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工程別の工数は製作30.2%、増員先を決める手順
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)
この記事の結論
- 工数は製作が30.2%:5工程のうち最も高い比率でした*2。
- 工期では製作が25.2%:同じ上端でも工数より4.9ポイント低い値です*2。
- 2番目が入れ替わる:工期は基本設計、工数は結合テストが2番目でした*2。
※ 本記事は2026年9月時点の公式情報(省庁・公的機関・ベンダー公式ドキュメント)に基づきます。
遅れている案件に人を足すとき、どの工程に足すかで迷います。
手が足りないのは分かっていても、増やして進む工程と、増やしても日数が縮まない工程が混じっているからです。
手がかりは、開発5工程の実績を工期と工数の両方で集計した統計です。
IPAの資料では、情報通信業の新規開発で工数の比率の中央値が製作30.2%、工期の比率は製作25.2%でした*2。
並べ直すと2番目が入れ替わります*2。工期は基本設計20.3%、工数は結合テスト20.6%です*2。
目次
増やして進む工程と、そうでない工程がある
遅れの立て直しは、人を足すところから始まります。作業が残っている以上、手を増やすのが素直な打ち手です。
ところが工程によって効き方が違います。人数を足せば量をこなせる工程と、待ちや確認で日数が決まる工程が同じ案件の中に並んでいるためです。
その配分を集計した統計があります*1。IPAの「ソフトウェア開発分析データ集2022」で、今回はその業種編を見ます*1。
業種編が作られた理由も書かれています*2。本編は各種業種が混在したプロジェクトデータで分析しているため、業種で層別した統計情報が有用との判断から作成されたとされています*2。
対象の業種も示されています*2。プロジェクト数の多い金融・保険業、情報通信業、製造業の3業種です*2。
業種編の中身も書かれています*2。本編の2章、4章、5章、A1章、A3.3節の分析項目に対して、各業種のデータで対応する形です*2。
今回見るのはA3.3.5とA3.3.8です*2。開発5工程の工期と工数を、それぞれ比率で示した表になります*2。
資料の性質も先に書きます*1。データ集2022は公開が2022年9月26日、最終更新は2025年8月28日です*1。事業終了に伴い今後の発行予定はないと明記されています*1。
数値の扱いも断っておきます*2。比率は資料の表に示された値です*2。百分率への換算と、工期と工数の差、P75をP25で割った倍率は筆者が算出しました*2。
分母は5工程の合計、分位を足しても1にならない
使う前に、比率の作り方を確かめます*2。各プロジェクトについて、開発5工程の実績月数または工数の合計を分母として、工程ごとの比率を出しています*2。
ここに資料の注記があります*2。開発5工程における比率になるため、P25、中央値、P75などをそれぞれ合計しても1にはならないと書かれています*2。
実際に足すと確かめられます*2。工期の中央値を百分率にして足すと94.5%、工数の中央値では98.5%でした*2。どちらも100%になりません*2。
ですから、この表の中央値を積み上げて工程の配分表を作ることはできません*2。行ごとに別々の分布として扱います*2。
工期の表にはさらに条件があります*2。開発プロジェクトの種別が新規開発であること、5工程それぞれの実績月数に記入があり、各月数が0より大きいことです*2。
月数の作り方も書かれています*2。工程の開始日と終了日の実績データから算出し、その実績データがない場合は月数の実績データで補完するとされています*2。
工数の表の条件も見ておきます*2。工程別の実績工数にすべて記入があり、各値が0より大きいことが条件です*2。
工数の中身も押さえます*2。各工程の社内と外部委託の実績工数を合計した人時換算値とされています*2。社内だけの数字ではありません*2。
Nも違います*2。工期の表はN=22、工数の表はN=26でした*2。同じプロジェクトの集合ではありません*2。
ですから工期と工数の差は、順序として読みます*2。差のポイントは出しますが、その大きさを論じることはしません*2。
工期の比率は製作25.2%、基本設計20.3%
工期の側から見ます*2。中央値がいちばん高いのは製作で0.252、百分率にすると25.2%でした*2。
2番目は基本設計です*2。0.203で20.3%になります*2。
3番目以下は近い値が並びます*2。結合テストが0.168、詳細設計が0.165、総合テストが0.157でした*2。
百分率では16.8%、16.5%、15.7%です*2。3つの差は1.1ポイントの中に収まります*2。
資料も同じ形を記しています*2。新規開発では、他の工程に比べて基本設計工程と製作工程の月数の比率が高いとされています*2。
過去との比較も書かれています*2。これは2014年度から2019年度と同様である、と記されています*2。
幅も出しておきます*2。基本設計はP25が0.169、P75が0.268でした*2。
製作はP25が0.218、P75が0.305です*2。総合テストは0.136と0.205でした*2。
両端も見ておきます*2。製作は下端0.145、上端0.443です*2。基本設計は0.103と0.421でした*2。
この記事では「下端」「上端」と呼びますが、資料では分布の両端を示す別の欄名になっています*2。値そのものは資料のものです*2。
工期そのものを工数から見積る話は工期は工数の3乗根とは、工数10倍でも月数は2.1倍で扱っています。
工数の比率は製作30.2%、結合テスト20.6%
次に工数の側です*2。中央値の上端は同じく製作で0.302、百分率で30.2%でした*2。
資料もここを書いています*2。開発工数で見ると、新規開発では他の工程と比べて製作工程の工数の比率が高く、30%を超えているとされています*2。
2番目は結合テストでした*2。0.206で20.6%です*2。
3番目が基本設計です*2。0.185で18.5%になります*2。
下端は総合テストです*2。0.123で12.3%でした*2。
工期の側と比べると、下端の水準が違います*2。工期では総合テストが15.7%でしたが、工数では12.3%です*2。
幅も出しておきます*2。製作はP25が0.265、P75が0.347でした*2。結合テストは0.147と0.225です*2。
総合テストの幅も見ます*2。P25が0.085、P75が0.173でした*2。
工程ごとにどこまで外へ出しているかの分布は工程別の内製化|設計開発テストだけ委託が34.4%で扱っています。
並べ方を変えると2番目が入れ替わる
2つの表を並べ直します*2。工期の中央値の順は、製作、基本設計、結合テスト、詳細設計、総合テストでした*2。
工数の中央値の順は違います*2。製作、結合テスト、基本設計、詳細設計、総合テストです*2。
2番目が入れ替わります*2。工期では基本設計が20.3%で2番目、工数では結合テストが20.6%で2番目になります*2。
上端と下端は変わりません*2。どちらの表でも製作が上端、総合テストが下端でした*2。
差も出しておきます*2。工数の百分率から工期の百分率を引くと、製作がプラス5.0ポイント、結合テストがプラス3.8ポイントです*2。
逆向きの工程もあります*2。総合テストがマイナス3.4ポイント、基本設計がマイナス1.8ポイントでした*2。
詳細設計はほとんど動きません*2。プラス0.4ポイントです*2。
ただしNが違います*2。工期がN=22、工数がN=26なので、この差は同じプロジェクトの中で計った差ではありません*2。
ですから順序として読みます*2。工数の比率が高い側に製作と結合テストが来て、工期の比率が高い側に基本設計と総合テストが来る、という並びです*2。
理由は書かれていません*2。なぜこの並びになるのかを分析した表ではないため、因果については書けません*2。
それでも増員の判断には使えます。人数で量をこなす作業がどの工程に集まっているかを、実績の比率で確かめられるからです*2。
幅と平均の扱い
中央値だけで決めないために、幅も見ておきます*2。P75をP25で割ると、工程ごとのばらつきが並びます*2。
工数の側でいちばん広いのは総合テストでした*2。0.173を0.085で割ると2.04倍です*2。
製作はいちばん狭い形でした*2。0.347を0.265で割って1.31倍です*2。
工期の側も出しておきます*2。結合テストが1.91倍、詳細設計が1.63倍、基本設計が1.59倍、総合テストが1.51倍、製作が1.40倍でした*2。
つまり製作は、工期でも工数でも比率が安定している工程です*2。総合テストは案件によって振れ幅が大きい形になります*2。
平均は根拠にしません*2。工数の詳細設計は上端が0.737、標準偏差が0.127で、平均0.181は中央値0.169より高く出ています*2。
総合テストも同じ形です*2。上端が0.589、標準偏差が0.107で、平均0.147に対し中央値は0.123でした*2。
逆に平均のほうが低い行もあります*2。工数の結合テストは平均0.183、中央値0.206です*2。
ですから掛け算の前提には中央値を置き、幅はP25とP75で持ちます*2。
改良開発では総合テストが12.9%
同じ節には改良開発の工数の表もあります*2。こちらはN=48でした*2。
中央値を並べます*2。製作が0.291、結合テストが0.185、基本設計が0.164、詳細設計が0.131、総合テストが0.129です*2。
百分率にすると29.1%、18.5%、16.4%、13.1%、12.9%になります*2。
順序は新規開発の工数と同じでした*2。製作、結合テスト、基本設計、詳細設計、総合テストの並びです*2。
資料の記述も添えておきます*2。2014年度から2019年度と比較して総合テストの比率が低くなり、新規開発の比率とほぼ同じである、と書かれています*2。
実際、新規開発の総合テストは12.3%、改良開発は12.9%でした*2。0.6ポイントの差です*2。
ただしNが違います*2。新規開発がN=26、改良開発がN=48なので、水準を比べるのではなく並びを見るにとどめます*2。
引き取った案件の種別で体制の置き方を変える話は月あたりの要員数の違い、新規開発7.7人と改修・保守5.6人で扱っています。
この集計から読めないこと
使う前に、限界を並べておきます*2。
第一に、遅延の情報が含まれません*2。予定に対して遅れたかどうかを示す表ではないため、遅れた案件の配分とは書けません*2。
第二に、理由がありません*2。なぜ製作の比率が高いのかを分析した表ではないため、因果については書いていません*2。
第三に、内訳が読めません*2。工数は社内と外部委託の合計なので、どちらがどれだけかは示されていません*2。
第四に、工期と工数は別のNです*2。22と26なので、同じプロジェクトの中での対応は取れません*2。
第五に、比率は合計になりません*2。資料の注記どおり、分位を足しても1にはならない形です*2。
第六に、業種が限られます*2。この記事で扱ったのは情報通信業編だけで、金融・保険業編と製造業編は扱っていません*2。
第七に、母集団が小さい値です*2。工期はN=22、工数はN=26なので、参考の範囲として扱います*2。
第八に、時点の限界があります*1。データ集2022は2022年の公開で、事業終了に伴い今後の発行予定はないと明記されているため、それより後の傾向は読めません*1。
増員先を決める4段
ここまでの分布を、自社の手順に落とします*2。
| 工程 | 工期の中央値 | 工数の中央値 | 差(工数-工期) | 工数のP25/P75 |
|---|---|---|---|---|
| 基本設計 | 20.3% | 18.5% | -1.8ポイント | 12.9%/22.9% |
| 詳細設計 | 16.5% | 16.9% | +0.4ポイント | 12.6%/21.0% |
| 製作 | 25.2% | 30.2% | +5.0ポイント | 26.5%/34.7% |
| 結合テスト | 16.8% | 20.6% | +3.8ポイント | 14.7%/22.5% |
| 総合テスト | 15.7% | 12.3% | -3.4ポイント | 8.5%/17.3% |
1段目は、残っている作業を工程で分けることです。担当者ごとの持ち分ではなく、基本設計から総合テストまでの5つに割り当てます。
2段目は、工数の比率が高い工程から見ることです。製作が30.2%、結合テストが20.6%で、この2つで半分ほどを占めます*2。
3段目は、その工程の中で人数で吸収できる作業を切り出すことです。手順が決まっていて量があるものから順に並べます。
4段目は、判断が要る作業を社内に残し、切り出した側を期間を区切って外に出すことです。
2段目でこの順にする理由は、工数の比率が「人手がどれだけ乗っているか」を示す値だからです*2。工期の比率が高くても、工数が薄い工程では人を足しても日数が縮むとは限りません。
総合テストがその形に当たります*2。工期では15.7%を占めるのに、工数では12.3%でした*2。
逆に製作と結合テストは、工数の比率のほうが高く出ています*2。プラス5.0ポイントとプラス3.8ポイントです*2。
ただし因果は書けません*2。この表は実績の配分であって、増員の効き方を測ったものではありません*2。
実務では、切り出した側が外部要員の枠になります。フリーランスを含む業務委託は、この枠と相性があります。範囲を区切って渡し、片づいたら戻せるためです。
枠に何人を置くかは、要員の計画から決めます。要員計画に必要な4つの数字と決める順番で手順を出しています。
最後に範囲を添えておきます*2。この集計は情報通信業の新規開発が対象で、開発5工程がそろい各工程の実績が記入されたプロジェクトに限られます*2。
まとめ:工数の比率が高い工程から切り出す
第一に、資料です。IPAの「ソフトウェア開発分析データ集2022」は公開が2022年9月26日、最終更新が2025年8月28日で、事業終了に伴い今後の発行予定はないと明記されています。今回見たのは業種編のうち情報通信業編で、業種編は本編が業種混在のデータで分析しているのに対し、業種で層別した統計が有用との判断から作成されたものです。対象はプロジェクト数の多い金融・保険業、情報通信業、製造業の3業種でした。第二に、比率の作り方です。各プロジェクトで開発5工程の実績月数または工数の合計を分母として比率を出しているため、資料はP25、中央値、P75をそれぞれ合計しても1にはならないと明記しています。実際に中央値を足すと工期が94.5%、工数が98.5%でした。第三に、工期です。新規開発の中央値は製作25.2%、基本設計20.3%、結合テスト16.8%、詳細設計16.5%、総合テスト15.7%で、N=22です。第四に、工数です。製作30.2%、結合テスト20.6%、基本設計18.5%、詳細設計16.9%、総合テスト12.3%で、N=26でした。第五に、並びです。上端はどちらも製作、下端はどちらも総合テストですが、2番目が基本設計と結合テストで入れ替わります。第六に、差です。工数から工期を引くと製作がプラス5.0ポイント、結合テストがプラス3.8ポイント、総合テストがマイナス3.4ポイントでした。ただしNが22と26で違うため、差の大きさは論じていません。第七に、幅です。工数のP75をP25で割ると総合テストが2.04倍、製作が1.31倍で、製作は比率が安定している工程でした。第八に、限界です。遅延したかどうかも、比率が高い理由も、工数の社内と外部委託の内訳も含まれていません。
よくある質問
開発5工程の工数はどの工程に集まりますか。
IPAのデータ集2022業種編(情報通信業)の表A3-3-8では、新規開発の工数の比率の中央値が製作0.302で最も高く、百分率で30.2%でした。次が結合テストの20.6%です。N=26で、資料も製作工程の比率が30%を超えていると記しています(確認日2026年9月7日)。
工期の比率も同じ並びですか。
上端と下端は同じですが、2番目が入れ替わります。工期の中央値は製作25.2%、基本設計20.3%、結合テスト16.8%、詳細設計16.5%、総合テスト15.7%でした。工数では結合テストが2番目です。工期はN=22で、工数のN=26とは別の集合になります。
5工程の比率を足すと100%になりますか。
なりません。資料はP25、中央値、P75をそれぞれ合計しても1にはならないと明記しています。実際に中央値を百分率にして足すと、工期が94.5%、工数が98.5%でした。各プロジェクトの合計を分母にした比率の分位なので、積み上げて配分表にすることはできません。
平均値は使えますか。
この表では中央値を使います。工数の詳細設計は上端0.737、標準偏差0.127で、平均0.181が中央値0.169より高く出ています。総合テストも上端0.589で平均0.147に対し中央値は0.123でした。逆に結合テストは平均0.183、中央値0.206と平均のほうが低くなります。
この数字から遅れの原因はわかりますか。
わかりません。この表は実績の配分であって、予定に対して遅れたかどうかも、比率が高い理由も含まれていません。工数は社内と外部委託の合計の人時換算値なので、どちらがどれだけかも読み取れない内容です。
出典
- *1 参考:IPA「ソフトウェア開発分析データ集2022」(https://www.ipa.go.jp/digital/software-survey/metrics/metrics2022.html)。公開日・最終更新日・事業終了に伴う発行予定なしの記述、業種編3編の公開の一次情報として(2026年9月確認)
- *2 参考:IPA「ソフトウェア開発分析データ集2022 業種編(情報通信業)」(https://www.ipa.go.jp/digital/software-survey/metrics/hjuojm000000c6it-att/000102173.pdf)。表A3-3-5・表A3-3-8・表A3-3-9のN・分位・平均・標準偏差、層別定義と対象データ、業種編作成の背景と対応章、比率の分位を合計しても1にならない旨の注記の一次情報として(2026年9月確認)
- *3 参考:IPA「ソフトウェア開発分析データ集2022」本編(https://www.ipa.go.jp/digital/software-survey/metrics/hjuojm000000c6it-att/000102171.pdf)。本編がA3.3節に工期と工数の分析を持つという構成の確認として(2026年9月確認)
- *4 参考:IPA「ソフトウェア開発分析データ集」(https://www.ipa.go.jp/digital/software-survey/metrics/index.html)。業種編3編・サマリー版・グラフデータという構成と、2005年からのデータ収集の沿革の記述として(2026年9月確認)