LASSIC Media らしくメディア
工程別の工数比率の分布|見積りの工程配分の根拠の作り方
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)
この記事の結論
- 工程別の工数比率は、開発5工程の工数の合計に各工程が占める割合で、IPAの資料ではプロジェクトごとに計算した値の分布が示されています。
- 新規開発270件の中央値は製作31.6%、結合テスト20.1%、基本設計16.5%、詳細設計15.7%、総合テスト11.9%でした。
- 中央値を足しても100%にならないため、配分表としてではなく、自社の実績が分布のどこにあるかを確かめる物差しとして使います。
※ 本記事は2026年10月時点の公式情報(省庁・公的機関、および製品やサービスを提供する事業者が公開している資料)に基づきます。
工程別の工数比率とは、開発の各工程にかかった工数が、開発全体の工数の何割を占めるかを示す値です。情報処理推進機構(IPA)の「ソフトウェア開発分析データ集2022」本編では、新規開発270件の中央値が製作31.6%、結合テスト20.1%、基本設計16.5%、詳細設計15.7%、総合テスト11.9%でした。*2
本記事では、この表の出どころと集計の条件を確かめたうえで、新規開発・改良開発・再開発の工数比率、工期の比率との並び方の違い、情報通信業に絞った値を順に整理します。最後に、自社の見積りや増員の検討に当てるときの使い方をまとめます。
目次
工程別の工数比率とは
工程別の工数比率は、プロジェクトごとに「その工程の工数÷開発5工程の工数の合計」を計算した値です。開発5工程は、基本設計、詳細設計、製作、結合テスト、総合テスト(ベンダー確認)の5つで、要件定義や運用は含まれません。IPAの資料は、この比率を集めた分布を、件数、P25、中央値、P75、平均などの形で示しています。
出どころは、IPAが2022年9月26日に公開した「ソフトウェア開発分析データ集2022」です。最終更新は2025年8月28日です。事業終了に伴い今後の発行予定はないと明記されています。*1本編は、特に断りのない場合は直近6年間(2016〜2021年度)の開発データを対象にしており、工程別の工数比率は付録A3.3の表A3-3-8(新規開発)、表A3-3-9(改良開発)、表A3-3-10(再開発)に載っています。*2
集計の対象には条件があります。開発5工程のフェーズがすべてそろっていて、工程別の実績工数にすべて記入があり、各値が0より大きいプロジェクトだけです。工数は各工程の社内と外部委託の実績工数を合計し、人時に換算した値とされています。*2工数と工期の数え方そのものの違いは「工数と工期の違い|作業量は人時、期間は月数で別に数える」で扱っています。
新規開発の工数比率
新規開発の表A3-3-8は270件が対象です。中央値がいちばん高いのは製作で0.316、百分率にすると31.6%でした。資料も、新規開発では他の工程と比べて製作工程の工数の比率が高く、30%を超えていると書いています。*2次が結合テストの20.1%で、基本設計16.5%、詳細設計15.7%と続き、総合テストが11.9%でいちばん低くなっています。
| 工程 | P25 | 中央値 | P75 | 平均 |
|---|---|---|---|---|
| 基本設計 | 12.2% | 16.5% | 22.7% | 18.2% |
| 詳細設計 | 11.9% | 15.7% | 20.6% | 17.2% |
| 製作 | 23.7% | 31.6% | 39.7% | 31.6% |
| 結合テスト | 14.9% | 20.1% | 23.7% | 19.9% |
| 総合テスト | 6.8% | 11.9% | 17.0% | 13.0% |
幅も見ておきます。製作はP25が23.7%、P75が39.7%で、真ん中の半分の案件でも16ポイントの開きがあります。総合テストは6.8%から17.0%で、案件によって2倍以上違います。中央値だけを覚えるのではなく、P25からP75の範囲を「よくある幅」として持っておくと、自社の値と比べやすくなります。
設計の2工程を合わせると、中央値で見て製作とほぼ同じくらいの重さになります。ただし後で触れるとおり、中央値どうしを足すことには注意が要ります。工程ごとにどこまで社内に残しているかの分布は「工程別の内製化|設計開発テストだけ委託が34.4%」で扱っています。
改良開発と再開発の工数比率
同じ形の表が、改良開発と再開発にもあります。改良開発は改修・保守と拡張をまとめた区分で、表A3-3-9の対象は580件です。中央値は製作29.7%、結合テスト20.0%、基本設計15.3%、詳細設計15.2%、総合テスト14.2%でした。*2
資料は改良開発について、新規開発に比べて総合テスト工程の工数の比率が高いとしています。*2実際、総合テストの中央値は新規開発の11.9%に対して14.2%です。理由は資料に書かれていないため、自社の改修案件でも総合テストの比率を確かめておくと、見積りの手がかりになります。
再開発の表A3-3-10は63件が対象で、中央値は製作31.4%、結合テスト20.9%、詳細設計15.2%、基本設計14.3%、総合テスト13.6%でした。資料は、再開発でも製作工程の比率が高く、この傾向は新規開発や改良開発と同様だとしています。*2件数が少ないので、幅を持たせて読む必要があります。
| 工程 | 新規開発(270件) | 改良開発(580件) | 再開発(63件) |
|---|---|---|---|
| 基本設計 | 16.5% | 15.3% | 14.3% |
| 詳細設計 | 15.7% | 15.2% | 15.2% |
| 製作 | 31.6% | 29.7% | 31.4% |
| 結合テスト | 20.1% | 20.0% | 20.9% |
| 総合テスト | 11.9% | 14.2% | 13.6% |
3つの種別を並べると、製作が3割前後、結合テストが2割前後という並びは共通しています。違いが出るのは総合テストで、新規開発がいちばん低くなっています。
足しても100%にならない理由
表の中央値を足すと、新規開発では95.8%、改良開発では94.4%、再開発では95.4%になり、どれも100%になりません(筆者の計算)。資料自身も、開発5工程の合計を分母にした比率なので、P25、中央値、P75などをそれぞれ合計しても1にはならないと注意しています。*2
理由は、中央値が工程ごとに別々に取られているからです。製作の中央値を示した案件と、総合テストの中央値を示した案件は同じとは限りません。そのため、この表の中央値をそのまま「標準的な工数の配分」として積み上げることはできません。工程ごとに、比率の分布がどのあたりにあるかを見る表として使います。
自社の見積りで配分表を作りたいときは、まず自社の過去の案件で工程ごとの比率を計算し、その値がこの表のP25からP75に入っているかを確かめる、という順番が無理のない使い方です。
工期の比率と並べると
同じ付録A3.3には、工程別の実績月数の比率、つまり工期の比率の表もあります。新規開発の表A3-3-5は192件が対象で、中央値は製作24.4%、結合テスト19.2%、基本設計19.0%、総合テスト17.3%、詳細設計16.3%でした。資料は、新規開発では他の工程に比べて基本設計工程と製作工程の月数の比率が高いとしています。*2
工数の比率と比べると、製作は工数で31.6%、工期で24.4%と、工数の側が高く出ます。総合テストは逆で、工数11.9%に対し工期17.3%です。期間のわりに工数が少ない工程と、期間のわりに工数が多い工程があるということです。
ただし工期の表は192件、工数の表は270件で、同じプロジェクトの集まりではありません。並べて分かるのは傾向の向きまでで、同じ案件の中で期間と工数がどれだけずれるかは読めません。改良開発の工期(表A3-3-6・378件)と再開発の工期(表A3-3-7・40件)でも、製作の中央値は工数の側が高く出ています。*2
情報通信業に絞った工数比率
データ集2022には、業種で絞った「業種編」もあります。本編が各種業種の混在したデータで分析しているのに対し、業種で層別した統計情報がデータ分析上有用であるとの判断から作られたもので、プロジェクト数の多い金融・保険業、情報通信業、製造業の3業種が対象です。*3
情報通信業編の表A3-3-8(新規開発・26件)では、工数比率の中央値が製作30.2%、結合テスト20.6%、基本設計18.5%、詳細設計16.9%、総合テスト12.3%でした。*3製作が3割、結合テストが2割で、総合テストがいちばん低いという並びは本編と同じです。
ただし26件と件数が少なく、本編の270件とは対象の規模が違います。自社の業種に近い値として参考にしつつ、判断の軸には件数の多い本編の値を置くほうが安定します。
自社の見積りと増員に使う手順
この表は、自社の数字を当てる物差しとして使います。資料も、本書が提供できるのはベンチマーキング的な考え方である、と書いています。*2手順は次の4段です。
1段目は、自社の終わった案件で、5工程それぞれの工数を集め直すことです。社内と外部委託の工数を合計し、工程に振り分けられない工数は別に残します。2段目は、案件ごとに工程別の工数比率を計算し、表のP25からP75と比べることです。範囲から大きく外れる工程があれば、作業の範囲の切り方や記録の付け方が違っていないかを先に確かめます。
3段目は、進行中の案件で、残りの作業を工程ごとに見積ることです。工数の比率が高い製作と結合テストは、作業の量が多いぶん、人を加えたときに担当を分けやすい工程です。4段目は、加える人に任せる範囲と期間を決めることです。設計の判断が要る作業は社内に残し、量のある作業を期間を区切って業務委託の人材に任せる形が取りやすくなります。
何人を加えるかは要員の計画から決めます。要員計画に必要な4つの数字と決める順番で手順を出しています。
まとめ:工程別の工数比率は物差しとして使う
工程別の工数比率は、開発5工程の工数の合計に各工程が占める割合です。IPAの「ソフトウェア開発分析データ集2022」本編の表A3-3-8では、新規開発270件の中央値が製作31.6%、結合テスト20.1%、基本設計16.5%、詳細設計15.7%、総合テスト11.9%でした。改良開発580件と再開発63件でも製作が3割前後、結合テストが2割前後で、改良開発は総合テストが14.2%と新規開発より高く出ます。工期の比率と並べると、製作は工数の側が、総合テストは工期の側が高くなります。中央値は工程ごとに別々に取られているため足しても100%にならず、配分表として積み上げることはできません。自社の実績を工程別に計算し、P25からP75の範囲と比べる物差しとして使います。
よくある質問
IPAの工程別工数比率はどの資料に載っていますか。
「ソフトウェア開発分析データ集2022」本編の付録A3.3に、新規開発(表A3-3-8・270件)、改良開発(表A3-3-9・580件)、再開発(表A3-3-10・63件)の工程別の実績工数の比率が載っています。特に断りのない場合は2016〜2021年度のデータが対象です。業種編には情報通信業などに絞った表もあります。
製作工程の工数比率はどれくらいですか。
新規開発の中央値は31.6%で、P25が23.7%、P75が39.7%でした。改良開発は29.7%、再開発は31.4%で、どの種別でも5工程の中でいちばん高い比率です。資料も、新規開発では製作工程の工数の比率が高く30%を超えていると書いています。
5工程の比率を足すと100%になりますか。
なりません。資料は、P25、中央値、P75などをそれぞれ合計しても1にはならないと注意しています。新規開発の中央値を足すと95.8%でした。中央値は工程ごとに別々の案件から取られているためで、配分表として積み上げずに工程ごとの分布として読みます。
要件定義の工数比率も分かりますか。
この表では分かりません。対象は基本設計から総合テスト(ベンダー確認)までの開発5工程で、比率の分母もこの5工程の工数の合計です。要件定義を含めた配分を知りたい場合は、自社の実績で別に計算する必要があります。
要員体制のご相談を
工数が集まる工程のどこを切り出すか。分け方から担当が一緒に検討します。
Remoguは、リモート前提で全国から即戦力のITプロ人材を調達するサービスです。リラシクは、扱う求人がすべてリモートワークのITエンジニア専門転職エージェントです。どちらもLASSICが運営しています。
出典
- *1 参考:IPA「ソフトウェア開発分析データ集2022」(https://www.ipa.go.jp/digital/software-survey/metrics/metrics2022.html)。公開日・最終更新日・事業終了に伴い今後の発行予定はない旨の記述の一次情報として(2026年10月7日確認)(2026年10月確認)
- *2 参考:IPA「ソフトウェア開発分析データ集2022」本編(https://www.ipa.go.jp/digital/software-survey/metrics/hjuojm000000c6it-att/000102171.pdf)。付録A3.3 表A3-3-5〜表A3-3-10(工程別の実績月数・実績工数の比率、件数・P25・中央値・P75・平均、層別定義、合計しても1にならない旨の注記)、はじめに(直近6年間の対象)、A4.4.2(ベンチマーキング的な考え方)として(2026年10月確認)
- *3 参考:IPA「ソフトウェア開発分析データ集2022 業種編(情報通信業)」(https://www.ipa.go.jp/digital/software-survey/metrics/hjuojm000000c6it-att/000102173.pdf)。業種編作成の背景と対象3業種、表A3-3-8(新規開発・26件)の中央値として(2026年10月確認)