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DXの行動指針の策定は11%|規模別は4%から21%
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)
この記事の結論
- 策定していないが89%:策定しているのは11%でした*1。
- 規模別だけが単調に上がる:4%、8%、21%と並びます*1。
- 経営者中心が64%:策定した92社の中でも下端です*1。
※ 本記事は2026年9月時点の公式情報(省庁・公的機関・ベンダー公式ドキュメント)に基づきます。
この判断は前にも同じ形で決めたはずだ、と言われて根拠が出てこない。担当者が替わったあとに起きる話です。
決めた事実そのものは残っていても、どういう考え方で決めたかは誰かの頭の中にあります。だから引き継ぎのたびに決め直しになります。
手がかりは、DXの行動指針を策定しているかを企業に聞いた調査です。
IPAの調査では、策定していると答えた企業が11%でした*1。策定していないが89%です*1。
従業員数で分けると差がひらきます*1。20人以下は4%、101人以上は21%で、17ポイントの差でした*1。
目次
決めた考え方が担当者の頭の中にある
決めた結果は残ります。仕様書にも議事録にも書いてあります。
残らないのは決め方です。どこを優先してその結論にしたのかが書かれていないため、次の人は同じ判断を再現できません。
この状態を数えた調査があります*1。IPAの「2022年度組込み/IoTに関する動向調査」で、2023年6月12日に発行されました*1。
その後の改版も示されています*1。2023年7月25日に一部が改版されています*1。
調査の時期も書かれています*1。2022年11月から12月にかけて実施されたものです*1。
規模も示されています*1。調査票の配布は7,864件で、回答は1,214件でした*1。
今回見るのはQ16です*1。DXの行動指針を策定しているかを尋ねた設問と、策定している企業に内容を尋ねた設問です*1。
選択肢の形も確かめておきます*1。Q16-1は「策定している」「策定していない」の2つです*1。
数値の出所も断っておきます*1。比率は資料の図に示された整数です*1。この設問では行ごとに足すと100になります*1。
差の大きさは、その整数から筆者が算出しました*1。資料に載っている数字ではありません*1。
出典はIPA「2022年度組込み/IoTに関する動向調査」です*1。示された値を用いて図と表を作成する編集と加工を筆者が行いました*1。
利用の条件も資料に書かれています*1。政府標準利用規約に準拠する形で、出典の記載と、編集や加工を行った場合はその旨の記載が求められています*1。
集計対象は二重に絞られている
先に母集団を確かめます*1。Q16-1の集計対象は、回答者の全体ではありません*1。
資料に条件が書かれています*1。Q11のDXの取り組み状況で「非常に活発」「活発」「あまり活発ではない」と答えた企業に絞られています*1。
そのうえでN=843でした*1。取り組んでいないと答えた企業は入っていません*1。
ですから全企業の割合ではありません*1。「日本企業の11%が行動指針を策定している」とは書けません*1。
内容を尋ねたQ16-2はさらに絞られます*1。Q16で「策定している」と答えた企業だけが対象で、N=92です*1。
つまり2段階の絞り込みです*1。取り組んでいる企業の中の、指針を策定した企業の中での分布になります*1。
対象の区分も示されています*1。全体の集計はユーザー企業、メーカー企業、サブシステム提供企業、サービス提供企業、その他の5区分です*1。
位置づけ別だけ範囲が違います*1。こちらは「その他」を含まない4区分でした*1。
区分の中身も資料に定義があります*1。組込みやIoTの製品を利用して調達する側、製品を開発して提供する側、部品やサブシステムを提供する側、受託開発や教育研修や運用などのサービスを提供する側です*1。
策定しているのは11%、していないが89%
全体の分布から見ます*1。策定しているが11%で、回答数は92でした*1。
策定していないが89%です*1。回答数は751でした*1。
この2つを足すと843になります*1。設問のN=843と一致します*1。
言い換えると、取り組んでいると答えた企業の9割で、行動指針が文書になっていません*1。
ここで区分の意味に注意が必要です*1。どこから「策定している」と答えるかの基準は、資料に示されていません*1。
ですから89%を「何も決めていない企業」とは書けません*1。決めてはいるが文書の形になっていない企業も、この区分に入ります*1。
読み取れるのは配分です*1。指針という形で外に出ている状態が、1割ほどにとどまるという配分です*1。
規模別だけが単調に上がる、4%から21%
従業員数別の集計も載っています*1。3つの規模区分に分けたものです*1。
20人以下は回答数265でした*1。策定しているが4%、策定していないが96%です*1。
21人から100人は回答数314でした*1。順に8%、92%です*1。
101人以上は回答数264でした*1。順に21%、79%です*1。
並びを追います*1。4%、8%、21%です*1。規模が上がるにつれて単調に上がっています*1。
上端と下端の差も出しておきます*1。101人以上の21%と20人以下の4%で、17ポイントの差です*1。差は示された整数から算出しました*1。
3つの規模区分の回答数を足すと843になります*1。設問のN=843と一致します*1。
この形の理由は資料に記載がありません*1。ですから、人数が増えると指針が要るとも、指針があるから人数を増やせるとも書けません*1。
実務で使えるのは水準です*1。101人以上でも策定しているのは21%で、8割は文書になっていません*1。
位置づけと設立年では並びが変わる
位置づけ別の集計も示されています*1。「その他」を含まない4区分です*1。
ユーザー企業は回答数222で、策定しているが14%でした*1。メーカー企業は回答数196で13%です*1。
サブシステム提供企業は回答数137で12%でした*1。サービス提供企業は回答数265で7%です*1。
上端はユーザー企業の14%、下端はサービス提供企業の7%でした*1。差は7ポイントです*1。
4区分の回答数を足すと820です*1。「その他」を含まないため、設問のN=843と一致しません*1。
設立年別も載っています*1。1980年までが回答数284で15%、1981年から2000年が回答数255で7%、2001年以降が回答数194で8%でした*1。
この並びは単調ではありません*1。15%から7%へ下がり、8%へ戻る形です*1。
ここで回答数を確かめます*1。3区分を足すと733で、設問のN=843とは110件合いません*1。
差の理由は資料に記載がありません*1。ですからこの記事では110件の差をそのまま示し、設立年別は参考として扱っています*1。
提供先別も同じ形です*1。B2C中心が回答数114で13%、B2CとB2Bが半々が回答数49で8%、B2B中心が回答数651で11%でした*1。
半々の区分は回答数49です*1。ほかの2区分より小さいため、順位づけには使っていません*1。3区分の合計は814でした*1。
策定した92社の中身、経営者中心が64%
次に内容を見ます*1。Q16-2は、策定していると答えた92社に何を入れているかを尋ねたものです*1。
5つの項目が挙げられています*1。ビジョン駆動、価値重視、オープンマインド、継続的な挑戦、経営者中心です*1。
項目名は資料の表記のまま使いました*1。各項目が何を指すかの定義は、この資料に示されていません*1。ですから中身の説明はしていません*1。
ビジョン駆動は回答数90でした*1。入っているが89%、入っていないが11%です*1。
継続的な挑戦は回答数85でした*1。同じく89%と11%です*1。
価値重視は回答数85で、82%と18%でした*1。オープンマインドは回答数85で、78%と22%です*1。
経営者中心は回答数87でした*1。64%と36%です*1。
5つの中では経営者中心が下端です*1。上端の89%との差は25ポイントでした*1。差は示された整数から算出しました*1。
項目ごとに回答数が違う点も押さえます*1。85から90までの幅があり、Q16-2のN=92とも一致しません*1。
ですから項目どうしの細かい差は論じていません*1。母数が同じ92でそろっていないためです*1。
この集計から読めないこと
使う前に、限界を並べておきます*1。
第一に、集計対象が二重に絞られています*1。Q16-1はDXに取り組んでいると答えた企業だけ、Q16-2はさらに策定していると答えた企業だけです*1。
第二に、基準が示されていません*1。どこから「策定している」と答えるかは回答者の判断に任されています*1。
第三に、分量や運用が含まれません*1。指針が何ページで、どう使われているかを尋ねた設問ではありません*1。
第四に、成果との関係が読めません*1。指針の有無がどんな結果につながったのかは、この設問からは示されていません*1。
第五に、項目の定義がありません*1。Q16-2の5つの項目名は挙げられていますが、意味の説明はありません*1。
第六に、回答数が一致しません*1。全体と従業員数別は843ですが、位置づけ別は820、提供先別は814、設立年別は733でした*1。
第七に、各区分は別々の企業です*1。同じ企業の変化ではないため、規模や設立年が変わると策定状況も変わる、とは書けません*1。
第八に、範囲があります*1。この調査は組込みやIoTの分野が対象で、2022年11月から12月に実施されたものです*1。ほかの分野や、それより後の傾向は読めません*1。
指針がないまま引き継ぐときの4段
ここまでの分布を、自社の手順に落とします*1。
| 区分 | 策定している | 策定していない | 回答数 |
|---|---|---|---|
| 全体 | 11% | 89% | 843 |
| 20人以下 | 4% | 96% | 265 |
| 21〜100人 | 8% | 92% | 314 |
| 101人以上 | 21% | 79% | 264 |
| ユーザー企業 | 14% | 86% | 222 |
| メーカー企業 | 13% | 87% | 196 |
| サブシステム提供企業 | 12% | 88% | 137 |
| サービス提供企業 | 7% | 93% | 265 |
| 1980年まで | 15% | 85% | 284 |
| 1981〜2000年 | 7% | 93% | 255 |
| 2001年以降 | 8% | 92% | 194 |
1段目は、決めた事実を1つずつ書き出すことです。指針という形にする前に、直近で決めたことを箇条書きにします。
2段目は、決めた人と決めた日を残すことです。誰に確認すれば背景が出てくるかが、これで分かります。
3段目は、決め直す条件を書くことです。何が変わったらこの判断を見直すのかを1行で添えます。
4段目は、書けた範囲から外へ渡すことです。書けていない部分は社内に残します。
この順番にする理由は、分布に出ています*1。取り組んでいると答えた企業でも、策定しているのは11%でした*1。
101人以上に限っても21%です*1。8割は文書の形になっていません*1。ですから指針を先に作る前提だと、引き継ぎの手が止まります*1。
規模別の並びも同じ方向を指します*1。4%、8%、21%と、人数が増えた区分のほうが高い値でした*1。
逆に言えば、人数が少ないうちは文書になっていない状態が普通です*1。その状態で人が抜けると、決め方だけが消えます。
実務では、3段目と4段目が外部要員の枠になります。フリーランスを含む業務委託は、この枠と相性があります。書けた範囲を渡し、片づいたら戻せるためです。
逆に、1段目と2段目を渡すと、決めた事実の確認が外に出ます。誰が何を決めたかの記録は社内に置きます。
離脱の前に何を確かめるかは、担当者の離脱に備える3つの確認、技術情報は41.2%が個人依存で整理しています。
共有そのものの難しさはノウハウの蓄積・共有が87.4%、立場を分けても同じ水準で扱っています。
社内に置く決めの範囲は、社内ポリシーの整備状況から、外部要員に任せる領域を決める手順が下敷きになります。
規模で差がひらく項目のもう1つの例は、要件変更への対応とは、従業員数で20.1ポイントひらく項目で出しています。
最後に範囲を添えておきます*1。この調査は組込みやIoTの分野が対象で、2022年11月から12月に実施されたものです*1。ほかの分野やそれより後の傾向は読めません*1。
まとめ:指針を作る前に決めた事実を残す
第一に、資料です。IPAの「2022年度組込み/IoTに関する動向調査」は2023年6月12日に発行され、2023年7月25日に一部が改版されています。調査期間は2022年11月から12月で、調査票の配布は7,864件、回答は1,214件でした。回答者は企業の経営層や事業部門の責任者です。第二に、集計対象です。Q16-1は回答者の全体ではなく、Q11のDXの取り組み状況で「非常に活発」「活発」「あまり活発ではない」と答えた企業に絞られており、N=843でした。Q16-2はさらに、Q16で「策定している」と答えた企業だけが対象でN=92です。二重の絞り込みになっています。第三に、数値の扱いです。比率は資料の図に示された整数で、この設問では行ごとに足すと100になります。差はその整数から筆者が算出しました。第四に、全体の分布です。策定しているが11%で回答数92、策定していないが89%で回答数751でした。合計843は設問のNと一致します。第五に、規模別です。策定しているは20人以下4%、21〜100人8%、101人以上21%で、単調に上がります。上端と下端の差は17ポイントでした。ただし101人以上でも8割は策定していません。第六に、ほかの層別です。位置づけ別はユーザー企業14%が上端でサービス提供企業7%が下端、差は7ポイントでした。設立年別は15%、7%、8%で単調ではなく、3区分の合計733は設問のN=843と110件合いません。理由は資料に記載がないため参考として扱っています。第七に、内容です。策定した92社では、ビジョン駆動と継続的な挑戦が89%、価値重視82%、オープンマインド78%、経営者中心64%でした。項目ごとの回答数は85から90の幅があり、5つの項目の定義は資料に示されていません。第八に、限界です。どこから策定と答えるかの基準も、指針の分量や運用も、成果との関係も資料にありません。
よくある質問
DXの行動指針を策定している企業はどのくらいありますか。
IPAの2022年度組込み/IoTに関する動向調査のQ16-1では、「策定している」が11%で回答数92、「策定していない」が89%で回答数751でした。合計843は設問のN=843と一致します(確認日2026年9月7日)。
この数字は企業全体の割合ですか。
違います。Q16-1の集計対象は回答者の全体ではなく、Q11のDXの取り組み状況で「非常に活発」「活発」「あまり活発ではない」と答えた企業に絞られており、N=843です。内容を尋ねたQ16-2はさらに「策定している」と答えた92社だけが対象です。
会社の規模で違いはありますか。
「策定している」は20人以下が4%、21〜100人が8%、101人以上が21%で、単調に上がります。上端と下端の差は17ポイントです。ただし101人以上でも8割は策定していません。理由は資料に記載がありません。
企業の立場や設立年でも違いますか。
位置づけ別はユーザー企業14%が上端、サービス提供企業7%が下端で差は7ポイントです。設立年別は1980年までが15%、1981〜2000年が7%、2001年以降が8%で単調ではありません。設立年別の3区分の合計733は設問のN=843と110件合わず、理由は資料に記載がないため参考として扱っています。
策定している企業は指針に何を入れていますか。
Q16-2では、ビジョン駆動が89%、継続的な挑戦が89%、価値重視が82%、オープンマインドが78%、経営者中心が64%でした。項目ごとの回答数は85から90の幅があります。各項目の定義は資料に示されていないため、中身の説明はできません。
出典
- *1 参考:IPA「2022年度組込み/IoT産業の動向把握等に関する調査」(https://www.ipa.go.jp/digital/software-survey/kumikomi/kumikomi-iot2022.html)。発行日・改版日・調査期間・配布数7,864件・回答数1,214件の一次情報として(2026年9月確認)
- *2 参考:IPA「組込み/IoTに関する動向調査」調査結果(https://www.ipa.go.jp/digital/software-survey/kumikomi/ps6vr7000001tewn-att/kumikomi-iot2022.pdf)。Q16-1とQ16-2の比率・回答数・集計対象の絞り込み条件・選択肢・位置づけ別の4区分・従業員数別・提供先別・設立年別の一次情報として。示された値を用いた図表の作成という編集・加工を筆者が実施(2026年9月確認)
- *3 参考:IPA「アンケート調査票」(https://www.ipa.go.jp/digital/software-survey/kumikomi/ps6vr7000001tewn-att/kumikomi-iot2022-chousahyou.xlsx)。Q16の選択肢の並びと項目名の表記の確認として(2026年9月確認)
- *4 参考:IPA「組込み/IoT産業の動向把握等に関する調査」一覧(https://www.ipa.go.jp/digital/software-survey/kumikomi/index.html)。2018年度から2022年度まで年度ごとに調査が公開されているという構成の確認として(2026年9月確認)