC IT事業部は、元請(プライムベンダー)として、生成AIを組み込んだ業務システムの開発と改修を受託しています。データセット台帳の設計、取り込みと前処理の記録づくり、掲示文書をリリース判定に組み込む運用設計、そして複数の法域にまたがる項目の共通化まで、条文が求める記録を実装と運用に落とせるのが強みです。

よくある質問

AB2013はいつまでに何をするのですか。

民法典第3111条は、2026年1月1日までに、そしてその後も、2022年1月1日以後に公開された生成AIのシステムもしくはサービス、またはその実質的な改変がカリフォルニア州民の利用に供されるつど、その前に、開発者が自らのウェブサイトに訓練データに関する文書を掲示することとしています。利用の条件に対価が含まれるかどうかは問いません。

既製のモデルを使っているだけでも対象になりますか。

第3110条(b)の開発者は、公衆の利用に供するAIのシステムまたはサービスを設計・コード化・製作・実質的に改変する者とされています。既製のモデルをそのまま呼び出しているだけであれば、この定義には当たりません。ただし第3110条(d)は、実質的な改変に再訓練やファインチューニングの結果を含むとしているため、手を入れて公開している場合は対象になりえます。

小規模な事業者でも対象ですか。

第3111条(b)が挙げる除外は三つだけで、規模や売上による免除は置かれていません。除外は、セキュリティと完全性の確保のみを目的とするもの、国内空域における航空機の運航のみを目的とするもの、国家安全保障・軍事・防衛の目的で開発され連邦機関にのみ提供されるものです。

データポイントの数は正確に書く必要がありますか。

第3111条(a)(3)は、データセットに含まれるデータポイントの数について、おおまかな範囲で示してよいとし、動的なデータセットについては推計値でよいとしています。ただし、第(10)項は収集が継続中であればその旨を告知することを求めています。

社内利用のシステムも対象になりますか。

第3110条(b)は「公衆の構成員による利用」を前提としており、この「公衆の構成員」には第1799.1a条(c)(1)(A)に定義する関連会社と病院の医療スタッフは含まれないとしています。社内やグループ内でのみ使う仕組みは、この定義の外に置かれる余地があります。実際の当てはめは提供の形態によりますので、個別の確認が要ります。

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出典

  1. *1 参考:California Legislative Information「AB-2013 Generative artificial intelligence: training data transparency.(2023-2024、09/28/24 Chaptered版)」(https://leginfo.legislature.ca.gov/faces/billTextClient.xhtml?bill_id=202320240AB2013)。民法典第15.2編の新設、第3110条(人工知能、開発者、生成AI、実質的な改変とそこに再訓練やファインチューニングの結果が含まれる旨、合成データ生成、訓練することにテスト・検証・ファインチューニングが含まれる旨、公衆の構成員から関連会社と病院の医療スタッフを除く旨)、第3111条(a)(2026年1月1日までという期限、2022年1月1日以後に公開されたものが対象である旨、公開のつど公開前に掲示する旨、対価の有無を問わない旨、掲示する12項目=出所または所有者、意図した目的への寄与、データポイント数と概数・推計の許容、データポイントの種類とラベル有無による読み分け、著作権・商標・特許で保護されたデータの有無または全部が公有か、購入またはライセンスか、個人情報の有無、集約消費者情報の有無、クリーニング等の加工とその意図した目的、収集期間と継続中の告知、最初に使用した日、合成データ生成の利用)、第3111条(b)(掲示が不要な三つの場合)の一次情報として(2026年8月確認)
  2. *2 参考:California Legislative Information「AB-2013 Bill Status(2023-2024)」(https://leginfo.legislature.ca.gov/faces/billStatusClient.xhtml?bill_id=202320240AB2013)。2024年9月28日に知事の承認を得て州務長官により章立てされ、2024年法律第817章となったことの一次情報として(2026年8月確認)




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