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job tagの使いどころ|求人票と職務の棚卸しの違い
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)
この記事の結論
- 求人票の下書きにはならない:掲載情報が求人票の項目と一致せず、取捨選択と修正が必要と結論づけられています*1。
- 使えるのは選考・企業説明会:求職者への説明と、人事の面接準備に活用可能性が示されました*1。
- 職務の棚卸しでは有効:タスクリストを実施順に沿って聞くと、網羅的で順序だてた業務把握ができます*2。
※ 本記事は2026年8月時点の公式情報(省庁・公的機関・ベンダー公式ドキュメント)に基づきます。
求人票を書くのが重いとき、公的な職業情報から下書きを起こしたくなります。ただし、それは向いていないという検証結果が公表されています。
検証したのは厚生労働省の委託事業です。job tagを活用した人材採用に係る実証では、中小企業における人材採用活動において、job tagの活用可能性を検証し、効果的な活用方法や課題を把握することを目的とするとされ、9社が参加しました*1。
結論はこうです。本実証の参加企業では、人材採用活動の募集フェーズ(求人票作成等)におけるjob tag活用には限界があったが、選考・採用フェーズ(選考・企業説明会等)における活用可能性を見出した*1。
本記事では、フェーズごとの評価、機能ごとの向き不向き、別の実証で有効とされた職務の棚卸しでの使い方、そしてどんな会社に向くかを整理します。使わない判断も含めて、材料をそろえるための記事です。
目次
9社に2回訪問した検証だった
まず、どういう検証だったのかを確認します。
進め方はこうです。コンサルタントによる企業訪問(2回)を通じ、job tagに基づき求人要件を整理、求人票を作成し、コンサルタントへのヒアリングを通じ、人材採用等におけるjob tagの活用可能性を検証しました*1。コンサルタントは社会保険労務士です*1。
参加企業は9社です。業種の内訳は、建設2件、製造2件、運輸1件、介護3件、人材派遣1件で、企業規模は14人から3,231人まで幅がありました*1。求人職種にはシステムエンジニアも含まれています*1。
前提に注記があります。いずれの企業も実証以前に求人票を有しており、本実証はjob tagを活用した求人票の改善が中心となるため、新規で求人票を作成する場合の検証は行われていない点に注意されたい*1。ゼロから書き起こす場面の評価ではないということです。
職種の一致度にもばらつきがありました。一部、求人を希望する職種と参照したjob tagの職種の一致度が低い企業も存在したとされ、営業や建設アシストなどでは一致度が低いと整理されています*1。
検証は4つの問いに分けられています。job tagが活用できる場面、有効な機能・情報、有効に活用できる企業の特徴、そして今後の課題です*1。
求人票そのものの書き方はエンジニアの求人票に書くべき項目で扱いました。公的な職業情報は、その材料の一つという位置づけになります。
募集フェーズは3つとも「難しい」
評価はフェーズごとに分かれました。
採用計画の策定については、人材配置等の検討時に一部参考となるが、各企業特有の採用計画を策定する上では活用可能性に限界があるとされました*1。理由は採用計画は各企業特有のものであるため、job tagの一般的な職業情報を計画策定に活用することは限界があるから、と説明されています*1。
求人要件の決定は求人要件等を網羅的に検討する際には活用可能性があるが、情報の量・質の観点から、利便性は低い*1。具体的には掲載されている情報量が多い、求人票の項目と一致していない、求人職種とは一部異なった情報があるため、情報の利便性が低いとされます*1。
求人票の作成も同じ結論です。求人票への記載方法や表現が一部参考となるが、情報の取捨選択・修正が必要なため求人票作成には適さない*1。仕事内容やタスク等の記載方法・表現等を参考にすることが可能な一方で、効率的な求人票の作成には適さないと整理されています*1。
求人方法の決定については特に意見は得られなかったとされています*1。
まとめの記述も明快です。仕事内容やタスクは求人要件を網羅的に検討する際に参考となるが、掲載情報が多く、求人票の項目と一致していないことから、活用は難しい*1。
つまり、求人票の項目に沿ってそのまま貼れる形にはなっていません。参考にするなら、書き方や表現の見本として使う位置づけになります。
求人情報の表示そのもののルールは求人情報の的確な表示義務で変わる書き方で扱いました。表現を借りる場合も、義務の側は自社で満たす必要があります。
使える場面は選考と企業説明会
一方で、評価が「活用可能性がある」となった場面があります。
それが選考・採用フェーズです。選考・企業説明会等において、job tagを用いて求職者に仕事内容等を説明することで、職のミスマッチ防止につながる可能性がある*1。
社内側にも用途があります。(求人職種への理解が乏しい)企業人事が、面接準備時に仕事内容や求人像を理解する際に活用可能性がある*1。人事が現場の職種に詳しくないという、よくある状況を前提にした使い方です。
期待される効果もこう整理されています。選考・企業説明会等においてjob tagを活用することで、求職者の仕事内容等への理解が深まり、採用・入職後のミスマッチの防止につながる可能性がある*1。
動画も使えるとされています。職業紹介動画は、企業説明会等で求職者に業務説明を行う際に活用可能*1。
求人票からの導線という案も出ています。求人票自体に、求人職種のjob tagページのリンクを掲載することで、求職者の職業理解を促すことができる可能性がある*1。求人票に書き写すのではなく、リンクで渡すという発想です。
企業向けの想定活用パターンも3つ示されています。求人票作成にあたり、必要な人材像を検討する、求職者に仕事内容のイメージを付与する、採用に携わる職員間で広く求人職種の内容を共有するです*1。
3つ目に対応する効果は求人職種の理解を深め、求人像を明確にすることができると書かれています*1。面接官どうしで職種の理解をそろえる用途です。
広報リーフレットでは、想定される悩みも3つ挙げられています。面接前に、面接官と広く求人職種の情報を共有したい、募集する人材の具体的なイメージを検討する支援ツールがほしい、採用した社員から「思っていた仕事内容と違った」と言われたことがある*1。3つ目が当てはまるなら、まず選考の説明から試す順番になります。
機能ごとの向き不向き
掲載されている機能ごとの評価も公表されています。
| 機能・情報 | 評価 | 要旨 |
|---|---|---|
| どんな仕事? | △ | 仕事内容の情報や職業紹介動画は活用可能性があるが、求人職種と仕事内容が異なる場合等は活用が難しい |
| タスク | △ | 箇条書き等により情報の閲覧はしやすいが、情報量が多く、かつ数値情報の解釈が困難であるため活用は難しい |
| 就業するには? | △ | 応募数が少なくなる等の懸念や、実務経験等の受験資格の記載がないことから、求人票への反映は難しい |
| 労働条件の特徴 | △ | 求人戦略の策定等には活用可能性があるが、求人票作成への活用は難しい |
| しごと能力プロフィール | × | 項目が多く、内容の抽象度も高いため、企業における活用は難しい |
タスクの数値については具体的な指摘があります。掲載される情報量が多いことに加え、実施率の数値の解釈が難しく、求人票作成等への活用に係るハードルは高い*1。一方で求人票に記載する仕事内容に抜け漏れがないか確認する際に活用可能性があるとも書かれています*1。
資格については逆方向のリスクも挙げられています。求人票に記載する関連資格が多くなると、求人応募が少なくなる可能性も考えられるため、job tagの情報をそのまま求人票へ記載することが難しい場合もある*1。
受験資格の記載がない点も課題です。実務経験等の受験資格要件が記載されていない資格や、求人職種には不要の資格があるため、求人票への反映は難しい*1。
統計データの使い道は求人票の外にあります。各種統計データを用いることで、人材市場の状況を把握した上で求人戦略を策定できる可能性がある一方、平均年収等は参考となるが、求人票作成にあたっての活用は難しい*1。
能力プロフィールについてはあくまでも求職者向けの情報であり、スキル・知識・アビリティ等の項目の違いも分かりづらいため、活用は難しいとされました*1。改善案として「必要な能力」「あれば良い能力」といった項目を追加することが挙げられています*1。
サイト全体への指摘もあります。HP全体として企業の活用が念頭に置かれていない印象があり、参照すべきページや情報が分かりづらい、求人票作成をはじめとした、人材採用活動への活用に特化した情報・機能が提供されていない*1。
職務の棚卸しなら、タスクリストが使える
同じ事業では、別の実証も行われています。
こちらの目的はこうです。職務給(ジョブ型人事)の導入に向けた、本サイトの効果的な活用方法を明らかにする*2。
結論は採用の実証と対照的です。職務調査の場面のうち、はじめの「職務内容の棚卸し」において網羅的・効率的な聞き取りを行うことができるため、特に有効であると考えられる*2。
有効だったのはタスクリストです。労働者への職務ヒアリングにおいて、job tagのタスクリストを活用することで、職務の流れに沿って網羅的に職務内容を聞き取ることができ、その有効性を確認した*2。
聞き方にコツがあります。特にタスクの実施順に沿って質問を行うことで、順序だてた業務把握が可能である*2。実際の手順はタスクリストと比較しながら各業務の実施状況やjob tagの記載との相違点を聞き取ったという形です*2。
ただし、そこから先は別作業です。job tag掲載のタスクリストを活用したヒアリングのみでは、職務ヒアリングの結果をジョブディスクリプションの形式に整理することが難しかった*2。
必要になるのは2段階の整理です。聞き取った実施タスクについて、インタビュイーとの対話を通していくつかのタスクグループに分類し、次にグループ分けしたタスクを優先順位づけし、自身による対応が求められる業務(=エッセンシャルレスポンシビリティ)と、他の従業員に任せてよい業務との境界を確定します*2。
この部分には注記が付いています。ジョブディスクリプション作成のために求められる職務情報の整理では、既存のjob tag掲載情報とは異なるノウハウが必要であった*2。棚卸しの網羅性はサイトで担保できても、優先順位は自社で決めるしかありません。
タスクリスト以外については職務の説明や各種統計情報が中心となることから、職務の聞き取りを実施する場面において直接参照する場面があまりなかったとされています*2。
向く会社と、向かない会社
最後に、自社が使う側に回るかどうかの判断材料です。
活用可能性が高いのは2つの状況です。人材採用活動(求人票作成)担当者による求人職種の仕事内容の理解が不足している場合と、仕事内容への理解の不足等から、求職者とのミスマッチが起きている場合*1。
後者についてはこう書かれています。採用担当者及び求職者がjob tagを参照することで、仕事内容の理解が深まりミスマッチを防げる可能性がある*1。
難しいとされたのも具体的です。企業規模が小さく、求人職種が担う役割が多岐にわたる場合はjob tagの職業情報を複数閲覧するため難易度が高い*1。1人が何役もこなす会社では、そもそも1つの職業ページに収まりません。
職種の性質による差もあります。経験/未経験、事業所規模等により仕事内容が大きく変わる職種の場合はjob tagの情報掲載の方法では参考としづらい*1。
採用に力を入れている会社にも向きません。人材採用活動に積極的に取り組んでいる企業の場合は求人票がすでに完成形に近く、job tagは参考情報とするのが限界である*1。
逆に、賃金や労働時間を書きづらい場合には別の使い道があります。job tagの「労働条件の特徴」に記載のデータが参考となる可能性がある*1。
棚卸しの成果物の使い道も3つに整理されています。業務整理・見直し、採用基準・面接時の質問等の認識共有、従業員の現状把握・今後の育成方針の策定です*2。職種の性質によって、どれが効果的かは変わるとされています*2。
職種の性質による違いも確認されています。実証では職務の同質性の高い職種と大まかな標準化がなされている職種とでジョブディスクリプションへのニーズや職務の棚卸しが活用できる領域、活用方法がそれぞれ異なることが確認されました*2。前者では採用基準や面接時の質問の認識共有に、後者では3つの用途それぞれに活用可能性が示唆されたとされています*2。
職業能力評価基準による要件づくりは職業能力評価基準で採用要件を組み立てるで扱いました。網羅性の担保にはそちらの枠組みも使えます。
求人要件の言語化に手が回らないときのご相談
職務の棚卸しと、いま動く人手の確保は別の作業です。任せたい職責と必要な稼働の形から、担当が一緒に整理できます。
最後に棚卸しが採用に間に合わないと判断したときの分岐を1つだけ挙げておきます。タスクの聞き取りからグループ分け、優先順位づけまで進めるには、現場の時間を相当量押さえる必要があります。その間の実務を業務委託で受け止め、要件が固まってから正社員の採用に戻すという順番も現実的な選択肢です。職種の輪郭が曖昧なまま募集をかける前の検討として有効でしょう。
まとめ:確認する3点
第一に、検証の結論です。厚生労働省の委託事業で中小企業9社に対して行われた実証では、人材採用活動の募集フェーズにおけるjob tagの活用には限界があり、選考・採用フェーズにおいては活用可能性が見出されました。求人票作成については、掲載情報が求人票の項目と一致しておらず、情報の取捨選択や表現の修正が必要なため、効率的な作成には適さないと整理されています。参加企業はいずれも実証以前に求人票を有していたため、新規作成の検証は行われていません。第二に、使える場面です。選考や企業説明会で求職者に仕事内容を説明する用途、求人職種への理解が乏しい人事が面接準備で仕事内容と求人像を理解する用途、そして採用に携わる職員間で求人職種の内容を共有する用途が挙げられています。求人票にjob tagページのリンクを掲載して求職者の職業理解を促すという案も示されました。第三に、職務の棚卸しでの使い方です。別の実証では、タスクリストを活用して職務の流れに沿って網羅的に聞き取れること、とくにタスクの実施順に沿って質問すると順序だてた業務把握ができることが確認されました。ただし職務記述書の形に整理するには、タスクのグループ分けと、自身による対応が求められる業務と任せてよい業務の境界を決める優先順位づけが別途必要で、これはサイトの掲載情報とは異なるノウハウだとされています。まずは自社が向く側か向かない側かを、担当者の職種理解の程度から判断してください。
よくある質問
job tagとは何ですか。
厚生労働省が運営する職業情報提供サイトで、日本版O-NETとも呼ばれます。職業に関する情報を、職業そのもの、詳細な仕事内容としてのタスク、必要な技術や能力としてのスキルといった視点から可視化し、求職者の就職活動と企業の採用活動を支援するものです。令和6年度の厚生労働省委託事業では、このサイトを人材採用や職務の棚卸しに活用できるかどうかの実証が行われ、報告書が公表されています。
求人票の作成に使えますか。
実証の結論では、効率的な求人票の作成には適さないとされています。仕事内容やタスクの記載方法や表現は参考になる一方、掲載されている情報量が多く、求人票の項目と一致しておらず、求人職種とは一部異なった情報も含まれるため、情報の取捨選択と表現の修正が必要になるからです。なお参加企業はいずれも実証以前に求人票を有しており、新規で作成する場合の検証は行われていません。
どの場面なら使えますか。
選考・採用フェーズです。選考や企業説明会でjob tagを用いて求職者に仕事内容を説明することで、職のミスマッチ防止につながる可能性があるとされています。また、求人職種への理解が乏しい人事担当者が、面接準備時に仕事内容や求人像を理解する際にも活用可能性があるとされました。職業紹介動画を企業説明会で使う、求人票にjob tagページのリンクを掲載するといった使い方も挙げられています。
職務の棚卸しには使えますか。
使えるとされています。別の実証では、労働者への職務ヒアリングでタスクリストを活用することで、職務の流れに沿って網羅的に聞き取れることが確認されました。とくにタスクの実施順に沿って質問すると、順序だてた業務把握ができるとされています。ただし職務記述書の形に整理するには、タスクのグループ分けと優先順位づけが別途必要で、これはサイトの掲載情報とは異なるノウハウだと注記されています。
どんな会社に向きますか。
求人票作成の担当者が求人職種の仕事内容を理解できていない場合や、仕事内容への理解不足からミスマッチが起きている場合には活用可能性があるとされています。逆に、企業規模が小さく求人職種が担う役割が多岐にわたる場合や、経験と未経験で仕事内容が大きく変わる職種、そして採用活動に積極的で求人票がすでに完成形に近い企業では、活用は難しいと整理されています。
出典
- *1 参考:厚生労働省「job tagを活用した人材採用に係る実証 報告書」(「職業情報提供サイト(日本版O-NET)」活用促進事業(令和6年度)参考資料)(https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/001479822.pdf)。実証の目的と全体像(中小企業9社、社会保険労務士による2回の企業訪問、コンサルティングシートの構成)、参加企業の業種内訳と企業規模および求人職種と参照した職種の一致度、参加企業がいずれも実証以前に求人票を有していた旨、募集フェーズ(採用計画の策定・求人要件の決定・求人票の作成)と選考・採用フェーズの評価と理由、機能・情報ごとの評価(どんな仕事?/タスク/就業するには?/労働条件の特徴/しごと能力プロフィール)とそれぞれのメリットと課題、活用可能性が高い企業と難しい企業の特徴、サイト全体への課題と改善方策案、企業向け広報リーフレットに示された3つの想定活用パターンと期待できる効果の一次情報として(2026年8月確認)
- *2 参考:厚生労働省「job tagを活用した職務の棚卸しに係る実証 報告書」(同事業 参考資料)(https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/001479821.pdf)。職務給(ジョブ型人事)の導入に向けたサイトの活用方法を明らかにするという目的、職務ヒアリングを職務内容の聞き取り・タスクのグループ分け・優先順位設定の3段階で実施した方法とエッセンシャルレスポンシビリティの境界確定、職務内容の棚卸しにおいてタスクリストが網羅的・効率的な聞き取りに有効であり実施順に沿った質問で順序だてた業務把握が可能である旨、タスクリスト以外の掲載情報は直接参照する場面が少なかった旨、タスクリストの活用だけでは職務記述書の形式に整理することが難しく異なるノウハウが必要であった旨、棚卸しの活用方法が業務整理・見直し、採用基準・面接時の質問等の認識共有、従業員の現状把握・今後の育成方針の策定の3点に整理された旨の一次情報として(2026年8月確認)
- *3 参考:厚生労働省「「職業情報提供サイト(日本版O-NET)」活用促進事業報告書(令和6年度厚生労働省委託事業)」(https://www.mhlw.go.jp/stf/57306.html)。令和6年度の活用促進事業報告書として、全体版、報告書、job tagを活用した職務の棚卸しに係る実証報告書、job tagを活用した人材採用に係る実証報告書、スキルと賃金の関係に関する調査報告書、労働者調査に関する報告書、海外調査に関する報告書が公表されていることの一次情報として(2026年8月確認)