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定年退職の引き継ぎ期間の決め方とベテランの後任を確保する進め方
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)

この記事の結論
- 定年退職の引き継ぎ期間は定年日から逆に数え、年1回の作業の日付が重ねる期間に入るように始める日を決めます。
- 再雇用で残る場合も定年日とは別に担当を外れる日を決め、残る期間は後任に渡す時間として使います。
- 後任が決まるのが遅いと期間が削られるため、採用にかかる時間を見込み、間に合わない分は業務委託の外部人材でつなぎます。
※ 本記事は2026年10月時点の公式情報(省庁・公的機関、および製品やサービスを提供する事業者が公開している資料)に基づきます。
社内のシステムを長く一人で見てきたベテランのエンジニアが、再来年に定年を迎える。後任はまだ決まっておらず、引き継ぎに何か月かければよいのかも分からない——。定年退職は日付が前もって分かる分、準備の始め方しだいで引き継ぎの出来が大きく変わります。
本記事は、情報システムの責任者や開発マネージャー、人事の担当者に向けて、定年退職の引き継ぎ期間を見積もる手順、再雇用で残る期間の使い方、後任を誰でいつ確保するか、外部人材に頼むときの確認点をまとめます。
目次
定年退職の引き継ぎ期間とは
定年退職の引き継ぎ期間とは、ベテランの担当者が定年で担当を外れる日までに、後任が仕事を一人で回せるようになるよう、二人が重なって働く期間を指します。法律や公的なガイドラインに「何か月」という決まりはなく、会社とシステムごとに決めます。
定年退職は、自己都合の退職や異動と違って、日付が何年も前から分かっています。それでも引き継ぎが間に合わなくなるのは、次のような事情が重なるからです。
- 定年日が近づくまで後任を決めず、重なる期間が数か月しか残らない
- 年1回しか来ない作業があり、その日が重なる期間に入っていない
- 長く一人で見てきたため、作りの経緯や障害の直し方が本人の頭の中にしかない
- 再雇用で残るだろうと考え、担当を外れる日が決まっていない
厚生労働省の「令和7年度能力開発基本調査」では、技能継承に問題があるとした事業所は44.2%でした。*1 問題があるとした事業所が挙げた問題点は、「意欲のある若者・中堅層の確保が難しい」が74.5%、「技術・ノウハウ等の伝承に時間がかかり円滑に進まない」が60.6%です。*1 システムの仕事に限った調査ではありませんが、受け取る人の確保と、渡すのにかかる時間がつまずきの中心だと読み取れます。
引き継ぎ期間を見積もる3つの手順
引き継ぎ期間は「何か月」から決めるより、定年日から逆に数えて見積もります。手順は次の3つです。
- 手順1:ベテランの仕事を書き出し、毎日・毎月・年1回などの周期を付ける
- 手順2:後任が各作業を、本人の横で1回ずつ動かせる日程を置く
- 手順3:後任を決めるまでにかかる時間をその前に加え、始める日を決める
| 周期 | 作業の例 | 重ねる期間での扱い |
|---|---|---|
| 毎日・毎週 | 定期の確認、バックアップの結果の確認 | 重ねる期間の最初のうちに後任が動かす |
| 毎月 | 月末の集計、利用者の追加と削除 | 本人の横で動かしたあと、後任だけで1回動かす |
| 年1回 | 年度替わりの更新、証明書や契約の更新 | その日付が重ねる期間に入るように始める日を決める |
| 不定期 | 障害への対応、機器の入れ替え | 過去の記録と本人の説明で手順書に残す |
期間の長さを左右するのは年1回の作業です。定年日の前にその作業の日付が来なければ、後任は本人の横で一度も経験しないまま受け取ることになります。重ねる期間を定年日の直前に置くのではなく、年1回の作業の日付を含むように始める日を前へずらします。
手順3で前に加える時間は、後任を社内で指名するのか、新しく採用するのかで大きく変わります。自社の過去の採用でかかった時間を目安にします。
再雇用で残る期間の使い方
高年齢者雇用安定法は、定年を65歳未満に定めている事業主に、定年制の廃止、定年の引上げ、継続雇用制度の導入のいずれかの措置を義務付けています。*2 厚生労働省の「令和7年 高年齢者雇用状況等報告」では、定年を60歳とする企業が62.2%、この措置を継続雇用制度の導入で実施している企業が65.1%でした。*2 定年日を過ぎても、ベテランが再雇用で社内に残る場面は珍しくありません。制度の扱いや労働条件は、人事部門や社会保険労務士などの専門家に確かめてください。

引き継ぎで大事なのは、定年日とは別に「担当を外れる日」を決めることです。再雇用のあとは仕事の中身や時間が変わることがあるため、いつまで同じシステムを見るのかを、本人、上司、人事で書いておきます。
| 残り方 | 引き継ぎでの役割 | 決めておくこと |
|---|---|---|
| 再雇用で同じ担当を続ける | 後任と並んで作業し、担当を少しずつ渡す | 担当を外れる日と、それまでに後任が受け持つ作業 |
| 再雇用で教える役に回る | 後任の作業を横で見て、質問に答える | 質問を受ける時間と窓口。本人が操作を代わりにしないこと |
| 業務委託で関わる | 決めた範囲の相談や点検を受ける | 委託する範囲と期間、計画と本人の同意の手順 |
| 定年で離れる | 定年日までに渡しきる | 年1回の作業を定年日までに一巡させる日程 |
同じ能力開発基本調査では、技能継承の取組を行っている事業所の54.7%が、退職者の中から必要な者を選んで雇用延長や嘱託での再雇用を行い、指導者として活用していると答えています。*1 再雇用の期間を、本人が作業を続ける時間ではなく、後任に渡す時間として使う考え方です。
定年後に業務委託で関わってもらう場合の計画と同意の手順は、定年退職者への業務委託|外部人材活用で開発を続ける計画で扱っています。
後任をいつ誰で確保するか
引き継ぎ期間が足りなくなる大きな原因は、後任が決まるのが遅いことです。同じ調査では、技能継承の取組を行っている事業所のうち、「中途採用を増やしている」が56.2%、「不足している技能を補うために契約社員、派遣社員を活用している」が22.5%でした。*1 社内の若手に限らず、外から迎えた人に受け取ってもらう会社も多いことが分かります。

後任の候補は次の3つです。どれを選ぶかで、引き継ぎを始められる日が変わります。
| 候補 | 向く場面 | 引き継ぎ期間への影響 |
|---|---|---|
| 社内の別の人 | 同じ種類のシステムを触った人が近くにいる | 指名すれば早く始められる。その人の本来の仕事を誰が受け持つかを先に決める |
| リモートワークで働く社員の採用 | 定年後も長く任せたい | 募集から入社までの時間を、重ねる期間の前に見込む |
| 業務委託の外部人材 | 社員の後任の入社が間に合わない。年1回の作業の時期に厚みがほしい | 参画の時期を引き継ぎの日程に合わせて相談でき、社員の後任が入るまでのつなぎにもなる |
社員を採用するなら早めに募集を始め、入社までの間を業務委託の外部人材でつなぐ形もあります。採用の日程の組み方はエンジニア中途採用の欠員補充で整理しています。予定外の退職で時間が短いときはエンジニアの属人化と退職|辞める前に残させる情報と引き継ぎの手順、異動で担当が抜けるときは異動の引き継ぎが間に合わないときの質問期間と外部人材の入れ方を参考にしてください。
外部に委託するときに確認しておきたい点
定年退職の引き継ぎで外部人材へ頼むときは、頼む前に次の点を確かめます。
- ベテランが担当を外れる日の前に参画でき、本人の横で作業できる期間があるか
- 年1回の作業の時期に、参画の期間が重なっているか
- 同じ言語、同じ構成のシステムを触った経験があるか
- 参画の前に、秘密保持の契約と、渡す権限の範囲が決まっているか
- 手順書と聞き取りの記録を、社員の後任へ渡すところまでが業務に含まれているか
外部人材にはベテランのアカウントを使わせず、専用のアカウントを発行します。ベテランが担当を外れる日には、本人の管理者権限も外します。アカウントの切り替えの順番は、辞める社員が管理者のまま|外部人材活用で進める退職の引き継ぎで整理しています。
まとめ:定年退職の引き継ぎで確かめておきたい3つの点
ベテランの定年退職に向けた引き継ぎで、確かめておきたい点は3つに整理できます。第一に、引き継ぎ期間を定年日から逆に数え、仕事を周期ごとに書き出して、年1回の作業の日付が重ねる期間に入るように始める日を決めること。第二に、再雇用で残る場合も、定年日とは別に担当を外れる日を決め、残る期間を後任に渡す時間として使うこと。第三に、後任を社内で指名するか、採用するか、外部人材に頼むかを早めに決め、間に合わない分は業務委託でつなぐことです。後任の探し方に迷いがあれば、外部の手を借りるのも一つの選択肢です。
よくある質問
定年退職の引き継ぎは、何か月前から始めるのが目安ですか
厚生労働省などの公的な資料に、引き継ぎ期間の長さの目安は示されていません。仕事を周期ごとに書き出し、年1回の作業の日付が重ねる期間に入るか、後任を決めるまでにどのくらいかかるかを数えて、定年日から逆に決めます。
再雇用で残るなら、急いで引き継がなくてもよいですか
再雇用のあとの仕事の中身や期間は、会社と本人の取り決めで変わります。残る前提で準備を遅らせると、担当を外れる時期に後任が受け取れていないことがあります。定年日とは別に担当を外れる日を決め、その日に向けて引き継ぎを進めます。
定年後のベテランに、業務委託で関わってもらうことはできますか
70歳までの就業機会を確保する措置の一つとして、業務委託契約を締結する制度があります。委託する範囲や計画、本人の同意の取り方は、人事部門や社会保険労務士などの専門家に確かめたうえで決めてください。
定年退職の引き継ぎを支える人を探す
ベテランの定年日と、引き継ぎたいシステムの概要が分かっていれば、そのままご相談いただけます。後任が決まっていない段階でも構いません。
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出典
- *1 参考:厚生労働省「令和7年度能力開発基本調査」調査結果の概要(PDF)(https://www.mhlw.go.jp/content/11801500/001728125.pdf)。出典:厚生労働省。事業所調査(6)技能の継承について、図61(技能継承に問題がある事業所)、図62(技能継承の問題点)、図64(技能継承の取組の内容)を参照(確認日2026年10月16日)(2026年10月確認)
- *2 参考:厚生労働省「令和7年『高年齢者雇用状況等報告』の集計結果」発表資料(PDF)(https://www.mhlw.go.jp/content/11700000/001609988.pdf)。出典:厚生労働省。令和7年6月1日現在、常時雇用する労働者が21人以上の企業237,739社の報告。雇用確保措置の内訳と定年制の状況を参照(確認日2026年10月16日)(2026年10月確認)