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2026.10.16 採用支援コラム

異動の引き継ぎが間に合わないときの質問期間と外部人材の入れ方

監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)

木目の机で、段ボール箱にファイルボックスを下ろす両手と、箱の中のマグカップ

この記事の結論

  • システム担当の異動で引き継ぎが間に合わないときは、異動前に、本人・後任・双方の上司で、質問できる期間の終わりの日と窓口を決めます。
  • 間に合わない分は、異動日までに渡すもの、質問期間に聞くもの、本人に頼らず埋めるものの3つに仕分けます。
  • 足りない分は、社内の別の人か外部人材で埋め、外部人材は本人に聞ける質問期間のうちに入れます。

※ 本記事は2026年10月時点の公式情報(省庁・公的機関、および製品やサービスを提供する事業者が公開している資料)に基づきます。

来月の人事異動で、社内のシステムを一人で見てきた担当者が別の部署へ移ることになった。後任に渡す資料も時間も足りず、異動日までには間に合いそうにない——。情報システム部門や小さな開発チームでは、こうした場面がときどき起こります。退職と違うのは、異動する本人が同じ会社に残ることです。

本記事は、情報システムの責任者や開発マネージャー、人事の担当者に向けて、異動後に本人へ質問できる期間の決め方、間に合わない分の仕分け、足りない分を社内と外部人材のどちらで埋めるか、外部人材に頼むときの確認点をまとめます。

異動で引き継ぎが間に合わないとは

異動で引き継ぎが間に合わない状態とは、担当者が新しい部署で働き始める日までに、後任が仕事を一人で回せるところまで受け取れていない状態を指します。辞令が出てから異動日までは短いことが多く、これまでの仕事を続けながら引き継ぐ時間はなかなか取れません。

退職の引き継ぎと違い、異動では本人が社内にいます。この違いは、引き継ぎの進め方を次の3つの点で変えます。

  • 異動日のあとも、本人に質問できる。相手が同じ会社にいるので、聞く手段が残っている
  • 質問に答える時間は、本人の新しい仕事と取り合いになる。答えるほど新しい部署での立ち上がりが遅れる
  • 本人は新しい部署で別の仕事をするため、元のシステムの管理者権限を持ち続ける理由がなくなる

質問できる気軽さから「あとで聞けばよい」と引き継ぎが先送りされ、期間も回数も決まらないまま、本人の新しい仕事を圧迫してしまうことがあります。そこで、聞ける期間を異動の前に取り決め、それでも間に合わない分を別の人で埋める、という順で考えます。

異動後に聞ける期間の取り決め方

質問できる期間は口約束にせず、異動の前に、本人、後任、そして双方の上司で決めて書いておきます。期間の長さに決まった正解はなく、システムの大きさと、本人の新しい仕事の忙しさで変わります。決めておくのは次の6つです。

並んで座る2人の後ろ姿。右の人が画面の表とグラフを指で示し、左の人が聞いている

質問期間の取り決め項目と書き方の例(考え方の例であり、自社の事情に合わせて決めます)
項目 決めること 書き方の例
期間の終わり いつまで質問を受けるか 異動日から2か月後の月末まで
窓口 誰が聞き、誰が答えるか 聞くのは後任だけ、答えるのは本人。ほかの人は後任を通す
手段と時間 どう聞くか、1回の上限 週1回30分の定例と、急ぎのときのチャット
優先順位 本人の新しい仕事と重なったとき 新しい部署の締切を優先し、答えは翌営業日までにする
範囲 聞いてよいこと 作りの経緯と過去の障害の直し方。操作の代行は含めない
承認 誰が了承するか 双方の上司。必要なら人事に異動の発令時期も相談する

特に大事なのは、本人の新しい部署の上司が了承していることです。了承がないと、質問は新しい仕事の邪魔として扱われ、実際には聞けない状態になります。

期間には終わりの日を置きます。終わりが近づいたら、延ばすか、外部の人材などで埋めるかを判断します。

間に合わない分の3つの仕分け

異動日までに間に合わない分は、全部を同じように扱わず、いつ、誰が受け取るかで3つに仕分けます。

異動の引き継ぎが間に合わない分の仕分けを、左から右へ3つの箱で示した図。1つ目は異動日までに渡すもので、定期の作業の手順、システムの在り処、障害時に最初に見る場所を渡し、後任が手順書で1回動かす。2つ目は質問期間に聞くもので、作りの経緯と過去の障害の直し方を、後任が質問を書き溜めてまとめて聞く。3つ目は本人に頼らず埋めるもので、異動後に本人が触れなくなる作業と質問期間のあとの運用の手数を、社内の別の人か外部人材が受け持つ。下の帯には、質問期間の終わりの日を異動前に決めると書かれている。

間に合わない分の仕分けと渡し方(考え方の例)
仕分け 中身の例 渡し方
異動日までに渡す 定期の作業の手順、システムの在り処、障害時に最初に見る場所 後任が手順書だけで1回動かす
質問期間に聞く 作りの経緯、過去の障害の直し方、取引先とのやり取りの背景 後任が質問を書き溜め、定例でまとめて聞く
本人に頼らず埋める 異動後に本人が触れなくなる作業、質問期間が終わったあとの運用の手数 社内の別の人か外部人材が後任と並んで受け持つ

質問は書き溜めておき、定例の場でまとめて聞くと、本人の時間を細切れにせずに済みます。答えは、後任がその場で手順書に書き足します。こうしておくと、次にこの仕事を受け持つ人が同じことを聞かなくて済みます。

本人のアカウントの扱いも、異動日までに決めます。IPA(情報処理推進機構)の「中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン」第4.0版の付録5には、規程のひな形があります。ひな形は、アカウントが不要になったと判断したら、その日の翌日までに削除または無効化すると定めています。*1 特権アカウント(管理者の強い権限を持つアカウント)も、不要になれば速やかに削除または無効化する定めです。*1 ひな形が例に挙げているのは退職ですが、異動で担当を外れる人の権限にも同じ考え方を当てはめられます。

権限を外したあとの質問は、後任の画面を一緒に見ながら受けると、本人に権限を残さずに済みます。アカウントの切り替えの順番は、辞める社員が管理者のまま|外部人材活用で進める退職の引き継ぎで整理しています。

足りない分を誰で埋めるか

JUAS(日本情報システム・ユーザー協会)の「企業IT動向調査報告書2026」は、IT部門の機能・能力の充足状況を企業に尋ねています。「IT人材の採用・育成」を不足している機能・能力とした企業は、売上高1兆円未満の企業で70%以上でした。*2 後任を新しく採るにも、社内で育てるにも、余裕のない会社が多いことが分かります。

窓際の事務所で、空いた席へ椅子を押して引き寄せる人と、隣で作業する後任の後ろ姿

質問期間のあとも後任だけでは手が足りないとき、埋める候補は次の3つです。

足りない分を埋める候補と選び方(考え方の例)
候補 向く場面 先に確かめる点
社内の別の人 同じ種類のシステムを触った人が近くにいる その人の本来の仕事が止まらないか。兼務の負担が重くなりすぎないか
業務委託の外部人材 異動日が近く、後任が慣れるまでの間だけ厚みがほしい 本人に聞ける質問期間のうちに参画できるか。権限と秘密保持を先に整えられるか
リモートワークで働く社員の採用 異動で空いた席を長く埋めたい 入社までの間を、後任とつなぎの人で支えられるか

外部人材は、本人がまだ質問に答えられる質問期間のうちに入れると、後任と一緒に本人へ聞けます。異動日が過ぎてから探し始めるより、聞ける機会が残ります。社員を採用して席を埋める場合は、入社までに時間がかかるため、そのつなぎとして外部人材を使う手もあります。

後任の採用の日程はエンジニア中途採用の欠員補充で、選べる手段はエンジニア中途採用だけに頼らない欠員補充、9つの選択肢で扱っています。

外部に委託するときに確認しておきたい点

異動の引き継ぎを補うために外部人材へ頼むときは、頼む前に次の点を確かめます。

  • 異動日の前に参画でき、本人に聞ける質問期間のうちに後任と顔合わせができるか
  • 本人への質問を、後任と外部人材のどちらがまとめて聞くのかが決まっているか
  • 参画の前に、秘密保持の契約と、渡す権限の範囲が決まっているか
  • 質問期間の終わりの日に、契約を延ばすか止めるかを判断する日が決まっているか
  • 手順書と質問の記録を、次に使う人へ渡すところまでが業務に含まれているか

外部人材には、本人のアカウントを使わせず、専用のアカウントを発行します。本人のアカウントを使うと、あとから誰の操作か分からなくなります。IPAのひな形は、特権アカウントの付与対象を業務上必要な従業員と従業員以外の者に限り、役割に応じた必要最低限の権限だけを付与すると定めています。*1

外部人材の側が離任するときの引き継ぎは、業務委託エンジニアの離任で引き継ぎが漏れる理由と防ぎ方で扱っています。

まとめ:異動の引き継ぎで確かめておきたい3つの点

システム担当の異動で引き継ぎが間に合わないとき、確かめておきたい点は3つに整理できます。第一に、異動の前に、本人、後任、双方の上司で、質問できる期間の終わりの日、窓口、時間、優先順位を決めておくこと。第二に、間に合わない分を、異動日までに渡すもの、質問期間に聞くもの、本人に頼らず埋めるものに仕分けること。第三に、足りない分を社内の別の人か外部人材で埋め、外部人材は本人に聞ける質問期間のうちに入れることです。埋める人の探し方に迷いがあれば、外部の手を借りるのも一つの選択肢です。

LASSICに相談するメリット

異動日と、後任が一人で回せるようになってほしい時期が分かれば、外部人材に並走してもらう期間と求める経験が決まります。質問期間の終わりの日まで決まっていれば、その日に合わせて参画できる候補を探しやすくなります。

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よくある質問

異動した本人に、元の仕事の質問を業務として受けさせてよいですか

異動後の本人の仕事は、新しい部署の上司の指揮のもとで進みます。質問に答える時間を業務として扱うには、新しい部署の上司の了承が前提になります。個別の扱いは、就業規則や人事部門に確かめ、必要に応じて社会保険労務士などの専門家に相談してください。

質問できる期間は、どのくらいが目安ですか

JUASやIPAの資料に、質問期間の長さの目安は示されていません。システムの大きさと本人の新しい仕事の忙しさで変わるため、終わりの日と、定例の回数や時間の上限を先に決め、終わりが近づいたら延ばすか埋めるかを判断します。

異動が決まる前から備えておけることはありますか

定期の作業の手順と、システムの在り処の一覧を、日ごろから更新しておくと、異動が決まったときに渡せる量が増えます。担当者が一人しかいない仕事は、普段から後任候補に1回動かしてもらっておくと、間に合わない分が減ります。

異動後の引き継ぎを支える人を探す

異動日と、引き継ぎたいシステムの概要が分かっていれば、そのままご相談いただけます。手順書がない段階でも構いません。

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出典

  1. *1 参考:IPA「中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン」第4.0版 付録5「情報セキュリティ関連規程(サンプル)」(https://www.ipa.go.jp/security/guide/sme/ug65p90000019cbk-att/sme_guideline_v4.0_app_5.docx)。出典:独立行政法人情報処理推進機構(IPA)。6.4(利用者アカウントの管理)、6.7(特権アカウント)を参照(確認日2026年10月16日)(2026年10月確認)
  2. *2 参考:JUAS「企業IT動向調査報告書2026」(PDF)(https://juas.or.jp/cms/media/2026/04/JUAS_IT2026.pdf)。出典:一般社団法人日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)。2025年度調査。6.4(1)図表6-4-1(売上高別「IT人材の採用・育成」機能・能力の充足状況)を参照(確認日2026年10月16日)(2026年10月確認)




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