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外部人材活用のトラブル、稼働不足を作業の記録から確かめる
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)
この記事の結論
- 稼働不足は、契約で見込んだ稼働と作業の記録を週ごとに並べ、差が続いているかを先に確かめます。
- 原因は自社の待ちや仕様の変更、相手の事情、見込みのずれに分け、自社の側から先に確かめます。
- 見込みを変えるときは窓口を通して協議し、合意した内容を書面に残してから変更の手続きを踏みます。
※ 本記事は2026年9月時点の公式情報(省庁・公的機関、および製品やサービスを提供する事業者が公開している資料)に基づきます。
週に3日と聞いていたのに、作業の報告を見ると2日分ほどしか進んでいない。先月も同じくらいだった気がするが、どう切り出せばよいか分からない——。外部人材活用の現場では、こうした食い違いが起こりがちです。ここでいう稼働不足とは、契約のときに見込んだ作業の日数や時間に、実際の稼働が続けて届かない状態を指します。
稼働不足に気づいたら、まず記録で差を確かめ、原因を切り分けてから話し合うと、関係をこじらせずに進めやすくなります。ただし万能ではなく、契約で見込みの稼働や報告の形を決めていなければ、比べる基準そのものがありません。本記事では、外部の専門人材と開発を進めるマネージャーに向けて、稼働の記録の見方、原因の切り分け方、話し合いの進め方、そして契約で決めておきたい点を整理します。
目次
外部人材の稼働不足とは
稼働不足は、見込みと実績の差として捉えると整理しやすくなります。見込みは、契約や発注のときに双方で確かめた作業の日数や時間の目安です。実績は、作業の報告や課題管理の記録から分かる、実際に作業に当たった日数や時間です。この2つを同じ単位で並べ、差が続いているときに稼働不足と考えます。
似ているようで別の問題が、時間は見込みどおりなのに作業が進まない状態です。こちらは作業量の見積もりや技能の問題で、稼働の話し合いでは解決しません。成果物と作業の中身で確かめる方法は「業務委託エンジニアの参画後の評価、成果物と作業で確かめる手順」で扱っています。
もう一つ分けておきたいのが、一時的な不足と続いている不足です。祝日や体調不良、自社の都合で作業が止まった週は、見込みを下回るのが自然です。外部人材活用のトラブルとして話し合うべきなのは、はっきりした理由がないまま見込みを下回る週が続き、このままでは納期や次の工程に響くと分かったときです。
稼働の記録をどう見るか
稼働不足かどうかを確かめるには、まず手元にある記録を集めます。外部の専門人材との開発では、稼働の様子が分かる記録がいくつも残っています。それぞれ分かることと限界が違うので、1つだけで判断せずに突き合わせます。
| 記録 | 分かること | 見るときの注意 |
|---|---|---|
| 作業の報告(週報・月報) | 作業した日、時間の目安、作業の中身 | 本人の申告なので、ほかの記録と突き合わせる |
| 課題管理のチケット | 作業に着手した日、終えた日、止まっていた期間 | 自社の確認待ちで止まった期間も含まれる |
| ソースコードの変更履歴 | 変更した日と、変更の量 | 設計や調査にかけた時間は表れない |
| 打ち合わせやチャットの記録 | 質問した日時と、自社が答えた日時 | 自社の返事の遅れもここで分かる |
記録は週ごとにまとめ、見込みの稼働と並べます。1週だけ下回っていても判断はせず、3〜4週ほどの並びで、差が続いているか、広がっているかを見ます。確かめたいのは見込みとの差なので、1日ごとの作業の時間帯まで追う必要はありません。
記録が大事になるのは、あとで見込みそのものが食い違うことがあるからです。情報処理推進機構(IPA)が公開している「情報システム・モデル取引・契約書」の第二版は、第9条の解説で、本来通知すべき人とは違う人に伝えて済ませたり、はっきりした形で伝えなかったりすることが、「言った、言わない」の問題が生じる一因になっているとしています。*3 見込みの稼働を口頭で伝えただけでは、差を示す基準がありません。契約書や発注のメールに見込みが書かれているかを、最初に確かめます。
原因をどう切り分けるのか
稼働不足の原因は、大きく3つに分けられます。1つ目は自社の側の原因で、仕様が決まらない、質問やレビューへの返事が遅れる、開発環境や権限の準備が遅れる、といったものです。2つ目は相手の側の原因で、ほかの案件との掛け持ちや、体調や家庭の事情などがあります。3つ目は見込みそのもののずれで、契約のときに見込んだ稼働が、実際の作業量と合っていなかった場合です。
3つ目は見落としやすい原因です。任せる作業が想定より少なければ、相手は稼働したくても作業がありません。反対に作業が想定より重く、報告に書かれない調査の時間がかさんでいることもあります。どちらも、相手を責めても解決しません。
受ける側がどんなトラブルを経験しているかを見ておくと、自社の側の原因に気づきやすくなります。内閣官房が2020年2〜3月に行ったフリーランス実態調査では、事業者から業務委託を受けて働くフリーランス3,234人のうち、37.7%にあたる1,220人が取引先とのトラブルを経験したことがあると答えました。*1
その内容で最も多かったのは「発注の時点で、報酬や業務の内容などが明示されなかった」の37.0%です。稼働に関わりの深い項目では、「仕様や作業期間・納品日を一方的に変更された」が24.4%、「仕事の業務内容・範囲について揉めた」が23.5%でした(複数回答)。*1 職種を分けた集計ではありませんが、上位には発注する側の示し方や変更にかかわる項目が並んでいます。
厚生労働省の「自営型テレワークの適正な実施のためのガイドライン」も、注文した仕事の内容について「双方に思い違い、誤解があることが、報酬支払等の紛争につながりがち」だとして、仕事の内容が明確に分かるように示すよう求めています。*2 稼働不足を相手の問題と決めつける前に、自社の側で作業が止まっていなかったか、任せる作業の範囲が伝わっていたかを、記録で先に確かめます。
話し合いの進め方
原因の見当がついたら、話し合いの場を設けます。最初に決めておきたいのは、誰と誰が話すかです。IPAのモデル契約書の第10条は、双方が連絡確認や必要な調整を行う主任担当者を選び、日常的な連絡や確認は原則としてこの主任担当者を通じて行うとしています。*3 その解説では、契約の変更や解除のような重要な事項は、主任担当者ではなく第9条の責任者が行うとされています。*3
稼働不足に当てはめると、差を伝えて事情を聞くところまでは日常の窓口どうしで進め、見込みの稼働や作業の範囲を変える話になったら、契約を決める権限のある人を加えます。窓口を通さずに現場の担当者どうしで見込みを変えてしまうと、あとで契約の中身と実態が食い違います。
話し合いは、次の順で進めると角が立ちにくくなります。
- 週ごとの見込みと実績を並べた記録を見せ、差を事実として伝える
- 相手の事情を聞く。自社の返事の遅れや作業の少なさを指摘されたら、記録で確かめる
- 作業の範囲を絞る、期間を延ばす、稼働を見込みに戻す時期を決める、といった案を並べる
- 決まったこと、持ち帰って検討すること、次に確かめる日を書き残す
相手から、待ち時間が多いといった不満が出ることもあります。自営型テレワークのガイドラインは、注文者が苦情の申出を受けたときは、十分協議するなどして自主的な解決を図るよう努めることとしています。*2 言い分を聞いたうえで、自社の側で直せることを先に直しておくと、話し合いを前に進めやすくなります。
見込みを変えるときの手続き
話し合いの結果、見込みの稼働や作業の範囲、期間を変えることになったら、契約の変更として手続きを踏みます。モデル契約書の第33条は、契約の内容の変更は、事前に協議したうえで書面で変更契約を結ぶことによってのみ行えるとしています。解説は、その理由を「口頭による契約変更はトラブル発生の原因となるため」と説明しています。*3
自営型テレワークのガイドラインも、契約条件を変える場合は十分に協議し、内容を確かめたうえで文書か電子メールなどを渡すよう求めています。あわせて、相手に不利益が生じる変更を強要しないこと、相手が変更に応じなくても不利益に扱わず、当初の契約内容を守ることを挙げています。*2 仕様の変更が頻繁で、実質的に契約条件の変更になっている場合にも、相手に不利益が生じないようにする必要があるとしています。自社の側の原因で稼働が減っているときは、この点を特に意識します。
稼働不足が契約に反するといえるか、報酬をどう扱うかは、契約の定めによって変わります。判断に迷うときは、一方的に決めずに、契約書を持って弁護士に確かめます。
話し合いがまとまらないときも、段階を踏みます。モデル契約書の第55条は、紛争が生じたときは、仲裁や訴訟の手続きをとる前に連絡協議会を開いて協議を十分に行い、それでも解決できなければ、紛争解決の権限を持つ代表者などとの協議を申し入れる、という順序を定めています。*3 稼働不足の話し合いでも、窓口どうし、権限のある人どうし、という順に場を上げていくと、いきなり関係がこじれるのを避けやすくなります。
契約で決めておくこと
ここまでの確かめ方と話し合いは、契約で見込みと報告の形を決めていれば、ずっと進めやすくなります。自営型テレワークのガイドラインは、仕事を募集するときに示す仕事の内容として、業務の遂行に必要な技術・経験とあわせて「業務遂行に必要な所要時間の目安」を示すことが望ましいとしています。*2 見込みの稼働は、募集や発注の段階から言葉にしておきます。
| 決めておくこと | 書き方の例 |
|---|---|
| 見込む稼働 | 週あたりの日数と時間の目安。月によって変わる場合は、月ごとの目安 |
| 報告の形と頻度 | 週1回、作業した日、作業の中身、翌週の予定、確認待ちで止まっている作業 |
| 下回る見込みの連絡 | 見込みを下回ると分かった時点で、理由と戻せる時期を窓口に伝える |
| 連絡の窓口 | 日常の窓口と、契約を変える権限のある人を双方で決め、書面で知らせる |
| 変更の手続き | 見込みや作業の範囲を変えるときは協議し、書面で確かめてから始める |
| まとまらないとき | 窓口どうし、権限のある人どうし、の順で協議する |
表のうち、下回る見込みの連絡は抜けやすい項目です。相手の側で稼働が落ちると分かっていても、伝える先と時期が決まっていなければ、報告の締め日まで表に出ません。稼働日数そのものの決め方は「業務委託エンジニアの稼働日数、作業量と連絡の頻度から決める」で、担当者が途中で抜けるときの交代や解除の定めは「外部人材活用のトラブル、早期離任に備えて契約で決めておくこと」で扱っています。
つまずきやすい点
一つ目は、月の合計だけを見ていることです。月末に合計して初めて差に気づくと、話し合うころには1か月以上たっています。週ごとの報告と見込みを並べておけば、2〜3週目で気づけます。
二つ目は、自社の待ちを数えないことです。質問への返事に数日かかった週や、レビューが止まっていた週は、相手が作業したくてもできなかった週です。記録を並べるときは、自社の側の確認待ちの日数も一緒に書き出します。
三つ目は、口頭で稼働を増やす約束をしてしまうことです。「来月から週4日にできますか」と打ち合わせの場で頼み、そのまま書面に残さないと、次に差が出たときに何を見込みとするかで食い違います。先に見たとおり、見込みの変更は書面で確かめてから始めます。
まとめ:稼働不足で確かめておきたい3つの点
外部人材活用で稼働不足に向き合ううえで、確かめておきたい点は3つに整理できます。第一に、契約で見込んだ稼働と作業の記録を週ごとに並べ、差が続いているかを確かめること。第二に、原因を自社の側、相手の側、見込みのずれに分け、自社の側から先に確かめること。第三に、窓口を通して話し合い、見込みを変えるときは書面で確かめることです。この3点を踏まえておけば、「気づいたときには、納期に間に合わないほど作業が遅れていた」という事態を避けやすくなります。稼働の見込みの立て方に迷いがあれば、外部の手を借りるのも一つの選択肢です。
よくある質問
稼働が見込みより多いときも、話し合ったほうがよいですか
話し合ったほうがよいでしょう。見込みを上回る状態が続くのは、任せた作業が想定より重いという合図です。作業の範囲や期間を見直さないまま続けると、相手の負担が増え、ほかの仕事との兼ね合いで急に稼働が落ちることもあります。
仲介会社を通して契約しているときは、稼働不足を誰に伝えますか
契約の相手が仲介会社なら、まず仲介会社の担当者に伝えます。自営型テレワークのガイドラインは、仲介事業者に、相談窓口を明確化するなどして、苦情を迅速・適切に処理するための体制を整えることが望ましいとしています。*2 専門人材本人との話し合いにも仲介会社の担当者に加わってもらうと、契約の中身との食い違いを防げます。
稼働が足りなかった分の報酬は、減らしてよいですか
契約で報酬と稼働をどう結び付けているかによります。一方的に減らさず、契約書を確かめたうえで相手と協議し、判断に迷う場合は弁護士に確かめます。
稼働不足の話し合いは、どのくらいの間隔で行えばよいですか
定例の打ち合わせがあれば、その場で週ごとの記録を確かめるのが手軽です。差が続いているときだけ別の場を設け、次に確かめる日を決めておきます。差が縮まったら、元の頻度に戻して構いません。
外部人材の稼働を相談したいとき
稼働の見込みの立て方と、契約で決めておくことの整理からご相談いただけます。
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出典
- *1 参考:内閣官房日本経済再生総合事務局「フリーランス実態調査結果」(令和2年5月・PDF)(https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/atarashii_sihonsyugi/freelance/dai1/siryou13.pdf)。出典:調査の概要(2020年2月10日〜3月6日、インターネット調査)と、取引先とのトラブルの有無(事業者から業務委託を受けて仕事を行うフリーランス3,234名を母数)、取引先とのトラブルの内容(トラブルを経験した1,220名、複数回答、上位6項目)を参照(2026年9月確認)
- *2 参考:厚生労働省「自営型テレワークの適正な実施のためのガイドライン」(PDF)(https://www.mhlw.go.jp/content/001618743.pdf)。出典:第3(1)ロ①(注文する仕事の内容。所要時間の目安)、(3)イ②(注文した仕事の内容)、(3)ニ(契約条件の変更)、(4)チ(苦情の自主的解決等)を参照(2026年9月確認)
- *3 参考:IPA「情報システム・モデル取引・契約書(受託開発(一部企画を含む)、保守運用)<第二版>(2025年4月8日更新)」(Word)(https://www.ipa.go.jp/digital/model/ug65p90000001ljh-att/000087884.docx)。出典:第9条(責任者)の解説、第10条(主任担当者)とその解説、第33条(本契約及び個別契約内容の変更)とその解説、第55条(和解による紛争解決)第1項・第2項を参照(2026年9月確認)