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エンジニア採用と外注依存、技能継承の手段は中途採用56.2%
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)
この記事の結論
- 技能継承の取組は中途採用が56.2%でいちばん多い:厚生労働省の令和7年度能力開発基本調査で、技能継承の取組を行っている事業所が選んだ割合です(複数回答)。*1
- 事業所外への外注は16.3%:10の選択肢のうち6番目です。*1 外注そのものの利用率ではありません。
- 情報通信業の取組率は89.7%:技能継承の取組を行っている事業所の割合で、全産業では83.7%です。*1 取組の中身のほうは産業別に分かれていません。*1
※ 本記事は2026年9月時点の公式情報(省庁・公的機関、および製品やサービスを提供する事業者が公開している資料)に基づきます。
社内のベテランが持っている技能を、どうやって次の人へ渡すか。エンジニア採用でこの話になると、中で採って育てるのか、外に頼むのかという形になりがちです。外注依存という言葉が出てくるのもこの場面です。この記事では、社外の会社に頼む割合が高い状態を外注依存と呼びます。
どの取組がどれだけ選ばれているかを数えた公的な調査があります。厚生労働省の「令和7年度能力開発基本調査」*1 です。技能継承の取組として何をしているかを、事業所に複数回答で聞いています。*1 1つの事業所がいくつも選べるので、採用と外注のどちらか一方を選ばせた調査ではありません。*1 この調査は毎年実施され、結果が公開されています。*3
本記事は、開発の現場を回しているマネージャに向けたものです。前半で調査の数値を読み、後半でエンジニア採用と外注の使い分けを整理します。
目次
技能継承に取り組む事業所は83.7%、情報通信業は89.7%
まず、技能継承に取り組んでいる事業所がどのくらいあるかです。調査は、技能継承の取組を行っている事業所の割合を83.7%としています。*1 産業別では「製造業」が92.9%でいちばん高く、「建設業」と「学術研究,専門・技術サービス業」がどちらも90.6%で続きます。*1 「情報通信業」は89.7%で、総数の83.7%より高い値でした。*1 いちばん低いのは「宿泊業,飲食サービス業」の67.8%です。*1 産業によって20ポイント以上の開きがあります。ポイントとは割合どうしの差のことです。この引き算はこの記事で行ったものです。
企業規模別では「300〜999人」の90.2%がいちばん高く、いちばん低い「30〜49人」でも75.9%です。*1 区分は企業の規模ですが、数えているのは事業所です。*1 事業所は、工場や支店のように場所ごとに区切った単位を指します。1つの会社が複数の事業所を持つことがあります。この調査には企業調査と事業所調査と個人調査があり、図63と図64は事業所調査に置かれています。*1 対象は常用労働者を30人以上雇用する民営事業所で、約24万事業所から約7,200事業所を選んでいます。*2 30人未満の事業所は入っていません。
取組の内容は10項目、中途採用が56.2%でいちばん多い
では、取り組んでいる事業所は何をしているのか。調査は10の選択肢を挙げ、複数回答で聞いています。*1 分母は技能継承の取組を行っている事業所です。*1
| 取組の内容 | 割合 |
|---|---|
| 中途採用を増やしている | 56.2% |
| 退職者の中から必要な者を選抜して雇用延長、嘱託による再雇用を行い、指導者として活用している | 54.7% |
| 新規学卒者の採用を増やしている | 30.0% |
| 不足している技能を補うために契約社員、派遣社員を活用している | 22.5% |
| 退職予定者の伝承すべき技能・ノウハウ等を文書化、データベース化、マニュアル化している | 22.0% |
| 事業所外への外注を活用している | 16.3% |
| 技能継承のための特別な教育訓練により、若年・中堅層に対して技能・ノウハウ等を伝承している | 15.6% |
| 伝承すべき技能・ノウハウ等を絞り込んで伝承している | 12.4% |
| 高度な技能・ノウハウ等が不要なように仕事のやり方、設計等を変更している | 10.7% |
| その他の取組 | 5.9% |
いちばん多いのは「中途採用を増やしている」の56.2%です。*1 次が「退職者の中から必要な者を選抜して雇用延長、嘱託による再雇用を行い、指導者として活用している」の54.7%、3番目が「新規学卒者の採用を増やしている」の30.0%でした。*1 上位3つはいずれも、人を採るか残ってもらうかの取組です。ただし4番目の「契約社員、派遣社員を活用している」にも、自社が直接雇う契約社員が含まれます。*1 どこまでを「人を採る」に含めるかで線は動きます。この記事は上位3つまでを採用の取組として扱いました。
「事業所外への外注を活用している」は16.3%で、10のうち6番目です。*1 「不足している技能を補うために契約社員、派遣社員を活用している」は22.5%でした。*1 複数回答なので、同じ事業所が採用と外注の両方を選んでいることもあります。割合を足すと100%を超えます。
外注の16.3%をどう読むか
ここから読み取れるのは、技能をつなぐ手段として「人を採る」が「外部への委託」より多く選ばれている、ということです。ただし調査は理由を聞いていないので、なぜその順になるのかは分かりません。また、外注が技能継承に向いていないという判断を調査が示しているわけでもありません。この読み取りはこの記事のものです。
外注依存という言い方は、今回参照した資料には出てきません。16.3%にとどまることを、外注が劣るという意味に取ることもできません。外注は、技能を社内に残すための取組としては選ばれにくいというだけで、仕事を進める手段としての良し悪しを調査は聞いていません。*1 調査が数えているのは、技能継承という目的に対して何をしているかです。*1
10の選択肢のうち、社外の会社に頼むものは「事業所外への外注を活用している」の16.3%だけです。*1 「不足している技能を補うために契約社員、派遣社員を活用している」の22.5%には、自社が直接雇う契約社員も入っています。*1 この2つを足して外注依存の度合いとすることはできません。また、どれも技能継承の取組としての話で、日々の開発を誰が動かしているかを数えたものではありません。
採用と外注の使い分けで決める3つのこと
ここからは、エンジニア採用と外注をどう使い分けるかの決めごとを3つ挙げます。調査がこの決め方を示しているわけではなく、10の選択肢の並びからこの記事で組み立てたものです。
1つめは、技能を社内に残すかどうかを先に決めることです。調査で上位に並んだ3つは、人を採るか残ってもらう取組でした。*1 残すならそちら側を選ぶことになる、というのがこの記事の見方です。残さなくてよいなら、外注や派遣で仕事を回す形になります。どちらが正しいということではなく、決めておかないと両方が中途半端になります。この見方はこの記事のものです。
2つめは、技能を文書にする作業を誰の仕事にするかです。調査の選択肢には「退職予定者の伝承すべき技能・ノウハウ等を文書化、データベース化、マニュアル化している」があり、22.0%が選んでいます。*1 これは人を採るのとは別の取組です。誰が文書にするかまでは調査が扱っていないので、社内でも委託先でも進められるというのはこの記事での考え方です。
3つめは、外注を使うなら何を受け取るかを決めることです。作業の結果だけを受け取るのか、手順の説明まで受け取るのかで、社内に残るものが変わります。ここは調査が扱っていない範囲で、この記事での考え方です。
つまずきやすい難所
一つめのつまずきは、16.3%を外注の利用率として持ち出すことです。この割合は、技能継承の取組として外注を挙げた事業所の割合です。*1 日々の開発を外注しているかどうかは、この調査では分かりません。
二つめは、この数字を情報通信業の数字として読むことです。産業別に出ているのは取組の有無までで、取組の内容は産業別に分かれていません。*1 16.3%の分母は、全産業の「技能継承の取組を行っている事業所」です。*1
三つめは、56.2%と16.3%の差を「採用を選んだ事業所は外注を選ばなかった」と読むことです。複数回答なので、両方を選んだ事業所も含まれます。差が示しているのは、それぞれを選んだ事業所の多さであって、二者択一の結果ではありません。
外注時に確認しておきたい点
外部の要員(自社の社員ではなく、作業を委託して働いてもらう人)に入ってもらうときは、技能を社内に残すかどうかを委託先の会社に先に伝えてください。残すなら、手順の説明や設計の理由を文書で受け取ることを取り決めておきます。何をいつまでに受け取るのかを決めておかないと、作業が終わったあとに頼むことになります。この取り決めはこの記事での考え方で、調査が示した形ではありません。
正社員として採るか外注にするかは、技能を社内に置きたいかどうかで分かれます。調査で上位に並んだ3つは、人を採るか残ってもらう取組でした。*1 なぜその順になるのかは調査にありません。どちらが優れているという話でもありません。
中途で入った人が早く辞める理由はなぜ中途エンジニアは早期に離職するのかで扱っています。
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委託先の会社に何を求めるかはSESパートナー選定の注意点|経産省の基準が挙げる26項目で扱っています。
まとめ:技能継承の取組は採用が多く、外注は6番目
読み取れることは3つです。第一に、技能継承の取組を行っている事業所は83.7%で、情報通信業では89.7%でした。*1 第二に、取組の内容は産業別に分かれておらず、全産業の数字です。*1 その中で「中途採用を増やしている」が56.2%でいちばん多く、「事業所外への外注を活用している」は10のうち6番目の16.3%でした。*1 第三に、上位3つは人を採るか残ってもらう取組でした。*1 なお複数回答なので、同じ事業所が採用と外注の両方を選んでいることもあります。*1 エンジニア採用と外注のどちらを選ぶかは、技能を社内に残したいかどうかで分かれます。これはこの記事での見方で、調査は理由を聞いていません。
よくある質問
技能継承の取組でいちばん多いのは何ですか
「中途採用を増やしている」で56.2%です。*1 次が退職者の再雇用による指導者としての活用で54.7%、3番目が新規学卒者の採用を増やしているで30.0%でした。*1 複数回答です。確認日は2026年9月19日です。
外注はどのくらい選ばれていますか
「事業所外への外注を活用している」は16.3%で、10の選択肢のうち6番目です。*1 これは技能継承の取組として外注を挙げた事業所の割合で、外注そのものの利用率ではありません。確認日は2026年9月19日です。
情報通信業だけの数字はありますか
技能継承の取組を行っている事業所の割合は、情報通信業で89.7%です。*1 取組の内容のほうは産業別に分かれていません。*1 確認日は2026年9月19日です。
外注依存という言い方は調査に出てきますか
今回参照した資料に記載はありません。調査が数えているのは、技能継承の取組として何をしているかまでで、外注の多い少ないを評価してはいません。確認日は2026年9月19日です。
この割合の分母は何ですか
技能継承の取組を行っている事業所です。*1 調査の対象は常用労働者を30人以上雇用する民営事業所で、約24万事業所から約7,200事業所を選んでいます。*2 確認日は2026年9月19日です。
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出典
- *1 参考:厚生労働省「令和7年度能力開発基本調査」結果の概要(PDF)(https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/104-07b.pdf)。出典:厚生労働省「令和7年度能力開発基本調査」。図63(技能継承の取組を行っている事業所、産業・企業規模別)と図64(技能継承の取組の内容、複数回答)の一次情報として。取組の名前と並びは資料の表記に従った(2026年9月確認)
- *2 参考:厚生労働省「能力開発基本調査の標本設計」(PDF)(https://www.mhlw.go.jp/content/001510152.pdf)。調査の範囲(常用労働者を30人以上雇用する民営事業所)、母集団の大きさ(事業所調査 約24万事業所)、標本の大きさ(約7,200事業所)の一次情報として(2026年9月確認)
- *3 参考:厚生労働省「能力開発基本調査」(調査の概要ページ)(https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/104-1.html)。調査が毎年実施され、結果が公開されていることの確認として(2026年9月確認)