LASSIC Media らしくメディア
新卒採用はなぜ求人票だけでは足りないのか
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)
この記事の結論
- 求めがあれば情報提供は義務:新卒者等を条件に募集する場合、3類型それぞれについて1つ以上の情報提供が義務となります*1。
- 対象には卒業後の既卒者も入る:「新卒者等」には在学中の者だけでなく、その卒業者・修了者も含まれます*1。
- 2026年10月から新しい指針が適用:求職活動等セクハラ防止指針を踏まえた対応が、指針に新たに定められました*2。
※ 本記事は2026年8月時点の公式情報(省庁・公的機関・ベンダー公式ドキュメント)に基づきます。
新卒や第二新卒の枠で募集をかけるとき、多くの会社は求人票を整えて終わりにします。ところが新卒者等を条件にした募集には、求人票とは別に「聞かれたら答えなければならない情報」が法律で決まっています。
若者雇用促進法に基づく仕組みです。厚生労働省の資料は、事業主は、応募者などに対して、平均勤続年数や研修の有無と内容といった就労実態等の職場情報を提供する仕組みがあると説明し、新卒者の募集を行う企業に対して企業規模を問わず、幅広い情報提供を努力義務、応募者等から求めがあった場合は3類型それぞれ1つ以上の情報提供を義務としています*1。
問題は、求められてから集め始めると間に合わないことです。直近3事業年度の採用者数と離職者数、前事業年度の有給休暇の平均取得日数——どれも即答できる会社は多くありません。
本記事では、何が対象で、何を出すことになるのか、そしていつまでに準備しておくのかを、厚生労働省の資料に沿って整理します。個別の当てはめや社内規程への反映は社会保険労務士等に確認したうえで進めてください。
目次
対象は「新卒者等」——卒業した人も含まれる
まず、どの募集が対象になるのかを確認します。ここを狭く捉えていると、義務そのものを見落とします。
資料は、新卒者等であることを条件とした募集・求人申込みを行う場合に、情報提供が必要ですとしています*1。そのうえで新卒者等の範囲を次のように示しています*1。
- 学校(小学校及び幼稚園を除く)、専修学校、各種学校、外国の教育施設に在学する者で、卒業することが見込まれる者
- 公共職業能力開発施設や職業能力開発総合大学校の職業訓練を受ける者で、修了することが見込まれる者
- 上記の卒業者及び修了者
3つめに注目してください。在学中の人だけでなく、すでに卒業した人も「新卒者等」に含まれます。つまり第二新卒や既卒を対象にした募集も、条件の立て方によっては対象に入ります。
情報提供を求められる相手も限定されていません。資料は応募者等や、求人申込みをしたハローワーク、特定地方公共団体や職業紹介事業者(職業紹介事業者としての学校を含む)または求人の紹介を受けた者等から求めがあった場合としています*1。応募前の段階でも求めは成立します。
なお、当該募集・求人の対象外となっている場合は、情報提供の求めを行うことができませんとされています*1。募集していない層からの求めには応じる必要がないという整理です。
3類型それぞれ1つ以上——中身は12項目
では何を出すのか。項目は決まっています。
| 類型 | 項目 |
|---|---|
| (ア)募集・採用に関する状況 | 直近3事業年度の新卒等採用者数・離職者数 |
| (ア)募集・採用に関する状況 | 直近3事業年度の新卒等採用者数の男女別人数 |
| (ア)募集・採用に関する状況 | 平均勤続年数 |
| (イ)職業能力の開発・向上に関する状況 | 研修の有無及び内容 |
| (イ)職業能力の開発・向上に関する状況 | 自己啓発支援の有無及び内容 |
| (イ)職業能力の開発・向上に関する状況 | 新卒者等に対するメンター制度の有無 |
| (イ)職業能力の開発・向上に関する状況 | キャリアコンサルティング制度の有無及び内容 |
| (イ)職業能力の開発・向上に関する状況 | 社内検定等の制度の有無及び内容 |
| (ウ)企業における職場定着に関する状況 | 前事業年度の月平均所定外労働時間の実績 |
| (ウ)企業における職場定着に関する状況 | 前事業年度の有給休暇の平均取得日数 |
| (ウ)企業における職場定着に関する状況 | 前事業年度の育児休業取得対象者数・取得者数(男女別) |
| (ウ)企業における職場定着に関する状況 | 役員に占める女性の割合及び管理的地位にある者に占める女性の割合 |
義務となるのは、この12項目すべてではありません。3類型それぞれについて1つ以上です*1。ただし指針では、情報提供項目の全てについて、ホームページでの公表、会社説明会での情報提供、求人票への記載などにより、積極的に情報提供を行うことが望ましいと定められています*1。
加えて、ハローワークに新卒求人を申し込む場合は実質的に全項目が求められます。資料はハローワークでは新卒求人の申込みを受理するに当たり、求人申込書に「青少年雇用情報欄」を設け求人者に対して全ての項目の情報提供を求めることとしていますと述べています*1。
出し方にも条件があります。資料は留意事項として、企業全体の雇用形態別の情報を提供してください、海外支店等に勤務している労働者については除外した情報としてください、最新の情報を提供してくださいと挙げています*1。事業所単位ではなく企業全体、という点は集計の手間に直結します。
雇用形態の扱いも明示されています。いわゆる正社員として募集・求人申込みを行う場合は、正社員である労働者に関する情報を提供してくださいとされ、正社員以外での募集の場合は正社員以外の直接雇用の労働者全てに関する情報を出すこととされています*1。ただし女性割合の項目については、募集・求人申込みを行う雇用形態に関わらず、企業に雇用される全ての労働者に関する情報としてください、と別扱いになっています*1。
「集める」ではなく「出せる状態にしておく」
この制度の実務上の難所は、項目の多さではありません。求めがあってから集めるのでは間に合わない、という点です。
表1を見ると、(ア)は3事業年度分の遡り、(ウ)は前事業年度の実績です。人事システムから即座に出るのは、そのうち一部でしょう。特に新卒等の採用者数と離職者数を年度別・男女別に分けて保持している会社は多くありません。
裏を返せば、この12項目は自社の採用と定着を測る指標そのものでもあります。離職者数と平均勤続年数を年度で並べれば、施策の効きが見えます。採用側の指標をどう置くかは採用KPIに置く5つの指標と分母の決め方で扱いました。義務への対応と社内の分析は、同じ数字で兼ねられます。
順序としては、募集を出す前に一度そろえて、更新の担当と頻度を決めておくのが現実的です。年に一度、事業年度が締まったタイミングで更新する運用にしておけば、求めがあった日に慌てずに済みます。
数字が芳しくない項目をどうするか、という問いも出てきます。ここは正直に出すしかありません。誤解を生じさせるような表示としないことは指針が明記している点であり*2、情報提供も同じ考え方に立ちます。求人情報そのものの表示ルールは求人情報の的確な表示、企業に課される義務で扱いました。
内定に関する取り決めは、文書で明示する
指針は情報提供以外にも、新卒者等の募集について具体的な対応を求めています。内定の扱いはその中心です。
厚生労働省のリーフレットは、採用内定に当たって遵守すべき事項として次の点を挙げています*3。採用内定を行う際は、確実な採用の見通しに基づいて、採否の結果を明確に伝えてください、そして採用の時期や採用条件、採用内定取消事由などは、文書で明示してください。学校などの卒業が採用条件となる場合は、内定時に明示することとされています*3。
取消しについては強い書き方がされています。指針の要点をまとめた資料は、労働契約が成立したと認められる場合には、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない採用内定取消しは無効とされることに留意するよう求めています*2。やむを得ない事情で取消しや入職時期の繰下げを行う場合には、就職先の確保に努めることとあわせて、所定の様式により、あらかじめ、公共職業安定所等に通知することとなっています*2。
内定を出す側の行為についても言及があります。採用内定または採用内々定と引き替えに、他の事業主に対する就職活動を取りやめるよう強要することなどの職業選択の自由を妨げる行為などは、青少年に対する公平・公正な就職機会の提供の観点から行わないこととされています*2。あわせて、自由な意思決定を妨げるような内定辞退の勧奨は、違法な権利侵害に当たるおそれがあるとも述べられています*2。
実務では、内定通知書の書式を1枚整えるところが着地点になります。採用の時期、採用条件、取消事由。この3つが文書に落ちていれば、後から解釈が割れる余地が小さくなります。入社後の扱いについては試用期間とは何を見る期間か、設計と運用もあわせて確認してください。
2026年10月から、就職活動中の学生への対応が指針に入る
指針は改正されています。ここは日付が決まっている論点です。
厚生労働省の資料は、男女雇用機会均等法等の改正(令和8年10月1日施行)に伴い、ハラスメント対策の強化について、事業主などが講ずべき措置を新たに定めていますと述べています*2。若者の募集・採用等に関する指針の側に、新しい項目が加わったということです。
内容は2段構えです。ひとつは求職者等に対するセクシュアルハラスメントの防止のため、雇用管理上の措置を講ずること*2。もうひとつは、男女雇用機会均等法に基づく求職活動等セクハラ防止指針を踏まえて、必要に応じて適切な対応を行うように努めることが望ましいことで、こちらが令和8年10月1日適用とされています*2。
従来から指針にあった記述も、あわせて確認しておく価値があります。雇用する労働者が就職活動中の学生やインターンシップを行っている者等に対する言動について、必要な注意を払うよう配慮するように努めることが望ましいとされ、特に就職活動中の学生に対するセクシュアルハラスメント等は、正式な採用活動のみならず、OB・OG訪問等の場でも問題化していますと指摘されています*2。
求められている対応も具体的です。資料は、企業としての責任を自覚し、OB・OG訪問等の際も含めて、セクシュアルハラスメント等は行ってはならないものであり厳正な対応を行う旨などを、研修などを実施し社員に対して周知徹底すること、OB・OG訪問等を含めて学生と接する際のルールをあらかじめ定めることを挙げています*2。
採用担当だけでは完結しない項目です。現場のエンジニアがカジュアルな場で学生と会う機会がある会社ほど、ルールの周知が必要になります。2026年10月という日付が出ている以上、それまでに社内の研修や連絡の枠組みに組み込んでおくのが順当でしょう。
募集人数の書き方にも指針がある
細かい点ですが、募集要項の書き方そのものにも言及があります。
リーフレットは、募集・採用人数の計画決定に当たり、「若干名」、「○○人以内」など不明確な表現、実際の採用計画を超えた人数の募集などは避け、採用人数を明確にしてくださいとしています*3。慣習で「若干名」と書いてしまう会社は少なくないはずです。
その手前の計画についても記述があります。募集・採用計画の立案に当たっては、毎年の募集・採用人数が大きく変動しないよう、入職後の人材育成など雇用管理面にも配慮しつつ、中長期的な人事計画などに基づいて、必要な人材だけを採用してください*3。そして企業の人員構成、職場における要員の過不足の状況などを十分見極めた上で、募集・採用人数を決定してくださいとされています*3。
人数を先に決める作業そのものについては要員計画に必要な4つの数字と決める順番で扱いました。指針が言っているのは、その計画を募集要項の表現にまで一貫させるということです。
既卒者の受け入れについても方針が示されています。新規卒業予定者の募集を行うに当たっては、学校などの卒業者が、卒業後少なくとも3年間は応募できるようにしてくださいとされ、できる限り年齢の上限を設けないようにし、年齢の上限を設ける場合には、青少年が広く応募できるよう検討してくださいと続きます*3。あわせて通年採用や秋季採用の導入などを積極的に検討してくださいとも述べられています*3。
インターンシップにも注意書きがあります。インターンシップや職場体験であっても、労働基準法などの労働関係法令が適用される場合もあるので、ご留意ください*3。実務を任せる形の受け入れをしている場合は、この点を先に確認しておく必要があります。
着手の順序——12項目を1枚にそろえる
順序を置きます。制度の全体を理解してから動く必要はありません。
- ① 表1の12項目を1枚にそろえる。企業全体・雇用形態別・最新の値で埋めます
- ② 埋まらない項目を洗い出す。多くは(ア)の年度別・男女別の集計で詰まります
- ③ 更新の担当と頻度を決める。事業年度の締めにあわせて年1回が現実的です
- ④ 内定通知書の書式を確認する。採用の時期、採用条件、取消事由の3点が入っているかを見ます
- ⑤ 募集要項の人数表記を直す。「若干名」を採用人数の明示に置き換えます
- ⑥ 学生と接する際のルールを決めて周知する。2026年10月の適用に間に合わせます
①から始める理由は単純です。ここが埋まらないと、求めがあった時点で対応できません。そして埋める作業そのものが、自社の採用と定着の現状を見る機会になります。
②で詰まった項目は、記録の取り方の問題であることがほとんどです。採用管理の仕組みに年度と区分を持たせておけば、翌年からは集計で済みます。
⑥は担当部署をまたぐため、着手が遅れがちです。適用日が決まっている以上、研修の年間計画に組み込む段階で拾っておくのが確実な進め方でしょう。
なお、新卒の枠を整えるまでに時間がかかる一方で、目の前の開発は動いています。当座の人手と、育てて定着させる採用は別の話として切り分けたほうが、どちらの設計も雑になりません。切り分けの判断がつかない段階なら、期間を区切って外部の力を借りながら要員の輪郭を確かめる進め方もあります。
まとめ:新卒等の募集で押さえる3つの視点
第一に、新卒者等を条件にした募集には情報提供の義務が伴うという点です。厚生労働省の資料は、新卒者の募集を行う企業に対し、企業規模を問わず、幅広い情報提供を努力義務、応募者等から求めがあった場合は3類型それぞれ1つ以上の情報提供を義務としています。3類型は募集・採用に関する状況、職業能力の開発・向上に関する状況、企業における職場定着に関する状況で、項目は合計12あります。企業全体の雇用形態別に、海外支店等を除外し、最新の情報を提供することとされています。第二に、対象には卒業した人も含まれるという点です。新卒者等の範囲には、卒業することが見込まれる者や職業訓練を修了することが見込まれる者に加えて、その卒業者及び修了者が含まれます。既卒を対象にした募集も条件の立て方によっては対象に入ります。あわせて指針は、卒業後少なくとも3年間は応募できるようにすることや、通年採用や秋季採用の導入を検討することを求めています。第三に、内定と学生への対応が指針で具体化されているという点です。採用の時期、採用条件、採用内定取消事由は文書で明示することとされ、労働契約が成立したと認められる場合の合理的な理由を欠く取消しは無効とされます。また男女雇用機会均等法等の改正に伴い、令和8年10月1日適用として、求職活動等セクハラ防止指針を踏まえた対応が新たに定められました。まず表1の12項目を1枚にそろえるところから始めてください。
よくある質問
青少年雇用情報は、12項目すべてを出す必要がありますか。
義務となるのは3類型それぞれについて1つ以上です。ただし指針では、情報提供項目の全てについて、ホームページでの公表、会社説明会での情報提供、求人票への記載などにより、積極的に情報提供を行うことが望ましいと定められています。またハローワークでは新卒求人の申込みを受理するに当たり、求人申込書に青少年雇用情報欄を設け、求人者に対して全ての項目の情報提供を求めることとされています。実務としては12項目そろえておくほうが手戻りが少なくなります。
中途採用しかしていない会社にも関係しますか。
新卒者等であることを条件とした募集・求人申込みを行う場合に情報提供が必要とされているため、その条件を付けていなければ対象になりません。ただし新卒者等の範囲には、卒業することが見込まれる者や訓練を修了することが見込まれる者だけでなく、その卒業者及び修了者も含まれます。既卒者や第二新卒を対象に枠を設ける場合は、条件の立て方によって対象に入り得ます。
情報は事業所単位で集計してよいですか。
企業全体の雇用形態別の情報を提供することとされています。あわせて、採用区分や事業所別などの詳細情報についても追加情報として提供することが望まれるとされています。企業グループ全体として募集を行い、グループ傘下の各企業に配属する採用形態の場合は、配属の可能性のある企業それぞれについての情報を提供することとされています。また海外支店等に勤務している労働者については除外した情報とし、最新の情報を提供します。
採用内定を取り消すことはできますか。
労働契約が成立したと認められる場合には、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない採用内定取消しは無効とされることに留意するよう求められています。やむを得ない事情により取消しや入職時期の繰下げを行う場合は、就職先の確保について努めるとともに、職業安定法施行規則に基づき、所定の様式によりあらかじめ公共職業安定所等に通知することとされています。個別の判断は社会保険労務士等に確認してください。
就職活動中の学生へのハラスメント対策は、いつまでに準備しますか。
男女雇用機会均等法等の改正が令和8年10月1日施行とされ、これに伴って若者の募集・採用等に関する指針にもハラスメント対策の強化が新たに定められました。求職者等に対するセクシュアルハラスメントの防止のため雇用管理上の措置を講ずることとされ、求職活動等セクハラ防止指針を踏まえた対応が令和8年10月1日適用とされています。研修による社員への周知徹底や、OB・OG訪問等を含めて学生と接する際のルールをあらかじめ定めることが挙げられています。
出典
- *1 参考:厚生労働省「若者雇用促進法のあらまし(事業主向け)」(https://www.mhlw.go.jp/content/11800000/000912795.pdf)。青少年雇用情報の情報提供の仕組み、新卒者等の範囲、3類型の情報提供項目、情報提供における留意事項の一次情報として(2026年8月確認)
- *2 参考:厚生労働省「若者の募集・採用等に関する指針 ご対応いただきたい5つのポイントを紹介します」(https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/000775751.pdf)。指針の5つのポイント、採用内定取消しに関する留意点、就職活動中の学生等へのハラスメント対策と令和8年10月1日適用の記載の一次情報として(2026年8月確認)
- *3 参考:厚生労働省「新規学校卒業者を採用する際は労働関係法令の規定などを確認してください」(https://www.mhlw.go.jp/content/11800000/000995467.pdf)。募集・労働契約締結に当たって遵守すべき事項、採用内定に当たって遵守すべき事項、募集人数の表現、既卒者の取扱い、インターンシップの留意点の一次情報として(2026年8月確認)