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SESパートナーで受注案件の要員確保、頼む工程と探し方を決める
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)
この記事の結論
- 協力会社が下請として最も多く受けている工程は、開発(プログラミング)で56.6%です。
- 協力会社が仕事を受けるきっかけは、決まった取引先との協力関係と、人のつてを合わせて7割を超えます。
- ソフトウェア業の事業所の約4割は従業者4人以下なので、1社から出せる人数を先に聞いて社数を決めます。
※ 本記事は2026年9月時点の公式情報(省庁・公的機関、および製品やサービスを提供する事業者が公開している資料)に基づきます。
受注は決まったのに、開発の工程に入る月になっても必要なプログラマーの人数がそろわない。いつもの協力会社に声をかけたら、別の会社の技術者が来ると言われた——。受託開発の現場では、こうした食い違いが起こりがちです。SESパートナーによる要員確保とは、受注案件で自社の社員だけでは足りない人数や技術を、協力会社(SESパートナー)の技術者に、SES(技術者に開発に加わってもらう取引)で自社の案件に入ってもらい、人数をそろえることを指します。
人手が要る時期にだけ人数を増やせるので、受託開発では広く使われているやり方です。ただし万能ではなく、協力会社の多くは少人数の会社で、1社から出してもらえる人数には限りがあります。本記事では、受託開発やSIer(システム開発を請け負う会社)で案件の体制を組むマネージャーに向けて、パートナーに頼る理由、頼む工程、探し方、会社の規模、そして実際に働く会社を確かめるときに注意したい点を整理します。
目次
SESパートナーによる要員確保とは
パートナーになる側の実態を知る手がかりになるのが、公正取引委員会が2022年6月に公表した「ソフトウェア業の下請取引等に関する実態調査報告書」です。資本金3億円以下の事業者2万1000社にアンケートを依頼し、4,739社から回答を得ています(回答率22.6%)。*1 下請として仕事を受ける側、つまりSESパートナーになる側の会社に聞いた調査です。
回答した会社に取引上の位置づけを尋ねると、「元請」が40.4%、「中間下請」が38.2%、「最終下請」が21.3%でした(回答数4,589)。*1 元請は発注者から直接仕事を受ける会社、中間下請は受けた仕事をさらに別の会社へ発注する立場の会社、最終下請はその先で作業を受ける会社です。資本金3億円以下の会社でも4割が元請で、受注案件の要員を別の会社に頼む側にも立っています。
ここでいう要員確保は、遅れが出てから人を追加することとは別のものです。受注した時点で、どの工程に、何人を、いつからいつまで入れるかを決め、その人数を自社の社員とSESパートナーの技術者に分けて割り当てる計画を指します。計画が先にあれば、パートナーに伝える条件もそのまま書けます。
なぜパートナーに頼るのか
報告書は、ソフトウェア制作の取引では、エンドユーザーのニーズの多様化、プログラム言語などから生じる専門性、1社だけでは必要な人員を確保できないといった理由から、外注取引が積極的に利用されていると書いています。*1 一定規模以上の開発では、元請から二次、三次の下請へと発注が続く構造ができているとも述べています。
資本金3億円超の大手の事業者へのヒアリングでは、「大規模プロジェクトであっても人手が必要なのはピーク時のみであり、一時的な繁忙期に備えて閑散期にもスタッフを雇用し続けるのは難しい。」という意見がありました。*1 新しい技術が次々と生まれ、ユーザーのニーズも多様になっているため、すべての技術に通じた技術者をあらかじめ自社で雇っておくのは難しい、という声も挙がっています。
一時的に人数が足りない時期と、自社にない技術——パートナーに頼る理由は、この2つに分けて考えると整理しやすくなります。人数が理由なら、同じ技術を持つ人を何人、いつから出してもらえるかを聞きます。技術が理由なら、その技術を使ってどんな作業を担当してきたかを、1人ずつ確かめます。どちらの理由で頼むのかによって、声をかける相手も聞くことも変わります。
どの工程を頼むのか
報告書は、直近の事業年度に下請として最も多く受注した工程を、1つだけ選んでもらう形で聞いています(回答数2,589)。最も多いのは「開発(プログラミング)工程」の56.6%で、「設計工程(外部設計・内部設計)」の20.6%が続きます。*1
ユーザーへの提案・要件定義を主に受けている会社は5.5%、テスト工程は1.3%でした。パートナーの会社が主に受けているのはプログラムを作る工程で、要件定義やテストを主な仕事にしている会社は少数です。
パートナーの会社が最も多く受けているのは、受注案件の工程表でいう開発の工程です。一方で、要件定義(システムに求めることを決める工程)や設計から加わってほしい場合や、テストの工程だけを頼みたい場合は、その仕事を主に受けている会社が少ないことを前提に、早めに探し始めておくと進めやすくなります。
パートナーをどう探すのか
報告書には、下請の会社が同業者から仕事を受ける経緯として最も多いものを1つ選んでもらった設問もあります(回答数2,588)。「元々、特定のベンダーの協力会社等となっており、その関係での受注が多い」が43.0%、「代表者・従業員の人間関係(コネ・ツテ)等を通じて受注することが多い」が32.1%でした。*1
| 経緯 | 全体 | 中間下請 | 最終下請 |
|---|---|---|---|
| 協力会社としての関係での受注 | 43.0% | 43.7% | 41.7% |
| 代表者・従業員の人間関係を通じた受注 | 32.1% | 30.4% | 35.2% |
| ユーザーやベンダーからの指名 | 11.2% | 11.0% | 11.7% |
| コンペや営業活動の結果 | 9.4% | 10.8% | 6.9% |
| その他 | 4.3% | 4.1% | 4.6% |
コンペや営業活動の結果として仕事を受けることが多いという回答は、全体で9.4%にとどまります。パートナーの会社から見ると、仕事の多くは決まった取引先とのつながりから来ています。発注する側から見れば、受注案件の要員確保は、いつもの協力会社に声をかけるところから始まることが多いということです。
取引先が決まっているため、いつもの協力会社で人数がそろわなかったときに、次に声をかける先が決まっていないことがあります。受注案件の見込みが立った段階で、同じ条件を2社以上に伝えておくと、1社で足りないと分かったときにまた一から探し直さずに済みます。
パートナーの会社の規模
報告書は、総務省・経済産業省の2020年経済構造実態調査をもとに、ソフトウェア業の事業所2万5977か所を従業者の規模別に並べています。従業者4人以下の事業所が1万476か所で、全体の約40.3%を占めます。*1 筆者が5〜9人の3,946か所を加えると、10人未満の事業所は1万4422か所で、全体の55.5%になります。
| 従業者規模 | 事業所数 | 割合 |
|---|---|---|
| 4人以下 | 10,476 | 40.3% |
| 5〜9人 | 3,946 | 15.2% |
| 10〜29人 | 6,139 | 23.6% |
| 30〜49人 | 1,925 | 7.4% |
| 50〜99人 | 1,764 | 6.8% |
| 100〜299人 | 1,357 | 5.2% |
| 300〜499人 | 175 | 0.7% |
| 500人以上 | 195 | 0.8% |
これは事業所の数で、会社の数とは一致しません。それでも、SESパートナーになり得る事業所の多くが少人数であることは表から分かります。1社から5人、10人と出してもらえる前提で計画を立てると、声をかけた後で人数がそろわないと分かり、工程の開始に間に合わなくなるおそれがあります。
計画の段階では、工程ごとの人数を「1社から何人まで」と分けて考え、声をかける社数を先に決めます。複数の会社の技術者が同じ工程に入るときの役割分担は「SESパートナー複数社のベンダーコントロール|役割分担を決める」で扱っています。統計の人数が誰を数えているかは「SESパートナーの要員確保で経済センサスの人数を読む注意点」にまとめました。
実際に働く会社の確かめ方
報告書は、発注の経路の上では形式的に関わるものの、実際には何も業務を行わずに利益を上げている事業者を「中抜き」事業者と呼び、その存在を感じたことがあるかを尋ねています。「感じたことがある」は全体で25.9%、元請18.5%、中間下請29.2%、最終下請33.5%でした(全体の回答数4,346)。*1
感じた理由には、発注元と自社の間には1社だけと聞いていたのに実際は4社が入っていた、設計などの打合せに間の会社が参加しない、といった声が並びます。元請から数えて4段目の下請として参加した案件で、エンドユーザーへの質問が途中の業者で止まっていたという例も挙げられています。*1 間に入る会社が増えるほど、仕様についての質問と答えが通る会社も増えます。
受注案件の要員確保では、技術者に加わってもらう前に次の3点を確かめておくと、質問の行き違いを防ぎやすくなります。
- 技術者を雇っている会社はどこか
- 自社と、技術者を雇っている会社の間に何社が入るか
- 仕様についての質問を、誰から誰へ送るか
契約の前に委託先の会社へ聞いておける項目は「SESパートナーの選定で聞ける5つの項目、下請負と監査の権利」で、パートナーの実績を公開情報で確かめる手順は「SESパートナー選定の実績確認、公開情報で裏づけを取る手順」で扱っています。
つまずきやすい点
一つ目は、受注が決まる前にパートナーに人の手配を進めてもらい、決まらなかったときの扱いを話していないことです。報告書は、取引先から不当な扱いを受けた経験がある会社に、それを受け入れた理由を複数選択で聞いています(回答数486)。そのうち89件が「正式契約締結前に、正式契約を見越して人繰りや作業に着手する等コストが発生しており、後戻りができなかったから」を選びました。*1 見込みの段階で声をかけるときは、見込みであることと、決まる予定の日を伝えておきます。
二つ目は、仕様の変更をパートナーへ伝える順番を決めていないことです。報告書は、作業が始まった後の仕様変更は、元請から最終下請までのすべての会社の作業を変えることになると述べています。*1 変更を誰が決め、どの順でパートナーの技術者に伝えるかを、受注した時点で決めておきます。
三つ目は、この調査の数字を、発注する側から見た実態だと読み違えることです。アンケートに答えたのは資本金3億円以下の会社で、資本金3億円超の16社にはヒアリングだけを行っています。数字はパートナーになる側から見た取引の様子で、発注する側の計画の良し悪しを測ったものではありません。
まとめ:要員確保で確かめておきたい3つの点
SESパートナーで受注案件の要員確保を進めるうえで、確かめておきたい点は3つに整理できます。第一に、一時的な人数のために頼むのか、自社にない技術のために頼むのかを決め、頼む工程と期間を工程表に書くこと。第二に、パートナーになり得る事業所の多くが少人数であることを前提に、1社から何人までかを決めて、声をかける社数を先に決めること。第三に、技術者を雇っている会社、間に入る会社の数、質問を送る相手を、技術者に加わってもらう前に確かめることです。この3点を踏まえておけば、「開発の工程に入る月になっても人数がそろわない」という事態を避けやすくなります。いつもの協力会社だけで人数がそろうかに迷いがあれば、外部の手を借りるのも一つの選択肢です。
よくある質問
この調査はいつ、誰に聞いたものですか
法人向けのアンケートは2021年10月25日から11月26日に行われ、資本金3億円以下の4,739社が答えています。このほかに、フリーランスのSE2,540名と、会社に勤めるSE1,776名にも別のアンケートを行っています。*1 報告書の公表は2022年6月です。
フリーランスのSEが多く受けている工程も同じですか
最も多いのは同じく「開発(プログラミング)工程」で41.4%ですが、会社より低くなります。設計工程が14.3%、ユーザーへの提案・要件定義が13.7%で、要件定義は会社の5.5%より高い値です(回答数1,588)。*1
下請として多く扱われているのはどんな案件ですか
「基幹システム(会計、人事、生産管理、在庫管理等)の受託開発」が39.5%で最も多く、業務支援システムの受託開発が16.5%で続きます(1つ選択、回答数2,603)。*1 基幹システムの受託開発は、下請の会社が最も多く扱っている種類の案件です。
パートナーが下請として多く扱っているのは、どの業界の案件ですか
下請取引の売上高が最も多いエンドユーザーの業界を1つ選んでもらうと、IT業が24.3%、製造業が21.1%、金融業・保険業が14.4%でした(回答数2,596)。*1 受注案件と同じ業界の案件を多く受けているかは、声をかける前に会社ごとに聞いておくと確かめられます。
受注案件の要員確保を相談したいとき
頼みたい工程と人数、期間が決まっていれば、そのままご相談いただけます。まだ自社の社員とパートナーの分け方が決まっていない段階でも構いません。
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出典
- *1 参考:公正取引委員会「ソフトウェア業の下請取引等に関する実態調査報告書」(PDF)(https://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/2022/jun/220629_sw_03.pdf)。出典:公正取引委員会「ソフトウェア業の下請取引等に関する実態調査報告書」(令和4年6月公表)。法人向けアンケートは資本金3億円以下の2万1000社に依頼し4,739社が回答(回答率22.6%、回答期間2021年10月25日〜11月26日)。第1部第2(調査方法)、第2部第1の3⑶・図表2-1-3、第2部第2の1⑴・⑵・図表2-2-4・2-2-6・2-2-7・2-2-8、第3部第1の3・図表3-1-3、図表3-1-6、第3部第2の1⑵・2⑴・図表3-2-1を参照。この記事の表と図は資料に示された数値をもとに筆者が作成したもので、資料の図表そのものは複製していない(2026年9月確認)
- *2 参考:公正取引委員会「ソフトウェア業の下請取引等に関する実態調査報告書について」(2022年6月29日)(https://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/2022/jun/220629_software.html)。報告書の公表日と、報告書本体・概要の掲載の確認として(2026年9月確認)
- *3 参考:公正取引委員会「ソフトウェア業の下請取引等に関する実態調査報告書(概要)」(PDF)(https://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/2022/jun/220629_02_sw.pdf)。調査の概要の確認として(2026年9月確認)