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2026.09.07 採用支援コラム

DXの全社展開の進め方|1部署の成果を他部署に広げる手順

監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)

霧の中へ続く水上の長い橋を上から見た様子

この記事の結論

  • DXに取り組んでいる企業のうち、全社で一斉に実施しているのは26%で、一部でのみ実施が42%でした。
  • 一部で実施したあと全社に広げた企業の割合は、20人以下の23%から101人以上の40%へと規模とともに高くなります。
  • 広げる作業は始めた担当者だけに頼らず、対象の選び方は社内で決め、件数の多い作業から外部の人材に任せると進めやすくなります。

※ 本記事は2026年9月時点の公式情報(省庁・公的機関、および製品やサービスを提供する事業者が公開している資料)に基づきます。

ある部署ではDX(デジタル技術で仕事の進め方を変える取り組み)が動いているのに、隣の部署では何も変わっていない。始めた担当者は目の前の運用で手いっぱいで、ほかの部署に広げる話は次の期に回ってしまう——。DXに取り組む企業では、こうして取り組みが止まることがよくあります。IPA(情報処理推進機構)の調査でも、DXに取り組んでいる企業の42%が「一部でのみ実施」と答えています。*2 DXの全社展開とは、一部の部署で始めたデジタル化や業務の見直しを、会社全体の進め方として広げることを指します。

全社展開には、最初から全社で一斉に始めるやり方と、一部の部署で試してから広げるやり方があります。どちらが多いかは会社の規模や立場によって変わります。本記事では、DXや開発の体制づくりを担う方に向けて、全社展開がどこまで進んでいるか、規模や立場による違い、一部で止まった取り組みの広げ方、そして外部に委託するときに確認したい点を整理します。

DXの全社展開とは

DXの進め方を企業に尋ねた調査に、IPAの「2022年度組込み/IoTに関する動向調査」があります。機器に組み込むソフトウェアや、ネットにつながる機器を扱う企業を対象にした調査です。調査は2022年11月から12月にかけて行われ、調査票の配布は7,864件、回答は1,214件です。回答したのは、企業の経営層や事業部門の責任者です。*1

この調査では、DXの進め方を「全社で一斉に実施している」「一部で実施後に全社展開」「一部でのみ実施」の3つから1つ選ぶ形で尋ねています。*3 このうち全社展開と呼べるのは、1つ目と2つ目の2つです。

3つ目の「一部でのみ実施」は、広げられずにいる企業だけを指すわけではありません。対象を一部の部署にとどめると決めている企業も、同じ区分に入ります。ですから、この区分の割合が高いことを、そのまま「取り組みがうまくいっていない」と受け取るのは早すぎます。自社がどちらに当たるのかを先に確かめておくと、社内で広げるかどうかを話し合うときに前提がずれにくくなります。

全社に広げている企業の割合

この設問の集計対象は、回答した企業の全体ではありません。取り組み状況を尋ねた別の設問で、DXの取り組みを「非常に活発」「活発」「あまり活発ではない」と答えた企業に絞られており、その数は848社です。*2 つまり、すでにDXに取り組んでいる企業の中で、どこまで広げているかを示す数字です。「日本企業の26%が全社でDXを実施している」という意味にはなりません。

IPA「2022年度組込み/IoTに関する動向調査」のQ15から作成した図。集計対象はQ11でDXに取り組んでいると答えた企業に絞られ、N=848。全体では全社で一斉に実施が26%(回答数222)、一部で実施後に全社展開が32%(271)、一部でのみ実施が42%(352)。従業員数別は全社で一斉・段階展開・一部でのみの順に、20人以下32%・23%・45%、21人から100人18%・32%・49%、101人以上30%・40%・30%。位置づけ別はユーザー企業23%・41%・35%、メーカー企業25%・34%・41%、サブシステム提供企業27%・26%・47%、サービス提供企業29%・28%・44%。提供先別はB2C中心19%・29%・52%、B2CとB2Bが半々31%・20%・49%、B2B中心28%・33%・39%。あわせて、一部で止まった取り組みを広げる4つの段階と、この集計から読めないことを示す。比率は資料の図に示された整数で、差は示された整数から計算した。

全体では、「全社で一斉に実施している」が26%(222社)、「一部で実施後に全社展開」が32%(271社)、「一部でのみ実施」が42%(352社)でした。*2 1つ目と2つ目を足すと58%で、取り組んでいる企業の半数を超える企業が全社に広げています。3つの区分の中では、「一部でのみ実施」がいちばん多い回答でした。

この設問から分かるのは、進め方の分布までです。どこからを「全社」と答えるかの基準は示されておらず、回答した人の判断に任されています。その進め方を選んだ理由や、進め方と成果の関係も尋ねていません。対象は組込みやIoT(機器をネットにつなぐ仕組み)を扱う企業で、調査の時点も2022年の1回だけです。ほかの分野の企業や、その後の変化にそのまま当てはめることはできません。

会社の規模による違い

従業員数で3つに分けた集計もあります。20人以下(265社)では、「全社で一斉に実施している」が32%、「一部で実施後に全社展開」が23%、「一部でのみ実施」が45%でした。21人から100人(314社)では順に18%、32%、49%、101人以上(266社)では30%、40%、30%です。*2

「全社で一斉に実施している」は、32%、18%、30%と、規模が大きくなるにつれて増えるわけでも減るわけでもありません。21人から100人の18%がいちばん低い値です。21人から100人の企業では、「一部でのみ実施」も49%と3つの規模の中で最も高く、ほぼ半数が一部の部署にとどまっています。

規模とともに一方向に動いているのは、「一部で実施後に全社展開」だけです。20人以下の23%から、21人から100人の32%、101人以上の40%へと高くなります。*2 101人以上の企業では、この進め方が3つの中で最も多い回答でした。従業員の多い会社ほど、一部の部署で試してから広げる進め方をとる企業が多いことになります。こうした会社では、試した部署から次の部署へ広げる作業を、誰がいつ担当するかを決めておく必要があります。

立場と提供先による違い

この調査では、回答した企業を立場で4つに分けています。組込みやIoTの製品を利用・調達する側の「ユーザー企業」、製品を開発して提供する「メーカー企業」、部品や、製品の一部になる装置を提供する「サブシステム提供企業」、受託開発や教育研修、運用などのサービスを提供する「サービス提供企業」です。*2

「全社で一斉」「一部で実施後に全社展開」「一部でのみ」の順に見ると、ユーザー企業(223社)は23%、41%、35%、メーカー企業(197社)は25%、34%、41%、サブシステム提供企業(137社)は27%、26%、47%、サービス提供企業(265社)は29%、28%、44%でした。*2

「一部でのみ実施」はサブシステム提供企業の47%が最も高く、ユーザー企業の35%が最も低く、その差は12ポイントです。「一部で実施後に全社展開」では、最も高い立場と最も低い立場が入れ替わり、ユーザー企業の41%が最も高く、サブシステム提供企業の26%が最も低く、差は15ポイントでした。ユーザー企業は、試してから広げる進め方が最も多い立場です。「全社で一斉」の差は、サービス提供企業の29%とユーザー企業の23%で6ポイントにとどまります。

製品やサービスの提供先で分けた集計では、消費者向けが中心のB2C中心(115社)で「一部でのみ実施」が52%と半数を超え、「全社で一斉」は19%でした。企業向けが中心のB2B中心(651社)では、順に28%、33%、39%です。B2CとB2Bが半々の企業は49社と少なく、ほかの2つの区分と並べて比べるには数が足りません。*2

一部で止まった取り組みをどう広げるのか

一部の部署で始めた取り組みを広げるときは、次の4つの段階で進めると、何から手をつけるかがはっきりします。

  • まだ広がっていない業務を1つ選ぶ
  • その業務を、判断する作業と、件数が多く繰り返す作業に分ける
  • 繰り返す作業の中身と、終えるまでの期間を決める
  • その作業から外部の人材に任せる

たとえば、紙の申請書を画面からの申請に切り替える取り組みなら、どの申請を対象にするか、承認の流れをどう変えるかは判断する作業です。一方、各部署の申請書の項目を新しい画面に登録し直す作業や、部署ごとの操作手順書を作る作業は、件数が多く繰り返す作業に当たります。後者は「経理部と総務部の申請書の登録を来月末までに」のように、中身と期間で書き出せます。

こうして分けるのは、始めた担当者が最初の部署の仕事で手いっぱいになり、広げる作業が後回しになりやすいためです。始めた担当者はその業務に最も詳しいので、次の部署への展開も同じ人に任されがちです。けれども、その担当者は最初の部署の運用も抱えています。広げる作業には、担当者と期間を先に決めておくほうが進めやすくなります。

件数が多く繰り返す作業は、作業の中身と期間が決まっていれば、業務委託で加わる専門人材にも任せやすくなります。外部に任せる作業量が全体のどのくらいかという目安は「外部委託工数比率とは、中央値63.4%が示す体制の相場」で、作業量を人数に置き換える手順は「要員計画に必要な4つの数字と決める順番」で扱っています。

つまずきやすい点

一つ目は、判断する作業まで委託先に任せてしまうことです。どの業務を対象にするか、承認の流れをどう変えるかまで社外に決めてもらうと、委託が終わったあと、次の部署に広げるときに社内で判断できる人がいません。対象の選び方と判断の基準は社内に残し、委託先には、決まった内容どおりに登録や手順書づくりをする作業を任せます。任せる領域を社内の決まりごとから決める考え方は「社内ポリシーの整備状況から、外部要員に任せる領域を決める手順」で整理しています。

二つ目は、他社の割合を自社の目標にそのまま使うことです。この調査の数字は、DXに取り組んでいる組込み・IoT分野の企業の分布です。「全社展開が58%だから、うちも全社に広げなければ遅れている」とは言えません。自社で広げる意味がある業務かどうかを、業務ごとに確かめるほうが先です。

三つ目は、全社に一度に広げようとして、準備が終わらないまま時間が過ぎることです。対象の部署が多いほど、各部署の仕事の進め方の違いを調べるだけで時間がかかります。まず1つの業務を次の1つの部署に広げ、そこで作った手順書や登録の進め方を、その次の部署でも使う形にすると、2つ目以降の部署での作業量を見積もりやすくなります。

まとめ:DXの全社展開で確かめておきたい3つの点

DXの全社展開を進めるうえで、確かめておきたい点は3つに整理できます。第一に、DXに取り組んでいる企業でも4割強は一部の部署にとどまっており、自社の取り組みが広げられずにいるのか、一部にとどめると決めているのかを見分けること。第二に、規模の大きい会社ほど一部で試してから広げる企業が多いので、広げる作業の担当者と期間を先に決めておくこと。第三に、判断する作業は社内に残し、中身と期間を書き出せる繰り返しの作業から任せることです。この3点を踏まえておけば、「最初の部署ではうまくいったのに、何年たってもほかの部署に広がらない」という事態を避けやすくなります。広げる作業の体制に迷いがあれば、外部の手を借りるのも一つの選択肢です。

LASSICに相談するメリット

広げる段取りを決めたあとも、件数が多く繰り返す作業を誰が担当するかは残ります。始めた担当者の手が空くのを待たずに、作業の中身と期間を決めて外部の専門人材に加わってもらう方法も、選択肢に入れておけます。

Remoguは、株式会社LASSICが運営するフリーランス・業務委託のITプロ人材サービスです。リモート前提で全国から登録が集まっており、登録は約20,000名規模、その約8割が開発系です。人材が必要になった時点から4時間以内に候補者を提案し、最短1週間で実際の業務開始まで進みます(条件によっては実現できない場合があります)。

よくある質問

「一部で実施後に全社展開」は、全社に広げ終わった企業のことですか

資料には、広げ終わった企業か、広げている途中の企業かを分ける定義がありません。どちらも同じ区分に入っていると考えておくのが無難です。自社と比べるときは、この区分をそのまま「全社展開の完了」と読まないようにします。

回答数を足すと848社にならないのはなぜですか

全体の内訳の222社・271社・352社を足すと845社で、設問の848社と3社合いません。理由は資料に書かれていません。*2 立場別は「その他」を含まない4区分で合計822社、提供先別は3区分で合計815社です。

事業分野によって違いはありますか

事業分野別の集計は16区分あり、「一部でのみ実施」はその他42%、工場/プラント41%、オフィス/店舗41%、流通/物流41%が高い側、建築/土木26%と農林水産27%が低い側でした。*2 ただし分野ごとの回答数は54社から357社まで幅があり、回答の少ない分野は、数社の違いで割合が大きく変わります。

広げる作業を外部に任せるとき、最初に何を用意すればよいですか

任せたい作業の名前と、終えるまでの期間を書き出した一覧を用意します。あわせて、作業の途中で判断が必要になったときに社内の誰に確認するかを決めておくと、委託先が作業を止めずに進められます。

DXを広げる体制を相談したいとき

一部の部署で止まっている取り組みについて、社内に残す作業と任せる作業の分け方からご相談いただけます。

Remoguとリラシクなら、リモートワークで働く社員の候補者も、業務委託で開発に加わる専門人材も探せます。

Remoguは、リモート前提で全国から即戦力のITプロ人材を調達するサービスです。リラシクは、扱う求人がすべてリモートワークのITエンジニア専門転職エージェントです。どちらもLASSICが運営しています。

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出典

  1. *1 参考:IPA「2022年度組込み/IoT産業の動向把握等に関する調査」(https://www.ipa.go.jp/digital/software-survey/kumikomi/kumikomi-iot2022.html)。出典:IPA(情報処理推進機構)。発行日(2023年6月12日)・改版日(2023年7月25日)・調査期間(2022年11月〜12月)・配布数7,864件・回答数1,214件・回答者の立場を参照(2026年9月確認)
  2. *2 参考:IPA「組込み/IoTに関する動向調査」調査結果(https://www.ipa.go.jp/digital/software-survey/kumikomi/ps6vr7000001tewn-att/kumikomi-iot2022.pdf)。出典:IPA「2022年度組込み/IoTに関する動向調査」。Q15(DXの進め方、N=848。集計対象はQ11で取り組み状況を「非常に活発」「活発」「あまり活発ではない」と答えた企業)の全体・従業員数別・位置づけ別・提供先別・事業分野別の値を参照。比率は図に示された整数で、行ごとの合計は99から101になる。全体の内訳の回答数の合計は845でN=848と3件合わない。示された値を用いて図を作成する編集・加工を行った(2026年9月確認)
  3. *3 参考:IPA「アンケート調査票」(https://www.ipa.go.jp/digital/software-survey/kumikomi/ps6vr7000001tewn-att/kumikomi-iot2022-chousahyou.xlsx)。出典:同調査の調査票。Q15の選択肢の並びと表記を参照(2026年9月確認)




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