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システム保守契約の解約で確認したい5つのポイント|初めての人向け
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)

この記事の結論
- システム保守契約の解約は、期間満了で更新しないか、途中で解約するか、相手の違反で解除するかで期限と費用が変わります。
- 解約を伝える前に、通知の期限・解約料・契約形態・預けたデータの扱い・引き継ぎへの協力の5点を契約書で確かめます。
- 次の会社とは通知の期限から逆算して並走期間を取り、保守が止まる期間を作らないように切り替えます。
※ 本記事は2026年10月時点の公式情報(省庁・公的機関、および製品やサービスを提供する事業者が公開している資料)に基づきます。
保守会社の対応が遅い。費用に見合っているのか分からない。別の会社に替えたいが、いつまでに何を伝えればよいのか分からない——。長く同じ会社に保守を任せてきた情報システムの現場では、こうした迷いが起こりがちです。システム保守契約の解約とは、いまの保守会社との契約を終わらせ、保守を自社か次の会社へ移すことを指します。
期限どおりに更新を止めれば、費用を抑えて終えられることもあります。ただし万能ではなく、自動で更新される契約では期限を過ぎるともう1期続き、途中で解約すれば解約料を求められることもあります。本記事では、保守会社の切り替えを考える情報システムの担当者に向けて、解約の種類、解約前に確認したい5つのポイント、次の会社への引き継ぎの進め方、そして外部に頼むときに確認したい点を整理します。
目次
システム保守契約の解約とは
IPA(情報処理推進機構)が公開している「情報システム・モデル取引・契約書」には、システムの保守と運用を委託するときの基本契約のひな型が入っています。このひな型では、契約の有効期間を「○年間」とし、期間満了の「○ヵ月前までに」どちらからも申し出がなければ、同じ条件でさらに継続する形になっています。*1 システム保守契約を終わらせる方法は、大きく次の3つに分かれます。
- 期間満了で更新しない:契約が決めた期限までに、更新しないことを相手に伝える
- 期間の途中で自社の都合により終える:いわゆる中途解約。解約料の定めがあることが多い場面です
- 相手の契約違反などを理由に解除する:直すよう求めても直らないときなどに使う方法です
どれに当たるかで、費用も期限も変わります。また、基本契約と個別契約(保守の中身・期間・料金を決めた契約)が分かれている場合、ひな型では基本契約が終わっても、続いている個別契約には基本契約の条項が適用されます。*1 解約を考えるときは、両方の期間を並べて確かめます。
期間満了と中途解約の違い
システムの保守は、作業の結果ではなく作業そのものを頼む準委任(事務の処理を任せる契約)として結ばれることが多い分野です。民法は委任について「各当事者がいつでもその解除をすることができる」と定め、この規定は準委任にも準用されます。*2 一方で、相手方に不利な時期に解除したときなどは、やむを得ない事由がない限り、相手方の損害を賠償しなければならないとも定めています。*2
| 終わらせ方 | 守る期限 | 費用の考え方 |
|---|---|---|
| 期間満了で更新しない | 契約が定める「満了の○か月前」まで | 期間の終わりまでは契約どおりの保守料 |
| 自社都合の中途解約 | 中途解約の条項が定める通知の期限 | 解約料の定めがあれば、その金額 |
| 相手の違反による解除 | 直すよう求めて相当の期間がたっても直らないときなど | 解約料は原則かからず、損害賠償を求められる場合もある |
ひな型の業務仕様書の例では、基本実施期間の途中で解約する場合、「○○○に相当する金額」を中途解約料金として払い、中途解約日の「○か月前までに、書面をもって」通知する形が示されています。*1 解説には、解約料金を「何か月分」支払うかを明記していると書かれ、相手側に解除の理由があって解約するときは、この料金は発生しないとされています。*1
請負(完成した成果物に対して払う契約)で結んでいる場合は、注文者は仕事が完成しない間なら「いつでも損害を賠償して」解除できるという別の条文が関わります。*2 どの条文がどう当てはまるかは契約の中身で変わるため、判断に迷うときは弁護士などの専門家に確かめてください。
解約前に確認したい5つのポイント
解約の申し出をする前に、契約書と社内の資料から次の5つを確かめておきます。順番に見ていけば、期限の見落としや資料の渡し漏れを避けやすくなります。

- ポイント1 契約期間と通知の期限:満了日、更新しない旨を伝える期限(満了の何か月前か)、書面が必要か
- ポイント2 中途解約の条項と解約料:途中で終える場合の通知の期限と、解約料が何か月分か
- ポイント3 契約形態:個別契約で準委任か請負のどちらになっているか
- ポイント4 預けた資料とデータの扱い:返してもらうのか、消してもらうのか、その証明をもらうのか
- ポイント5 引き継ぎへの協力:誰が、どの資料を、いつまでに次の会社へ渡すか。費用はどちらが持つか
ポイント4について、ひな型は、ユーザーから預かった資料等が業務に不要となったときは「遅滞なく」返すか、ユーザーの指示に従った処置をすると定めています。*1 解説では、処置として資料の消去や廃棄と、廃棄証明書の交付が想定されています。*1
ポイント5の引き継ぎについては、ひな型の解説が、将来の再構築を見据えて「業務・設計のノウハウ等の円滑な引継ぎ」などの管理をユーザー側に求めています。*1 契約書に引き継ぎの定めが無いなら、解約を伝える前に、渡してほしい資料と期間を一覧にして、別の合意として相手と決めておくと進めやすくなります。
次の会社への引き継ぎの進め方
保守会社の切り替えは、解約の手続きと次の会社への引き継ぎを同時に進める作業です。通知の期限から逆算して、次の4つのステップで進めると、保守が止まる期間を作らずに済みます。

- ステップ1:契約書を集め、満了日・通知の期限・解約料を一覧にする
- ステップ2:次の会社を選び、いまの会社と並行して動く期間(並走期間)を決める
- ステップ3:期限までに、記録の残る書面で更新しない旨を伝える
- ステップ4:資料・ソースコード・アカウントを受け取り、預けたデータの返還か消去を確かめる
つまずきやすいのは、通知の期限と次の会社の準備がかみ合わないことです。次の会社の調査が終わる前に期限が来ると、更新して1期待つか、解約料を払うかになりがちです。システム保守契約の満了日が分かった時点で、次の会社の選定を始めておくと余裕が生まれます。保守会社の比べ方はシステム保守会社の選び方にまとめています。
外部に頼むときに確認しておきたい点
次の保守会社に引き継ぎを頼むときは、見積もりの前に次の点を確かめておきます。いまの会社が協力しにくい状況なら、引き継ぎ調査の範囲が広がることもあります。
- 引き継ぎ調査の範囲:ソースコード、設計書、手順書、サーバーの設定のうち、どれを調べてもらうか
- 並走期間の作業:いまの会社と一緒に障害対応や定例作業を何回こなしてから切り替えるか
- 受け取る物の一覧:資料・データ・アカウントを誰が受け取り、どう照らし合わせるか
- 切り替え後の見直し:引き継いでから数か月の問い合わせや障害を見て、保守の範囲を直す場を設けるか
いまの会社が倒産などで引き継ぎに応じられない場合は、進め方が変わります。その場合の手順はシステム開発会社の倒産対応で扱っています。
まとめ:保守契約の解約で確かめたい3つの点
システム保守契約の解約を進めるうえで、確かめておきたい点は3つに整理できます。第一に、期間満了で更新しないのか、途中で解約するのかを決め、契約書の通知の期限と解約料を確かめること。第二に、預けた資料とデータの返還や消去、引き継ぎへの協力を、解約を伝える前に相手と決めておくこと。第三に、通知の期限から逆算して次の会社を選び、並走期間を取ってから切り替えることです。この3点を踏まえておけば、「期限を過ぎて契約がもう1年続いた」という事態を避けやすくなります。保守会社の切り替えに迷いがあれば、外部の手を借りるのも一つの選択肢です。
よくある質問
解約の申し出は電話やメールでもよいですか
契約書が通知の方法を決めていれば、それに従います。ひな型の中途解約の例では「書面をもって」通知する形です。*1 方法の定めが無い場合も、後で日付を確かめられるよう、記録の残る書面で伝えておきます。
解約を伝えた後も、満了日までは保守してもらえますか
契約期間が続いている間は、契約どおりの保守を受けられるのが基本です。ただし、次の会社への資料の受け渡しや説明のような引き継ぎの作業は、元の保守の範囲に入っていないことがあります。必要なら作業と費用を別に決めておきます。
ソースコードを受け取っていなくても、次の会社に保守を頼めますか
頼めるかどうかは、ソースコードが納入物に入っているかと、著作権の条項で変わります。解約を伝える前に開発時の契約書を確かめ、手元に無ければ渡してもらえるかを相手と話し合っておきます。判断に迷うときは専門家に相談してください。
保守会社の切り替えと引き継ぎのご相談
保守契約の切り替えに伴う引き継ぎ調査から、並走期間の運用、切り替え後の保守まで、元請(プライムベンダー)としてご提案します。
2006年の創業以来、一次請けのシステムインテグレーターとして、企業のシステム開発と保守・運用を受託してきました。
出典
- *1 参考:独立行政法人情報処理推進機構(IPA)「情報システム・モデル取引・契約書(受託開発(一部企画を含む)、保守運用)〈第二版〉」(2025年4月8日更新)(https://www.ipa.go.jp/digital/model/ug65p90000001ljh-att/000087884.docx)。出典:情報システム保守運用委託基本モデル契約書の第14条(準委任型・請負型)、第15条(資料等の提供及び返還)、第20条(契約期間)とその解説、個別契約書の例、業務仕様書の例(中途解約料金)、保守運用段階の解説(引継ぎ)を参照(2026年10月確認)
- *2 参考:e-Gov法令検索「民法」(明治二十九年法律第八十九号)(https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089)。出典:第641条(注文者による契約の解除)、第651条(委任の解除)、第656条(準委任)を参照(2026年10月確認)
- *3 参考:独立行政法人情報処理推進機構(IPA)「情報システム・モデル取引・契約書(第二版)」(https://www.ipa.go.jp/digital/model/model20201222.html)。出典:モデル契約書の構成と更新履歴の掲載ページ(2026年10月確認)