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年次有給休暇の計画的付与、なぜ5日を残す必要があるのか
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)
この記事の結論
- 5日は自由取得のため:少なくとも5日は労働者の自由な取得を保障します*3。
- 必要な手続きは2つ:就業規則の規定と労使協定です。届出は要りません*3。
- 制度がある企業は40.8%:規模別では30〜99人の42.1%が最も高い水準です*1。
※ 本記事は2026年8月時点の公式情報(省庁・公的機関・ベンダー公式ドキュメント)に基づきます。
有給休暇の取得率を上げたい。しかし現場に任せると、忙しい部署ほど取らないまま年度が終わる。この繰り返しを断つ仕組みが、年次有給休暇の計画的付与制度です。
厚生労働省の説明では、年次有給休暇の付与日数のうち5日を除いた残りの日数について、労使協定を結べば、計画的に休暇取得日を割り振ることができる制度とされています*2。
つまずきやすいのが、この「5日を除いた」という条件です。全部を会社が割り振れるわけではありません。理由と、残った日数の設計方法が分かれば導入は難しくありません。
本記事では、5日を残す理由、3つの付与方式、労使協定で決める項目、そして付与日数が少ない新入社員の扱いまでを順に整理します。
目次
取得率66.9%は、何と比べた数字か
まず、いま自社がどこにいるかを確認します。
令和7年就労条件総合調査によると、令和6年の1年間に企業が付与した年次有給休暇日数(繰越日数を除く)は労働者1人平均18.1日で、このうち労働者が取得した日数は12.1日でした*1。取得率は66.9%で、昭和59年以降で最も高い水準です*1。
前年からの伸びも大きい年でした。令和6年調査では付与16.9日、取得11.0日、取得率65.3%でしたから、1年で付与が1.2日、取得が1.1日増えています*1。取得日数も昭和59年以降で最も多い水準です*1。
取得率の定義も押さえておきます。取得日数計を付与日数計で割って100を掛けた値であり、繰越日数は付与日数に含みません*1。分母が付与日数なので、付与が多い企業ほど同じ取得日数でも率は下がります。
規模別では、1,000人以上が69.0%、300人から999人が66.8%、100人から299人が65.5%、30人から99人が64.9%でした*1。規模の差は4ポイント程度で、産業間の差ほど大きくありません。
| 産業 | 付与日数 | 取得日数 | 取得率 |
|---|---|---|---|
| 令和7年調査計 | 18.1日 | 12.1日 | 66.9% |
| 電気・ガス・熱供給・水道業 | 19.5日 | 14.7日 | 75.2% |
| 製造業 | 18.8日 | 13.7日 | 72.8% |
| 情報通信業 | 18.9日 | 12.7日 | 66.9% |
| 卸売業,小売業 | 17.5日 | 10.5日 | 59.9% |
| 宿泊業,飲食サービス業 | 15.9日 | 8.0日 | 50.7% |
厚生労働省「令和7年就労条件総合調査 結果の概況」第5表より作成*1。取得率は取得日数計/付与日数計×100。
情報通信業は付与18.9日、取得12.7日、取得率66.9%で、全体とちょうど同じ水準にあります*1。付与日数が多いぶん、同じ取得率でも取得日数は全体より0.6日多いという読み方になります。
ほかの産業も見ておくと幅が分かります。金融業・保険業が72.8%、サービス業(他に分類されないもの)が69.7%、医療・福祉が68.4%、運輸業・郵便業が65.3%、建設業が60.7%、複合サービス事業が57.1%でした*1。同じ全国平均でも、産業をまたぐと20ポイント以上開きます。
採用の場面では、応募者が比べる相手はまず同業他社です。求人票に取得日数を書くなら、この産業別の数字が背景にあると考えて用意してください。若者雇用促進法にもとづく情報提供の枠組みは新卒採用はなぜ求人票だけでは足りないのかで扱っています。
なぜ5日は会社が割り振れないのか
制度の核心がここです。
計画的付与の対象にできるのは、付与日数から5日を除いた残りの日数です*2。年次有給休暇のうち少なくとも5日は、労働者の自由な取得を保障しなければならないとされているためです*3。
具体的には、年次有給休暇の付与日数が10日の労働者なら5日まで、20日の労働者なら15日までを計画的付与の対象にできます*2。残る5日は、労働者が自分の都合で使う枠として空けておく形になります。
繰越がある場合の扱いも決まっています。前年度に取得されずに次年度へ繰り越された日数がある場合には、繰り越し分を含めた付与日数から5日を引いた日数を計画的付与の対象にできます*2。繰越が多い人ほど、割り振れる枠は広がります。
付与日数が少ない働き方では、割り振れる枠も小さくなります。週所定労働時間が30時間未満で、かつ週所定労働日数が4日以下の労働者には、所定労働日数と勤続期間に応じた日数が与えられるためです*3。5日を引いた残りが小さければ、計画的付与に回せる日数もその分だけ減ります。
この線引きは、制度の目的そのものから来ています。厚生労働省は、この制度によって休暇の取得の確実性が高まり、労働者にとっては予定していた活動が行いやすく、事業主にとっては計画的な業務運営に役立つと説明しています*2。会社の都合だけで全部を埋めてしまえば、その前提が崩れます。
効果も示されています。計画的付与制度を導入している企業は、導入していない企業よりも年次有給休暇の平均取得率が8.6%(平成20年)高くなっており、制度の導入は取得促進に有効と考えられるとされています*2。
心理的な面にも触れられています。アンケート調査によれば全体の約3分の2の労働者は年次有給休暇の取得にためらいを感じているものの、この制度は前もって計画的に休暇取得日を割り振るため、ためらいを感じることなく取得できるとされています*2。「休みますと言い出せない」を制度側で解く発想です。
導入に必要な手続きは2つだけ
手続きは重くありません。
必要なのは、就業規則による規定と、労使協定の締結の2つです*3。まず就業規則に年次有給休暇の計画的付与について定めることが必要になります*3。
前提として、就業規則には年次有給休暇そのものの規定が必要です。規定例では、採用日から6か月間継続勤務し、所定労働日の8割以上出勤した労働者に10日の年次有給休暇を与え、その後1年間継続勤務するごとに勤続期間に応じた日数を与えるという形になっています*3。
就業規則の規定例も示されています。「労働者代表との書面による協定により、各労働者の有する年次有給休暇日数のうち5日を超える部分について、あらかじめ時季を指定して取得させることがある」という一文です*3。ここでも5日の線が明記されます。
次が労使協定です。実際に計画的付与を行う場合には、就業規則の定めるところにより、労働者の過半数で組織する労働組合または労働者の過半数を代表する者との間で、書面による協定を締結する必要があります*3。
ここで見落とされやすい点が1つあります。この労使協定は、所轄の労働基準監督署に届け出る必要がありません*3。36協定のように届出が要る協定と混同して手続きを止めてしまうケースがあるので、覚えておくと進みが早くなります。
過半数代表者の選び方そのものは、他の労使協定と同じ考え方になります。労働時間まわりの労使協定の扱いは1か月単位の変形労働時間制で決める4つの事項でも整理しました。
なお就業規則の規定例では、原則として労働者があらかじめ請求する時季に取得させること、請求された時季に取得させることが事業の正常な運営を妨げる場合は他の時季に取得させることがあることも、あわせて定める形になっています*3。
一斉・交替制・個人別、どれを選ぶか
方式は3つあり、向いている事業場が異なります。
1つ目が一斉付与方式です。全従業員に対して同一の日に付与する形で、操業を止めて全従業員を休ませることのできる事業場、たとえば製造部門などで活用されています*2。
2つ目が交替制付与方式で、班・グループ別に交替で付与します。定休日を増やすことが難しい流通・サービス業などの企業、事業場で使われる形です*2。窓口や店舗を開けたまま休みを回せます。
一斉付与方式の労使協定例は短く済みます。本社に勤務する社員が有するその年度の年次有給休暇のうち5日分について、協定に列挙した日に与えると定め、業務上やむを得ない事由で指定日に出勤が必要なときは会社と組合が協議して指定日を変更する、という構成です*3。
3つ目が個人別付与方式です。個人別に付与するもので、年次有給休暇付与計画表により各人の年次有給休暇を指定します*2。プロジェクト単位で稼働が動く仕事では、この方式が現実的な選択になります。
交替制付与方式の協定例では、各課において所属の社員をAとBの2グループに分け、その調整は各課長が行うと定めています*3。グループごとに付与する期間を表で示す形です*3。誰がグループ分けを決めるのかを書いておく点が、運用では効いてきます。
労使協定で定める具体的な方法も、方式ごとに変わります。一斉付与なら具体的な付与日を、グループ別の交替制付与ならグループ別の具体的な付与日を、個人別付与なら計画表を作成する時期とその手続き等を定めます*3。
個人別付与方式の労使協定例は、運用の手順まで具体的です。5日を超える部分について6日を限度として計画的に付与するとし、前期は4月から9月の間で3日間、後期は10月から翌年3月の間で3日間と期間を区切っています*3。
予定が動く前提の職場では、変更の手続きも決めておきます。あらかじめ計画的付与日を変更することが予想される場合には、労使協定で変更する場合の手続きについて定めておくとされています*3。
同じ協定例では、各個人別の年休付与計画表を各期の期間が始まる2週間前までに会社が作成して従業員に周知し、従業員は希望表を各期の計画付与が始まる1か月前までに所属課長へ提出する、各課長が希望表に基づいて休暇日を調整して決定する、という流れが定められています*3。
対象から外しておく人も決めておきます。計画的付与の時季に育児休業や産前産後の休業に入ることが分かっている者や、定年などあらかじめ退職することが分かっている者については、労使協定で対象から外しておきます*3。
入社したばかりの人をどう扱うか
採用担当がいちばん気にする論点です。
年次有給休暇は、採用日から6か月間継続勤務し、所定労働日の8割以上出勤した労働者に10日が与えられます*3。つまり入社直後の社員には、まだ計画的付与に回せる日数がありません。
一斉付与方式では、この点が正面から問題になります。事業場全体を休業にする日に、5日を超える年次有給休暇がない社員が出社できないためです。
厚生労働省は、この場合に次のいずれかの措置をとるとしています。一斉の休業日について有給の特別休暇とするか、休業手当として平均賃金の60%以上を支払うかの2つです*3。どちらを選ぶかは労使協定で決めておきます*3。
労使協定例にも同じ趣旨の条項が入っています。社員のうち、その有する年次有給休暇の日数から5日を差し引いた日数が5日に満たない者については、その不足する日数の限度で、指定日に特別有給休暇を与えるという書き方です*3。
採用の説明という観点では、ここは伝え方が変わる部分です。「夏季に全社一斉休業がある」とだけ言うと、入社初年度の応募者は自分の年次有給休暇が削られると受け取ります。初年度は特別有給休暇で埋めると一言添えれば、印象は逆になります。
特別休暇制度そのものを併用している企業も多くあります。令和7年調査では、夏季休暇や病気休暇等の特別休暇制度がある企業割合は60.3%でした*1。詳しくは特別休暇制度がある企業は60.3%|種類別と規模別の差で扱っています。
制度がある企業は40.8%、規模の差は小さい
最後に、導入状況と求人票への落とし方を見ます。
令和7年就労条件総合調査によると、年次有給休暇の計画的付与制度がある企業割合は40.8%でした*1。令和6年調査の40.1%からわずかに増えています*1。
興味深いのは規模別の並びです。30人から99人が42.1%と最も高く、1,000人以上が40.5%、300人から999人が38.2%、100人から299人が37.8%でした*1。大企業だけの仕組みではありません。
付与日数の相場も出ています。計画的付与日数階級別にみると、「5〜6日」が71.6%と最も高くなっています*1。制度がある企業の7割が、5日か6日を割り振る設計に落ち着いているということです。
変更のルールも協定例に入っています。業務遂行上やむを得ない事由のため指定日に出勤を必要とするときは、会社は従業員代表と協議の上、定められた指定日を変更するという条項です*3。決めた日を動かせない制度ではありません。
分布の端も見ておきます。「1〜2日」が8.1%、「3〜4日」が7.6%、「9〜10日」が4.8%、「15日以上」が2.0%でした*1。少ない日数から始めて広げていく企業も一定数あることが分かります。
規模別の日数の中身も見ておきます。30人から99人の企業では「5〜6日」が72.0%、1,000人以上では69.2%でした*1。日数の相場そのものは規模で大きく変わりません。制度がない企業は58.9%です*1。
求人票に書くなら、制度の有無だけでは伝わりません。方式(一斉か、交替制か、個人別か)、割り振る日数、初年度社員の扱いの3点を書けば、応募者は自分の休みがどう決まるかを想像できます。
面接で聞かれたときも同じです。全社一斉休業がある会社なら、その日程が年度のいつ確定するのかを答えられるようにしておくと、入社後の生活設計の話がしやすくなります。
なお、就業規則の改定と労使協定の締結には相応の時間がかかります。制度を整えるあいだ、目の前の稼働をどう埋めるかは別の判断で、その工程だけ業務委託で回すという分け方もあります。
まとめ:確認する3点
第一に、5日を残す理由です。年次有給休暇の計画的付与制度は、付与日数のうち5日を除いた残りの日数について労使協定を結べば計画的に休暇取得日を割り振ることができる制度です。年次有給休暇のうち少なくとも5日は労働者の自由な取得を保障しなければならないため、付与日数が10日の労働者は5日まで、20日の労働者は15日までが対象になります。繰越日数がある場合は、繰り越し分を含めた付与日数から5日を引いた日数を対象にできます。第二に、手続きと方式です。導入には就業規則による規定と労使協定の締結が必要で、この労使協定は所轄の労働基準監督署に届け出る必要がありません。方式は、操業を止められる製造部門などに向く一斉付与方式、定休日を増やしにくい流通・サービス業などに向く交替制付与方式、年次有給休暇付与計画表で各人を指定する個人別付与方式の3つです。労使協定では、対象者、対象日数、具体的な方法、付与日数が少ない者の扱い、変更の手続きを定めます。第三に、入社初年度の社員です。一斉付与方式では、5日を超える年次有給休暇がない社員について、一斉の休業日を有給の特別休暇とするか、休業手当として平均賃金の60%以上を支払うかのいずれかの措置をとります。求人票には、方式と割り振る日数、そして初年度社員の扱いまで書いてください。
よくある質問
年次有給休暇の計画的付与制度とは何ですか。
年次有給休暇の付与日数のうち5日を除いた残りの日数について、労使協定を結べば、計画的に休暇取得日を割り振ることができる制度です。休暇の取得の確実性が高まり、労働者にとっては予定していた活動が行いやすく、事業主にとっては計画的な業務運営に役立つとされています。導入している企業は、導入していない企業よりも年次有給休暇の平均取得率が8.6%(平成20年)高くなっており、取得促進に有効と考えられています。
なぜ5日は計画的付与の対象にできないのですか。
年次有給休暇のうち少なくとも5日は、労働者の自由な取得を保障しなければならないとされているためです。したがって、付与日数が10日の労働者は5日まで、20日の労働者は15日までを計画的付与の対象にできます。前年度に取得されずに繰り越された日数がある場合には、繰り越し分を含めた付与日数から5日を引いた日数を対象にできます。
導入にはどんな手続きが必要ですか。
就業規則による規定と、労使協定の締結の2つです。まず就業規則に年次有給休暇の計画的付与について定め、次に労働者の過半数で組織する労働組合または労働者の過半数を代表する者との間で書面による協定を締結します。この労使協定は所轄の労働基準監督署に届け出る必要はありません。労使協定では、対象者、対象となる日数、具体的な方法、付与日数が少ない者の扱い、計画的付与日の変更の手続きを定めます。
入社したばかりで有給が少ない社員はどうなりますか。
事業場全体の休業による一斉付与の場合、新規採用者などで5日を超える年次有給休暇がない社員については、一斉の休業日を有給の特別休暇とするか、休業手当として平均賃金の60%以上を支払うかのいずれかの措置をとります。労使協定例でも、年次有給休暇の日数から5日を差し引いた日数が5日に満たない者には、その不足する日数の限度で指定日に特別有給休暇を与えると定められています。
出典
- *1 参考:厚生労働省「令和7年就労条件総合調査 結果の概況 労働時間制度」(https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/jikan/syurou/25/dl/gaiyou01.pdf)。令和6年1年間の年次有給休暇の付与日数(労働者1人平均18.1日)、取得日数(12.1日)、取得率(66.9%)と取得率の定義、企業規模別および産業別の取得状況、年次有給休暇の計画的付与制度がある企業割合(40.8%)と計画的付与日数階級別の内訳、特別休暇制度がある企業割合(60.3%)の一次情報として(2026年8月確認)
- *2 参考:厚生労働省「働き方・休み方改善ポータルサイト 年次有給休暇の計画的付与制度とは」(https://work-holiday.mhlw.go.jp/planned-granting/)。計画的付与制度の定義(付与日数のうち5日を除いた残りの日数を労使協定で割り振る)、導入のメリットと平均取得率の差(8.6%、平成20年)、取得にためらいを感じる労働者の割合、計画的付与の対象日数の考え方(10日なら5日、20日なら15日、繰越分の扱い)、一斉付与方式・交替制付与方式・個人別付与方式の3方式とそれぞれ適した事業場の一次情報として(2026年8月確認)
- *3 参考:厚生労働省「働き方・休み方改善ポータルサイト 計画的付与制度(計画年休)の導入に必要な手続き」(https://work-holiday.mhlw.go.jp/planned-granting/procedure.html)。導入に必要な就業規則の規定と労使協定の締結、就業規則の規定例(5日を超える部分についてあらかじめ時季を指定して取得させる)、労使協定が労働基準監督署への届出を要しないこと、労使協定で定める5項目(対象者、対象日数、具体的方法、付与日数が少ない者の扱い、変更の手続き)、新規採用者への措置(有給の特別休暇または平均賃金の60%以上の休業手当)、一斉付与・交替制付与・個人別付与の労使協定例の一次情報として(2026年8月確認)