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エンジニア採用による外注依存の脱却計画、仕事を分けると進めやすい
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)
この記事の結論
- 外注依存の脱却計画は、委託をなくす計画ではなく、社員に移す仕事と委託を続ける仕事を分ける計画です。
- 日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)の調査では、売上高1兆円未満の企業の7割以上が、IT人材の採用・育成が不足していると答えています。
- IT部門の人員を増やすと答える企業は1〜2年先より3〜5年先のほうが多く、採用の計画も2つの期間に分けて立てます。
※ 本記事は2026年9月時点の公式情報(省庁・公的機関、および製品やサービスを提供する事業者が公開している資料)に基づきます。
仕様の細かい点を聞かれても、答えられるのは委託先の担当者だけ。委託先を見直したくても、見積りが妥当かどうかを社内で判断できない——。システム開発の多くを長く委託してきた会社では、こうした状態が起こりがちです。外注依存の脱却計画とは、委託先が担っている仕事のうち社員に移すものを決め、エンジニア採用と育成でその担い手をそろえていく計画のことです。
脱却計画は、委託先との契約をすべて終わらせるための計画ではありません。社員が担う仕事を増やしながら、委託を続ける仕事は続け、頼み方を見直していきます。ただし万能ではなく、採用した社員が仕事を覚えるまでは委託先に頼る部分が残り、その間は委託先の担当者と一緒に作業する期間が必要です。本記事では、開発体制を見直すマネージャーに向けて、脱却計画が必要になる背景、採用の時期の考え方、社員に移す仕事と委託を続ける仕事の分け方、そして計画を立てる手順を整理します。
目次
外注依存の脱却計画とは
委託先が担っている仕事は、大きく3つに分けられます。1つ目は、何を作るか、どの順番で直すかを決める仕事です。仕様や優先順位の決定、委託先の選定、納められた成果物の確認がこれに当たります。2つ目は、設計、プログラムの作成、テスト、運用といった、決まった仕様どおりにシステムを作り、動かし続ける仕事です。3つ目は、システムの移行や大きな改修のように、ある期間だけ作業量が大きく増える仕事です。
外注依存が問題になるのは、多くの場合、1つ目の決める仕事まで委託先に頼っている状態です。決める仕事を社内で担えないと、委託先の提案が妥当かどうかを確かめられず、委託先を替えることも難しくなります。一方で、2つ目と3つ目の仕事を委託すること自体は、多くの会社で普通に行われている分担です。
そのため、脱却計画でまず社員に移すのは決める仕事です。作る・動かす仕事は、今後も社内で改修を続けたいシステムの分から少しずつ移し、作業量が一時的に増える仕事は委託を続ける——この順番で考えると、計画を立てやすくなります。
なぜエンジニア採用が先に問われるのか
一般社団法人日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)の「企業IT動向調査2026」は、2025年9月から10月に、東証上場企業などのIT部門長に尋ねた調査です(回答957社)。*1 IT部門の機能・能力のうち「IT人材の採用・育成」について売上高別に見ると、売上高100億円未満から1兆円未満までの3つの区分では、71.3%から77.8%の企業が「不足している」と答えています。1兆円以上の企業でも55.3%です。*1
同じ調査は、「IT人材の採用・育成」が充足している企業(153社)と不足している企業(700社)とで、IT部門が経営から求められる役割にどこまで応えられているかも比べています。「事業創造やビジネス面の変革(DX等)」、つまり新しい事業づくりや事業のやり方の見直しという役割に「十分応えられている」「一部応えられている」と答えた企業の合計は、充足している企業で53.6%、不足している企業で36.0%でした。*1
システムの安定稼働でも、充足している企業は91.5%、不足している企業は80.6%で、充足している企業のほうが高くなっています。*1 JUASはこの結果から、「IT人材の採用・育成能力は経営に対するIT部門の貢献に大きく影響している」とまとめています。*1 決める仕事を社員に移そうとしても、社員を採用して育てる力が社内に無ければ、計画は進みません。脱却計画に、エンジニア採用の進め方を含めておくのはこのためです。
採用の計画は何年先まで見るか
同じ調査では、IT部門の人員数を今後増やすか減らすかを、短期(1〜2年)と中長期(3〜5年)に分けて尋ねています。結果はDI値(「増加」と答えた企業の割合から「減少」と答えた企業の割合を引いた値)で示されていて、IT部門は短期が35.8ポイント、中長期が48.5ポイントでした。*1 人員を増やすと答える企業は、1〜2年先より3〜5年先のほうが多いということです。
2021年度からの推移を見ても、短期のDI値は34.3〜36.4ポイントで横ばいが続き、中長期は毎年度、短期を9.6〜14.9ポイント上回っています。*1 JUASは、IT人材を獲得したいという要求がさらに強まり、獲得も難しくなっていくと見ています。*1
エンジニア採用の計画も、この2つの期間に分けて考えると整理しやすくなります。1〜2年のうちに採用するのは、決める仕事を担う人です。仕様を決め、委託先の成果物を確かめる人が社内にいなければ、後から採用した人に仕事を教えることもできません。3〜5年のうちに、作る・動かす仕事のうち、今後も社内で改修を続けたいシステムの分について、担い手を増やしていきます。採用が計画どおりに進まないことも前提にして、1〜2年の分は時期まで具体的に書き、3〜5年の分は職種と人数の目安にとどめておくと、見直しがしやすくなります。
社員に移す仕事と委託を続ける仕事
経済産業省が企業のデジタル化の進め方を示した「デジタルガバナンス・コード3.0」は、企業に望ましい方向性として、必要な人材が明確になっており「確保のための取組を実施している(計画的な育成、中途採用、外部アドバイザー・パートナーの活用、外部からの出向、事業部門・IT担当部門間の人事異動等)」ことを挙げています。*2 中途採用も外部のパートナーの活用も、人材を確保する方法として同じ文に挙げられています。
脱却計画でも、すべての仕事を採用した社員で担う必要はありません。次の表は、仕事の種類ごとに、社員に移すか委託を続けるかを考えるときの目安を整理した例です。
| 仕事 | 分け方 | 理由 |
|---|---|---|
| 仕様と優先順位を決める | 社員に移す | 委託先の提案が妥当かどうかを社内で判断するため |
| 委託先の選定と成果物の確認 | 社員に移す | 見積りや納品物を比べる基準を社内に残すため |
| 今後も社内で改修を続けるシステムの設計・プログラムの作成 | 段階的に社員に移す | 仕様を知る人が社内に残り、改修の相談をしやすくなるため |
| テスト・運用の決まった手順の作業 | 委託を続けてもよい | 手順が文書になっていれば、担当者が替わっても引き継げるため |
| 移行や大きな改修など、一時的に増える作業 | 委託を続ける | 作業が終わると、社員が担う仕事がなくなるため |
表で「委託を続けてもよい」とした作業でも、手順書や設計書を誰が書き、どこに保管するかは社内で決めておきます。技能を社内に残すかどうかで採用と委託を分ける考え方は「エンジニア採用と外注依存の分かれ目、技能を社内に残すかで選ぶ」で、特定の委託先から離れにくくなる状態への対策は「ベンダーロックインの対策、企業が実施する4つの取り組み」で扱っています。
脱却計画の立て方
計画は、次の順番で書いていくと進めやすくなります。
- 委託している作業を書き出す(作業名、委託先、契約の終わる時期、社内で内容を説明できる人がいるか)
- 前の表の分け方をもとに、社員に移す作業と委託を続ける作業を決める
- 社員に移す作業ごとに、採用する職種と時期を、1〜2年と3〜5年に分けて書く
- 採用した社員と委託先の担当者が一緒に作業する期間を決め、その期間が契約の更新時期までに終わるように組む
- 委託を続ける作業について、作業の中身と期間、納めてもらう成果物を契約に書き直す
1つ目で「社内で内容を説明できる人がいるか」を書くのは、どの作業が委託先の担当者にしか分からなくなっているかを見つけるためです。説明できる人がいない作業ほど、社員に移すときに時間がかかります。書き出した一覧は、2つ目以降の判断の材料になるので、委託している作業をもれなく載せます。
4つ目の一緒に作業する期間は、採用した社員が委託先の担当者から仕事を引き継ぐための期間です。委託先にとっては請け負う作業が減る話なので、計画の早い段階で伝え、引き継ぎの作業も委託の中身として契約に書いておくと、協力を得やすくなります。契約の更新時期までに採用が決まらない場合は、更新する期間を短くして、採用の進み具合を見ながら決め直す方法もあります。
5つ目は、委託を続ける作業の頼み方を見直す段階です。作業の中身と期間、何を納めてもらうかを書いた契約にしておけば、社員が成果物を確かめやすくなり、ほかの委託先と比べることもできるようになります。成果物を見て、委託を続けるかどうかを社内で判断できるようになれば、脱却計画の目的は果たせています。
つまずきやすい点
一つ目は、何を任せるかを決める前に採用を始めてしまうことです。採用した人に任せる作業が決まっていないと、結局は委託先の担当者に聞きながら作業することになり、決める仕事が社内に移りません。手順の2つ目までを先に終えてから、求人を出します。
二つ目は、採用が決まったところで、委託先との契約を先に終わらせてしまうことです。引き継ぎの期間を置かずに委託先の担当者が抜けると、仕様を知る人が社内にも社外にもいない状態になります。一緒に作業する期間を置き、採用した社員が一人で仕様を説明できるようになったことを確かめてから、委託する作業を減らします。
三つ目は、決める仕事を採用した1人に集めてしまうことです。その人が辞めると、委託先に頼っていたときと同じ状態に戻ります。決める仕事は、少なくとも2人が内容を説明できる状態を目標にし、1〜2年の採用計画に2人目を迎える時期も書いておきます。
まとめ:外注依存の脱却計画で確かめておきたい3つの点
エンジニア採用で外注依存から抜け出すうえで、確かめておきたい点は3つに整理できます。第一に、委託している仕事を、決める仕事、作る・動かす仕事、一時的に増える仕事に分け、決める仕事から社員に移すこと。第二に、採用の計画を1〜2年と3〜5年に分け、先に決める仕事の担い手を採用すること。第三に、採用した社員と委託先の担当者が一緒に作業する期間を置き、委託を続ける作業は中身と期間を書いた契約に直すことです。この3点を踏まえておけば、「採用はしたのに、結局は委託先に聞かないと何も決められない」という事態を避けやすくなります。社員に移す作業の見極めや、引き継ぎの期間に社員と一緒に作業する人材の確保に迷いがあれば、外部の手を借りるのも一つの選択肢です。
よくある質問
脱却計画は、委託先に伝えたほうがよいですか
伝えたほうが進めやすくなります。仕事の引き継ぎには、委託先の担当者の協力が欠かせないためです。伝えるときは、契約をすべて終わらせる計画ではないことと、引き継ぎの作業も委託の中身に含めることを、あわせて説明します。
採用した社員には、最初にどの仕事を任せればよいですか
委託先から納められた成果物の確認から始めるのがおすすめです。設計書やテストの結果を読み、分からない点を委託先の担当者に質問することで、仕様を知る機会が増えます。そのうえで、仕様や優先順位を決める打ち合わせにも加わってもらいます。
情報子会社がある場合も、人員を増やす意向は同じですか
JUASの調査では、グループ内でシステムを担う子会社(情報子会社)の人員数のDI値は短期が22.7ポイント、中長期が27.6ポイントで、IT部門より低い値でした。*1 増やす意向はあるものの、IT部門ほど強くはありません。情報子会社が決める仕事を担っている場合は、親会社のIT部門と情報子会社のどちらに担い手を置くかも計画に書いておきます。
中途採用がなかなか進まないときは、どうすればよいですか
デジタルガバナンス・コード3.0は、人材を確保する方法として、中途採用のほかに計画的な育成や、事業部門・IT担当部門間の人事異動も挙げています。*2 業務をよく知る事業部門の社員を異動で迎え、仕様を決める仕事から担当してもらう方法もあります。
外注依存の脱却計画を相談したいとき
社員に移す作業と委託を続ける作業の整理から、ご相談いただけます。
Remoguとリラシクなら、リモートワークで働く社員の候補者も、業務委託で開発に加わる専門人材も探せます。
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出典
- *1 参考:JUAS「企業IT動向調査2026」(PDF)(https://juas.or.jp/cms/media/2026/04/JUAS_IT2026.pdf)。出典:一般社団法人 日本情報システム・ユーザー協会「企業IT動向調査2026」(2025年度調査)。アンケート調査は2025年9月5日から10月24日、調査対象は東証上場企業とそれに準じる企業の計4500社、回収数957社(有効回答率21.3%)。図表6-2-1(組織別 IT人材増減の動向)、図表6-2-2(IT部門の人員数DI値の推移)、図表6-4-1(売上高別「IT人材の採用・育成」機能・能力の充足状況)、図表6-4-3(「IT人材の採用・育成」機能・能力の充足状況別 IT組織の貢献状況)を参照。図の合計値は資料の値から筆者が足し合わせた(2026年9月確認)
- *2 参考:経済産業省「デジタルガバナンス・コード3.0~DX経営による企業価値向上に向けて~」(PDF)(https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/investment/dgc/dgc3.0.pdf)。出典:経済産業省「デジタルガバナンス・コード3.0」(2020年11月9日策定、2024年9月19日改訂)。3-2「デジタル人材の育成・確保」の望ましい方向性を参照(2026年9月確認)