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2026.09.29 採用支援コラム

エンジニア中途採用の経営承認、採用予算は人件費の内訳で示す




監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)

この記事の結論

  • エンジニア中途採用の採用予算は、求人の費用だけでなく、入社した月から続く人件費まで含めて示します。
  • 情報通信業では、社員を雇う費用のうち19.3%が、社会保険料の会社負担など給与以外の費用です。
  • 採用する人数は、計画どおりに採れなかったときの予算の扱いとあわせて、承認を求める書類に書いておきます。

※ 本記事は2026年9月時点の公式情報(省庁・公的機関、および製品やサービスを提供する事業者が公開している資料)に基づきます。

現場のマネージャーが採用の枠がほしいと伝えたら、経営会議で「なぜ今、社員で、何人なのか」と聞かれて答えに詰まった。求人広告や紹介の費用を見積もって出したら、入社後の給与はどこに入っているのかと差し戻された——。エンジニアの中途採用では、こうした行き違いが起こりがちです。エンジニア中途採用の経営承認とは、社員として採る人数と入社の時期、それにかかる費用を、経営層に認めてもらう手続きを指します。

承認を得るときに役立つのが、採用の必要性・人数・時期・採用予算の内訳を、根拠と一緒に1枚の資料にまとめておくことです。ただし万能ではなく、資料を整えても、計画どおりの人数を採れるわけではありません。本記事では、開発の現場を担当するマネージャーに向けて、承認で決めること、必要性の書き方、人数と時期の決め方、採用予算の内訳、稟議書に載せる項目、そしてつまずきやすい点を整理します。

桃色と藤色に塗られた木の板の上に置いた、真ちゅうの小さな天秤。左右の皿は空で、人も文字も写っていない

採用予算の経営承認とは

エンジニア中途採用の経営承認で決まるのは、大きく分けて3つです。社員を何人採るか、いつ入社してもらうか、そしてそのためにいくら使うかです。このうち、最後の採用予算は2つの費用でできています。1つは、求人広告の掲載や人材紹介など、採用活動そのものにかかる費用です。もう1つは、採用した人に入社後に払い続ける人件費です。

経営層から見ると、社員を1人採ることは、入社した月から毎月の給与と社会保険料の会社負担を払い続けると決めることでもあります。人件費まで含めた金額を示さないと、「今年度はいくらで、来年度からはいくらになるのか」という問いに答えられません。

申請の書類は会社によって呼び方が違い、稟議書(決裁する人に回して承認を得る書類)の形をとる会社も、経営会議で説明資料を使う会社もあります。どちらの場合も、載せる中身は同じです。なお、業務委託や派遣で外部の人材に加わってもらうための稟議は、「外部人材活用の稟議書は見積りの根拠を添えると通りやすい」で扱っています。ここでは社員の中途採用に絞ります。

なぜ採用の必要性から書くのか

経営層が最初に確かめたいのは、金額よりも「なぜ中途採用なのか」です。新卒採用や社内の異動ではなく、経験のある人を社外から採る理由が書かれていないと、人数や金額の話に進めません。理由を書くときの手がかりになるのが、労働政策研究・研修機構(JILPT)の「企業の多様な採用に関する調査」です。2017年7月に従業員30人以上の企業2万社に調査票を送り、4,366社から回答を得ています。*1

この調査は、2016年度に正社員の中途採用を行った企業に、中途採用を実施する理由を尋ねています(複数回答)。情報通信業の98社では、「専門分野の高度な知識やスキルを持つ人が欲しいから」が82.7%で最も多く、「高度なマネジメント能力、豊富なマネジメントの経験がある人が欲しいから」が40.8%で続きました。*2

情報通信業で正社員の中途採用を行った企業98社が挙げた、中途採用を実施する理由の横棒グラフ(複数回答)。専門分野の高度な知識やスキルを持つ人が欲しいから82.7%、高度なマネジメント能力や豊富なマネジメントの経験がある人が欲しいから40.8%、新卒採用だけでは補充できないから24.5%、仕事経験が豊富な人が欲しいから19.4%、顧客層に合った人材が欲しいから17.3%、新卒の採用をしていない・募集したが採用できなかったから9.2%、その他5.1%。企業全体では新卒採用だけでは補充できないからは35.3%。出典は労働政策研究・研修機構 調査シリーズ第179号 図表2-117。

企業全体の3,752社では、「専門分野の高度な知識やスキルを持つ人が欲しいから」は53.9%、「新卒採用だけでは補充できないから」は35.3%でした。*2 情報通信業では、新卒で人数をそろえるためよりも、特定の知識や経験を持つ人を得るために中途採用を行う企業が多いことが分かります。

稟議書の必要性の欄も、この形で書くと伝わりやすくなります。「人が足りない」ではなく、「どの仕事に、どんな知識や経験を持つ人が、いつから必要か」を書きます。たとえば「来年4月に始まる基幹システムの刷新で、データベースの設計を担う人がいない。社内で育てると間に合わない」のように、仕事と時期と、社内で賄えない理由を1つの文にまとめます。社員として採る理由には、その仕事が数年続くことや、設計を判断できる人を社内に置きたいことを挙げます。

人数と時期の決め方

人数は、任せる仕事の量から出します。「データベースの設計を1人、アプリケーションの改修を2人」のように、仕事ごとに人数を書いておくと、経営層が人数を減らしたい場合にも、どの仕事を先送りするかという形で話し合えます。現在の人員と退職の見込みから必要な人数を出す手順は、「要員計画に必要な4つの数字と決める順番」で扱っています。

計画した人数どおりに採れない場合があることも、承認の前に共有しておきます。先のJILPTの調査は、計画上の採用予定人数に対する実際の採用人数の割合を「達成率」として集計しています。2016年度の正社員の中途採用では、回答した2,267社の平均が84.3%、中央値(真ん中の企業の値)が100.0%でした。*3 半数以上の企業は計画した人数を採用できていた一方で、平均は中央値より低く、計画に届かなかった企業もあったことが分かります。

そこで稟議書には、計画どおりに採れなかったときの扱いを1行加えておきます。採れなかった月の人件費を翌月以降に繰り越すのか、その年度の予算からは外すのか、募集を続ける期限をいつにするのか、といった点です。ここが決まっていないと、採用が遅れたときに、予算の残りの扱いを改めて相談することになります。

時期は、入社してほしい月と、募集を始める月の2つを書きます。入社の月によって、その年度に払う人件費の額が決まります。4月から翌年3月までを年度とする会社で10月に入社すれば、その年度に払う人件費は6か月分で、翌年度からは12か月分になります。募集を始めてから入社までにどのくらいかかるかを見込んで月ごとの予定を組む手順は、「エンジニア中途採用の採用スケジュール、4月入社に合わせる組み方」で扱っています。

採用予算の内訳

人件費の内訳を示すときの手がかりになるのが、厚生労働省の「就労条件総合調査」です。令和3年調査は、企業が労働者を雇うことで生じる費用を「労働費用」と呼び、給与にあたる現金給与額のほか、法定福利費、退職給付等の費用、教育訓練費、募集費などに分けています。*4 法定福利費とは、健康保険料や厚生年金保険料など、法律で義務づけられた社会保険の会社負担のことです。*4

同じ調査で、パートタイムで働く人も含めた従業員1人1か月平均の労働費用を見ると、情報通信業は577,690円でした。このうち現金給与額が80.7%、現金給与以外の労働費用が19.3%を占めます。*5 産業全体では現金給与以外の労働費用は18.0%です。*5 給与の額だけで採用予算を組むと、この2割近い費用が抜けることになります。

現金給与以外の労働費用の中身は、産業全体で法定福利費が68.6%、退職給付等の費用が21.8%、法定外福利費(住居や食事の補助など)が6.7%でした。*6 いずれも企業全体の平均なので、中途採用で入る1人にそのまま当てはまる額ではありません。予算を作るときは、自社の給与の条件と、経理が用いる社会保険料の会社負担の計算方法をもとにします。

エンジニア中途採用の採用予算に載せる費用の例(労働費用の区分をもとに作成)
費用 稟議書に書く内容の例 根拠として添えるもの
給与 提示する年収の上限と、その年度に払う月数 自社の等級と給与の規程
法定福利費 健康保険料・厚生年金保険料などの会社負担 経理が使っている計算方法
退職給付等の費用 退職金の制度がある場合の積立て 退職金の規程
教育訓練費 入社後の研修や資格取得の費用 研修の予定
募集費 求人広告の掲載や人材紹介など採用活動の費用 募集の方法ごとの見積り

表のうち、給与の年収の上限をどう決めるかは「エンジニア中途採用の年収上限|役割と等級で定める年収条件」で扱っています。募集費は、募集の方法ごとに見積りを取って別の行に書き、人件費とは分けて示します。人件費は翌年度以降も続き、募集費は採用が決まれば終わる費用だからです。

稟議書に載せる項目

ここまでの内容を、稟議書や説明資料の項目にまとめると次のようになります。1枚に収めて、詳しい計算は別紙に回すと、決裁する人が短い時間で判断しやすくなります。

エンジニア中途採用の稟議書に載せる項目の例
項目 書く内容の例
採用の必要性 どの仕事に、どんな知識や経験を持つ人が、いつから必要か。社内の育成や異動で賄えない理由
任せる仕事と人数 仕事ごとの人数(例:データベースの設計1人、アプリケーションの改修2人)
時期 募集を始める月と、入社してほしい月
採用予算 今年度の人件費、翌年度からの年間の人件費、募集費を分けて記載
採れなかったときの扱い 募集を続ける期限と、使わなかった人件費の扱い
報告の時期 応募と選考の状況を報告する月

効果の書き方には注意が要ります。経営層から費用対効果を問われると、売上や削減額の見込みを数字で書きたくなりますが、根拠のない数字は、後で実績と比べられたときに説明がつきません。効果は、社員が入ることで始められる仕事と、その時期で書きます。「来年4月から刷新の設計を社内で進められる」「委託先に頼んでいる保守の一部を社内に移せる」のように書けば、入社後に実際に確かめられます。

つまずきやすい点

一つ目は、募集費だけを採用予算として出してしまうことです。承認を得たあとで、入社した人の給与が部門の人件費の予算に入っていないと分かると、配属先の予算を組み直すことになります。申請の前に、人件費をどの部門の予算に計上するのかを経理と人事に確かめておきます。

二つ目は、人数だけを書いて、任せる仕事を書かないことです。「エンジニア3名」だけでは、経営層は人数が多いのか少ないのかを判断できません。仕事ごとの人数が書いてあれば、優先順位の低い仕事の分を翌年度に延ばすといった調整ができます。

三つ目は、承認の後に報告の機会を決めていないことです。採用が計画より遅れていても、翌年度の予算を組む時期まで誰も気づかないことがあります。稟議書に報告する月を書いておけば、応募が少ないときに募集の方法や条件を早めに見直せます。

まとめ:経営承認で確かめておきたい3つの点

エンジニア中途採用の採用予算について経営承認を得るうえで、確かめておきたい点は3つに整理できます。第一に、どの仕事に、どんな知識や経験を持つ人が、いつから必要かを必要性として書くこと。第二に、採用予算を求人の費用だけでなく、給与と法定福利費などの人件費まで含めて、今年度分と翌年度からの分に分けて示すこと。第三に、計画どおりに採れなかったときの扱いと、状況を報告する月を決めておくことです。この3点を踏まえておけば、「採用は認められたのに、計画どおりに採れなかった分の予算の扱いで、また経営会議にかけることになった」という事態を避けやすくなります。採用の計画や予算の組み立てに迷いがあれば、外部の手を借りるのも一つの選択肢です。

LASSICに相談するメリット

採用予算の承認を待つあいだや、計画した人数を採れなかった期間の開発を、業務委託で加わる専門人材に任せる方法も、選択肢に入れておけます。

Remoguは、株式会社LASSICが運営するフリーランス・業務委託のITプロ人材サービスです。リモート前提で全国から登録が集まっており、登録は約20,000名規模、その約8割が開発系です。人材が必要になった時点から4時間以内に候補者を提案し、最短1週間で実際の業務開始まで進みます(条件によっては実現できない場合があります)。

よくある質問

年度の途中で採用予算を追加で申請するときは、何を書けばよいですか

当初の計画から何が変わったのかを最初に書きます。新しい案件が決まった、退職者が出たといった変化と、その仕事がいつから必要かを示したうえで、今年度の残りの月数分の人件費と、翌年度からの年間の人件費を分けて載せると、経営層が翌年度の予算への影響まで判断できます。

経営承認は、誰に求めればよいですか

誰に求めるかは、会社の決裁の権限を定めた規程で決まります。人件費の総額や採用する人数によって決裁する人が変わる会社もあるため、申請の書式を作る前に人事と経理に確かめておくと、差し戻しを減らせます。

就労条件総合調査の募集費は、1人を採るのにかかる費用として使えますか

使えません。令和3年調査の募集費は、従業員1人1か月平均で718円ですが、*6 これは採用した人1人あたりの額ではなく、在籍している従業員全員で割った1人あたりの額です。採用活動の費用は、募集の方法ごとに取った見積りで示します。

採用予算に教育訓練費も入れたほうがよいですか

入社後に研修や資格の取得を予定しているなら、別の行に書いておくのがおすすめです。就労条件総合調査でも、教育訓練費は労働費用の区分の1つとして扱われています。*4 予定がない場合は、入社後に必要になったときに通常の研修予算で扱うことを書いておけば足ります。

エンジニアの中途採用の計画を相談したいとき

任せる仕事と必要な人数、採用の時期の整理からご相談いただけます。

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出典

  1. *1 参考:労働政策研究・研修機構 調査シリーズ第179号「企業の多様な採用に関する調査」(https://www.jil.go.jp/institute/research/2018/179.html)。出典:労働政策研究・研修機構 調査シリーズ第179号(2018年3月23日)。調査の方法(常用労働者30人以上の民営法人20,000社、調査期間2017年7月11日〜7月28日、回収数4,366社・回収率21.8%)を参照(2026年9月確認)
  2. *2 参考:労働政策研究・研修機構 調査シリーズ第179号 第2章 調査結果の概要(PDF)(https://www.jil.go.jp/institute/research/2018/documents/179_01.pdf)。出典:同調査 図表2-117(正社員の中途採用を実施する理由。非該当を除く、複数回答可、業種別)。情報通信業N=98、合計N=3,752(2026年9月確認)
  3. *3 参考:労働政策研究・研修機構 調査シリーズ第179号 第2章 調査結果の概要(PDF)(https://www.jil.go.jp/institute/research/2018/documents/179_01.pdf)。出典:同調査 図表2-160(平成28(2016)年度における正社員の中途採用の平均達成率)。達成率=実際の採用人数/計画上の採用予定人数×100、全体N=2,267(2026年9月確認)
  4. *4 参考:厚生労働省「令和3年就労条件総合調査 主な用語の定義」(PDF)(https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/jikan/syurou/21/dl/yougo.pdf)。出典:同調査の用語の定義。「労働費用」「法定福利費」の定義を参照(2026年9月確認)
  5. *5 参考:厚生労働省「令和3年就労条件総合調査 結果の概況 3 労働費用」(PDF)(https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/jikan/syurou/21/dl/gaiyou03.pdf)。出典:同調査 第16表(常用労働者1人1か月平均労働費用。令和2年(平成31(令和元)会計年度))。労働費用はパートタイム労働者等を含む全常用労働者が対象(利用上の注意)(2026年9月確認)
  6. *6 参考:厚生労働省「令和3年就労条件総合調査 結果の概況 3 労働費用」(PDF)(https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/jikan/syurou/21/dl/gaiyou03.pdf)。出典:同調査 第17表(常用労働者1人1か月平均現金給与以外の労働費用。令和3年調査計の実額と構成割合)(2026年9月確認)




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