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65歳超雇用推進助成金の3コースと支給額が決まる2つの軸
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)
この記事の結論
- コースで申請の順番が逆:継続コースは事後申請、他の2つは計画の事前認定です*2*3*4。
- 支給額は2軸で決まる:対象被保険者数と措置内容で15万円から240万円まで動きます*2。
- 予算上限で止まる:上限超過が見込まれると受付を停止する場合があります*2。
※ 本記事は2026年8月時点の公式情報(省庁・公的機関・ベンダー公式ドキュメント)に基づきます。
定年を延ばしたい。ベテランに残ってほしい。ただ、規程を直す手間と原資が見合うかが決めきれない。この判断材料になるのが65歳超雇用推進助成金です。
運営しているのは独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構で、65歳以上への定年引上げ、高年齢者の雇用管理制度の整備、高年齢の有期契約労働者の無期雇用転換を行った事業主に助成する制度とされています*1。
つまずくのは順番です。3つのコースのうち1つだけが事後申請で、残り2つは計画の認定を先に受けなければなりません*2*3*4。この違いを知らずに動くと、実施してから申請できないと気づくことになります。
本記事では、3コースの違い、継続雇用促進コースの支給額が決まる2つの軸、そして申請の窓と予算の制約を順に整理します。
目次
3つのコースは、入口も申請の順番も違う
まず全体像から確認します。
制度の説明は次のとおりです。高年齢者が意欲と能力のある限り年齢に関わりなく働くことができる生涯現役社会を実現するため、65歳以上への定年引上げ・高年齢者の雇用管理制度の整備・高年齢の有期契約労働者を無期雇用へ転換させた事業主に対して助成する制度とされています*1。
コースは3つです。65歳超継続雇用促進コース、高年齢者評価制度等雇用管理改善コース、高年齢者無期雇用転換コースで、それぞれ独立した要件と支給額を持ちます*1。
いちばん大きな違いが申請の順番です。継続雇用促進コースは制度の実施日が属する月の翌月から起算して4か月以内に支給申請する事後申請の形をとります*2。
一方、評価制度等雇用管理改善コースと無期雇用転換コースは、どちらも計画を作成して機構理事長の認定を受けることが要件に含まれ、計画書は計画開始日の6か月前の日から3か月前の日までに提出します*3*4。実施してから申請する道はありません。
したがって、社内で「来年度から定年を延ばそう」と決めた時点で、どのコースを狙うかによって動き出す時期が変わります。計画の認定が要るコースは、実施の3か月前には書類が機構に届いている必要があります*3*4。
なお、複数の助成金を申請する場合は併給調整がかかることがあり、同一の事由で他の国または地方公共団体等の補助金等の支給を受けた場合には助成金が支給されないことがあります*3*4。助成金の入口の考え方はオンライン自主応募で対象外になる助成金3つでも扱いました。
継続雇用促進コース:就業規則を直して届け出るのが起点
3つのうち、金額が大きく動くのがこのコースです。
受給要件は2つあります。1つ目は、労働協約または就業規則により次のいずれかに該当する制度を実施し、就業規則を労働基準監督署へ届け出た事業主であることです*2。実施したというだけでは足りず、届出まで含めて要件になります。
対象になる制度は4つです。旧定年年齢を上回る65歳以上への定年引上げ、定年の定めの廃止、旧定年年齢および旧継続雇用年齢を上回る66歳以上の継続雇用制度の導入、他社による継続雇用制度の導入です*2。
ここで基準になる旧定年年齢の定義に注意が要ります。就業規則等で定められた定年年齢のうち、平成28年10月19日以降で最も高い年齢を指します*2。過去に一度引き上げている企業は、その水準からさらに上げる必要があるということです。
他社による継続雇用制度は、申請事業主の雇用する者で、定年後または継続雇用制度終了後に他の事業主が引き続いて雇用する制度と定義されています*2。グループ会社や取引先での受け入れを想定した枠です。
2つ目の要件が雇用管理の側です。高年齢者雇用推進者の選任および高年齢者雇用管理に関する措置を1つ以上実施している事業主であることが求められます*2。
措置は7つ示されています。職業能力の開発及び向上のための教育訓練の実施等、作業施設・方法の改善、健康管理・安全衛生の配慮、職域の拡大、知識・経験等を活用できる配置や処遇の推進、賃金体系の見直し、勤務時間制度の弾力化です*2。このうち1つを実施していればよいので、要件としては重くありません。
裏を返せば、就業規則を直さずに運用だけで継続雇用している企業は対象外になります。規程の整備そのものが助成の対象という設計です。
支給額を決める2つの軸
金額の決まり方は単純で、2つの軸の掛け合わせです。
公表されている説明では、「対象被保険者数」および「定年等を引上げる年齢または実施した措置」に応じて定める額を支給するとされています*2。人数と、どこまで上げたかの2軸です。
| 対象被保険者数 | 65歳への引上げ | 66〜69歳(5歳未満) | 66〜69歳(5歳以上) | 70歳以上への引上げ | 定年の定めの廃止 |
|---|---|---|---|---|---|
| 1〜3人 | 15 | 25 | 40 | 45 | 60 |
| 4〜6人 | 20 | 32 | 65 | 70 | 120 |
| 7〜9人 | 25 | 39 | 110 | 115 | 180 |
| 10人以上 | 30 | 46 | 135 | 140 | 240 |
独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構「65歳超雇用推進助成金(65歳超継続雇用促進コース)」より作成*2。
表を横に見ると段差の位置が分かります。65歳への引上げと、66歳から69歳への引上げ(引上げ幅5歳未満)は金額が抑えられているのに対し、引上げ幅が5歳以上になると一段跳ね上がります*2。10人以上の企業なら46万円から135万円へ、3倍近い差です。
継続雇用制度の導入を選んだ場合は別の表になります。66歳から69歳への継続雇用の引上げで希望者全員を対象とする場合は、1〜3人で22万円、10人以上で90万円、対象者基準を設ける場合は1〜3人で20万円、10人以上で75万円です*2。
70歳以上への継続雇用の引上げでは、希望者全員なら1〜3人で40万円、10人以上で130万円、対象者基準ありなら1〜3人で36万円、10人以上で120万円となります*2。希望者全員を対象にするほうが金額は高くなります*2。
他社による継続雇用制度は、自社で継続雇用する場合よりやや低い水準です。66歳から69歳への引上げで希望者全員なら1〜3人で20万円、10人以上で70万円、70歳以上への引上げで希望者全員なら1〜3人で32万円、10人以上で105万円となっています*2。
注意書きも押さえておきます。定年引上げと継続雇用制度の導入をあわせて実施した場合でも、支給額はいずれか高い額のみです*2。両方やれば足し算になる、という設計ではありません。
申請の窓は狭く、予算にも上限がある
ここが実務でいちばん危ない部分です。
継続雇用促進コースの申請期間は、措置の実施日が属する月の翌月から起算して4か月以内の各月月初から15日までと定められています*2。月の後半には窓が閉じるという書き方になっています。
15日が行政機関の休日にあたる場合は翌開庁日までとされていますが、郵送の場合は消印日ではなく各支部への到着が申請期間内である必要があります*2。締切間際の投函は間に合いません。
提出先は都道府県の支部です。事業主の主たる雇用保険適用事業所の所在する都道府県の支部高齢・障害者業務課(東京および大阪は高齢・障害者窓口サービス課)に申請します*2。
そして予算の制約があります。各月ごとの予算額上限もしくは四半期ごとの予算額上限の超過が予見される場合、または各月の申請受付件数の動向から各月の予算額上限を超える恐れが高いと認める場合、支給申請の受付を停止する場合があります*2。
実際の申請量も公表されています。令和8年度は7月期計264件・14,224万円、第2四半期累計264件・14,224万円、年度累計627件・35,947万円という実績が示されています*2。1件あたりおよそ57万円という水準です。
年度をまたぐ場合の扱いも明記されています。令和7年12月から令和8年3月までに定年引上げ等の制度を実施した場合は令和8年4月以降も申請期間に含まれますが、令和8年4月以降に支部へ申請する場合は令和8年度制度が適用されます*2。制度が変わっていれば適用されるのは新しいほうです。
令和7年4月1日からは電子申請でも申請できるようになっており、電子申請マニュアルや説明動画も公開されています*1。郵送か持参かで悩む前に、こちらを確認しておくと手戻りが減ります。
評価制度等雇用管理改善コース:計画の認定が先
2つ目のコースは、制度を「作る」側への助成です。
概要は、高年齢者の雇用推進を図るための雇用管理制度の整備(賃金・人事処遇制度、労働時間、健康管理制度等)にかかる措置を実施した事業主に対して助成する制度とされています*3。
手順は2段階です。まず高年齢者雇用管理整備措置を内容とする「雇用管理整備計画」を作成し、機構理事長に提出してその認定を受けること、次に計画に基づき実施期間内に措置を実施することです*3。
実施後の確認もあります。雇用管理整備計画の終了日の翌日から6か月間の運用状況を明らかにする書類を整備し、支給対象被保険者が1人以上いることが求められます*3。作って終わりではなく、半年動かした記録が要ります。
対象年齢にも条件があります。高年齢者雇用管理整備措置は、55歳以上の高年齢者を対象として、労働協約または就業規則に規定し、1人以上の支給対象被保険者に実施・適用することが必要です*3。65歳ではなく55歳から、という点は見落としやすいところです。
措置は6種類が挙げられています。高年齢者の職業能力を評価する仕組みを活用した賃金・人事処遇制度の導入または改善、労働時間制度、在宅勤務制度、研修制度、健康管理制度の導入または改善、その他必要な雇用管理制度の導入または改善です*3。1つ目には高齢者向けの専門職制度等、高年齢者に適切な役割を付与する制度も含まれます*3。
支給額はこの1つ目かどうかで変わります。職業能力の評価を活用した賃金・人事処遇制度の導入または改善なら中小企業事業主に60万円、それ以外の事業主に45万円、それ以外の措置なら中小企業事業主に30万円、それ以外の事業主に23万円です*3。
機器の導入費も見てもらえます。措置の実施に伴い必要となる機器等を導入した場合、導入に要した経費に中小企業事業主なら60%、それ以外なら45%を乗じた額を上乗せし、導入経費が50万円を超える場合は50万円が上限です*3。専門職制度の設計そのものはマネジメントに進まないエンジニアの処遇設計で扱っています。
無期雇用転換コース:50歳以上の有期契約を切り替える
3つ目は、いま雇っている有期契約労働者を対象にするコースです。
概要は、50歳以上かつ定年年齢未満の有期契約労働者を無期雇用労働者に転換させた事業主に対して、国の予算の範囲内で助成金を支給するというものです*4。
手順は前のコースと同じ2段階です。無期雇用転換計画を作成して機構理事長の認定を受け、計画期間内に転換を実施する形になります*4。申請期間も同じく、計画開始日の6か月前の日から3か月前の日までです*4。
対象者には条件が付きます。実施時期が明示され、かつ有期契約労働者として締結された契約に係る期間が通算5年以内の者を無期雇用労働者に転換するものに限るとされています*4。通算5年を超えている人は、この助成の対象から外れます。
これは無期転換ルールとの関係で意味を持ちます。通算5年を超えれば労働者本人の申込みで無期転換できるため、会社が自発的に前倒しで転換する部分を支援するという設計になっているわけです。
支給額は明快です。対象労働者1人あたり40万円、中小企業事業主以外は30万円で、1支給申請年度1適用事業所あたり10人までが上限です*4。10人転換すれば中小企業で400万円という規模になります。
採用実務に引き付けると、この3コースは順番で考えると使いやすくなります。いま有期で来ている50代のベテランを無期に切り替えるなら無期雇用転換コース、評価や処遇の仕組みを先に作るなら評価制度等雇用管理改善コース、定年そのものを動かすなら継続雇用促進コースです。
有期から正社員へ上げる設計は有期で採って正社員にする設計の落とし穴で整理しました。年齢を理由にした募集の可否は年齢制限が認められる6つの例外事由と設定できる範囲を確認してください。
なお、いずれのコースも計画の作成と規程の改定に時間がかかります。制度を整えるあいだ、目の前の稼働をどう埋めるかは別の判断で、その工程だけ業務委託で回すという分け方もあります。
まとめ:確認する3点
第一に、コースによって申請の順番が逆だという点です。65歳超雇用推進助成金は、65歳超継続雇用促進コース、高年齢者評価制度等雇用管理改善コース、高年齢者無期雇用転換コースの3つに分かれます。継続雇用促進コースは制度の実施日が属する月の翌月から起算して4か月以内の各月月初から15日までに申請する事後申請ですが、残る2コースは計画を作成して機構理事長の認定を受ける必要があり、計画書は計画開始日の6か月前の日から3か月前の日までに提出します。第二に、継続雇用促進コースの支給額は対象被保険者数と措置内容の2軸で決まる点です。定年引上げまたは定年の定めの廃止の場合、1人から3人で65歳への引上げなら15万円、10人以上で定年の定めの廃止なら240万円まで幅があります。引上げ幅が5歳以上になると金額が一段上がる一方、定年引上げと継続雇用制度の導入をあわせて実施しても支給額はいずれか高い額のみです。要件は、就業規則等での制度の実施と労働基準監督署への届出、そして高年齢者雇用推進者の選任と雇用管理に関する措置を1つ以上実施することの2つになります。第三に、予算の制約です。各月ごとまたは四半期ごとの予算額上限の超過が予見される場合、支給申請の受付を停止する場合があるとされています。実施してから4か月という窓に加えて、受付が止まる可能性も見込んで動いてください。
よくある質問
65歳超雇用推進助成金にはどんなコースがありますか。
3つあります。65歳超継続雇用促進コース、高年齢者評価制度等雇用管理改善コース、高年齢者無期雇用転換コースです。継続雇用促進コースは65歳以上への定年引上げなどを実施した事業主が対象で、実施日が属する月の翌月から起算して4か月以内に申請します。残る2コースは計画を作成して機構理事長の認定を受ける必要があり、計画書は計画開始日の6か月前の日から3か月前の日までに提出します。
継続雇用促進コースの支給額はどう決まりますか。
対象被保険者数と、定年等を引き上げる年齢または実施した措置の2つで決まります。定年引上げまたは定年の定めの廃止の場合、1人から3人では65歳への引上げが15万円、66歳から69歳への引上げが25万円または40万円、70歳以上への引上げが45万円、定年の定めの廃止が60万円です。10人以上では順に30万円、46万円、135万円、140万円、240万円となります。定年引上げと継続雇用制度の導入をあわせて実施しても、支給額はいずれか高い額のみです。
無期雇用転換コースの対象になるのはどんな人ですか。
50歳以上かつ定年年齢未満の有期契約労働者で、有期契約労働者として締結された契約に係る期間が通算5年以内の人が対象です。無期雇用転換計画を作成して機構理事長の認定を受け、計画期間内に無期雇用労働者へ転換します。支給額は対象労働者1人あたり40万円、中小企業事業主以外は30万円で、1支給申請年度1適用事業所あたり10人までが上限です。
申請すれば受け取れますか。
受付が停止される場合があります。各月ごとの予算額上限もしくは四半期ごとの予算額上限の超過が予見される場合、または各月の申請受付件数の動向から各月の予算額上限を超える恐れが高いと認める場合、支給申請の受付を停止する場合があるとされています。また、同一の事由で他の国または地方公共団体等の補助金等の支給を受けた場合には、併給調整により支給されないことがあります。
出典
- *1 参考:独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構「助成金」(https://www.jeed.go.jp/elderly/subsidy/index.html)。65歳超雇用推進助成金の位置づけ(65歳以上への定年引上げ・高年齢者の雇用管理制度の整備・高年齢の有期契約労働者の無期雇用転換を行った事業主への助成)、3コースの構成、電子申請の開始時期とマニュアル・説明動画の掲載、併給調整早見ツールの案内の一次情報として(2026年8月確認)
- *2 参考:独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構「65歳超雇用推進助成金(65歳超継続雇用促進コース)」(https://www.jeed.go.jp/elderly/subsidy/subsidy_keizoku.html)。受給要件(就業規則等による4つの措置と労働基準監督署への届出、旧定年年齢および旧継続雇用年齢の定義、高年齢者雇用推進者の選任と7つの雇用管理措置)、対象被保険者数と措置内容による支給額表(定年引上げ・定年の定めの廃止、継続雇用制度の導入、他社による継続雇用制度)、併せて実施した場合はいずれか高い額のみとする注記、申請期間と提出先、予算額上限による受付停止、令和8年度の申請受付状況の一次情報として(2026年8月確認)
- *3 参考:独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構「65歳超雇用推進助成金(高年齢者評価制度等雇用管理改善コース)」(https://www.jeed.go.jp/elderly/subsidy/subsidy_hyouka.html)。雇用管理整備計画の認定と措置の実施という2段階の要件、終了日の翌日から6か月間の運用状況と支給対象被保険者1人以上という条件、55歳以上を対象とし労働協約または就業規則に規定するという要件、6種類の高年齢者雇用管理整備措置、措置の種類による支給額(60万円・45万円・30万円・23万円)と機器導入経費の上乗せ(60%・45%、上限50万円)、申請期間の一次情報として(2026年8月確認)
- *4 参考:独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構「65歳超雇用推進助成金(高年齢者無期雇用転換コース)」(https://www.jeed.go.jp/elderly/subsidy/subsidy_muki.html)。50歳以上かつ定年年齢未満の有期契約労働者を無期雇用労働者に転換させた事業主への助成という制度概要、無期雇用転換計画の認定と実施という2段階の要件、対象者が有期契約労働者として締結された契約に係る期間が通算5年以内の者に限られること、支給額(1人あたり40万円、中小企業事業主以外は30万円、1支給申請年度1適用事業所あたり10人上限)、申請期間の一次情報として(2026年8月確認)