LASSIC Media らしくメディア

2026.09.28 採用支援コラム

エンジニア中途採用の年収上限|役割と等級で定める年収条件




監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)

この記事の結論

  • 年収上限は、任せる役割を社内の等級に当てはめ、その等級の賃金の上限から決めます。
  • 求人票に幅で示した年収を1つの額に決めたときも、その額を候補者に示すよう職業安定法の施行規則が定めています。
  • 上限の位置を確かめる統計では、上位1割の境目がシステムコンサルタント・設計者で月831.2千円です。

※ 本記事は2026年9月時点の公式情報(省庁・公的機関、および製品やサービスを提供する事業者が公開している資料)に基づきます。

年収の上限を決めないまま求人を出したら、候補者の希望額を聞くたびに社内で相談が始まる。上限を高めに書いたら、応募者から「なぜ自分はこの額なのか」と聞かれて答えに詰まった——。エンジニア中途採用では、こうした迷いが起こりがちです。エンジニア中途採用の年収上限とは、その求人で会社が提示できる年収のうち、最も高い額を指します。

年収上限を先に決めておくと、面接の途中で提示額がぶれにくくなり、求人票の年収条件も書きやすくなります。ただし万能ではなく、上限を決めても、その額で応募が集まるかどうかは別の問題です。本記事では、エンジニアを採用する開発の現場のマネージャーに向けて、上限を先に決める理由、役割と等級から上限を決める手順、統計で上限の位置を確かめる方法、そして求人票に書くときの注意点を整理します。

白い壁に掛けた木枠のそろばんを正面から写した写真。茶色と黒の珠が並んでいる。人も文字も写っていない

エンジニア中途採用の年収上限とは

年収条件は、求人票や面接で示す賃金の条件です。多くの求人では、下限と上限の2つの額で幅を持たせて示します。ハローワークの「求人申込書の書き方」に載っている記入例(介護職の求人)でも、基本給を185,000円から255,000円までの幅で書き、「基本給は資格及び同一職種の経験年数に応じて決定します」と、幅のどこに決まるかの条件を添えています。*6

年収上限は、相場とは別のものです。相場は、ほかの会社で同じ仕事をしている人がどれだけ受け取っているかを表します。これに対して年収上限は、自社がその役割に払える最も高い額で、社内の賃金規程で定まります。相場は、決めた上限が世の中の分布のどのあたりにあるかを確かめる材料として使います。

下限と上限は、役目が違います。下限は応募を考える人が最初に見る数字で、上限は条件の交渉で会社がそれ以上は出せない数字です。上限が決まっていないと、希望額の高い候補者が来るたびに、誰がどの額まで認めてよいのかを社内で決め直すことになります。

なぜ上限を先に決めるのか

一つ目の理由は、賃金の額を示すことが法令で決められているからです。職業安定法の第5条の3は、労働者の募集を行う者に、従事すべき業務の内容と、賃金、労働時間その他の労働条件を明示するよう義務づけています。*3 施行規則の第4条の2は、書面やメールなどで示すべき事項の一つに、賃金(臨時に支払われる賃金、賞与などを除く)の額に関する事項を挙げています。*4

二つ目の理由は、上限の額を実際に払えるものにしておく必要があるからです。職業安定法に基づく厚生労働省の指針は、広告などで求人の情報を出すときに、賃金等について「実際の賃金等よりも高額であるかのように表示してはならない」としています。*5 誰も届かない高い上限を書いておくと、実際より高く見せる表示とみなされるおそれがあります。上限は、条件を満たした人には実際にその額を払う、という前提で書きます。

三つ目の理由は、契約を結ぶ段階の手続きです。求人票に幅で示した年収を内定の段階で1つの額に絞るとき、施行規則の第4条の2はこれを「範囲内で従事すべき業務の内容等を特定する場合」として、絞った内容を示すよう求めています。*4 指針は、求人票の条件と絞った後の条件を並べて見られる書面を渡すのが望ましいとしています。 上限と、上限に届く条件を先に決めておけば、なぜその額にしたのかを候補者に説明しやすくなります。

上限をどう決めるのか

最初に、任せる役割を書き出します。役割とは、入社した人に担当してもらう仕事と、その仕事の中で本人に決めてもらうことです。たとえば「受注管理システムの改修で、決まった設計書どおりにプログラムを作る」のか、「改修の設計を担当し、ほかの開発者の作ったプログラムを確認する」のかで、求める経験も払う額も変わります。役割は、実際にその仕事を任せる現場のマネージャーが書くのが確実です。

次に、その役割を社内の等級に当てはめます。等級は、社員を仕事の難しさや責任の重さで段階に分けた社内の区分で、多くの会社では等級ごとに基本給の下限と上限を決めています。役割が決まれば、当てはまる等級の基本給の上限が、その求人の月額の上限になります。1つの求人で当てはめる等級は1つか2つに絞っておくと、面接で比べる基準がそろいます。

最後に、上限の額で採用する人の条件を書きます。ハローワークの記入例が、資格と同じ職種での経験年数で幅のどこに決まるかを示しているように、上限に届く条件も言葉にしておきます。エンジニアの場合は、年数だけよりも、担当した作業で書くほうが面接で確かめやすくなります。役割、等級、条件をつなげて書くと、次の表のようになります。

役割・等級・上限に届く条件の書き方の例
項目 書く内容の例
任せる役割 受注管理システムの改修で設計を担当し、ほかの開発者が作ったプログラムを確認する
当てはめる等級 社内の等級のうち、設計を任せる社員が入っている等級(1つか2つに絞る)
下限で採用する人 設計書どおりにプログラムを作った経験はあるが、設計の担当は補助にとどまる人
上限で採用する人 改修の設計を主担当として終えた経験があり、ほかの人のプログラムを確認した経験もある人
上限を超える希望 役割を1つ上の等級で書き直せるかを検討する。書き直すなら業務の内容も変わる

表に金額を入れていないのは、額は各社の賃金規程で等級ごとに定まるためです。上限を決めたら、同じ等級にいる社員の基本給と比べておきます。同じ等級の社員より高い上限にすると、その社員との給与の差をどう説明するかという別の問題が生まれます。その場合は、上限を下げるか、賃金規程の等級ごとの基本給を見直すかを、人事の担当者と決めておくと進めやすくなります。

統計で上限の位置を確かめる

決めた上限が世の中の分布のどのあたりにあるかは、厚生労働省の賃金構造基本統計調査で確かめられます。令和7年の調査で職種ごとの給与の分布をまとめた第17表は、所定内給与額(残業代などを除いた、税などを引く前の6月分の月給)の階級別の人数と、分布の特徴を示す値を公表しています。

分布の特徴を示す値は、労働者を賃金の低い人から高い人へ一列に並べたとき、決まった位置にいる人の賃金です。第9・十分位数は高い方から1割のところにいる人の賃金で、上位1割の境目に当たります。中位数は、ちょうど真ん中の人の賃金です。*2 これらの値は平均と違い、ごく一部のとても高い人に左右されにくいので、上限の位置を見るのに向いています。

令和7年6月分の所定内給与額の分布を、情報処理・通信技術者の3職種で示した図。企業規模10人以上・男女計、単位は千円。システムコンサルタント・設計者は第1・十分位数280.7、中位数445.5、第9・十分位数831.2。ソフトウェア作成者は243.4、329.5、508.8。その他の情報処理・通信技術者は243.6、339.8、565.9。黄色の帯は第1・四分位数から第3・四分位数。出典は厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」一般労働者 職種 第17表。

令和7年6月分の値を、企業規模10人以上の全体で見ると、システムコンサルタント・設計者は中位数445.5千円、第9・十分位数831.2千円です。ソフトウェア作成者は中位数329.5千円、第9・十分位数508.8千円、その他の情報処理・通信技術者は中位数339.8千円、第9・十分位数565.9千円でした。*1 表の職種名が自社の呼び名と違っても、任せる仕事の中身が近い職種の値を使います。

職種によって、分布の広がり方も違います。システムコンサルタント・設計者は、上位1割の境目が中位数の約1.9倍の高さにあり、ソフトウェア作成者の約1.5倍より開きが大きい職種です。*1 設計を任せる求人では、同じ職種の中でも給与の差が大きいことを踏まえて上限の位置を見ます。

企業規模による違い

第17表は、企業規模ごとの値も出しています。上限の位置を確かめるときは、全体の値と、自社と同じ企業規模の値を並べて見ます。

企業規模別の所定内給与額の中位数と第9・十分位数(令和7年6月分、千円)
職種 1,000人以上 100〜999人 10〜99人
システムコンサルタント・設計者 中位数521.9
第9・十分位数861.3
中位数459.6
第9・十分位数892.6
中位数319.4
第9・十分位数487.4
ソフトウェア作成者 中位数337.6
第9・十分位数539.0
中位数317.9
第9・十分位数496.6
中位数328.3
第9・十分位数473.8
その他の情報処理・通信技術者 中位数339.1
第9・十分位数552.8
中位数354.1
第9・十分位数641.9
中位数316.0
第9・十分位数499.8

システムコンサルタント・設計者の第9・十分位数は、10〜99人の企業では487.4千円で、100〜999人の企業の892.6千円と大きく離れています。一方、ソフトウェア作成者の中位数は、どの規模でも317.9千円から337.6千円の間に収まっています。*1

上位1割の境目は、100〜999人の企業のほうが1,000人以上の企業より高い職種もあります。企業が大きいほど上限も高い、とは決めつけずに、表の値で確かめます。職種とITスキルのレベルごとの年収の中央値は「エンジニア中途採用の年収条件を職種とレベル別の中央値で決める」で扱っています。

月額の上限から年収上限へ

賃金構造基本統計調査の値は、6月分の月額で、残業代も賞与も含みません。求人に書く年収上限は、ふつう賞与なども含めた1年分の額です。統計の月額を12倍しても、年収上限と比べられる数字にはなりません。比べるときは、自社の上限も月額の所定内給与額に直し、同じ条件で並べます。

求人票の書き方も、月額が基本です。ハローワークの求人申込書では、フルタイムの求人は基本給を月額で書き、年俸制(1年分の給与を先に決めて各月に分けて払う形)の場合でも月額に換算して書くことになっています。賞与は、制度の有無と前年度の実績を書き、実績があれば支給回数と、年間の支給合計月数または支給金額を書きます。*6 年収上限は、月額の上限を12か月分にし、賞与の見込み額を加えて出します。

固定残業代(決まった時間分の残業代を毎月定額で払うもの)を含めて年収を示すときは、とくに注意が要ります。指針は、固定残業代を採用する場合、その計算方法、固定残業代を除いた基本給の額、決まった時間を超えた分の割増賃金を追加で払うことなどを示すよう求めています。*5 年収上限を示すときは、基本給、手当、固定残業代、賞与の内訳を書き分けておくと、候補者が他社の求人と比べやすくなります。

つまずきやすい点

一つ目は、上限を超える希望額の候補者が来たときに、その人だけ上限を上げてしまうことです。同じ等級の社員より高い額を個別に決めると、その社員との給与の差を説明できなくなります。候補者の経験が上の等級の役割に合うなら、役割を1つ上の等級で書き直し、任せる仕事も一緒に変えます。業務の内容が変わる場合は、契約の前に変更の内容を明示する必要があります。

二つ目は、幅を広く書きすぎることです。下限と上限の差が大きいと、応募する人は自分がどの額で採用されるのかを求人票から読み取れません。指針は、求職者に具体的に理解されるよう、業務の内容や賃金などの「水準、範囲等を可能な限り限定すること」を配慮事項に挙げています。*5 幅は、当てはめる等級の基本給の下限と上限におさめます。

三つ目は、統計の値を上限の根拠にしてしまうことです。第9・十分位数は、上位1割の境目にいる人の賃金で、その職種の人が目指す額でも、自社が払うべき額でもありません。統計で分かるのは、自社の上限がその職種の分布のどのあたりにあるかです。上限の額そのものは、任せる役割と賃金規程の等級で説明できるようにしておきます。求人票の業務内容の書き方は「エンジニア採用の求人票に書く業務内容、5つの要素で整理」で扱っています。

まとめ:年収上限で確かめておきたい3つの点

エンジニア中途採用の年収上限を決めるうえで、確かめておきたい点は3つに整理できます。第一に、任せる役割を書き出し、社内の等級に当てはめて、その等級の基本給の上限から決めること。第二に、上限に届く人の条件を担当した作業で書き、幅で示した年収を1つの額に決めるときは、最初の明示と見比べられる形で伝えること。第三に、統計の中位数や第9・十分位数は上限の位置を確かめる材料にとどめ、月額と年収を取り違えずに比べることです。この3点を踏まえておけば、「候補者の希望額を聞くたびに、社内で上限を決め直している」という事態を避けやすくなります。年収条件の決め方に迷いがあれば、外部の手を借りるのも一つの選択肢です。

LASSICに相談するメリット

年収上限の中で条件に合う人がなかなか見つからないこともあります。採用が決まるまでの開発を、業務委託の専門人材に任せる方法も選択肢に入れておけます。

Remoguは、株式会社LASSICが運営するフリーランス・業務委託のITプロ人材サービスです。リモート前提で全国から登録が集まっており、登録は約20,000名規模、その約8割が開発系です。人材が必要になった時点から4時間以内に候補者を提案し、最短1週間で実際の業務開始まで進みます(条件によっては実現できない場合があります)。

よくある質問

募集の途中で年収上限を見直すときは、何をすればよいですか

求人の情報を速やかに直します。指針は、労働者の募集の内容を変更した場合、その募集に関する情報を速やかに変更し、情報の提供を頼んだ求人サイトなどにも変更を依頼するよう求めています。*5 すでに選考中の候補者には、変わった点を個別に伝えておくと食い違いを防げます。

試用期間中だけ年収条件を下げてもよいですか

下げる場合は、試用期間中と試用期間後の条件をそれぞれ示す必要があります。職業安定法の施行規則は、試用期間中と終了後で業務の内容や賃金などが異なる場合、それぞれを示して明示するよう定めています。*4

統計の値は、毎年確かめ直す必要がありますか

年に1回は確かめ直すのがおすすめです。賃金構造基本統計調査は毎年6月分の賃金を調べており、職種別の表は令和7年の調査が2026年3月に公表されています。*1 上限を見直す時期を、新しい調査の公表に合わせておくと手間が少なくなります。

年収上限は、誰が決めるのがよいですか

役割は現場のマネージャーが、等級と金額は人事の担当者が受け持つ分け方が進めやすいです。任せる仕事の難しさを知っているのは現場で、社員の給与や賃金規程を知っているのは人事だからです。最後に両者で、上限に届く条件を面接でどう確かめるかをそろえておきます。

エンジニアの年収条件を相談したいとき

任せる役割と等級、年収上限の整理からご相談いただけます。

Remoguとリラシクなら、リモートワークで働く社員の候補者も、業務委託で開発に加わる専門人材も探せます。

Remoguは、リモート前提で全国から即戦力のITプロ人材を調達するサービスです。リラシクは、扱う求人がすべてリモートワークのITエンジニア専門転職エージェントです。どちらもLASSICが運営しています。

無料相談はこちら

出典

  1. *1 参考:厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」一般労働者 職種 第17表(e-Stat)(https://www.e-stat.go.jp/stat-search/file-download?statInfId=000040421132&fileKind=4)。出典:厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」一般労働者 職種 第17表「職種(小分類)、所定内給与額階級別労働者数及び所定内給与額の分布特性値(産業計)」(2026年3月24日公開)。男女計の企業規模計(10人以上)・1,000人以上・100〜999人・10〜99人の第1・十分位数、第1・四分位数、中位数、第3・四分位数、第9・十分位数を参照(2026年9月確認)
  2. *2 参考:厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査の概況」(https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/kouzou/z2025/dl/14.pdf)。出典:同概況の主な用語の定義(所定内給与額)と、分位数・分散係数の注を参照(2026年9月確認)
  3. *3 参考:e-Gov法令検索「職業安定法」(https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000141)。出典:職業安定法(昭和22年法律第141号)第5条の3(労働条件等の明示)を参照(2026年9月確認)
  4. *4 参考:e-Gov法令検索「職業安定法施行規則」(https://laws.e-gov.go.jp/law/322M40002000012)。出典:職業安定法施行規則(昭和22年労働省令第12号)第4条の2第1項第1号・第3項第5号・第6項を参照(2026年9月確認)
  5. *5 参考:厚生労働省「職業紹介事業者、求人者、労働者の募集を行う者、募集受託者、募集情報等提供事業を行う者、労働者供給事業者、労働者供給を受けようとする者等がその責務等に関して適切に対処するための指針」(https://www.mhlw.go.jp/content/001003997.pdf)。出典:同指針(平成11年労働省告示第141号、最終改正 令和6年厚生労働省告示第318号)第三の一・二、第四の二・三を参照(2026年9月確認)
  6. *6 参考:厚生労働省 ハローワーク「求人申込書の書き方」(https://www.hellowork.mhlw.go.jp/doc/kyuujinnmousikomisyonokakikata.pdf)。出典:同資料の記入例と、賃金形態・基本給・賞与の欄の説明を参照(2026年9月確認)




View